成人式。
自分をいじめていた生徒たちとの再会の日。
でも、今の自分は”あの時”とは違う。
容姿も、頭脳も、全てを手に入れた彼女は、
成人式後の同窓会で、小さな復讐を始めるーー。
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成人式当日。
希美は、着物姿を整え、
鏡の前で笑みを浮かべていたーー。
彼女の容姿は、
誰が見ても”美人”と評するだろうー。
可愛らしい顔立ちに、
抜群のスタイル。
そして愛嬌のある振る舞いー。
しかし、それは本来”彼女”のモノではなかった。
今、希美として生きている”恵美里”は、
ブスでいじめられっ子だった。
だがー彼女は中学卒業時の交通事故で死んだ際に、
クラス一の美少女であった希美に憑依して、
体もー、精神もー、そして人生をもー。
その全てを奪い取ったのだった。
希美は笑みを浮かべて、自分の心臓の
あたりをつついた
「ねぇ?希美ー。
悔しいでしょ?
成人式の晴れ姿ー。
それまで私に奪われて…」
希美は、自分に語りかけた。
彼女はこうしている時に、
”自分を遠目から笑っていた”希美に対して
復讐している、と実感できた。
自分の人生を全て奪われた希美は
今、どう思っているのだろうーー。
「聞こえてる?
フフ…悔しいよね!?
あはははっ!
今も、自分がどうされてるのか見えてる?
希美、アンタの代わりに私が
アンタの人生、楽しんであげるから!
アンタは心の奥底で泣きわめいていなさい!
うふふふふふっ!
あははははは!」
鏡の前で狂ったように笑い続ける希美。
たまらないー。
美人で、優等生としてもてはやされ、
私を見下していた希美が、
こうやって、私の支配下に置かれているこの現実がー。
希美の全ては、私のモノーーー。
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成人式の会場で
懐かしい顔と再会した。
”私が憑依する前の、希美の彼氏”
私が春休みに呼び出して、
こっぴどく振ってやった間抜け男。
私をいじめていた男子の一人だ
「--希美」
彼は、私を見て、私の名前を呼んだ。
ーーー「ブース!」
中学時代の彼の言葉が脳裏に響く。
彼はあの時とは、違い、真面目そうな雰囲気になっていた。
私はーー
視線を彼の方に向けもせず、
堂々と前を横切った。
そしてすれ違う瞬間に言ってやった
「気安く下の名前で呼ばないでくれる?」
愛想なく私がそう言うと、
「ご・・・ごめん・・・」と
彼は委縮した。
いい気味ね…
会場に入ると、
いじめられっ子だった私の親友”美弥子”が手を振ってきた
「み…---」
つい、”美弥子”と呼びそうになった。
いけない、今の私は希美なんだ。
希美は、美弥子のことを、佐藤さんと呼んでいた
「あ、佐藤さん、久しぶり」
かっての親友との再会に私は笑みを浮かべた。
「ーー松川さん、すっごい綺麗だね!」
美弥子が言う。
ーーそうに決まってるじゃない。
今の私は誰にも負けない美貌がある。
私は高校生活、そして大学生活を通して
すっかり自分に自信を持っていた。
私は可愛いー。
そう、私は可愛いー。
でも、中学時代、どこかおしゃれに無頓着な感じだった
美弥子も、おしゃれになって、可愛らしくなっていた。
「--じゃ、またあとでね!」
美弥子が笑顔で手を振る。
成人式後に、中学のクラスメイトたちで”同窓会”があるー。
成人式は順調に進んだ。
お決まりのさわぐ子もいたけれども、
特に問題なく終わりを迎えた。
そして、私たちは近くのお店に移動して
”中学時代の同窓会”を始めたのだった。
当時、私をいじめていた男子や、無関心だった
男子たちが私の美貌にひきつけられ、
話しかけてくる。
なんてだらしないヤツらなの?
