<憑依>もう一人のわたし②~二重人格~

意識を完全に乗っ取ることができなかった男は
咄嗟に、少女に対し「君の中の別人格」だと嘘をついたー。

それが、予期せぬ方向に向かってしまう
結果になるとも知らずに…。

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「--お、、お、、、俺は…君の中に生まれた…別人格…
 え、、、あ、、、そ、、その、二重人格ってやつだー」

乗っ取った深雪の精神世界で、
深雪に対してそう言い放つ翔太ー。

完全に乗っ取ることができなかった、という
動揺から、そんな嘘をついてしまったー

「-----」
深雪は口をぽかんと開けたまま、翔太の方を見つめているー

”ってーー”
翔太は頭を掻きながら思うー。

別に、俺の姿を見られたって、どうすることもできないだろうし、
この女から抜け出せばいいだけじゃねぇか。

自分の身体も、まだ死んではいないだろうし、
一旦自分の身体に戻って、
出直してくるのが一番いい。
この女が、特別に憑依に耐性があっただけかもしれないし、
別の候補の女に憑依しなおせばいいだけだー。

嘘をつく必要なんてなかったー。

「(この女で楽しみたかったが、意識が残ってるんじゃ
 色々面倒だしな…)」

そう呟きながら、翔太は無言で、深雪の身体の中から
出て行こうとしたー。

その時だったー

「そっか」
深雪が呟いたー。

「え?」
翔太が振り返るー。

「-わたしが、生んじゃったんだ…
 だったら……怖いけど、仕方ないよね」
深雪の言葉に、
翔太は首を傾げるー

「--わたし、二重人格になっちゃったんだー。
 --わたし、深雪。
 あなたは?」

おいおいおいおいおいおいー
翔太は戸惑うー
やけにあっさりと、二重人格を受け入れやがったー。

翔太は「あ、いや、俺、もう、君から出ていくから」と
戸惑いながら返事をするー。
そして、深雪の身体から抜け出そうとするー

説明書には
”身体から抜け出すイメージをしながら、飛び跳ねる感じ”で
乗っ取った身体から抜け出せる、とも書かれていたー

「----」
翔太は抜け出すイメージをするー。

そしてー
深雪の身体からー

「だめ!」

「--!?」
翔太は、唖然としたー

深雪が、翔太の手を引っ張っているー

「--あなただって、消えたくないでしょ!?
 簡単に出ていくなんて言っちゃだめ!」

深雪は翔太の方をまっすぐ見ながら言うー

「ーーなんであなたが生まれちゃったのかは分からないけど、
 わたしが生んじゃった人格なんだから、身体から出ていけ!なんて
 わたし、思わないよ!」
深雪の言葉に、翔太は”おいおいおいおいおい”と、内心でさらに激しく戸惑ったー

「--…う~ん…身体はひとつしかないから…」
深雪が、一人で考え込むー。

翔太は、その隙に深雪の身体から
幽体離脱しようとするー

しかしー

”できない”

「--!?!?」
翔太は表情を歪めたー

まるで”蓋”をされたかのように、
深雪の身体から出ることができないー

”行かないで”
そんな、深雪の意思を感じたー。

二重人格だと嘘をついてしまったことにより、
深雪は、翔太を受け入れてしまったどころか、
”簡単に消えるなんて言わないで”という感じに
なってしまっているー

「---うん!半分こしよ♡!」
深雪が笑ったー

「え…?」
翔太はさらに戸惑うー。

「--わたしたちって、身体はひとつでしょ?
 だから、半分こしよ!
 わたしは学校と、家の時間の一部を使うから、
 あなたは夜と、朝の学校の用意の時間!

 これでどう!?」

深雪の提案に
翔太は「いや…その…」と、言葉を口にするー

”面倒くせぇ女だな”
そう思いながらー
「お、、俺、、さっきは、嘘をついたんだー
 俺、君の別人格なんかじゃなくて…
 その…憑依薬ってクスリを使って、勝手に君を
 乗っ取ろうとしただけなんだー」

と、”本当”のことを口にしたー

この際、本当のことを打ち明けて、さっさと深雪から
出て行った方がよさそうだー。

どうせ、この精神世界で姿は見られていても、
俺にたどり着けるはずはないし、
万が一現実世界で俺にたどり着いても、
俺が憑依したなどという証拠はない。
大丈夫だー。

「----君を乗っ取ろうとしてすまなかったー
 俺はもう君から出て来るから…
 邪魔して悪かったな」

翔太はそう言って、
深雪の身体から、出て行こうとしたー

しかしー

「---そういう嘘はよくないよ!」
深雪が叫んだー

「--は?」
翔太は、深雪の身体から出て行けずに困惑するー。

「--あの、、なんていうかな?
 主人格のために自分を犠牲にする、って、それっておかしくない?
 あなただって、ちゃんと自分の意思があるんでしょ?

