<憑依>地獄の唄③~真相~(完)

家族を奪った部長への復讐を終えた亮介。

妻と娘を失った悲しみを乗り越え、
彼は前を向いて、歩き出す…。

--------------------—-

綺麗な歌声が響き渡るー

彼女は、小さい頃から歌うことが大好きだったー

歌い終えると、彼女は小さく微笑むー

”全ては狙い通り”
だとー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---おはようございます」

妻と娘を失い、休職中だった
加賀見亮介が職場に復帰した。

自分の娘たちに憑依して
現場から逃亡した
ライダースーツの男は、彼の上司でもあった
堂上部長だった。

その娘・真理佳に憑依して
復讐のために堂上部長の家庭を
滅茶苦茶にしてやった。

そして、復讐を終えた亮介は、
こうして、職場への復帰を果たしたのだった。

「あ、おはようございます~♪」
後輩女性の瑠美が嬉しそうに近寄ってくる。

「お、ようやく復活か!」
亮介からプロジェクトリーダーの座を引き継いだ橋本も
笑みを浮かべている。

職場復帰を歓迎される亮介。

そこに、堂上部長の姿は、ないー。
彼は亮介に憑依された娘・真理佳に脅されて
会社を退職したからだー

復讐を終えた亮介は
前向きに考えて、行動することができるようになっていた。
プロジェクトリーダーの座は奪われてしまったが
橋本と協力し、仕事は順調ー

そして、妻と娘を失ったことを心配した
後輩女性の瑠美は、家にまでやってきて
何かと亮介の世話を焼いてくれるようになった。

「--いつも、悪いな」
亮介が言うと、瑠美は微笑んだ。

「いえいえ、先輩のためですから」
20代の瑠美ともうすぐ40の亮介。

年は離れているがー
2人は、この1か月で急接近しつつあった。

瑠美がやたらと世話を焼いてくるし、
亮介も、そんな瑠美のことを悪くは思わなかった。

会社でも真面目ー
私生活も落ち着いた服装で、とても穏やかな感じの瑠美ー。

そんな瑠美に、
亮介は惹かれはじめていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

会社は騒然としていたー。
退職した堂上部長が、自殺したというのだ。

「---」
亮介は少しだけ表情を曇らせた。

当然の報いだ。
そう思っていたー

けれどー。
命まで奪ってしまうつもりは、なかった。

永遠に生き地獄を味わってほしかったー

だがー
そうはならなかった。

「---…自業自得だ」
亮介はそう吐き捨てるように呟くと、
静かに歩き出した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ーーー

「まっさか、死んじゃうなんてね~!
 あっははははははは~!」

胸元を強調した色っぽい服装で、
笑っている女性ー。

自宅で、
一人、彼女は笑うー

その部屋にはー
亮介の写真が飾られているー

「---先輩…あなたは、わたしのものになるんです…
 うふふ♡」

その女性ー
瑠美は不気味に微笑んだー

瑠美は、亮介のことが好きだったー
けれどー
亮介は妻子持ちー。

それでも、瑠美は亮介が好きだったー
何故、そこまで好きになったのかー
それは、言葉では言い表せない。

でもー
瑠美は好きだったー

だから、妻子を排除することにしたー

けれどー
自らの手で妻子を葬れば、
自分が殺人犯になってしまうー

そして、略奪愛は、亮介の性格を考えれば難しそうだった。

”家族を失って、心にぽっかりと穴が開いたタイミング”で
そこに入り込むー

瑠美は、そう画策していたー

そんなある時、
瑠美は”憑依薬”を手に入れたー。

その憑依薬を使ってー
亮介の妻子を消すことにしたー。

単純に憑依して、妻子を消しても良かったー
けどー
瑠美には”邪魔者”がもう一人いたー

表向き、良き上司を演じていたが
セクハラ上司でもあった堂上部長だー。

だから、
瑠美は、堂上部長に憑依して、
バイクに乗って、亮介の家まで向かいー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あの日ー