私は、心の中で男子たちをあざ笑った。
コイツらー
見かけしか見ていないー。
ふと鏡を見ると、
希美が意地悪そうな笑みを浮かべていた。
「--いけないいけない」
そして、同窓会が始まった。
「松川さん綺麗になったね~」
「ま、元々綺麗だったけどな~」
クラスメイト達が口ぐちに言う。
「ううん、それほどでもないよ~」
私は、ご機嫌そうにそう言った。
大学での私の写真を見せると、
周囲は盛り上がった。
「希美、こんな派手な格好するようになったんだ~」
ミニスカート姿の”攻め”の服装の写真を見た
クラスメイトが言う。
希美は元々控えめな格好だった。
でも、私が憑依してからは変わった。
せっかくこんなに可愛いんだから、
体を使わなきゃ勿体ないじゃない。
「--俺、希美と付き合いたかったな~」
いじめっ子だった男の一人が
だらしない笑みを浮かべて言う。
「--アンタなんかが、私と付き合えるわけ
ないじゃない。何様なの?」
ーー笑みを浮かべながら私は言ってやったー。
場が凍りつく。
「----あ、、、、、ホ、ホラ 料理食べよ!」
私の親友だった美弥子が
誤魔化す様にして話を逸らした。
「---お、、俺、そんなにダメかな」
いじめっ子の男がそう言う。
私はトドメを刺したーー
「ーーそうね。ダメダメ。
魅力がぜ~~~んぜんないわ!」
私は意地悪そうな口調でそう言うと、
男は委縮してしまった。
いじめっ子4人のうちの男子2人
一人はこっぴどく振ってやった。
そしてコイツは、今、傷つけてやった。
彼の落ち込む表情を見て、
私は満面の笑みでほほ笑んだ。
「---ね、、ねぇ 希美ってさ」
近くに居たクラスメイトの女子が声を出したー。
私は彼女の顔を見て、屈辱の記憶がよみがえった。
「--ほんと、アンタって可愛くないよね」
いじめっ子の一人、杏子。
彼女はよく、私のことを”宇宙人”などとして
バカにしてきた。
アンタだって、そんなに可愛くないくせにーー。
20になって、
余計に可愛くなくなったんじゃない?
心の中で私はそう思い、
彼女をあざ笑った。
「希美ー、
彼氏とか居そうだけどいるの?」
杏子が訪ねてきた。
「---ウフフ…いるに決まってるじゃない」
私は高飛車にそう答えた。
「そ、そっか…
希美可愛いし、優しいもんね」
杏子が言う
それを聞き、私は笑う。
「飽きたら捨ててもぜ~んぜん大丈夫!
何人でも彼氏なんか作れるから!」
私は杏子にバカにするような口調で
言い放った。
「……」
険しい表情を浮かべる杏子。
私は、意地悪そうな笑みを浮かべて、
彼女に尋ねた
「杏子ちゃんには、彼氏とかっているの?」
私の言葉に杏子は悲しそうな顔をする
「わたしはーーー」
杏子がそう言いかけたのを見て、
私は”言ってやった”
「--だよねぇ~~
ウケる~~~!!
アンタに彼氏なんかできるわけないもんね!」
私がそう言うと、
他の女子が
「ちょっと、希美!やめなよ!」と慌てた様子で言う。
でも、私は止まらなかった。
誰が宇宙人だって?
誰がブスだって?
今じゃアンタがブスの側の人間なのよ!
私は、杏子の顔を見て言った
「杏子ちゃんの顔、宇宙人みたい!
ブッスだよねぇ~~~あはは!」
私が笑うと、
杏子は「もう、いいよ!」と言って、私を避けるように
して別のクラスメイトの方に向かって行った。
「---…ねぇ…希美、何かあったの…?」
ショートヘアーの女子が私に尋ねてきた。
いじめっ子4人の最後の一人だ。
「--別に」
私は愛想なく、食事を食べながら答えた。
「--なんか、、希美変わっちゃったね…
あんなにやさしかったのに…
どうしちゃったの??」
彼女は不思議そうに尋ねてくる。
その顔は心底、私を心配している顔だーー。
「フン」
私は鼻で笑って彼女をシカトしてやった。
「-----…希美」
他のクラスメイト達も委縮している。
私のあまりの嫌味っぷりにうろたえているのだろう。
いい気味。
私は、お手洗いに行くために、
その場を立って、部屋から出た。
すると、
背後から声がした。
「---希美!」
ーーー振り返ると、親友の美弥子が居た
「あ、、、佐藤さん」
私が笑顔を振りまくと、
美弥子は私に近づいて、そのまま私の頬に強烈なビンタを喰らわせた
「---最低!」
美弥子の声に私はハッとする。
「--ねぇ、杏子ちゃん泣いてたよ!
どうしてあんなひどいこと言うの?
希美ちゃん、そんな子じゃなかったよね!