 どうして、あなたが生まれちゃったのかは分からないけど、
 わたし、あなたを消そうなんて思わないよ!」

深雪が言うー。

”おいおい…なんでこんなに二重人格をあっさり信じるんだこいつは”
翔太はそう思いながら、
「いや、だから二重人格じゃなくて、憑依」
と、深雪に伝えるー

しかしー
深雪は微笑んで、こう答えたー

「わたしのために、気を遣わなくていいの。
 これからよろしくね。”もうひとりのわたし”-」

とー。

その日からー
”深雪の別人格”としての共同生活が始まってしまったー。

なぜかー
深雪は”自分が二重人格になった”という”嘘”を
あっけなく受け入れてしまいー
逆に、翔太がいくら”俺は憑依して、身体を奪おうとした極悪人だ”と
主張しても、信じてもらえなかったー。

深雪が学校から帰宅するー。

「---ふ~~あ、ここがわたしの家で、ここがわたしの部屋!」
深雪が嬉しそうに案内しているー

”------”
翔太は答えないー

無理やり乗っ取ることはできるがー
深雪の意識は消せないみたいだし、
深雪にも身体を動かす権利があるため
強引に身体の主導権を握っても
身体をちゃんとコントロールすることが、できない。

”くそっ!なんなんだこの女は…”

翔太は、自分が”幽閉状態”になってしまったことで
苛立っていたー。

二重人格、という嘘をすぐに信じて、
そして、”本当は憑依したんだよ”と言っても
それは信じないー。

”そう言って、わたしの中から消えようとしてるんでしょ?
 そんなのダメだよ”
とか、言ってきて、話にならないー

”くそ!頭おかしい女だったのか?”
翔太は、”4”を出したサイコロを呪ったー。
意識も含めて完全に乗っ取ることができなかったために、
翔太は今、こんな目に遭ってしまっているー。

どうにか、
どうにか、この状況から抜け出したいー。

しかし、
深雪の強い意志からか、翔太の霊体は
深雪から抜け出すこともできなかったー。

”あ~くそ!あのスポーツ女の果穂とか、
 天然女子の涼花とか、その辺を
 乗っ取ってれば、今頃やりたい放題だったのに!”

翔太がそんな風に言ってると
「ねぇねぇ、聞いてる?」と深雪が声を掛けてきたー

”まったく聞いてねぇよ。
 ってか、もうお前の身体から出ていきたいんだけど”
翔太が言うと、深雪は、
「--そうやって、自分は、主人格じゃないから、消えようとするの良くないよ」と、
深雪が呟いたー。

”だからぁ…あのなぁ”
翔太は困惑してしまうー

何かがおかしいー。
この女は、元々二重人格者か何かか?
それとも、人格が分裂しそうな境遇にでもいるのか??

