<憑依>本心② ~暴露~(完)

美雪に憑依した、
幼馴染のクラスメイト・吉本は、
自分勝手な彼氏、太司に対して、
美雪の本心を語り始める。

大人しく、心優しいがゆえに、美雪が決して口に出さないことを
本人の代わりに・・・。

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「美雪の本心だと…?」
太司が美雪を睨みつける。

いつも、遠慮がちな視線を送っている美雪が、
今日は自信に満ち溢れた表情で、太司を見下していた。

「--そう。わたしの本心。
 いっつも我慢してたこと…。
 
 ぜ~んぶ教えてあげる」

美雪が憎しみのこもった目で太司を見つめている。

太司は、普段見ない
美雪の”怒り”の表情に、
少し気圧されて、ゴクリとつばを飲み込んだ。

「--はは…
 よ、吉本!お前が憑依してるんだろ?
 なら、美雪が何を言ったって、
 そんなのお前の勝手な”妄想”じゃねぇか!

 いいか、俺と美雪はラブラブなんだ。
 お前みたいな部外者に俺たちの仲の良さが
 理解できるもんか!」

太司が叫ぶと、
美雪は笑った。

「あはははははっ!
 ばっかじゃないの!」

美雪に”バカ”と言われてかちんと来る
太司。

「おい!美雪!
 あんまり調子に乗ってると
 1週間、シカトするぞ!」

太司は”いつもの調子”でそう言った。

太司の口癖だった。
美雪が、気に入らない”行動”をするたびに
太司はこう言って美雪を脅していた。

大人しく、あまり恋愛経験のない美雪は、
太司と恋人関係になって、本当に喜んでいた。
だから、”別れる”だとか”シカト”だとか言われるたびに
委縮してしまっていた。

「---調子こいてんのはテメェだろ」
美雪とは思えないような低い声で、再び太司の胸倉をつかんだ美雪は、
太司を睨みつけた。

「--そうやっていつも美雪を苦しめてたんだろ?
 ……俺はさ、小学生のときからコイツと一緒だった。
 …実を言うと少し美雪のことが好きだった。
 
 でもよ、お前と美雪が付き合い始めたときは素直に
 お前らを祝福したよ。お前もいいやつに見えたからな。

 だが何だよ?付き合い始めてからお前はどんどん調子に乗って
 美雪に対しての態度はどんどんエスカレートしていった」

太司は胸倉をつかまれながらも、
女子の綺麗な手に胸倉をつかまれている、という事実、
そして、美雪の可愛い声で語られる男言葉に興奮してしまった。

「---ってめぇ!何興奮してやがる!」
美雪が乱暴に太司を突き飛ばす。

「---っと…ふふふ、
 太司君…わたしの”本心”教えてあげるね」

美雪が、美雪本来の口調に戻って微笑む。

「--本心…?
 さっきも言っただろ!お前の妄想に興味はないって!」
太司が床に手をつきながら言うと、
美雪は笑う。

「このからだは誰のものー?」

「あん?美雪だろ!」
太司が言うと、美雪はさらに笑う。

そして、頭を指さした。

「じゃあ、この脳は誰のものー?」

「みゆ…」
太司は答えかけて止まった。

まさか…

「そう…
 このからだを乗っ取るってことは、
 美雪の脳の記憶も好きなように引き出せるってコト。

 こうやって、わたし本来の口調で話すことだってできるの。

 ま、本当のわたしはこんなにハッキリとは
 喋らないけどね」

太司は思うー。
やつは、本当に美雪の本心を知ることができるのか・・・ と。

「ふふ・・・じゃあ、教えてあげる。
 わたしの本心を…」

そう言うと、美雪は太司の方を見つめながら
近くにあったイスに座って足を組んだ。

大人しい美雪が色っぽく足を組んでいる姿を見て、
太司はまた興奮してきた。

「わたしね…
 太司君のことは”大好き”」

美雪が満面の笑みで言う。

「---だろ?
 そんなこと聞くまでもない。
 俺も大好きさ」

太司が言うと、
美雪は「でもー」と付け加えた。

「最近はね、わたし、「もう無理かも」って思ってる。
 太司君と居る時間が”つらい”の。
 大好きだけど、つらいの。

 前に借りたお金も返さずに、お金を貸せって言われた時には
 本当は腹が立ったの。
 本当にムカッとした。

 何度も何度も、太司君をビンタしようと思った」

美雪が語る。

「ーーくくく…ははははははは!」
その言葉を聞いて、太司は笑った。

「語るに落ちたな吉本よ」
得意げに言う太司。

「やっぱ美雪の記憶なんか読み取れてねぇじゃないか!」

その言葉に美雪が、太司の方をじっと見つめる。

「いいか、美雪はそんなこと思っていない。
 俺とのデートはいつも楽しい!って言ってたし、
 お金を借りるときも美雪は…」

太司がそこまで言うと、美雪が失笑した。
そして足を組みかえて笑う。

「どこまでもおめでたいヤツね・・・」
美雪が言う。

「おめでたいのはお前だ!妄想野郎!
 俺と美雪の愛はお前には分からない」
得意げに言う太司。

だがーーー
美雪は、本人しか知りえない情報を次々と話し始めた。

小さいころの話、
スリーサイズ、
慎重に体重、
太司とのデート中の話題。

「----どう?わたしは本当のことしか話していない」
美雪が自信に満ち溢れた表情で言う。

「---う、、嘘だ!
 でたらめだ!美雪は俺の事を愛している!」
太司が叫ぶ。

「---本当よ。
 あなたには愛想がつきているの」

美雪が笑ういながら続ける。

「知ってる?1か月前、太司君が風邪をひいて
 デートがキャンセルになったとき…。

 わたし、すっごくホッとしたの。
 その日は一日中安心感に包まれてたの」

太司が立ち上がって叫んだ。

「やめろ!そんな話、聞きたくない!」

「--なんてワガママなヤツなのー。

 …これが、最近のわたしの、あなたに対する想い。
 
 ま、わたしは絶対に口に出さないけどね」

太司は愕然とする。
美雪は自分だけを愛してくれていると思っていた。

それなのに、どうして?