いつも、みんなに優しくてみんなの憧れの的だったー
ねぇ!どうしちゃったの!」
美弥子が私の肩をゆする
「---…あいつらが悪いのよ。
美弥子だって知ってるでしょ?」
美弥子は私を睨むようにして見ている
「せっかく、久しぶりにあったのに……
どうしてあんなこと言うの…」
美弥子が悲しそうに涙を流す。
「悪いのは、アイツらよ!」
私はそう叫んだーー
すると美弥子が涙を流しながら言う
「---恵美里みたいなこと言うようになったのね…」
恵美里ーー
私の名前だーーー
「…どういうこと?」
私が訪ねると美弥子は言った
「ホラ、中学の時、恵美里ちゃん、いたでしょ?
卒業式の日に事故死した・・・
あの子、自分にも悪いところがあったのに
いつも「アイツらが悪い」「あいつらが悪い」って言ってたの…。
私は、そんな恵美里が、可哀想で仕方なくて…
なんとかクラスに溶け込めるように優しく接してたけど…」
美弥子が言う。
「あいつらが悪い」
確かに、私の中学時代の口癖だった。
「恵美里にだって、、悪いところはあったのにー。
人の話聞かなかったり、学校行事で自分勝手に動いたりーーー」
美弥子の言葉を聞いて私は”裏切られた”気持ちになった。
美弥子は私の親友だったーー
でも、彼女は”いじめられている私にも悪いところがある”
そう思っていたのーーー?
「---じゃあ、あの恵美里ちゃんにも
悪いところがあったって言うの?」
私は殺気を込めて言った。
「---だってそうでしょ?あの子はーーー」
美弥子の言葉で私は”キレた”
いじめられっ子にも原因がある?
ふざけんな!
私は壁ドンをして、
美弥子を脅かしてやった。
そして言った。
「ねぇ?もしもあの日、私が怨霊になって
希美の体を乗っ取って、今、生きてるとしたらどう?
み・や・こ…?」
私が低い声で美弥子に言うと、
美弥子がおびえた目で私を見た
「--え、、、嘘…
の…希美ちゃん……
ま、、まさか」
信じられないという顔で美弥子は私を見た
「そうーーー
私は恵美里。ワタシを馬鹿にしたこの女の
体を奪って、人生そのものを横取りしたのーー」
私の言葉に美弥子が恐怖で身を震わせた。
「----う、、、うそ、、、l
い、、、今すぐ希美ちゃんから出てって!」
美弥子が叫ぶ
出てけー?
私に消えろって言うのー?
「---アンタのコト、親友だと思って損した。
アンタも滅茶苦茶に壊してやるー」
私はそう宣言して、
クラス会の会場へと戻った。
そしてーーー
「ねぇみんな!
美弥子がこんな集まりつまらないって言ってるの!
生意気だと思わない?
ちょっとみんなで懲らしめてやろうよ!」
私は高らかに宣言した。
遅れて戻ってきた美弥子が何かを叫んでいる。
私は可愛いー。
人望もあるー。
みんなー私のいいなり。
あの中学の時のようにーー。
「---なんか、、嫌だな」
「希美ちゃん、変わっちゃったね…」
「いこ… 美弥子、お店変えよう」
クラスメイト達は、私の言うことを聞く所か、
私の事を蔑み、お店から続々と出ていったーー
「---希美ちゃんの人生、返してあげて」
美弥子が去り際に言う。
私は頭にきて、美弥子をビンタすると、美弥子は
涙を浮かべながら立ち去って行った
「---ー可愛いからって、調子に乗らないで」
いじめっ子の一人だった女が、そう言って
立ち去っていく。
気づけば会場には私一人ーーー。
「----何なの!」
私はヒステリックに騒ぎ立てた
私は可愛いの!
あんたたちみんな、私の足もとにも及ばないくせに!
生意気よ!
生意気よ!!!
私は一人残された部屋でいつまでも、いつまでも
ヒステリックに騒ぎ立てた…。
ふと鏡に写った自分の表情にはーー
可愛らしさや清楚な雰囲気が
無くなっていた。
そこにはただ、憎しみに支配された、
墜ちた着物姿の女が写っていたーーー
③へ続く
コメント
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この場合自分にも非があるだろう……( ˘ω˘ )
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美人に暴言吐かれて興奮する変態はこの集まりにはいなかったのか
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> この場合自分にも非があるだろう……( ˘ω˘ )
同じくそう思います(笑)
美人になった後も性格の悪さが出ちゃってる感じ…
そんな彼女の行く末は明日!!
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> 美人に暴言吐かれて興奮する変態はこの集まりにはいなかったのか
居なかったようです(笑)
変態が居たら面白かったかもしれませんね^^