<憑依>ブラッド・ポルーション①~血の料理~

そのレストランの料理には、
とある”隠し味”が使われていたー。

その、隠し味とは…。

「血を飲ませることで相手を汚染していく」という
リクエストを元にした
”ブラッド・ポルーション”第1話をどうぞ!

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大学。

水野 伸介(みずの しんすけ)は、
大学入学に伴い、親元を離れて一人
都内の小さなアパートで暮らしている。

バイトをして生活費を稼ぎながら、
大学に通う日々。

毎日同じようなことの繰り返しだったが、
そんな伸介に
”平凡な日常”を壊す出来事が起きた。

”明後日から、お兄ちゃんの家に
 遊びに行くね!ちょうど夏休みに入ったから”

妹の水野 優理(みずの ゆうり)。
悪戯っぽいお茶目な子で、
優理の悪戯にはいつも、兄の伸介も困らされていた。

そんな優理が遊びに来る。

上京してから1年ちょっと。
優理は今、高校2年生のはずだー。

「--良かったじゃん!」

ちょうど夏休み中だが、とあるイベントのため
大学に顔を出した伸介は、
同じ大学に通う、女子大生、
城嶋 亜美奈(じょうしま あみな)に、
妹が来ることを話していた。

亜美奈は彼女ではないが、大学では仲の良い方だ。

「--なんか、妹を連れて行く
 おすすめの店とかある?」

伸介が訪ねる

自分の家には
カップラーメンとか、冷凍のチャーハンとか、
業務スーパーで買った煮物とかしかない。

妹は満足しないだろう。

「おすすめの店ぇ~?
 う~ん」
亜美奈が考える。

そして、「あ、あそこならいいんじゃない!」
と笑顔で指を立ながらスマホを伸介に見せる。

「レストラン”ポゼーラ”
 イタリアン料理を中心としたお店で
 本格的な料理を楽しめるお店なんだけど、
 すっごく美味しいみたいよ

 で、みてみて!」

亜美奈がやたらと顔を近づけてスマホをかざす。

亜美奈は男に対する警戒心が元々あまりない。
伸介はふわりと揺れる亜美奈の髪から漂う
良い香りに気をとられていた。

「ねぇ、、聞いてる?」
亜美奈が呆れた様子で言う。

「あ、ごめんごめん」

聞けば、レストラン・ポゼーラは本格的イタリア料理を
お手頃価格で楽しめるお店で、
伸介もメニューをスマホで見てみたが安い感じだった。

「そうだな、ここなら行けそうだな!
 優理、ピザ好きだし!」

伸介が笑いかけると
亜美奈がつけ加えた。

「ここのね~トマトスープ!
 すっごく美味しいんだよ!
 ぜひ妹さんにも飲ませてあげて!」

亜美奈がほほ笑む。
何故か少しだけ、意地悪そうな笑みに見えたー。

「へ~そうなんだ!
 ありがとう!」

伸介はそう言い、立ち上がった。
大学に来た用事を済ませてしまわなくては。

亜美奈に「じゃ、また」と告げて
その場を立ち去る伸介。

立ち去った伸介を笑顔で見送った亜美奈はーー

口元を邪悪に歪めた

「うっふふふふふ…
 あいつの妹…可愛いじゃん!
 この女の記憶通りなら、
 俺好みだ!

 あっははは!」

亜美奈は一人、汚らしい言葉を
吐き捨てて、笑った。

「可愛い女は皆、俺のものだ!
 ううん、私のもの!ひひひひひっ!」

亜美奈は乱暴に荷物をまとめると
そのまま大学を立ち去って行った。

用件を終えた伸介は、
大学の正門で、
親友の真瀬 秀雄(ませ ひでお)と出会った。

「よ、お前も来てたのか」

いつもバカ騒ぎをする間柄。
しかし、
最近の真瀬は何故だか元気がない。

「--真瀬、最近、お前元気なくないか?
 何かあったのか?

 彼女の鈴乃(りんの)ちゃんも最近見かけないし」

伸介が言うと、
真瀬は暗い表情をした。

「--鈴乃は…」
真瀬はそこまで言うと口を閉ざした。

”まさかー
 別れたのか?”