「---ふ、、ふざけるな!
 彼女になったら彼氏に尽くすもんだろうが!」
太司が叫ぶ。

美雪は無視してさらに続けた。

「別れたいー、
 でも太司君に何かされたらどうしよう?
 こわい、こわい、わかれたい、こわい」

目に涙を浮かべながら言う美雪。

「こわい、こわい、こわい!!!!!」

そしてーー
涙を浮かべたまま笑って太司の方を見る。

「これが、わたしの”本心”よ-。
 太司くんに…

 いいえ、アンタに対する愛情なんて
 もうとっくに消えちゃったのよ!」

彼氏を”アンタ”と呼ぶ美雪。

「そうそう、教えてあげる!
 わたし、深層心理では太司君のことを”アンタ”って呼んでるの!
 うふふ・・・♡
 彼女にアンタ!って思われてるのよ!」

太司はその場に膝をつく。

「美雪…俺は…こんなにお前を愛しているのに…」

「--あ、そうそう」
美雪が思い出したかのように言う。

「アンタ、こう言ってたよね?

 「俺さ~エッチとか嫌いだからさ、
 福島さんとは、ずっときれいな恋愛をしていたいんだ~」

 って…」

美雪は、太司の方を見て、
話しを続ける。

「わたし、アンタの前ではアンタに合わせてたけど、
 本当はわたし、エッチしたかったの…」

その言葉に太司が再び立ち上がった。

「ウソだ!美雪は大人しくて優しい子だ!
 エッチなんかしない!」

太司が叫ぶ。

「うふふ・・・ば~か!
 アンタ、どこまで女の子に”幻想”抱いてるの?

 大人しい子だって、エッチぐらいするし、
 興味もあるわよ!」

美雪が言う。

「ほら、見なさい」

美雪がスカートをあげる。
下着は少しだけ濡れていた。

「今、わたしがエッチの話を少ししただけで
 この体が興奮したの。

 わかる?これは憑依してるからじゃない。
 わたしは元々、エッチなことが好きなの。

 家でも毎晩一人でエッチしてる。
 太司くんともやりたかった。

 でもね。
 アンタがやらせてくれないから、わたし、ずっと我慢してた」

太司が奇声をあげて叫ぶ。

「嘘だぁああああああ!
 美雪はエッチなんてしない!美雪はトイレになんていかない!」

その様子を見て
美雪は呆れた様子でため息をついた。

「--童貞野郎」

太司が青ざめた表情で美雪を見る。

「心の中で、わたし、こう思ってたの!」

その言葉に、太司のプライドはズタズタに引き裂かれた。
床に顔をつけて泣き出す太司。

それを見て、美雪は微笑んだ。

「----もう美雪とは別れろ。」

憑依している吉本が自分の口調で言った。

そして、そのまま空き教室から出て行こうとする。

「ま、、、待て!美雪の体をー」

そう言うと、美雪は首を振って笑った。

「---お前と一緒にすんな。
 俺は美雪を所有物にしたりしない。

 家に帰って、本人が驚かないように後始末したら
 俺は美雪の体から出て行くさ…
 変なこともしない。」

そう言って立ち去って行く美雪。

太司は悔しそうにその場で涙を流し続けた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

太司は学校を休んだ。

「--おはよう、福島さん」
昨日まで憑依していた吉本が、美雪に挨拶をする。

「あ、おはよう、吉本くん」
美雪が言う。

吉本は、結局何もせずに、美雪の体から抜けた。

いやーー
ひとつだけ、ある記憶を植え付けた。

それはー
”太司とは円満に別れることができた”という記憶。

全て、美雪のためだった。

「----今日は、なんか、嬉しそうだな」
吉本が言うと、美雪は微笑んだ。

彼氏の太司と別れられた。
その安心感が、美雪を笑顔にしていた。

「---よかった」
美雪と別れた吉本は、一人そう呟いた。

全てはあの笑顔を守る為。

吉本はそのためだけに憑依薬を使い、
幼馴染を守り抜いたのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後。

ネットショップから届いたとあるモノを持って、
太司が学校付近で、美雪が出てくるのを待っていた。

嬉しそうに友達と話しながら出てくる美雪。

太司は、美雪を尾行した。

美雪が人通りのない通りに向かう。

「----」
太司は走り出した。

そしてーー

美雪の肩を背後から掴んだ。

「ひっ…!?」
美雪が驚いて振り向く。

「---美雪ぃ…
 俺の事あんな風に思ってたんだな??

 くくく…愛していたのに!愛していたのに!」

叫ぶ太司。

「ひっ…や、、やめて」
メガネの下の瞳がうるんでいる。

太司はーーーー
手に”光るもの”を持って、美雪に突進したーーー。

おわり

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コメント

言いたいことを言えない大人しい子に憑依して
代わりに本心を語る。

そんなコンセプトで作った小説でした^^

最後は…
お察しください。

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憑依<本心>

コメント

  1. 憑依好き より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    そこから皮モノに発展していくわけですね(錯乱)

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > そこから皮モノに発展していくわけですね(錯乱)

    コメントありがとうございます!
    彼女を皮にして、そこから始まる皮物語…

    私のサイトが皮空間になってしまいますね(笑)