<憑依>もう一人のわたし③~新たな人生~(完)

「俺は君の中に生まれた別人格だ」-

その嘘から始まってしまった
”別人格”としての生活ー。

彼の新しい人生の行方は…?

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生徒会副会長の恵梨香から激しい嫌がらせを
受けている深雪ー

深雪はただ、震えながら耐えていたー

「--わたしより”格下”のくせに生意気よ」
恵梨香が、深雪の髪を引っ張りながら呟くー。

深雪を睨みつけるようにしてー。

”お~こわっ”
深雪に憑依している翔太は、深雪の中から
その様子を見つめながら呟いたー。

翔太の憑依候補者の一人でもあった、
生徒会副会長の恵梨香は、噂通り”腹黒”だったということだろうー。

恵梨香は
「あんたより可愛くて、あんたより優秀なわたしより、
 あんたの方が目立ってる。
 調子に乗んな!」
と、叫びながら、深雪をビンタしたー。

ヒステリックにわめきながら、立ち去っていく恵梨香ー

一人になった深雪は、恵梨香が暴れて
乱れた生徒会室を、綺麗に片づけていくー

”おい”
翔太は声を掛けたー。

「---…ふふ、、、ごめんね。びっくりさせちゃったかな?」
深雪は笑いながら言うー。

”---どうして何もやり返さない?”
翔太が尋ねるー。
事情は分からないが、深雪は一方的にやられてばかりで、
恵梨香に反撃することも、言い返すこともしなかったー。

「------わたしが、悪いから」
深雪が笑いながら呟くー。

「悪いのは、わたしなの。
 だからー。このぐらい、大丈夫」
深雪は、そう呟くと、悲しそうに笑いながら、
乱れた生徒会室の片づけを続けるー。

”……馬鹿な女だな”
翔太はそう呟いたー。

翔太は、いじめを受けた経験も
いじめをした経験もない。
だから、当事者たちの気持ちはわからない。

「--馬鹿でもいいもん」
深雪は、そう呟くと、生徒会室の片づけを終えて、
自分の教室へと戻っていったー。

夜ー

深雪が寝静まると、
深雪の身体を乗っ取って、
鏡で深雪の顔を見つめたり、
胸を触ったり、
足を見つめたりー。
翔太は、憑依して”本来するつもりだったこと”をし始めたー。

「---はぁ…」
ため息をついて、髪をかきむしる深雪ー。

”こんなはずじゃなかった。
 憑依薬で、完全に深雪を乗っ取って…
 好き放題するはずだった。”

憑依薬が不良品だったのか、
深雪が特別、憑依に対して抵抗を示したのかー
それは、分からない。

けれど、はっきりとしていることは、
現状、深雪を完全に乗っ取ることは出来ていない、ということだー。

鏡を見つめる深雪ー。
”鏡に映る自分にキス”ー
乗っ取った時の定番シチュエーションをやってみようとする深雪ー。

”---もう一人のわたしって”

「--!?!?!?!?」
深雪を乗っ取っている翔太の頭に、声が響いたー

”意外と、、エッチなんだね?”
クスクス笑うようにして、頭の中で言う深雪ー

「--チッ」
深雪を乗っ取っている翔太は舌打ちして、
鏡から離れるー

「なんだよ、起きてたのかよ」
深雪の口でそう呟くと、
深雪は”…眠れなくて”と笑ったー。

「---はぁ」
深雪を乗っ取っている翔太はため息をつくー。

深雪の意識があるうちは、
深雪側も、身体を動かすことができるー
表に翔太が出ていても、変なことをしようとすれば
抵抗されてしまう。

これでは、せっかくの憑依のうまみも出ない。

興ざめしながら、翔太は「…表に出るか?」と尋ねるー。

”いい”
深雪は答えたー。

今、深雪の身体の”表”には翔太が出ているー。
深雪は、心の憶測にいる感じだー。

”---ところでさ…
 もう一人のわたしって…なんて名前なの?”

