<皮>枚数が全てを決める世界①~力の証~

その世界では、
”人を皮にする力”によって、たくさんの皮を着ている人間ほど
”地位が高くなる”という仕組みが出来上がっていたー。

”着ている他人の身体の枚数”が、
全てを決める世界の物語ー。

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「ーーご苦労様でしたー
 あなたの此度の活躍、わたしの耳にもちゃんと届いていますよー」

とある王国ー
女王のルルがそう言葉を口にすると、
任務を終えて帰還したばかりの男性騎士・レイドが
「いえ、当然のことをしたまでです」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーーサイード、レイドに褒美を」
女王・ルルが横に立つ宰相・サイードに声を掛けると、
サイードは「はっ」と、頭を下げてから
男性騎士・レイドに対する”褒美”を用意したー。

がー、
その褒美は金や銀の類ではなく、
地位でもなくー、
”人間を模した着ぐるみ”のような謎のペラペラの物体だったー。

「ーー光栄でございますー」
男性騎士・レイドはそれを手にすると、
嬉しそうに笑みを浮かべながら頭を下げるー。

そうー
この世界ではこの、”ペラペラの着ぐるみのような物体”が、
何よりの褒美であり、
褒美として”これ”を受け取ることは、
この世界では当たり前のことだったー。

”人を皮にする力”ー。
王国に代々伝わる謎の力によって、
この世界では”平民”たちを皮にして、
着ぐるみのような状態にし、
上流階級の人々がそれを着ることで、
”他人の身体を乗っ取り”、生活しているー…。

平民たちは”娯楽”のために、
上流階級の人々に皮にされて、
まるでファッションのように身体を乗っ取られているー

この世界は、そういう世界だったー。

そしてーーー
この世界では”着ている皮の枚数”が、
そのまま地位に直結していたー。

”皮”は、着ることで、その皮にされた人間のサイズに
中身も自動的に調整される作用を持っていて、
例えば巨体の男が、華奢な美少女を皮にして、
それを着た場合ー…

普通であれば、サイズ的に華奢な美少女の皮を着ることはできないし、
無理に着ようとすれば、自分の身体より遥かに小さい
美少女の皮は千切れてしまうー。

しかし、それでも、特殊な力が働く”皮”において、
そんな常識は通用しないー。

着る側の身体のサイズの方が遥かに大きかったとしても、
皮を着た際に”中身”は、圧縮され、
自分よりも小さい身体の”皮”も着ることができるし、
何の不自然さもなく、その身体を乗っ取ることができるー。

そうして、誰かの皮を着て”乗っ取った状態”で、
さらに別の人間を着ることもでき、
2枚、3枚、4枚、5枚と他人の皮を”重ね着”していくことができるのだー。

この世界では、その”重ね着している枚数”が
”地位”を決める。

現女王の”ルル”は、現在、77枚もの人間の皮を着ていて、
名実共にこの国のトップになっているー。

「ーーこれからも期待していますよー。レイド」
褒美を受け取った騎士・レイドに対して
女王のルルはそう言葉を口にすると、
「ははっ」と、頭を下げてから立ち去っていくレイド。

騎士・レイドは現在32枚の皮を着ていて、
騎士の中でもかなり上位に位置する位を得ているー。

「ーー女王様、”皮”のストックがそろそろなくなりつつあります」
宰相のサイードが女王・ルルに近付くとそう言葉を口にするー。

すると、ルルは、「フォート村の住人を皮にして、補充しなさい」と、
どこか淡々とした口調でそう告げるー。

それを聞いた宰相・サイードは
「しかし、あの村は既に人口が減り過ぎて壊滅状態にー」と、
そう指摘する。

がーーー

「ーーうるせぇなー」
女王・ルルは突然態度を変えると、
「ー”俺”が皮を取ってこいって言ってるんだから、取って来いよ」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーは…失礼いたしましたー」
宰相のサイードは、ルルの突然の豹変を前に
驚いたような表情を浮かべると、
「すぐに手配いたします」と、そう言葉を口にするー。

「ー最初からそうしろよークズが」
女王・ルルはそれだけ言葉を口にすると、
何度か咳ばらいをしてから
「じゃあ、お願いしますねー。サイード」と、
いつものような穏やかな口調でそう呟いたー。