伸介はそう思い、これ以上詮索しないことにした。

「そういや、妹さん来るんだってな」
真瀬が言う

「--情報が早いな?誰からそれを?」
伸介が呆れたように言う。
…まぁ、亜美奈しかいないだろう。
彼女は口が軽い

「ん?さっき、亜美奈が言ってたぞ…

 ま、楽しめよ!」

真瀬が笑顔で伸介の肩をたたいた。

「ーーお前こそ、元気出せよ!
 何があったか知らないけど」

伸介がそう言うと、真瀬は「そうだな」と
呟いた。

いつもの日常ー。
これがいつまでも続くと思っていた。

けれどー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

妹の優理がやってきた。

おしゃれなスカートと花柄のおしゃれなブラウスを着ている。
いつもながらにおしゃれだ。

「--ふ~ん、そんなに美味しいところあるんだ!」
優理が楽しみ、とつぶやく。

「あぁ、なんか美味しいらしいよ。
 ピザ、好きだっただろ?今日はおごってやるから」

伸介が言うと

「やった~お兄ちゃんのおごり♪」と
優理が嬉しそうに飛び跳ねた。

そしてー
レストランについた

”ポゼーラ”

伸介と優理はそのレストランへと入っていく。

そう、
”地獄”にー。

料理長の為五郎(ためごろう)は50代の整った白髪と
紳士的な態度で評判の良い男だ。

だが、それはー
”表”の顔に過ぎない。

彼には、ある能力があった。

”自分の血”を他人に飲ませることで
他人の血と肉となり、
他人をそのまま支配するという能力だ。

徐々に、他人は自分自身となる。
血に憑依された、人間は徐々に
為五郎となっていくのだー。

性格も思考も、
為五郎そのものとなる。

そして、血に支配された人間は
為五郎のために、一生尽くすことになる。

必要とあらば為五郎本体が、血で支配した人間を
乗っ取ることも可能だ。

「---上」

料理しながら監視カメラの映像を見た為五郎は呟いた。

そのカメラの先には、
伸介の妹、優理が映し出されている。

為五郎は不気味な笑みを浮かべた。

彼は、気に入った女性を見つけると、
その女性に提供する料理に”血”を混ぜる。

そして、その女性を徐々に支配していくのだー。

彼は監視カメラで客を逐次監視している。
”女性を物色しているのだ”

そして、
女性を見つめると、為五郎は即座に女性に評価をつける

”上” ”中” ”下”

このうち、上と中は、為五郎のターゲットとなる。

彼にとって女性はモノでしかないー。

「ぐふふふふふ」
為五郎は自らの腕をナイフで切り、
今しがた調理中のトマトスープにその血を混ぜ込んだ。

”料理人”は
料理に”魂”を込める。

そう、為五郎はまさに、
血という魂を料理に込めているのだー。

女性を乗っ取るためにー。
女性を自分そのものに変えてしまう為にー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

伸介と優理は料理を待っていた。

伸介は適当なパスタを、
優理はピザを注文した。

そして、大学の亜美奈がおすすめした
トマトスープを伸介は注文してやった。

「--お待たせいたしました」
トマトスープとピザが運ばれてくる。

ふと伸介は思う。

料理を運んできたウェイトレスは、
太ももを惜しげもなく露出し、
胸元を強調した制服を着ている。

”ずいぶん、派手な制服だな”

そう思い、伸介はそのウェイトレスの顔を見た

ーーーー!?

その顔はー
最近元気のない親友、真瀬の彼女、
片下 鈴乃(かたした りんの)だった。

「えー?片下さん?ここでバイトしてたんだ?」
伸介は声をかける。

しかし、鈴乃は何の反応もせず、
そのまま営業スマイルを浮かべて立ち去ってしまった

「----???」

伸介は疑問に思いながらもパスタを口にする。

うまい!