憑依した堂上部長の身体で、
亮介の家に入り込みー

娘の加奈子の口を塞いだ。
「--ひっ!?」
突然口をふさがれて驚く加奈子。

「--か、加奈子!?」
母親の美恵も驚いているー

「--くくく」
そして、別の部屋に加奈子を連れ込み、
その場でキスをして、加奈子の身体に憑依した。

寝室に倒れる堂上部長の身体。

「---ふふふふ…可愛い娘さんね」
加奈子に憑依した瑠美は微笑むー

瑠美の計画ー

それは、
亮介を奪うために、邪魔な妻子を抹殺しー
ついでに、堂上部長も抹殺することー。

「---おか~さん!」
加奈子は不気味な笑みを浮かべて母の美恵に近づく。

そしてー

「--わたしのために死んで!うふっ♡」
加奈子は嬉しそうに包丁を取り出すと、
躊躇することなく、母親の命を奪ったー

しばらくして、憑依した加奈子の父親…
亮介が帰ってきたー

「おかえりなさい…おとうさん…」
制服を血で汚しー
その手には、包丁が握っている加奈子。

それを見て、亮介は驚いた表情を浮かべた

(あぁ…先輩、いい顔ですよ…
 わたし、興奮しちゃう…)

瑠美は内心で微笑む。

「---か、、加奈子!?」
亮介が叫ぶー。

加奈子に憑依している瑠美は、
ひとつ、演技をすることにしたー

「--この娘さん、いい身体してるよなぁ~」
そう叫びながら
加奈子は自分の胸を触るー。

”憑依”しているのが男ー
堂上部長だと、亮介に思わせるためにー

「うひひひひひ…!
 うひひひひひひひぁ♡」

「な…何をしてるんだ!?加奈子!」
亮介はうろたえ続けている。

「わたしぃ~!
 これで、身体乗っ取られて
 お母さんをこの手で殺しちゃったの~!
 うひひひひひひひひ~♡」

加奈子が緑色の液体が入った
小さな小瓶を手にして笑う。

わざとー
憑依薬の存在を亮介に知らせるために。

「--な、、なんだって…!?」
亮介は唖然とする。

「は…はははははは」
亮介は突然笑い出す。

加奈子に憑依している瑠美は
一瞬戸惑った。

しかし、亮介が笑った理由はすぐに分かった。

「--はは…随分と過激なドッキリだな~
 思いついたのは加奈子か~?」

(先輩…?この状況をドッキリだなんて…
 かわいい…!)

瑠美は興奮した。
加奈子の身体も、瑠美の興奮が伝わったのか
濡れだしているー

母を手にかけて、興奮しているなんて
とんだ変態娘ね、と
瑠美は加奈子を操りながら笑うー。

「うふふ…ドッキリだと思ってるの~?」

 あはははははは~♡
 本当に憑依されてるのに
 信じてすらもらえな~~い!

下着姿になった加奈子は
倒れている母親の頭を踏みつける。

「わ・た・しが、こんなことするぅ~?」
加奈子が大笑いしながら叫ぶ。

憑依を、信じさせなくてはいけないー。

顔色が変わってくる亮介ー

「---も、、もう十分だろ…?」
唖然としている亮介。

かわいい…♡
瑠美は、興奮して、加奈子の身体のまま
抱き着いてしまいそうになった。

しかしーここは我慢だ。
妻子を奪った後なら、いくらでも接近できるー

「お前の幸せ、壊してやりたくてさぁ…!」

男のふりをして笑う。

そしてー
”あえて、憑依薬の容器を近くに投げ捨て”て、
加奈子は微笑むー

(これで…堂上部長に辿り着けば
 先輩の性格なら、必ず憑依薬を使って
 復讐するわー。
 先輩をゲットするついでに、堂上部長にも
 消えてもらう…)

「ばいばい!おとうさん!うふっ♡」
加奈子は、
持っていた包丁でーー
躊躇なく自分の首をーーー

加奈子は死んだ。
加奈子の身体から抜け出した瑠美は、
寝室で倒れている堂上部長の身体に
再び憑依した。

そして、そのまま
外に置いてあったバイクにまたがる。

ブォォオオオオオオオ!

轟音が響き渡るー

わざと大きな音を立てた。

亮介に気付かせるためにー。

そしてー

「--貴様!」
亮介が叫ぶー

それを確認して、
堂上部長に憑依した瑠美はー
そのまま走り去ったー

亮介の性格なら
バイクのナンバーを覚えるだろうー

そしてー
堂上部長が犯人だと気付き、
堂上部長に憑依薬で復讐するはずだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うふふふふふ…」
瑠美は足を組んで微笑む。

