<憑依>人質と強盗が同一人物!?②~恐怖~

銀行強盗に憑依されてしまった利用客の少女ー。

強盗本人でありながら、
身体は人質ー。

手だしできない最悪の状況が続くー。

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「-ーーー中の状況は?」
銀行強盗事件が起きた銀行の周辺には、警察官たちが
駆け付けていたー。

「--入口や窓は全て閉ざされており、現在、確認できていません」
刑事の一人が言うー。

「----そうか」
警察官・達本 義明(たつもと よしあき)は、表情を歪めるー。

白昼に堂々と銀行強盗事件を起こし、
しかも立てこもるとはー…?

「---犯人からの要求は?」
義明が部下に確認する。

だが、現状で要求は無く、
ただ、立てこもっているだけなのだと言う。

しかしながら、数十人がまだ銀行内部に人質にされた状態で、
うかつに手出しすることができない、と
部下の刑事はそう語ったー。

「わかった」
義明は頷くと、銀行の入口の方に警戒しながら近づいていくー。

そして、拡声器を使って叫んだー。

「--警察だ!ーー
 話がしたい」

義明の言葉にもーー
銀行内部からの返事はないー

”話がしたい”
内部で、義明の声を聴いていた女子高生・紗友里は
笑みを浮かべたー

「ははは!お前ら、警察が来たみたいだぜ?」
紗友里はげらげら笑いながら、
人質たちに向かって叫ぶー。

「こわいよ~~~~…」
子連れの親子の子供が泣きじゃくっているー

「おい、静かにしろ」
紗友里が、冷たい眼差しを母親に向けるー

「す、、すみません…すみません!」
母親は怯えながら子供に静かにするように言うー。

だがー
このような状況で、子供がすぐに静かになるわけなど、なかった。

さらに泣きじゃくる子供ー

「--うるせぇクソガキだな!黙らせろ!!!!」
紗友里が銃を天井に向けて発砲するー。

ごく普通の女子高生が銃を手にしてー
さらにはそれを発砲させられているー。

あまりに恐ろしい光景に
人質たちは震えあがったー。

「----」
女性銀行員の美空も、例外なく震えあがっていたー。

既に、息絶えている貝塚支店長のほうを見てー
”死”の恐怖に襲われる美空ー。

それだけではないー

女子高生の紗友里が”憑依”されて、
まるで別人のように豹変してしまっている状態にも恐怖したー

”憑依される”恐怖だー。

さっきー
強盗がやってくる前に美空は紗友里のことを”かわいいなぁ”などと
内心で思っていたー。

だが、今、その時の紗友里の面影はもはやないー。

”話がしたい!!要求はなんだ!?”
外から警察官・義明の声が聞こえてくるー。

「--ーーどいつもこいつもうっせぇなぁ」
紗友里が綺麗な黒髪をかきむしりながら笑みを浮かべるー

「--警察が来たから、もう大丈夫だから。な?」
男性銀行員の鹿島が、美空に対して言うー。

美空が震えながら頷くと、
「それはどうかな?」と、盗み聞きしていた紗友里が笑ったー

「俺は今、
 ”強盗”であると同時に”人質”なんだぜ?」
紗友里が笑みを浮かべるー

「誰も俺に手出しできやしぇねよ」
そう言うと、紗友里は銀行の入口の方に向かうー。

銃をカウンターの上に置いて、
入口の方に向かっていく紗友里を見て、
男性銀行員の鹿島は、その銃のほうを見つめたー。

銀行の入口の扉を開ける紗友里ー

「---…!」
外にいた警察官の義明が、銃を一瞬構えたが、
すぐに銃を下したー。

「---君は?」
義明が声をかけると、「た、、助けてください…」と紗友里が震えながら呟いたー

内心で笑う紗友里ー。
紗友里が憑依されているなどと予想もしていない義明は、
油断しているー。

「--中の状況は…?」
義明が尋ねると、
紗友里は「--わ、、わたしと……他のお客さんと…銀行の人が…人質にされて…」と
涙を流しながら答えたー。

「---”人質を解放してほしければ一人で中に来い”」
紗友里はそう呟くー

「---犯人の人が、、そう言ってます」

紗友里の言葉に、
義明は”この子を伝言役に使ったわけか”と判断するー

実際には目の前にいるのが銀行強盗自身ー
銀行強盗に憑依されてしまった少女なのだが、
そんなこと、義明は想像もしていないー

「---…」
無線で仲間と会話をする義明。

「---了解。これより内部に入る」
義明はそう答えると、
紗友里のほうを見たー。

「---通信機器、武器の類は、全て捨てろ、と…
 そう言ってます」
紗友里が震えながら言うー。

震えているのももちろん縁起だー。

義明には、
”娘”がいるー。
ちょうどこの子と同じぐらいの娘だー。

だからこそー
余計に”助けてあげたい”という気持ちが
強まってしまうー。

「---例の準備も頼む」
義明が、無線で最後に仲間にそう告げると
無線機や銃をその場に置くー。

「---………」
紗友里が不気味な笑みを少しだけ浮かべるー。

”これはなー…
 ”ゲーム”なんだよ”