そうじゃなきゃ、二重人格と言われたからって
こんなにあっさり”はいそうですか”状態になるはずがないー

「--そういえば、名前ってあるの?」
深雪の言葉に、翔太は
”知らねーよ”と、不貞腐れた態度を取る。

”早く出してくれよここから”と、呟いていると、
深雪は「だ~め!あなただって生きてるんだから」と、少し叱るような口調で言ったー。

「------」
深雪が、呟くー。

「--ーーーわたしね…お姉ちゃんがいたの。
 年の離れたお姉ちゃんが」

”………”
翔太は、語り出した深雪の話を黙って聞くー。

「---お姉ちゃんは、
 解離性同一性障害……つまり、二重人格…
 今のわたしと同じような状態だったの」

深雪が言うー。

”---身内にそういうやつがいたのか”
翔太は思う。
だから、すんなり二重人格を受け入れたのか?
とー。

「---小さい頃のわたしは、”どっちのお姉ちゃん”とも
 仲良くなったー

 でもね、もう一人のお姉ちゃんのほうー
 ”最初からいなかったほうのお姉ちゃん”は、
 ある時から”元々のお姉ちゃん”のために、
 消えようとし始めたのー。

 わざとお姉ちゃんに嫌われようとしてー
 わざと憎まれてー。
 最終的に人格統合することになって
 もう一人のお姉ちゃんは、消えていったー」

深雪の言葉に、翔太は何も答えないー。

「---”消えることができて、せいせいする”
 もう一人のお姉ちゃんは、そう言ってたー。

 でもねー。
 最後の…消える前の日に
 わたしと話した時、
 ”もう一人のお姉ちゃん”は、
 泣いてたの

 本当は、消えるのが怖いって

 だからー」

深雪は、少しだけ笑うー

「だから、あなたも、わたしに気遣って消えようとしちゃだめ。
 
 わたしが二重人格になっちゃった理由は
 よくわからないけど、
 きっとお姉ちゃんもそうだったんだし、
 遺伝か何かなのかな?」

”---二重人格は遺伝とか、そういう問題じゃないと思うぞ”
と、突っ込みたくなったが、面倒くさいので、翔太は
何も言わなかったー

深雪は、姉のことを思い出して
寂しそうに涙をこぼすー

”---お姉ちゃんは…今、どうしてるんだ?”
翔太はなんとなく聞いてみたー。

「------”もう一人のお姉ちゃん”がいなくなって
 心のバランスを壊してーーー
 お姉ちゃん、自殺しちゃった」

深雪が悲しそうに呟くー。

”そうか”
翔太はそれだけ答えたー。

やけにあっさり二重人格という”嘘”を受け入れてしまったことー
翔太が、本当は憑依だ、と言っても信じずー
そして、身体に縛り付けるかのような、強い気持ちを抱いているのは、
そういう過去があるから、であることを翔太は理解したー。

二重人格は遺伝かな?とか言ってるあたり、
この深雪という子の性格も、そもそも天然なのだろうが、

”---面倒なやつに憑依してしまった”

と、思わずにはいられなかったー。

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翌日ー

深雪が、学校に向かうー。

昨夜、深雪が寝ている間に、深雪の身体を乗っ取って
鏡の前で色々ポーズを取ったり、
さらには胸を揉んでみたりしたがー
なんとなく、気分が乗らずに、それだけで眠ってしまったー。

起きている間も、乗っ取る気が起きないー

”なんか、興ざめしちまったな”
翔太は、そう思いながら、深雪の身体から
抜け出す方法を考えるー。

過去の経験から、深雪は
”もう一人の人格も、生きているんだ”という考えを
強く抱いていて、翔太をどこかに行かせまいと
強い気持ちを持っているー

その強い気持ちが、翔太の脱出を阻んでいるー。

”まったく…”

そう思っていたその時だったー。

「いたっ!」
深雪が悲鳴を上げたー。

”--?”
翔太が、深雪に今、何が起こっているのか、
考え事をやめて確認するとー

深雪は、翔太が憑依しようとしていた
”憑依候補者”の一人、金村 恵梨香ー

腹黒生徒会副会長に、髪を引っ張られていたー

「ねぇねぇ~あんた、昨日”この身体は俺のものだ”と
 叫んでたけど、どういうこと~?」
恵梨香がニヤニヤしながら言うー。

”---!”
翔太は思う。

”昨日、憑依した瞬間を見られたのか”

とー。

誰もいない生徒会室に連れ込まれた深雪ー
深雪は悲鳴を上げているー。

「あんた、いつもいつも後輩とか先生から褒められてて、
 うざいのよ!」
恵梨香が深雪をビンタするー。

「ごめんなさい!ごめんなさい!」
深雪が悲鳴を上げながら、恵梨香に対して謝っているー

”日常的に”いじめ”を受けているー”

生徒会副会長の恵梨香に、
書記の深雪は”日常的にいじめ”を受けていたー

翔太は、深雪の心の中から
そんな光景を見つめてー
ため息をついたー。

③へ続く

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別人格だと嘘をついたことで、
抜け出せなくなってしまった翔太…

続きはまた明日デスー!

憑依<もう一人のわたし>
憑依空間NEO

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