「---…」
翔太は答えないー

”せっかく、同じ身体を使ってるんだし、
 名前ぐらい、教えてほしいな”
深雪の言葉に、
翔太は「----ねぇよ、そんなもん」と、不貞腐れた様子で答えたー

本当に面倒臭いー
深雪を完全に乗っ取るかー
あるいは、深雪の身体から脱出して、
他の5人の候補に乗り換えるかー。
どちらかにしたい。

だが、どんなに支配しようとしても
深雪の意識を消すことはできないし、
深雪の身体から脱出することもできないー

”そっかー”
深雪は、それだけ言うと、後は何も言わなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・

それからもー
生徒会副会長・恵梨香の壮絶ないじめは続いたー

”こいつはいじめられっ子なのか?”と
翔太は思ったものの、
そうではなかったー。

深雪をいじめているのは、生徒会副会長の恵梨香だけ。
恵梨香に、”いじめ仲間”がいるようには見えず、
恵梨香も、”誰も見ていないところ”で深雪をいじめているー

クラスでも、深雪はいじめられている様子はなく、
翔太が勝手に決めた憑依候補者のうちのふたり、
眼鏡女子の青原 桃子や
天然女子、梅津 涼花たちと、仲良く話をしているー。

深雪も、特別大人しい要素もなくー
かと言って、騒がしいわけでもなくー
”ごく普通”のどこにでもいる感じだー。

”この女と、あの腹黒女の間に、何があるんだ?”
翔太はそんな風に思いながらも、
静観していたー。

深雪に言われた通り、
家に帰宅したあとの時間の一部と、
朝の準備の時間は、表に出てー
それ以外は、奥に引っ込んでいるー。

そんな生活を続けたある日ー。

「----……」
深雪が、ため息をつきながら帰宅すると、
深雪は、何かを準備し始めたー

このところ、恵梨香のいじめがさらにエスカレートしているー。
深雪は、みるみる元気をなくしていたー

そしてー

”おい…何してる?”
翔太が深雪に語り掛ける。

「--………なんだろうね」
深雪は、少しだけ笑いながら答えたー

翔太はため息をつくと、
深雪に言い放ったー

”お前、首つりしようとしてるのか?”
とー。

「-----」
深雪は答えない。

”----”
翔太は思う。

憑依している深雪が死んだらどうなるのだろうか。
深雪の身体から出て、別の人間に憑依しにいけるのだろうか。

深雪に憑依してから、既に1か月近くが経過した。
自分の身体は、おそらく
飲まず食わずで既に死んでいるー。
だから、戻る身体はない。

深雪が死んだ後に、自分は霊体として
深雪から抜け出せるのであれば、
他の女に憑依することもできるし、最高だー。

しかしー

「---……ばれちゃった」
深雪は少しだけ笑うと、
首つりの準備を進めるー。

”--本当にそれでいいのか?”
翔太が深雪の脳から話しかけるー。

「-----」
深雪は答えずに、準備を進めている。
頑丈な紐を天井から吊るしー
足場を用意するー。

”---っ”
翔太は、深雪を乗っ取って首つりを阻止しようとしたー

だがー

「邪魔しないでっ!」
深雪が叫んだー

”!!!”
深雪の身体を乗っ取れないー。
深雪の強い意志が、翔太の支配を拒んだ。

「--わたしが悪いの!わたしがいる限り、恵梨香ちゃんは!」
そう言うと、首つりをしようとする深雪ー

”……人に消えるなって言っておいて自分は消えるのか?
 本当に自分勝手な女だなお前は!”
翔太が声を荒げたー

「---!」
深雪の動きが止まるー。

”「--そうやって、自分は、主人格じゃないから、消えようとするの良くないよ」”

深雪はー
翔太が初めて憑依した日、自分が翔太に、
”もう一人のわたし”に言った言葉を思い出すー。

「だから、あなたも、わたしに気遣って消えようとしちゃだめ。」

深雪は、あの日の、自分が翔太に言った言葉を思い出しながら、
涙をこぼしたー。

”……”
翔太は、憑依してから1か月ちょっと、深雪の心からの涙を見たことはなかったー。
いじめを受けても、常にニコニコしていた深雪ー
誰にも相談せず、深雪は一人で抱え込みー
そして、壊れたー。

”---俺には消えるな、って言っておいて、自分はさっさと消えようとするのか?
 クソすぎるほど自分勝手だなお前は!”