「ぜんぶ、わたしの思い通り、
 あははははは!あははははははははははっ!」

瑠美は嬉しそうに笑うのだった。

「あとは…」
瑠美は、大人しい女性などではないー

傲慢で、自分勝手で
かつ、自分の美貌に絶対の自信を持っているー

裏の顔は、誰も知らない。
会社ではおしとやかな女性を振る舞っているからだー

そして、
すぐに、みんな、騙されるー

「あとは、先輩に接近してー
 タイミングを見計らって告白するだけね…

 先輩…
 あなたはわたしのものですぅ…
 ふふふふ」

瑠美はにやりと微笑んだ。

その直後ー
瑠美は少しだけ身体を震わすとー
立ち上がり、どこかへと立ち去ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

瑠美が無断欠勤をしたー。

「・・・・・・・」
亮介は不思議そうな顔で
いつも瑠美がいる座席を見つめる。

「---ちょっと、いいか?」
同期の橋本に呼ばれて
亮介は会社の屋上へと向かうー。

屋上へやってくると、橋本は、
ため息をついた。

「----こんなことになるとは
 思わなかったよ」

橋本が呟く。

「---どういうことだ?」
亮介が聞くと、
橋本は屋上から見える景色を見つめながら呟いた。

「--憑依薬…」

「---!!」

亮介が驚いて目を見開く。

「---俺さ…
 お前に嫉妬してた…。
 お前からプロジェクトリーダーの座を奪いたくて、
 どうにかできないか、ってネットを眺めている時に出会ったんだ…
 憑依薬と」

橋本の言葉に、亮介はうろたえる。

「な…何だって…?
 ま、、まさか、俺の娘に憑依したのは…?」

怒りの形相で亮介が言うと、橋本は首を振った。

「お、、俺じゃない…
 あれは瑠美ちゃんだ」

橋本の言葉に、
亮介はさらに唖然とする。

「瑠美ちゃん?
 …な、、何を言ってるんだ…?
 
 あの日、俺は見たんだ。
 走り去ってくバイクを…

 憑依薬を使って俺の家族を奪ったのはー
 堂上部長ーーー」

亮介がそこまで言うと橋本は首を振る。

「違う。
 堂上部長も憑依されてただけだ。
 お前にそう思わせるためにー。

 で、堂上部長が犯人だと誤解したお前は、
 堂上部長の人生を滅茶苦茶にしてー
 死に追いやったー」

橋本の言葉に、
亮介は唖然としたー

堂上部長も憑依されていただけー?

亮介は震えるー

と、いうことは自分は無関係の人間の娘に
憑依して、
その人生を滅茶苦茶にしてしまったー?

「---る、、、瑠美ちゃんは!?」
亮介は叫ぶ。

自分の家族を奪ったのが
瑠美なのであればー

瑠美から話を聞かなくてはならなない

「--昨晩、死んだよ」

「--!?」

「---俺が、、瑠美ちゃんに憑依して殺した」

「----!!?」

橋本の言葉に耳を疑う亮介。

「---憑依薬を手に入れた俺はさー
 お前の家族に憑依して、
 お前を精神的に追い詰めようとしてたんだ。

 そのことを瑠美ちゃんにチラッと話をしたらさー
 瑠美ちゃんが”私にもっといいアイデアがありますよ”って言うからー
 瑠美ちゃんに憑依薬を渡したんだーー

 そしたらー」

橋本は震えながら言うー。

橋本は軽い気持ちで瑠美に憑依薬を渡したー

その結果、瑠美は、亮介の娘に憑依して、亮介の娘と妻を殺しー
さらには堂上部長まで巻き込んだー。

「---瑠美ちゃんが、あそこまで酷いことを
 するとは思ってなかったんだー
 …すまなかった」

橋本がその場で土下座をするー。

橋本の目的は、あくまでも
亮介の娘や妻に憑依し、亮介を精神的に追い詰め
プロジェクトリーダー交代を目論んでいただけだったー

が、瑠美の目的はー
亮介の妻と娘を消し去り、自分が亮介の妻になることー。
そして、会社で邪魔者の堂上部長をついでに消し去ることだったー

「--昨日、言われたんだ。
 瑠美ちゃんに。
 ”これからも憑依薬を使って、わたしは人生を思い通りにする”って

 だからー
 これ以上の犠牲者が出る前に、俺が残っていた憑依薬で
 瑠美ちゃんに憑依してー瑠美ちゃんを殺したんだ」

橋本を睨む亮介。
橋本は亮介の視線を感じて首を振る。

「---謝って許してもらえるなんて、思っちゃいないよ」
橋本は、そう言うと、わずかに残っていた憑依薬を屋上から
放り投げたー

そしてー
橋本自身もー屋上からー

「--すまなかったー」

橋本はー
亮介の目の前で、自ら命を絶ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日から、亮介は悪夢を見るようになったー