紗友里が舌で唇をペロリと舐めるー。

憑依薬を使ったー
楽しい楽しい、ゲームだー。

紗友里に憑依している銀行強盗の目的はー
”単純”だったー。

ただ、楽しみたいー
それだけー。
あまりにも身勝手で
あまりにも自分本位な犯罪行為ー。

金が目的でも、
何が目的でもないー

男はただ、楽しみたかったー。

「---……」
紗友里が、義明の身体を調べるー。

「---…」
義明は”この子をこのまま、避難させることもできるが…”と
考えるー

紗友里は今、銀行の入口から、外に少し出てきている状態だー

中の様子は分からないが、
今、紗友里を確保して、避難させれば
少なくともこの子を助けることはできるー

と、義明は考えるー。

だがー
それをすれば”他の人質全員”を危険にさらすことになってしまうー

それは、できないー。

「--中の人は、みんな無事?」
義明が、紗友里に向かって優しく訊くと、
紗友里は目に涙を浮かべながらー
「いえ…銀行の人がひとり…」と悲しそうに答えたー。

貝塚支店長は既に死んでいるー
犠牲者が、既に出ているのだー

「----」
銀行の構造上、
入口が開いていても、ATMコーナーしか見えず、
人質たちがいるであろう奥を確認することができないー

「おい!聞こえるか!」
義明が大声で銀行の中に向かって叫ぶー

「--------」
だが、返事はないー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”--”
外で義明と強盗に憑依されている紗友里が
会話している最中ー

男性銀行員の鹿島は、指を立てて、
「しーっ」と他の人質たちに言うと、
紗友里がカウンターに置いたままにした銃の方に向かっていくー。

”今なら銃を奪えるー”
鹿島はそう考えたのだー。

「---」

そして、鹿島が入口付近に向かっていくー。
紗友里を無力化できればー
憑依されたあの子も助けることができるかもしれないし、
自分たちもーーー

”おい、聞こえるか”
外から義明の声が聞こえたー

ちょうどその時ー
銃を持った鹿島が、入口付近に顔を見せたー

「--!!」
義明が身構えるー

紗友里が、鹿島に気づいて
不気味な笑みを浮かべたー

「---あ、私は銀行のーーーー」
刑事の義明が警戒の色を見せたため、
鹿島は咄嗟に自己紹介をしようとするー

しかしーーー

「きゃああああああああああああああああああああ!!!!!!」
紗友里がわざと大声で叫んだー

泣き出してしゃがみこむ紗友里ー。

義明は咄嗟に動いたー

銀行の内部に足を踏み入れてー
相手が人質のひとりとは知らずに、
銃を叩き落させるー。

銃が床に転がるー

その様子を紗友里は笑みを浮かべながら見つめるー。

そして、入口の扉を閉めて、鍵をかけるー。

義明は、鹿島が銀行強盗だと思い込みー
何かを叫んでいる鹿島を殴りつけてー
柔道の投げ技を繰り出しー
鹿島を無力化したー

「ぐあっ!」
鹿島が床に叩きつけられるー

「--鹿島さん!」
女性銀行員の美空が叫ぶー。

「---皆さん!もう大丈夫です!」
義明がそう叫ぶー

だが、人質たちの表情が暗いことにすぐに気付くー

「刑事さん…!その人は銀行員の…!
 犯人はーーー!」

慌てて利用客のおじいさんが叫ぶー。

だがーーー

パァン!