「---いや~確かに
 亜美奈の言った通りうまいなここのパスタは!」

伸介が満面の笑みを浮かべる

「お兄ちゃん、パスタ好きだもんね!」
妹の優理はトマトスープに口をつける。

「あっ!これも美味しい!
 お兄ちゃん、良い店につれてきてくれてありがと!」
優理がほほ笑む。

その笑顔はとても嬉しそうだったー。

兄と妹。

久しぶりの再会に、
二人はここ最近のことを色々と話した。

優理には彼氏が居ないことー

伸介もなかなか彼女が出来ないことー

父が昇進したことー

色々な話をした。

「ふぅ…さて、そろそろ帰るか」

二人の楽しい時間は終わった。
優理は3日間、伸介の家で宿泊することになっている。

「--久々の妹との時間ってのも良いモノだなー」
伸介はそんな風に呟きながら、
会計をすまし、お店を後にした。

「----」
厨房で、監視カメラの映像を見ていた為五郎は
口元をゆがめた。

そして呟いた。

「お前はーもう、”俺”だ」

と。。。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。

伸介から案内された部屋に入った
優理は、違和感を感じていた

「どうしたんだろ…」
一人呟く。

「あのトマトスープ…また飲みたい…」
体がトマトスープを求めている。

そんなに美味しかっただろうか?
確かに美味しかったけれど…

「俺ーーーもっと飲みたい!」
優理はそう叫んだ。

”俺ーーー?”

「--え?今、私なんか変だった…?」

鏡を見る優理。

「---…あ、、、あれ、、私って…
 こんなにエロい体してたっけ?」

鏡で見る自分の体は
心なしかいつもよりとてもきれいに見えた。

服を脱ぎ捨ててじっくりと見てみたいー。

そんな風に思った。

「----な、、、何考えてるんだろ、わたし!」

頭の中に湧き上がる
邪悪な考えを振り払って、
優理はそのままベットに飛び込んだ。

「---ーーーああ…
 女の子のニオイ…いいニオイ…
 何回嗅いでも、飽きない~」

呪文のようにそう呟くと、
優理は、そのまま眠りについた。

眠っている間、優理は呪文のように呟いていた

「俺はー”為五郎”

 俺はー”為五郎”」

深夜、伸介は優理が寝ている部屋に置いてある
自分の荷物をとるため、こっそり優理の部屋に入った。

優理は穏やかな寝息を立てている。
伸介は優しい気持ちで優理の方をみて微笑むと、
自分の探していた荷物を見つけて、そのまま部屋から
立ち去ろうとしたー。

「俺はーー為五郎」

ーーー?

伸介は妹の寝言に振り返った。

「---為五郎??
 ははっ、どんな夢見てんだよ」

伸介は笑いながら部屋を後にした…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日

「お兄ちゃん…今日もまた、
 あのレストラン行こうよ!」

優理がほほ笑む。

「へー?また?」

伸介は自分の財布の中身を考える。

「うーん…ま、いいけど」
伸介が言うと、優理が大喜びして飛び跳ねた

「やった~!
 これで、私はもっと”俺”になれる~!

 まだ支配が完全じゃないけど、
 もっともっと血を入れれば、
 俺になれる~! あははっ!」

優理が訳の分からないことを口走る。

「--何言ってんだよ」
伸介が呆れた様子で笑う。

夜。
再び二人は、レストランを訪れた。

優理はピザを注文せずに、
トマトスープばかり飲んでいる。

「--おいおい、トマトスープ3杯目
 じゃんか。大丈夫か?」

伸介が言うと、優理は微笑んだ

「だって美味しいじゃん!これ~!
 なんたって、私の血が入ってるんだからね!」

優理が嬉しそうに言う

「血ー?」
伸介が聞き返すと、優理は微笑んだ

「うふふ・・・♡」

その日も楽しく兄と妹の会話を楽しんだ。

レストランから出た
兄の伸介は寂しそうに空を見つめた。
”明後日でまた、妹は帰るのかー”と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。

部屋で優理は一人笑い続けていた。

「ひっははははははは!
 十分すぎるほどの血がたまったぜ!
 これでもうこの女は俺のモノだ!