「ーーーー」
宰相・サイードは戸惑いの表情を浮かべながらも、
”女王・ルル”の言う通り、
フォート村から”皮”を補充しようと軍勢を差し向けるー。

この王国での”女王”の身体は、一番偉い人間の証ー。
この王国で”最も多くの皮”を着ている人間に、
女王ルルの”皮”が与えられるー。

そして、この王国を意のままにすることができるー。

現在の女王・ルルは
スラム街で生まれた盗賊上がりの男に身体を乗っ取られているー。

何も持たない彼だったものの、
手段を択ばずに、”皮”を手に入れて行き、
”彼の前”に女王・ルルであった男を罠にはめて抹殺ー、
彼が持っていた50枚の皮と、それまでに自分が手に入れていた皮を
合わせて、”この王国で一番多くの皮を持つ人間”となり、
こうして女王の座を手に入れたのだー。

もちろん、
周囲の人間の大半は、”そのこと”を知っているー。

けれど、この王国では
中身が誰であろうと”最も多くの皮を着ている人間”が偉く、
上に立つ存在となるー。
例え、中身が極悪人であろうともそれは変わらないー。

「ーーー今の女王様は暴政が過ぎるー…」
宰相・サイードはそうため息を吐き出すと、
表情を曇らせるー。

サイードは現在、45枚の皮を着ているー。
”中身”は、元々この王宮で働いていた使用人の男の一人だ。

堅実に”皮”をかき集めて今の地位を手に入れているー。

ただ、それでも女王・ルルを着ている盗賊上がりの男の”77枚”には
敵わないー。

45枚しか着ていないサイードが、
”女王・ルル”の77枚を超えるのはかなり難しいー。

「ーーーー…しかし、このままではー…」
宰相・サイードは不安そうな表情を浮かべるー。

”着ている皮の枚数が全て”であるこの世界においては、
”謀反”のようなものもなかなか起きることはなく、
とにかく”着ている枚数”がモノを言う状態だー。

が、それでも平民たちも人間である以上
”限度”と言うものはあるー。

現在の女王・ルルを着ている男は
とにかく横暴の限りを尽くしていて、
このまま、このような状況が続くようなことがあれば、
いずれ民衆たちの不満は爆発してしまい、
取り返しのつかないことになってしまうー。

宰相のサイードはそれを危惧していたー。

ただー、今の女王・ルルに逆らうことはできないー。
女王・ルルに逆らうためには、自分自身が
”78枚以上の皮”を着る必要があるー。

それが、この王国での”絶対的なルール”だー。

「ーーーどうにか、しなくてはー」
宰相・サイードはそう言葉を口にすると、
ため息を吐き出しながら、
ひとまず今は、女王・ルルの指示通りに
フォート村へと赴き、
そこの村人たちを”皮”にして調達するための
手はずを整え始めたー。

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「ーーひひひひひひひ!
 お前たちは、皮になるんだァ!」

可愛らしい雰囲気の女騎士が、
ゲラゲラと笑いながら、
王国に代々伝わる謎の力を駆使して、
次々とフォート村の村人たちを”皮”に変えて行くー。

「ひひひひっ!はははははははっ!」
女騎士は笑いながら、満足そうに
混乱する村人たちを見つめると、
「お前たち平人は、我々の”お洋服”なんだよ!
 大人しく皮になりな!」と、ゲラゲラと笑うー。

彼女も、身体を乗っ取られている人物でー、
”中身”は、女王・ルルを乗っ取っている盗賊上がりの男の
”仲間”だー。

現在は一番”上”に来ている女の身体以外に、12枚の皮を着ているー。
”騎士”として王国に仕えるためには10枚以上の皮が必要で、
”中身”が元々自分の兄貴分である女王のルルから、
3枚、皮を分けて貰うことで、合計12枚の皮を重ね着し、
騎士になることができたー。