翔太は、声を荒げながら頭の中から言うー。

何故ー?
この女が死ねば、自分は深雪の身体から抜け出せるかもしれないー。

なのに、なんで俺はこんなことしているー?
そう、思いながらー

「だって…だって…」
深雪が泣きながら言うー。

”---聞かせろよ”
翔太の声はー
もう、怒ってなかった。

「----……」
深雪は、首を吊ろうとして用意していた台から離れて
近くのイスに座るー。

”恵梨香は、わたしのせいで変わってしまったー”

とー。

恵梨香と深雪は、幼馴染で、小さいころから仲良しだったー
家族ぐるみで仲良しでー
恵梨香の妹・砂沙美(ささみ)とも、仲良しだったのだと言うー。

「---でも、恵梨香の妹の砂沙美ちゃんを、わたしが死なせちゃったからー」
深雪が呟くー。

妹の砂沙美が死んでからー
恵梨香は変わってしまったー。
言動にトゲが見えるようになってー、
深雪を裏で痛めつけるようになったー。

深雪は耐えていたー
いつか、
いつの日かー
恵梨香が”昔のような笑顔”を見せてくれるとー

”---死なせた、とは?
 お前が殺したのか?”

翔太が言うと、
深雪は悲しそうに呟いたー

「---同じようなものかも、ねー」

とー。

ある日の休日ー
三人で遊びに行く約束をしていた日ー
恵梨香は、他に予定があって少し遅れるからー
と、いうことで
深雪と恵梨香の妹・砂沙美が、先に遊園地に向かうことになったー。

けれどー
その最中ー
突然、信号を無視して、歩道に突っ込んできた乗用車にー
砂沙美は轢かれてー
”即死”したー。

深雪の目の前でー
無残な姿になってー。

後から駆け付けた恵梨香は、
妹・砂沙美の死を知りー
泣き叫んだー

そしてー
妹の砂沙美と一緒にいた
親友である深雪を睨んだ。

「--どうして、、???
 どうして砂沙美を助けてくれなかったの???

 どうしてーー?????
 
 あんたが一緒にいたのに、どうしてー???

 人殺し!」

恵梨香は、”妹の死”に耐えられずー
壊れてしまったー。

あの日からー

その時のことを思い出しながら、深雪は少しだけ笑うー。

「---わたしが、殺したのと同じー。
 だからーーー
 わたしは、恵梨香に何をされてもーーー」

”違うな”
翔太は言った。

「---え?」
深雪が、涙を浮かべながら、首を傾げるー。

”--暴走してきた車に、その子は轢かれて死んだんだろ? 
 だったらお前はどうすることもできなかった。
 その砂沙美とかいう子だって、お前のことを恨んでなんかいないさ
 完全な、逆恨みじゃねぇか”

翔太は言ったー。

恵梨香の妹・砂沙美の死は、深雪のせいではないー、と。
それに責任を感じて、恵梨香の嫌がらせに耐える必要はないし、
恵梨香がしていることは、妹の死のショックが理由とは言え、
間違っている、とー。

”--俺も他人に憑依なんかして…人のことは言えないけどな”
翔太は小声でそう呟くと、
深呼吸してから、呟いたー

”お前は悪くねぇよ”
とー。

「--でも……でも…」
深雪の言葉に、翔太は
”--あ~~面倒くせぇ女だな!最初からそう思ってたけどよ!”
と、言うと、”ちょっと身体をよこせ”と、叫んだー。

「え…?もう一人のわたし…?何をするの?」
深雪が呟くー

”いいからよこせ!”
翔太はそう叫ぶとー
深雪の身体がビクンと震えたー。

そして、イライラした様子で髪をかきむしると、
「こんなことしてんじゃねぇ!」と、首を吊るための台を
蹴り飛ばしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

