<皮>人質~HITOZITI~①”悪意”

”悪魔の所業だ”

妹を”皮”にされて、その上”金銭”を要求された兄は
そう思ったー。

これは、妹を大事にしている男子大学生を襲った、
地獄のような日々の物語ー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”お兄ちゃん、わたし、”皮”みたいにペラペラにされて
 男の人に着られて乗っ取られちゃったー”

ある日ー
バイトから帰宅して、家にいた男子大学生の
宮原 昌平(みやはら しょうへい)は、
妹・結花(ゆか)からの突然の連絡に困惑したー。

「ーーえ…?ど、どういうこと?よく意味が分かんないけどー」
昌平は、明るく、悪戯好きの結花の”いつものおふざけ”としか
思わず笑いながら聞き返すー。

”ーー昨日、お兄ちゃん、クレーマーに絡まれたって
 ボヤいてたでしょ?
 
 その”お兄ちゃんにクレーマー扱いされた男の人”が
 お兄ちゃんにムカついたから、こうして妹のわたしが
 狙われて皮にされたってわけ。分かるー?”

妹・結花の言いたいことが分からないー。

昌平は「ーー…ははは…で、俺はどう答えればいいのかなー?」と
いつもの調子で苦笑いするー。

”妹の冗談に付き合っているー”
妹を大事にしている昌平は、
いつもこんな風に妹・結花が冗談を言ってくるたびに、
その冗談に付き合っていたー

”チッー”
突然、妹の結花が電話の向こうで舌打ちをしたー。

「ーー結花…?え…?ごめん…
 え…?イマイチ何が言いたいか分からなくて」
昌平は少し戸惑いながらそう言うと、
電話の向こうから、普段結花が出さないような
低い声が聞こえてきたー

”鈍いやつだな…
 こう言わねぇと分からねぇか?
 ”お前の妹は、俺が頂いた”ってよ”

確かに結花の声だー
だが、声のトーンも、発言の内容も、
明らかにおかしいー。

「ーーゆ…結花…?」
昌平の顔から笑顔が消えるー。
結花の身に何かが起きていることを、理解したのだー。

”この女は人質だー”
結花の声が聞こえてくるー。

自分のことを”この女”と表現する結花ー。

「ーー…ゆ、結花ー…ど、どうしたんだ!?
 そこに誰かいるのか?」
昌平は慌てた様子で叫ぶー。

昌平は、結花の異様な言葉遣いとその内容に、
”結花の近くに誰かがいて、その人物に結花が
 言葉を言わされている”と、思ったー。

結花が脅されて”言葉を言わされている”のだとー。

”誰かー?
 まぁ…いるって言えばいるなー
 この女の”中”に、よー”

結花の言葉に、昌平は青ざめるー

「ゆ…結花の中にー…?」
昌平がやっとの思いでそう呟くと、
結花は”そうさー…お前の妹の中に、俺はいるんだ”と、答えたー。

”さっき、妹風に説明してやっただろ?
 皮にされて乗っ取られちゃったって…さ”

結花はそれだけ言うと、

”まぁいい…あまりの出来事に理解できない気持ちも分かるぜ?”
と、男口調で言葉を続けると、
言葉を失う昌平に対して

”お兄ちゃん、今から”わたしが乗っ取られた”時の動画を送るね!”
と、嬉しそうに笑いながら言い放ったー

「ーーの…乗っ取られたときのー…?」
困惑する昌平ー。

”うん!わたしが乗っ取られてる様子、見て♡”

そう言うと、プチッ、と電話が切れて、
すぐに何か動画が送られてきたー。

「ーーー…」
昌平は困惑しながらその動画を見つめるー。

結花の身にー、
結花の身に、いったい何がー…!?

