卒業式には行きたくないけれど、
式のあとに撮影する予定の集合写真には欠席したくないー。
そんなことを言い出した妹。
その上、妹の姿に変身させられてしまった兄はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
卒業式前夜ー。
妹・彩智の姿に変身させられてしまった状態の
兄・祐樹は戸惑いの表情を浮かべながら、
部屋の中で過ごしていたー。
「ーー…に、しても、本当に元に戻れるのかー?」
彩智の姿でそう言葉を口にしながら、
落ち着かない様子で髪を触るー。
妹の彩智は髪が長いー。
対して、兄の祐樹は長髪にしたことがないため、
どうしても”髪”の部分では違和感を感じずにはいられないー。
「ーー…」
元に戻れるのか、明日本当に卒業式で”代わり”を務めることが
できるのかどうか、
色々な不安が尽きずに、落ち着かない様子を見せる
彩智に変身した祐樹は
「はぁ、トイレも行きたくなって来たー」と、
そのままソワソワした様子で立ち上がるー。
そして、隣にある彩智の部屋の入口をノックすると、
「彩智ー、トイレに行きたくなってきたから一旦変身を解除してくれ」と、
そう言葉を口にするー。
しかし、彩智は部屋の中から
”え~?ほら、明日も卒業式に行くとき、トイレ行きたくなるかもしれないし練習練習”と
変身を解除するつもりがないような言葉を口にする。
その言葉に、「で、でも俺、女としてのトイレなんて分からないしー、
それも彩智だって、俺に色々見られたくないだろ?」と、
慌てた様子で、変身を解除するように促す。
が、それでも彩智は”全然ー気にしないし。変身解除する方が面倒臭いし”と、
なおも取り合わない姿勢を見せると、
そろそろトイレも限界だった彩智に変身している祐樹は
「じ、じゃあこのままトイレに行くからなー?」と、そう言葉を口にしたー。
”うん!頑張って!
それとー、明日卒業式に出るんだから、お風呂もちゃんと済ませておいてね”
部屋の中から”当たり前”と言わんばかりに
そんな言葉まで投げかけて来る彩智ー。
「お、お、お風呂も入らせるのかよー!?!?
彩智の身体ーぜ、全部見えちゃうぞ!?」
彩智の姿で祐樹はそう言葉を口にすると、
”お兄ちゃんが変態じゃないって信じてるからー”と、
そんな、”都合のいい返事”が返って来るー。
どうせ、変身を解除する方法が実は存在しないか、
あるいはただ面倒臭がっているか、そのどちらかだと、
彩智の姿に変身している祐樹は呆れ顔で首を横に振るー。
が、彩智は一度言い出したら聞かない性格。
それをよく理解しているからこそ、
これ以上話をしても意味がないと判断、
そのまま渋々トイレとお風呂に向かうのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、翌朝ー。
卒業式当日の朝を迎えたー。
「~~~~~~~」
彩智に促されて、彩智がいつも着ている制服を身に着けると、
彩智に変身している祐樹は、
戸惑いの表情を浮かべると共に、顔を赤らめたー。
「ーー…お兄ちゃん、顔赤いけど、
もしかしてわたしの制服着て興奮してたりする?」
彩智が”嫌悪感”を隠そうともせずに、
そう言葉を口にすると、
彩智の姿に変身している祐樹は
「こ、こんな制服着たことないし、変態じゃなくても
こんな状況になったら少しはドキドキするんだよー!」と、
慌てた様子でそう言葉を口にするー。
「ーふ~ん??」
何故か疑いの眼差しを向けて来る彩智ー。
「ーそ、そ、そんな反応するんだったら
代わりに卒業式行くのやめるぞ!?
