美雪に憑依した、
幼馴染のクラスメイト・吉本は、
自分勝手な彼氏、太司に対して、
美雪の本心を語り始める。
大人しく、心優しいがゆえに、美雪が決して口に出さないことを
本人の代わりに・・・。
------------------------------–
「美雪の本心だと…?」
太司が美雪を睨みつける。
いつも、遠慮がちな視線を送っている美雪が、
今日は自信に満ち溢れた表情で、太司を見下していた。
「--そう。わたしの本心。
いっつも我慢してたこと…。
ぜ~んぶ教えてあげる」
美雪が憎しみのこもった目で太司を見つめている。
太司は、普段見ない
美雪の”怒り”の表情に、
少し気圧されて、ゴクリとつばを飲み込んだ。
「--はは…
よ、吉本!お前が憑依してるんだろ?
なら、美雪が何を言ったって、
そんなのお前の勝手な”妄想”じゃねぇか!
いいか、俺と美雪はラブラブなんだ。
お前みたいな部外者に俺たちの仲の良さが
理解できるもんか!」
太司が叫ぶと、
美雪は笑った。
「あはははははっ!
ばっかじゃないの!」
美雪に”バカ”と言われてかちんと来る
太司。
「おい!美雪!
あんまり調子に乗ってると
1週間、シカトするぞ!」
太司は”いつもの調子”でそう言った。
太司の口癖だった。
美雪が、気に入らない”行動”をするたびに
太司はこう言って美雪を脅していた。
大人しく、あまり恋愛経験のない美雪は、
太司と恋人関係になって、本当に喜んでいた。
だから、”別れる”だとか”シカト”だとか言われるたびに
委縮してしまっていた。
「---調子こいてんのはテメェだろ」
美雪とは思えないような低い声で、再び太司の胸倉をつかんだ美雪は、
太司を睨みつけた。
「--そうやっていつも美雪を苦しめてたんだろ?
……俺はさ、小学生のときからコイツと一緒だった。
…実を言うと少し美雪のことが好きだった。
でもよ、お前と美雪が付き合い始めたときは素直に
お前らを祝福したよ。お前もいいやつに見えたからな。
だが何だよ?付き合い始めてからお前はどんどん調子に乗って
美雪に対しての態度はどんどんエスカレートしていった」
太司は胸倉をつかまれながらも、
女子の綺麗な手に胸倉をつかまれている、という事実、
そして、美雪の可愛い声で語られる男言葉に興奮してしまった。
「---ってめぇ!何興奮してやがる!」
美雪が乱暴に太司を突き飛ばす。
「---っと…ふふふ、
太司君…わたしの”本心”教えてあげるね」
美雪が、美雪本来の口調に戻って微笑む。
「--本心…?
さっきも言っただろ!お前の妄想に興味はないって!」
太司が床に手をつきながら言うと、
美雪は笑う。
「このからだは誰のものー?」
「あん?美雪だろ!」
太司が言うと、美雪はさらに笑う。
そして、頭を指さした。
「じゃあ、この脳は誰のものー?」
「みゆ…」
太司は答えかけて止まった。
まさか…
「そう…
このからだを乗っ取るってことは、
美雪の脳の記憶も好きなように引き出せるってコト。
こうやって、わたし本来の口調で話すことだってできるの。
ま、本当のわたしはこんなにハッキリとは
喋らないけどね」
太司は思うー。
やつは、本当に美雪の本心を知ることができるのか・・・ と。
「ふふ・・・じゃあ、教えてあげる。
わたしの本心を…」
そう言うと、美雪は太司の方を見つめながら
近くにあったイスに座って足を組んだ。
大人しい美雪が色っぽく足を組んでいる姿を見て、
太司はまた興奮してきた。
「わたしね…
太司君のことは”大好き”」
美雪が満面の笑みで言う。
「---だろ?
そんなこと聞くまでもない。
俺も大好きさ」
太司が言うと、
美雪は「でもー」と付け加えた。
「最近はね、わたし、「もう無理かも」って思ってる。
太司君と居る時間が”つらい”の。
大好きだけど、つらいの。
前に借りたお金も返さずに、お金を貸せって言われた時には
本当は腹が立ったの。
本当にムカッとした。
何度も何度も、太司君をビンタしようと思った」
美雪が語る。
「ーーくくく…ははははははは!」
その言葉を聞いて、太司は笑った。
「語るに落ちたな吉本よ」
得意げに言う太司。
「やっぱ美雪の記憶なんか読み取れてねぇじゃないか!」
その言葉に美雪が、太司の方をじっと見つめる。
「いいか、美雪はそんなこと思っていない。
俺とのデートはいつも楽しい!って言ってたし、
お金を借りるときも美雪は…」
太司がそこまで言うと、美雪が失笑した。
そして足を組みかえて笑う。
「どこまでもおめでたいヤツね・・・」
美雪が言う。
「おめでたいのはお前だ!妄想野郎!
俺と美雪の愛はお前には分からない」
得意げに言う太司。
だがーーー
美雪は、本人しか知りえない情報を次々と話し始めた。
小さいころの話、
スリーサイズ、
慎重に体重、
太司とのデート中の話題。
「----どう?わたしは本当のことしか話していない」
美雪が自信に満ち溢れた表情で言う。
「---う、、嘘だ!