映像を慌てて再生するとー
悲鳴を上げながら逃げる結花の映像が映し出されたー

「や…やめて!やめてってば!」
結花が、木々の生い茂る場所へと逃げ去っていくー

「へへへ…逃がさねぇよ!」
男の声ー。

映像は、男がカメラを持ちながら撮影したもののようで、
男の姿は映像内には映っていないー。

逃げる結花と、
それを追いかける男ー

昌平は、その映像を見ながら表情を歪めるー

これはー
”結花が通学に使っている道の横にある雑木林だー”
と、そう思いながらー。

「ーーお…お願い…やめて!」
転倒した結花が泣きながら映像のほうを見つめるー。

「ーーそんなに泣くなよー
 俺はちょ~っと、お前の兄貴にムカついててさー。
 別にお前には恨みはねぇから、俺はお前のことを傷つけたりはしねぇさ」

映像を撮影していると思われる男が笑いながらそう呟くー。

「ーーーお…お兄ちゃんが…何をしたって言うんですか!」
泣きながら叫ぶ結花ー。

「ーーあいつの接客が気に入らなかったんだよー。
 最後には警察まで呼びやがってー…」

男はそう呟くと、結花の方にカメラを向けて笑ったー

「ーへへへ…まぁいい。さっさと身体を貸せ」
男はそう呟くとー、
結花の頭を左手でわしづかみにしてー
そのままぐりぐりと結花の頭を揺らすー。

泣きじゃくる結花の声が、やがてかすれていきー、
結花の身体から空気が抜けたかのように、
しぼんでいくー。

「ーな…な…なんだこれは!?」
思わず声を上げてしまう昌平ー。

昌平のスマホに送られてきた
”結花が皮にされたときの映像”を見て昌平は
表情を歪めるー

信じられないことにー
結花が”脱皮された昆虫の皮”のように
ペラペラになった映像が映し出されていたー

「よ~ぉ、見てるか、クソ野郎ー」
その言葉と共にー
カメラの映像内に、撮影者の男が現れるー。

「ーーー!!!!」
昌平はその映像を見ながら、「こいつはー…」と呟くー

その男は、
数日前ー、
大学に通いながらバイトをしている昌平が
働いているお店にやってきた”クレーマー”の男だった。

お店に対して難癖をつける行為を繰り返しー、
挙句の果てには新人のアルバイトに対して土下座を要求したり、
怒鳴り声を上げたり、行動がエスカレートし始めたー

当時、店長はちょうど別件で不在となっていたため、
昌平がそれに対応、
最終的に、新人バイトに軽い暴力を振るい始めたため、
警察に通報する、とクレーマーに伝えたー。

しかし、この男は落ち着くどころか逆上ー、
昌平はすぐに警察に通報しー
駆け付けた警察にクレーマー男は、仲間二人と共に
連れ去られていったー

「テメェ!名前を覚えたからな!!」
そんな、捨て台詞を残しながらー。

だが、昌平は特には気にしていなかったー。
その手のクレーマーはよくいるし、
当時、その男は酒に酔っていたー

酔っ払いによるトラブルは日常茶飯事で、
その男も、いつも通り、酔いも醒めれば、
自分の行動の愚かさに気付くー…
そう、思っていたー。

しかしー
この映像に写っている男はー
紛れもない、その時のクレーマーだった

”テメェ!名前を覚えたからな!!”
と、脅し文句を言っていた男は、
復讐と言わんばかりに昌平の妹・結花を狙ったのだったー

ペラペラになった結花を持ち、
クレーマー男が笑うー

「ーへへへへへ…今からお前の妹を乗っ取ってやるぜー
 見てろよ」

男はそう言うと、皮になった結花を、
まるで着ぐるみを着るかのように、身に着けていきー
最後にはー
”結花そのもの”になったー。

「ーーふふふふ…どう?お兄ちゃん!
 わたし、乗っ取られちゃいました~!」
結花が映像の中で笑いながら手を振るー。

「ー…ふ…ふざけんな!おい!!おい!!!」
録画された映像に対して叫んでも、無駄ー…
なのだが、昌平は叫ばずにはいられなかったー。

妹の結花が、クレーマー男に狙われてー
こんな目にー…

「ーーお前の妹は、俺のものだー」
映像の中の結花は挑発的な笑みを浮かべながら
映像に向かって自分の胸を両手で揉み始めるー

「ぁ…♡ きもちいい♡」
結花が甘い声を出すー。

今ー
この画面の中にもしも入ることができるのなら
昌平は、映像の中に飛び込んで、迷わず結花を
乗っ取ったクレーマー男を、どんな手段を
使ってでも、結花の中から引きずり出して
地獄を見せてやっただろうー。