彩智だって、変態なお兄ちゃんに自分の姿を預けるのは不安だろ?」
彩智の姿のまま、祐樹は少し不貞腐れた様子でそう言うと、
彩智も流石に兄の機嫌を損ねてしまったことを気まずく思ったのか
「あははー、冗談に決まってるでしょ。冗談」と、
それだけ言葉を口にしたー。
「ーーーーーそれよりもー」
気まずい様子の彩智は、強引に話を変えようと
”彩智として卒業式に出る”兄・祐樹に色々な打ち合わせを
口にし始めるー。
「ーー友達から話しかけられても昨日言った通りほぼ無視でいいから!」
彩智のそんな言葉に、彩智に変身している祐樹は
「い、いやー、彩智のフリをする俺としちゃ、その方が楽ではあるけどー
そんなことしたら友達失うんじゃ?」と、
少し不安そうにそんな指摘をするー。
しかし、彩智は「あははー」と笑うと
「わたしの周り、馬鹿しかいないから大丈夫」と、そう言葉を口にすると
「卒業後に仲良くする予定の子いないしー」と、そんな言葉も続けたー。
不登校気味な割に、頭だけはとても良い彩智は、
どこか周囲を見下しているような言動を取ることもあるー。
「おいおい…
そんな風に言ってる人たちとの集合写真、欲しいのか?」
彩智に変身している祐樹は呆れ顔で呟くー。
が、妹・彩智の行動原理や思考は、
兄であっても完全に理解するのは難しいー。
色々な意味で頭のネジが1本か2本ぐらい
飛んでしまっているような感じは否めないー。
「とにかく、よろしくね!」
彩智は最後まで強引な様子でそう言葉を口にすると、
いよいよ”代わりに卒業式に出る”以外の選択肢が
ほぼ完全に失われた祐樹は、
観念した様子で「わかったわかったー。
妹のためにも頑張るよ」と、少し皮肉交じりのような口調で、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
彩智の姿で卒業式に向かう準備を家でしていると、
「あ、彩智ー。卒業式は学校に行くんだねー」と、
彩智と祐樹の母親がそんな言葉を口にしたー。
「え?あ、う、うんー!
さ、流石に卒業式はねー
あはははー」
完全に母親からは”彩智”だと思われている状態ー。
もちろん、逆に”あ、祐樹!”と言われた方が
”何で分かった!?”と、びっくりしてはしまうものの、
こうしていざ、”完全に彩智扱い”されると、
親を騙しているような妙な背徳感や、
”もしもバレたら何て説明すればいいんだ?”という
ドキドキが膨らんでしまうー。
「ーーそうーよかったー。
彩智のことだから、卒業式も休むんじゃないかって
心配してたのよ」
母親がそう言葉を口にすると、
「ーは、ははははー」と、彩智の姿のまま
苦笑いするしかない祐樹ー
”さすが母さんーよく分かってるじゃんー…”と
内心で呟きながらも、流石にそうは言えずに
気まずそうに冷や汗を流しながら用意を終えるー。
そして、いよいよ家を出発するタイミングになり、
家の玄関から外に出た彩智の姿をした祐樹ー。
が、このタイミングでも祐樹は戸惑いを覚えたー。
女子高生の制服姿で自分が外を歩いているー
という状況に妙な違和感と背徳感、
そして”本当に大丈夫なのか?”というそんな不安を
感じてしまうー。
それと同時に、
自分の姿が本当に”彩智の姿のままなのか”ということも
不安になってしまうー。
手とか、胸とか、足とか、
そういった部分は見えるし、
そこを見れば”彩智の姿のまま”であることは分かるー。
ただ、自分自身で自分の顔をいつでも確認するー…
と、いうことはできないー。
そのため、”急に顔だけ自分の顔に戻っていないか”だとか、
そういうことがどうしても気になってしまうー。
時々、落ち着かない様子で顔に手を触れたり、
顔が反射するようなものを見つけると、
”本当に自分の姿が彩智のもののままなのか”
ということも気にしながら、
ゆっくりと道を歩いていくー。
”うっかり男っぽい歩き方になってないよなー…?”
彩智の姿での外出には、不安が絶えないー。
そう思いつつ、彩智から預かったメモ用紙を見つめると、
「ーえっと、ここから電車に乗ってー…」と、
そう言葉を口にして、駅の中へと入っていくー。
「ーーー」
”ラッシュ時に慣れない姿ってのも不安だなー
しかも、女子だしー”
と、祐樹は彩智の姿で電車に乗ることも
不安に思いながら
”まぁ、でも、こうなりゃなるようにしかならないだろ”と、
そんな風に思いつつ、電車に乗り込むー。
祐樹の大学とは違い、
彩智の通っている高校は、ちょうど都心部に向かう方向の
電車に乗る必要があるために、
この時間帯は電車がとても混雑しているー。
「ーー結構、きつきつだな…
しかも、彩智の姿だけど色々大丈夫かなこれ?」
彩智の姿で、そう言葉を口にする祐樹ー。
もちろん、普段この時間帯の電車に乗っている女子は、
こういう環境には、嫌でも慣れているー。
ただ、彩智の姿で外に出たのが初めてな祐樹から
してみれば、彩智の姿のまま
こんな満員電車にいきなり乗り込むのは
少し戸惑いがあったー。
”ーーま、まぁ…万が一変態がいたとしても、
み、見た目が彩智なだけで俺は男だしー”
自分自身に言い聞かせるようにして
心の中でそう呟くと、
彩智の姿をした祐樹は、
”何も起きるなよー。何も起きるなよー”と
念じながら、そのまま満員電車を乗り切るー。
満員電車に乗っているからと言って
毎日のように身体を触られたりすることはないしー、
当然と言えば当然だー。
ようやく、駅のホームに降りて、
そのまま妹・彩智の高校を目指し始めるー。
がーー、そこで祐樹はふと足を止めると
戸惑いの表情を浮かべたー。
「んーー…?