この男は、12枚の皮のうち、一番お気に入りの
とある村で薬屋をやっていた娘の身体を一番上に着て
その身体を使っているー。

「ーーー騎士様…どうか、どうか、子供だけはー
 わたしは皮にされても構いませんー」

村の女が、女騎士にそう嘆願するー。

が、元は心優しい薬屋さんだった女も、
今や中身は極悪な盗賊ー。

顔に似合わぬ邪悪な笑みを浮かべながら、
「ー子供だけは助けて欲しい?そうかそうかー」と、
そう言葉を口にしつつ、
村の女の背後にいる子供を見つめるー。

そしてーー

「ーーじゃーー」
と、そう言葉を口にすると、
”人を皮にする力”を使ってー、
母親の方ではなく、子供の方を”皮”にしてみせたー。

「ーあ~~~手が滑ったァ」
邪悪な笑みを浮かべつつ、煽るような口調でそう言葉を
口にする女騎士。

もちろん、本当に手が滑ったわけではないー。
”わざと”だー。

「ーーあ…ぁ… あ…ぁああああああ…」
目の前で自分の子供が”皮”にされてしまったのを見て、
母親はその場で泣き崩れるー。

その表情を見て、女騎士はゾクゾクとしながら
「いいねー。その絶望の顔ーいいねー」と、
そう言葉を口にすると、たった今”皮”にしたばかりの
子供の皮を着て、その身体を乗っ取ってみせるー。

”明らかにサイズ”が小さいものの、
皮にされた人間を着ることにより、サイズは無視して
その身体を自由に使うことが出来るー。

「あ…ぁあああ…」
我が子が目の前で乗っ取られてしまった母親は
愕然としながらその光景を見つめるー。

「これで、俺は”13枚”ー
 あんたも知ってるだろ?この世界じゃ
 人間を着てれば着てるほど、偉いー。
 枚数が”強さ”の証だー。」

目の前で母親の子を乗っ取ってみせた
元盗賊の男で、女騎士の身体を使っていた男は
そう言葉を口にすると、
「ーあんた、何枚だ?1枚?それとも2枚?」と、
ニヤニヤしながら、”母親”が着ている”皮”の
枚数を確認するー。

「ーーーーです」
母親は、涙ながらにそう言葉を口にすると、
「ん~~~?聞こえねぇな?1枚?」と、そんな言葉を返すー。

そう促された母親は
涙を流しながら「ーー0枚です」と、
そう再度言葉を吐き出すと、
「ーーぜ、0枚ぃ?」と、乗っ取った母親の息子の身体で
そう叫びながら、ゲラゲラと笑いだすー。

「ー0枚って、”ゴミ”じゃねぇか!!!」

この世界ではー、
”他人の身体を全く着ていない状態”ー
つまり、乗っ取った身体が0の状態で過ごしている人間は、
”ゴミのように扱われる”こともあるー。

平民同士の間でそういったことはないものの、
重ね着をしている枚数が多ければ多い人間であるほど、
”皮を着ている枚数が0”の人間はまるでゴミのように
扱われるケースが多いー。

「ーーーご、ゴミー…?」
震えながらも、悔しそうに、悲しそうにそう呟く母親ー。

「ーーへへへ。そう、ゴミだ」
息子の身体でそう言葉を口にすると、
「そうそう、あんたも皮になってもらうぜー。
 女王様が”皮を補給しろ”ってそう仰せだからなー」
と、そう言葉を口にしてから、
そのまま母親の方も、結局皮にしてみせると、
ゲラゲラとその場で笑い始めるのだったー。

「ーーーーーー」
その様子を、任務に同行していた男性騎士・レイドが
物陰から見つめつつ、表情を曇らせるー。

「これじゃ、まるで無法者だー…」
男性騎士・レイドは不満そうにそう呟くと、
そのままその場から立ち去っていくー。

そして、王宮に帰還すると、
男性騎士・レイドは宰相サイードと合流するー。

「此度は、どうだったー?」
宰相のサイードがそう言葉を口にすると、
騎士・レイドは表情を歪めながら答えるー。

「あれでは、まるで盗賊ですぞー」
とー。

「ーーー……」
宰相・サイードは暗い表情を浮かべるー。

しかしー、それでもこの世界では”皮の枚数”が全てー。

「ー今の女王を失脚させるには、”77枚”を超える必要があるー」
宰相・サイモンがそう言葉を口にすると、
騎士・レイドは困惑の表情を浮かべるー。

「しかし、少しずつ皮を増やしても女王は、全員の着ている枚数を
 把握しておりますー。
 50を超えたあたりで、女王も警戒し始めるでしょうー」

騎士・レイドがそう言うと、宰相・サイードもため息を吐き出すー。

二人は、現女王の暴政を止めようと考えてはいたものの、
”77枚”には遠く及ばず、どうすることもできずにいたー。

②へ続く

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コメント

”枚数”がモノを言う世界の物語デス~!!

こんな世界だと、
色々な意味で生活していくのが大変そうですネ~…!

続きはまた明日~!★
今日もありがとうございました~!★

続けて②をみる!

「枚数が全てを決める世界」目次

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