しかしー、
そんなことはできないー。

スマホに送られてきた
”結花が乗っ取られた瞬間”の映像を見ながら昌平は
激しい怒りを覚えるー。

♪~~

再び妹の結花からの電話が入り、
昌平は「おい!今すぐ結花を開放しろ!」と大声で叫ぶー。

”くくくー…それはお前次第だー”
クレーマー男に乗っとられた結花が冷たい声で笑うー。

”加工された映像”である可能性もあるしー
”ドッキリ”である可能性も0ではないー

しかし、結花がそんなことをするはずがないしー
そんなことをするメリットは結花にはないー

”人間が着ぐるみのようにされて乗っ取られる”
そんなことがあるとは、信じられないけれど、
信じるしかないー、
そんな状況に昌平は追いやられていたー。

”わたしを助けたければ…100万円…用意して”

「ーーひ、百万円ー…?」
昌平は表情を歪めるー。

バイトで稼いだお金の貯金はある程度あるー。
しかし、大学の学費や、家にもお金をある程度入れているため、
今すぐ100万円を用意することは難しいー。

”ーーなんだ、できねぇのか?無能なお兄ちゃんー”

わざと結花の口調も混ぜながら笑う結花ー。

「ーふ…ふざけるな…!こんなことしてタダで済むと思うな!」
昌平が怒りの形相で叫ぶと、
”ーーお前、自分の立場分かってねぇみたいだな”と、
結花の乱暴な声が聞こえてくるー

「お前こそー…自分の立場が分かってるのか!?」
と、昌平は叫び返すー。

昌平と妹の結花は実家に暮らしているー。
当然、結花がいなくなれば、学校も、両親も
すぐにそれを探知するー。

「ーー逃げられると思うなよー…!
 お前を結花から引きずり出してー…」

結花がクスッと笑ったー。

”まぁ、わたしがいなくなれば騒ぎになるのは
 仕方ないけどー
 わたし、見つからないからー”

結花が冷たく呟くー

”女って、髪型とか、メイクとか変えればー
 まるで別人みたく変身できちゃうしなぁ…
 そう簡単に見つかると思ってるのかー?

 しかもー
 ”この女を脱いで鞄にでもぶちこんでおけば”
 絶対に見つからないぜ?”

結花の言葉に、昌平は
「ーーさっきの動画を親にも警察にもー」と、呟くと、
”このことは、誰にも言うんじゃねぇよ”と、結花が脅すような口調で
呟いたー。

それと同時にー
写真が送られてくるー。

笑顔を浮かべたまま、着ぐるみのように”ペラペラ”になった結花の目の前に
”ハサミ”が置かれている写真ー

”わたし、脱がれている間は、
 洋服みたいにペラペラだからー
 簡単にハサミで切れちゃうー
 
 くくくくくー
 この意味、分かるよね?お兄ちゃんー”

「ーーーーー!!!!」
昌平は、青ざめるー。

クレーマー男は、
”周囲にこのことを話したら、結花を脱いで、ハサミで切り刻む”と
そう言っているのだー。

”切り刻まれてそのままゴミ箱にでも捨てられたらー
 わたし、永遠に見つからないね?”

結花が笑うー。

「ーーふ…ふざけんな…!」
昌平が叫ぶー。

”ーお前は、自分一人の力で100万円集めるんだー
 それしか妹を助ける方法はねぇー。
 へへへー
 誰かに相談した時点でー
 妹はチョキチョキだー。わかるな?

 何か月かかっても、何年かかっても、俺を怒らせさえ
 しなければ待っててやるよー

 ほら、どうした?
 俺を警察に通報したときの威勢のよさはー?

 くくくー
 あははははははははっ”

結花は嬉しそうに笑うとー

”定期的に連絡するー
 妹のために必死こいて金を集めろよー。
 バカ野郎ー”

と、冷たい口調で呟いてー
そのまま、電話は切れたー。

「結花ー…」
あまりの出来事に、昌平はその場で唖然とすることしか
できなかったー。

②へ続く

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厄介な男に目をつけられてしまった兄妹…!
続きはまた次回デス~!

皮<人質~HITOZITI~>
憑依空間NEO

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