堂上部長と、
堂上部長の娘、真理佳ー
部長の妻ー。

瑠美ー
橋本ー

色々な人の恨みの声が、聞こえてくるー

まるで、
その怨念の声は、
地獄から響き渡る唄のようだったー。

「---くそっ…」
亮介は、すっかりやつれていたー。

自分はー
家族の仇を討つためにー
憑依薬を使って
堂上部長とその家族の人生を滅茶苦茶にしたー

けれどー
その堂上部長はー
家族の仇などではなかったー

「--俺は…」
亮介は気が狂いそうになりながら
もがいていたー。

復讐のため、憑依で滅茶苦茶にした
堂上部長は、復讐すべき相手ではなかったー

”人殺しー”

”人殺しー”

妻の美恵と
娘の加奈子まで
夢に出てくるようになったー

数日後―
堂上部長の娘・加奈子までもが
自殺したというニュースが耳に入ってきたー

多くの人の人生を狂わせてしまったー。

憑依されて滅茶苦茶にされー
婚約者との結婚は白紙になりー
父の堂上部長も自ら命を絶ちー
娘の真理佳はこの世に絶望してー
命を絶ってしまったー

”人殺し”

”人殺し”

夢で毎日のように
怨念に満ちた地獄の唄が聞こえるー

亮介は、
すっかり弱り切った状態で呟いた。

「もう…疲れた…」

一滴だけ残った憑依薬を手に、
亮介は寝間着姿のまま、
玄関から外に出たー

その後ー
彼が家に帰ってくることは、二度となかったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依薬を巡って、
誤解とすれ違いが生まれそう…というところから
生まれたお話デス。

憑依薬の扱いは慎重に…

お読み下さりありがとうございました!

憑依<地獄の唄>
憑依空間NEO

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    瑠美は最低最悪の悪女。
    憑依薬で殺されたのは因果応報というモノですね。

    堂上部長は真犯人じゃなさそうだと最初から察しておりました。

    人生をめちゃくちゃにされて気の毒……といいたいところですが、自分のセクハラが原因ならこれも因果応報といえば因果応報ですかね。まあ、やったことと報いの大きさが釣り合っていませんけども。

    本当に気の毒なのは部長の妻と娘の方ですかね。まさにとばっちり。

    最終的には亮介が部長に殺されて終わるんじゃないかと思ってたので、かなり予想とは違う終わり方でした。

    それはそうと、最後に亮介が憑依薬でどうしたのかが気になりますね。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 瑠美は最低最悪の悪女。
    > 憑依薬で殺されたのは因果応報というモノですね。
    >
    > 堂上部長は真犯人じゃなさそうだと最初から察しておりました。
    >
    > 人生をめちゃくちゃにされて気の毒……といいたいところですが、自分のセクハラが原因ならこれも因果応報といえば因果応報ですかね。まあ、やったことと報いの大きさが釣り合っていませんけども。
    >
    > 本当に気の毒なのは部長の妻と娘の方ですかね。まさにとばっちり。
    >
    > 最終的には亮介が部長に殺されて終わるんじゃないかと思ってたので、かなり予想とは違う終わり方でした。
    >
    > それはそうと、最後に亮介が憑依薬でどうしたのかが気になりますね。

    コメントありがとうございます~!
    会社の登場人物はどの人物も闇を抱えていますね…!

    部長のご家族は本当にとばっちりでした…!

    最後は…私の中では決まっているので、
    そのうち書く…かもしれません~!

  3. より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    色々あるけど改めて無名さんは鬼才だなと。
    ただの復讐ではなく、さらに裏の裏辺りまである。
    悪女は元凶なので良しとして、結局亮介以外で呆然と生きてるのは部長の妻くらい。とばっちりももちろん哀れだけど亮介みたく生き地獄も辛いから何とも言えませんし
    記憶が読めれる感じならどうだったかとか色々思ったりもしました。
    そういや自分は最近普通の夢を見るけど全く覚えて無いので、せめていい夢は思い出せたらなあと感じました。

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    無様②>
    ありがとうございます~!
    地獄の唄、は暗いお話になりましたネ…!
    これからもいろいろなジャンルにチャレンジします~!

タイトルとURLをコピーしました