待てよー。何だこれ?」
彩智から受け取ったメモを確認しながら、
乗り換えて次に乗る電車を確認するー。
が、そんな行先の電車はなく、
スマホで確認しても、彩智のメモに書かれた行先の
電車は存在しなかったー。
「何だよー…
まさか、彩智のやつ、適当なことを書いたのかー?」
彩智の姿のまま、祐樹は心底困惑した表情を浮かべるー。
妹の彩智には”適当”な一面もあるー。
驚くほどに色々なことに対して適当で、
彩智から手渡された”高校までの道のり”も
間違っていたとしても、”まぁ、彩智だからな”
で納得してしまうぐらいには適当だー。
「あぁ、くそっー…
もっとよく確認しておくんだったー」
そう言葉を口にしながら、駅員に確認しようと
そのまま窓口へと移動し始める
彩智の姿をした祐樹ー。
”彩智の姿に変身させられてしまった”という
普通であればあり得ない状況を前に
戸惑っていた祐樹は、
それどころではなかったために、
彩智にしっかりと道のりを確認しておくことを
忘れてしまっていたー。
そのことを後悔しつつ、駅員に
「あのー」と、そう声を掛けるとーー
駅員が丁寧に、彩智本人が書いたメモの”間違い”を
教えてくれたー。
最悪なことにー…
彩智が書いてくれたメモは
そもそも”最初に乗る電車”自体を書き間違えていて、
”全くお話にならない”ものであることが分かるのだったー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ちょっと~~~~~!結局こうなっちゃってるじゃん!!!」
それから時は流れー、
卒業アルバムが到着したー。
その中の集合写真を見て彩智が
不満そうにそう叫ぶー。
そこにはー、
集合写真の右上…ではなく、左上に彩智の切り取られた
写真が載っていたー。
「ーーも~~!お兄ちゃんの役立たず!」
彩智が不満そうにそう言葉を口にすると、
その視線の先にはー…兄の祐樹の姿があったー。
あのあと、結局、彩智の高校にたどり着くのに手間取ってしまい、
既に卒業式は終了ー、
彩智の姿をした祐樹が高校に到着した時には
もう写真の撮影もとっくに終わってしまっていたー。
そして、そのまま帰宅ー。
彩智に散々文句を言われる羽目になってしまい、
祐樹は不満に思いながらも、仕方がなくそんな彩智の小言を聞くことに
なってしまうのだったー。
ただー、祐樹にとって、一つ良かったことは
妹の彩智はちゃんと”元に戻る方法”は、先に把握していて、
”どうせ、元に戻れないとか言い始めるんだろ”と、内心で思っていたものの
あっさりと元の姿に戻してくれたー。
そのおかげで、今もこうして元の姿でいつも通り暮らすことができているー。
ただーーー…
「あ、そうだ!ねえお兄ちゃん!明日ヒマー?
バイトに行くの面倒臭いから、変身してわたしの代わりにー」
彩智はあれから頻繁に”身代わり”をお願いするようになってしまったー。
今日も、彩智からそんなお願いをされた祐樹は
「明日は暇じゃない!」と、そう叫ぶと
慌てた様子で自分の部屋に逃げ込むー。
「絶対嘘!ヒマでしょ?何か用事があるなら言ってごらん!?」
彩智のそんな言葉に、
祐樹は部屋の中から「明日は昼寝っていう大事な用事があるんだ!」と、
そう叫び返すのだったー…。
おわり
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コメント
卒業式の集合写真には結局写れず…★!
でも、何だかんだで楽しそうに(?)
暮らしているので、平和的な結末ですネ~★笑
お読み下さり、ありがとうございました★!!
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