朝早くー。
学校にやってきた深雪は、生徒会副会長・恵梨香を呼び出していたー

深雪が睨むようにして恵梨香を見つめるー

「-----二度と、ふざけた真似すんじゃないよ」
深雪が恵梨香を睨むー

恵梨香は、悲鳴を上げて、
深雪の方を見つめているー。

「---”大事な人”に手を出したらー
 ただじゃおかないから」

深雪を乗っ取った翔太がー
深雪の身体で恵梨香を呼び出してー
恵梨香を徹底的に懲らしめたー。

妹の死を受け入れられない恵梨香の気持ちも
分からないでもなかったがー
それでも、深雪にいやがらせをしていい、理由にはならないー

「---…ひ、、、わ、、わ、、わかった…わかったから」
恵梨香は目に涙を浮かべながら、謝罪の言葉を口にしたー

翔太が”徹底的に”懲らしめたのだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

恵梨香の嫌がらせは無くなったー。
関係が完全に元通りになることは、
もう2度とないかもしれないー

けれどー
深雪に対する”攻撃”は、なくなったー

「---何をしたの?」
深雪が言う。

”教えない”
翔太は、呟くー。

「---そっか」
深雪は微笑むー

そして”ありがとう”と、呟いたー

「あなたがいなければ、わたし、今頃首を吊ってたかも」
とー。

”だろうな”
翔太は呟くー

面倒くせぇ女でー
危なっかしくて、どうしようもないやつー。

でもー

翔太は、なんとなく、”こいつを守ってやりたい”と
思い始めていたー

”元々…新しい人生を楽しもうと、憑依しようとしてたんだしな…”
翔太は深雪の心の中で苦笑いしたー。

”こういう新しい人生もーー悪くないか”

「---もう一人のわたしって、なんでも秘密だよね」
深雪が苦笑いするー。

”---”
翔太は答えないー

「そうだーー
 名前…
 名前ぐらい、いい加減教えてよー」
深雪の言葉に、
翔太はしばらく沈黙した後に答えたー。

”そうだなーー…”

”翔太”としての人生はもう、おわりだー。

”---じゃあさ、
 俺に、、俺に、名前をつけてくれよー”

翔太は言うー

”深雪の別人格”としての名前ー
それが、欲しくなったー。

「え?」

”--俺、生まれたばっかだからさー。
 名前、つけてくれよ”

今日からー
本当のスタート。
深雪の第2人格としての、スタート。

これでいいのかは分からないが、
少なくとも、深雪は受け入れてくれているー

だったらー
それに応えるのも、悪くは、ないー

「---名前…そっか。うん。わかった」
深雪は、名前を考え始めるー

”--いい名前をつけてくれよー
 お前のー、いや、”もう一人の俺”のセンスで、なー”

「--!」
深雪は微笑んだー

初めて”お前”とか、じゃなくてー
”もう一人の~”って呼んでくれたー

「うん!」
嬉しそうに言う深雪ー

そしてー
深雪は言ったー

「じゃあ、セバスチャンで!」

”はぁ!?!?!?!?!?!?
 どうしてそんな発想になるんだよ!?!?!?”

翔太は”やっぱこの女、意味わかんねー!”
と、思いながらも、
どことなく嬉しそうに笑っていたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

嘘から始まった不思議な同居生活の最終回でした~!

ここまでお読み下さりありがとうございました!!

憑依<もう一人のわたし>
憑依空間NEO

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    大分前にこの話に似た話ありましたね。あの話は信頼を得て、油断させておいて騙し討ちで体を完全に乗っ取るダークなオチでしたが、この話はお互いに信頼感というか、絆が芽生えているようで、ハッピーエンドですかね? 一応。命も救ってるし。

    遊○王の主人公みたいにも見えますね。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    だまし討ちの作品もありましたネ~!
    今回は、ハッピーエンド(?)デス!

    私も書いていて、遊戯〇になってる!と思ってました笑

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