でたらめだ!美雪は俺の事を愛している!」
太司が叫ぶ。
「---本当よ。
あなたには愛想がつきているの」
美雪が笑ういながら続ける。
「知ってる?1か月前、太司君が風邪をひいて
デートがキャンセルになったとき…。
わたし、すっごくホッとしたの。
その日は一日中安心感に包まれてたの」
太司が立ち上がって叫んだ。
「やめろ!そんな話、聞きたくない!」
「--なんてワガママなヤツなのー。
…これが、最近のわたしの、あなたに対する想い。
ま、わたしは絶対に口に出さないけどね」
太司は愕然とする。
美雪は自分だけを愛してくれていると思っていた。
それなのに、どうして?
「---ふ、、ふざけるな!
彼女になったら彼氏に尽くすもんだろうが!」
太司が叫ぶ。
美雪は無視してさらに続けた。
「別れたいー、
でも太司君に何かされたらどうしよう?
こわい、こわい、わかれたい、こわい」
目に涙を浮かべながら言う美雪。
「こわい、こわい、こわい!!!!!」
そしてーー
涙を浮かべたまま笑って太司の方を見る。
「これが、わたしの”本心”よ-。
太司くんに…
いいえ、アンタに対する愛情なんて
もうとっくに消えちゃったのよ!」
彼氏を”アンタ”と呼ぶ美雪。
「そうそう、教えてあげる!
わたし、深層心理では太司君のことを”アンタ”って呼んでるの!
うふふ・・・♡
彼女にアンタ!って思われてるのよ!」
太司はその場に膝をつく。
「美雪…俺は…こんなにお前を愛しているのに…」
「--あ、そうそう」
美雪が思い出したかのように言う。
「アンタ、こう言ってたよね?
「俺さ~エッチとか嫌いだからさ、
福島さんとは、ずっときれいな恋愛をしていたいんだ~」
って…」
美雪は、太司の方を見て、
話しを続ける。
「わたし、アンタの前ではアンタに合わせてたけど、
本当はわたし、エッチしたかったの…」
その言葉に太司が再び立ち上がった。
「ウソだ!美雪は大人しくて優しい子だ!
エッチなんかしない!」
太司が叫ぶ。
「うふふ・・・ば~か!
アンタ、どこまで女の子に”幻想”抱いてるの?
大人しい子だって、エッチぐらいするし、
興味もあるわよ!」
美雪が言う。
「ほら、見なさい」
美雪がスカートをあげる。
下着は少しだけ濡れていた。
「今、わたしがエッチの話を少ししただけで
この体が興奮したの。
わかる?これは憑依してるからじゃない。
わたしは元々、エッチなことが好きなの。
家でも毎晩一人でエッチしてる。
太司くんともやりたかった。
でもね。
アンタがやらせてくれないから、わたし、ずっと我慢してた」
太司が奇声をあげて叫ぶ。
「嘘だぁああああああ!
美雪はエッチなんてしない!美雪はトイレになんていかない!」
その様子を見て
美雪は呆れた様子でため息をついた。
「--童貞野郎」
太司が青ざめた表情で美雪を見る。
「心の中で、わたし、こう思ってたの!」
その言葉に、太司のプライドはズタズタに引き裂かれた。
床に顔をつけて泣き出す太司。
それを見て、美雪は微笑んだ。
「----もう美雪とは別れろ。」
憑依している吉本が自分の口調で言った。
そして、そのまま空き教室から出て行こうとする。
「ま、、、待て!美雪の体をー」
そう言うと、美雪は首を振って笑った。
「---お前と一緒にすんな。
俺は美雪を所有物にしたりしない。
家に帰って、本人が驚かないように後始末したら
俺は美雪の体から出て行くさ…
変なこともしない。」
そう言って立ち去って行く美雪。
太司は悔しそうにその場で涙を流し続けた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
太司は学校を休んだ。
「--おはよう、福島さん」
昨日まで憑依していた吉本が、美雪に挨拶をする。
「あ、おはよう、吉本くん」
美雪が言う。
吉本は、結局何もせずに、美雪の体から抜けた。
いやーー
ひとつだけ、ある記憶を植え付けた。
それはー
”太司とは円満に別れることができた”という記憶。
全て、美雪のためだった。
「----今日は、なんか、嬉しそうだな」
吉本が言うと、美雪は微笑んだ。
彼氏の太司と別れられた。
その安心感が、美雪を笑顔にしていた。
「---よかった」
美雪と別れた吉本は、一人そう呟いた。
全てはあの笑顔を守る為。
吉本はそのためだけに憑依薬を使い、
幼馴染を守り抜いたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後。
ネットショップから届いたとあるモノを持って、
太司が学校付近で、美雪が出てくるのを待っていた。
嬉しそうに友達と話しながら出てくる美雪。
太司は、美雪を尾行した。
美雪が人通りのない通りに向かう。
「----」
太司は走り出した。
そしてーー
美雪の肩を背後から掴んだ。
「ひっ…!?」
美雪が驚いて振り向く。
「---美雪ぃ…
俺の事あんな風に思ってたんだな??
くくく…愛していたのに!愛していたのに!」
叫ぶ太司。
「ひっ…や、、やめて」
メガネの下の瞳がうるんでいる。
太司はーーーー
手に”光るもの”を持って、美雪に突進したーーー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
言いたいことを言えない大人しい子に憑依して
代わりに本心を語る。
そんなコンセプトで作った小説でした^^
最後は…
お察しください。
コメント
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
そこから皮モノに発展していくわけですね(錯乱)
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> そこから皮モノに発展していくわけですね(錯乱)
コメントありがとうございます!
彼女を皮にして、そこから始まる皮物語…
私のサイトが皮空間になってしまいますね(笑)