「---!」
義明が表情を歪めるー。

背後を振り返るとー
そこには、鹿島が落とした銃を握ったー

紗友里の姿がーーー

「--なっ…に?」
義明が、撃たれた肩を抑えながら振り返るー

「--ザンネンでしたぁ♡ 強盗はわたしでーーす!」
紗友里が馬鹿にしたように笑うー

「な、、、き、、、君が…?」
義明は、咄嗟に動いたー

紗友里を無力化しようと、紗友里に向かっていくー

だが、紗友里は、笑いながら、格闘技のような技を繰り出してくるー

”へへ、JKの身体で刑事と格闘なんて、興奮するぜ”

紗友里がスカートをふわりとさせながら、
義明と激しい肉弾戦を繰り広げるー。

「---(この子、何者だ!?)」
義明は、紗友里が憑依されているとも知らずに戸惑うー

義明はやむを得ず、紗友里に反撃するー

殴られた紗友里が鼻血を流しながら
へらへら笑っているー

その時だったー

「だめです!!!!!!!」
女性銀行員の美空が叫んだー

「-!?」
義明が戸惑うー。

「--その子、、その女の子…!
 強盗の人に”憑依”されてーーー」

美空の叫び声にー

義明が「えっ!?」と叫ぶー。

その隙を、紗友里は見逃さなかったー

「うらぁっ!」
紗友里が、義明の顔面に蹴りを叩きつけるー。

スカートがふわりとめくれて下着が見えるー。

「--がっ」
義明が流血して後ずさるー。

「---ははははは!そうだ!
 俺は、強盗でありながら人質でもあるんだ!

 ほらほらどうした?
 俺を、わたしを捕まえてごらん!あはははははは!」

紗友里に反撃できなくなった義明が
一方的に紗友里に攻撃されていくー。

義明に誤解されて倒された男性銀行員の鹿島が、
立ち上がって紗友里を取り押さえようとするー

しかしー

パァン!

銃声が響いて鹿島の身体が吹っ飛ぶー。

「--!!」
続けて義明も身体に激しい衝撃を感じたー

紗友里が銃を放ち、義明も吹き飛ばされるー

「ひひ…ゾクゾクする…
 わたし、人質なのに、人、殺しちゃってる…
 ひひひひ、うふふふ、うふはははははははっ♡」

紗友里が笑うー

「おらぁ!誰も動くんじゃねぇぞ」
紗友里は自分に銃を突きつけながらげらげらと笑うー。

「--わたし、死んじゃうよぉ~?
 ひははははははははっ!」

自分に銃を突きつけながら笑う女子高生ー。
そこに広がっているのは、まさに”狂気”と表現するしかない、
狂気的な光景だった。

「---…………人質の女子高生が……犯人に憑依されている……」
義明は隠し持っていた無線で、外部の仲間に連絡するー

”憑依されている…”

「--憑依…?」
外で待機していた刑事・釜井が表情を歪めるー。

狙撃班がやってきて
銀行の中を狙うー。

「ーーー犯人が女子高生に憑依しているだと?
 そんなことが…?」

狙撃犯を率いる刑事も、困惑するー。

「ーーー達本さんによれば、
 犯人は人質の少女に憑依して、
 自分に銃を突き付けている模様です」
釜井がそう言うと、狙撃犯を率いる刑事が
「それでは突入も狙撃もできん」と、困惑した様子を見せたー。

銀行内に、悲鳴が響き渡るー

女性銀行員の美空も、ただ、身体を震わせていたー

「---お願い…静かに!静かに!」
母親が泣きじゃくる子供をなんとか静かにさせようとしている

「--おい」
銀行のカウンターに座った足をぱたぱたさせている紗友里が言うー。

「--いい加減にしろよ?
 俺が黙らせてやろうか?」
銃をトントンしながら紗友里が怒りの形相で呟くー

母親は泣きながら「どうか…どうか!この子だけは」
と、叫ぶー。

紗友里は、「だったらとっとと黙らせろや!」と
鬼のような形相で叫んだー。

「----」
美空は紗友里のほうを見るー。

犯人の目的が分からないー。
女子高生の身体目当てー?

いや、それなら、銀行強盗などせずに憑依だけすればいいー。

かといって、お金目的でもなさそうー。

美空は、犯人の”ただ楽しみたい”という狂気的な目的を
理解できずに笑うー。

「---」
電話が鳴り響くー。

紗友里は笑いながら電話に出るー。

警察からだったー。

「---へへ、要求???そうだなぁ?
 じゃ、俺に飯でも持って来いよ。
 刑事ひとりでな!

 少しでも変な動きしたら、
 わたし、自殺しちゃうから!

 ふふふふふふっ♡」

紗友里はそう言うと、電話を叩きつけたー

「---さぁ」
顔芸を披露しながら紗友里は笑うー

「--どこまで、事件を大きくできるかなぁ!」
「--どこまで、悲劇を作れるかなぁ!!!」
「---何人犠牲になるかなぁ!!!!!!!!」

「ひひひひ、ははははははははははっ!」

狂った紗友里の笑い声が、銀行内に響き渡ったー

③へ続く

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果たして人質を無事に救出することは
できるのでしょうか~?
次回が最終回デス!

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