 はっははは!」

優理が狂ったように笑っている。

為五郎の血が入ったスープを
大量に飲んだ優理は、
一気に血液の中に潜む為五郎の意識に
乗っ取られてしまっていた。

「ふひひひひひ…
 JKってサイコーだよな」

優理が汚らしい笑みを浮かべて、
足を広げてベットに座る。

スカートの中から下着が見えて、
優理は涎を垂らして微笑んだ。

「えへへへへぇ…
 俺…いや、、ううん、わたしはJK…
 えへへっ!私はゆうり~!」

自分の服のニオイを狂ったように
嗅いで、笑みを浮かべる優理。

自分のサラサラな髪をわざとなびかせて微笑む優理。

そして、自分の胸を見つめて
だらしなく口元をゆがめながら優理は微笑んだ。

「あははぁ…
 この体も、、めっちゃクチャにしたぁい…!」

優理はそう呟いて、
服を脱ぎ捨てると、
自分の姿が写った鏡に激しい息をしながら
抱き着いた。

既にー
優理の太ももや足もとには
イヤらしい液体がべっちょりと付着していた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「--優理?」
伸介が部屋の隅で震えている優理に違和感を感じて
話しかける。

「わ、、、わ、、、わたし、、なんかへん…
 わたし、、おれ、、おれ、、??」

優理がうつろな目で呟く。

「お、、おい?どうした?調子でも悪いのか?」
伸介が心配して尋ねると
優理が突然叫び出した

「あ、、ポゼーラのトマトスープが飲みたい、
 もっと、、、もっともっと、、体を、、
 この女を完全に支配するまでーー
 もっと、、」

様子がおかしいー
伸介はそう思った。

「--ゆ、、優理。病院に行こう!
 タクシー呼ぶから」

そう言って伸介が優理を支えるようにして、立たせると
優理が叫んだ

「病院なんていかねぇ~~~よ!」

ーーー!?

突然、伸介を突き飛ばした優理は微笑んだ

「お兄ちゃん、私、あのお店のスープ飲まなきゃ!
 もっと!もっと、、私が、、俺が完全に為五郎に
 なるまで!
 うふふふふふふふっ♡」

髪の毛を振り乱し、
笑いまくる優理。

そして、優理はそのまま走りだし、玄関から飛び出して行ってしまった。

「お、、おい!」
伸介は叫ぶ。

スープ…??

為五郎???

そういえば、優理のヤツ、あの日、レストランに行ってから
なんか様子が変だったような…

「まさかあのレストランに…!?」

伸介は、妹の異変の原因が
レストラン・ポゼーラにあると考えて走り出した。

「---あの店に、何かある!」

走る伸介。

その時だった。

親友の真瀬と偶然鉢合わせした。

「---伸介!どうした?どんなに慌てて」
真瀬が言う。

急いでいた伸介は
「ポゼーラというレストランでスープを飲んだ妹がおかしくなった」と
手短に真瀬に説明した。

すると真瀬が、驚きの声をあげた

「お、、、お前・・・あの店のスープ、
 妹に飲ませたのか!」

真瀬の異常な驚き方に伸介は立ち止まる。

「---俺の彼女の鈴乃…
 あの店のスープ飲んで、、乗っ取られちまったんだよ…」

真瀬が言った。

「---!?」
そういえば、妹とレストランに行ったとき、真瀬の彼女の鈴乃が
ウェイトレスとして…。

「あの店の料理人、自分の血で、人を支配できるって言ってた…
 鈴乃もそれにやられて…」

真瀬が悔しそうに歯を食いしばる

「--アイツ、、血を人に飲ませて女を操って…
 店のウェイトレスとして働かせているんだよー」

真瀬が声を振り絞りながら言った。

「…くそっ!」

話を聞き終えた伸介はレストラン・ポゼーラに向けて
走り出した。

まさか、”優理”も、その料理人の血をー?
まさか、あのトマトスープの中に血がー?

伸介は全力疾走したー。
妹が向かったと思われる レストラン・ポゼーラに…

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

明日は後編です。
ちょっとした、裏がある結末に…?

コメント

  1. 柊菜緒 より:

    SECRET: 0
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    どうなるか楽しみだな

  2. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    裏とは…

  3. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > どうなるか楽しみだな

    ありがとうございます^^
    え~っと、、おっと…こ、、これは(意味深)

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 裏とは…

    表があれば、裏もあるのです!(?)