”返さなきゃお前の知り合いでバンドを作る”ー。
借金をしながら逃げ惑っていた男は、
借金取りの男から、
そんなことを宣告されてしまうー。
しかし、それでも彼はそのことをあまり重く考えておらずー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーさ~て今日も宝くじ買って帰るかー」
借金取りの男・御手洗 省吾から”来週までに返済”と言われているにも
関わらず、幸助は今日ものんきにバイト帰りに宝くじを買って
帰ろうとしていたー。
「宝くじが当たりゃ、御手洗さんに金も返せるしなー」
そう言葉を口にしながら、口笛を吹きつつ道を歩く幸助ー。
がーーー
「コウちゃんー口笛なんて吹いて、ご機嫌じゃん」
背後から、借金取りの省吾が姿を現し、
幸助は心臓が飛び出しそうになるほど驚いて声を上げるー。
「ーい、い、い、み、御手洗さん!?」
幸助がそう言うと、
「どう?金、返せそう?」と、省吾がそう笑うー。
「ーあ、あぁ~~~はは、へへー
今夜、宝くじの抽選があるので~へへへ」
「へ~神頼みかー。いいね」
省吾は揶揄うようにしてそこまで言うと、
「宝くじ当たらなかったら、どうするつもりなんだ?コウちゃん」と、
笑いながら言うー。
「ーえ~…はは、はははー当たりますよ」
幸助はその場を凌ぐためだけにそう言うと、
省吾は笑いながら「大事な人たちでバンドを結成されないように、頑張れよ」と、
そう言葉を口にするー。
「ーは、はははははー…
俺の周りには楽器できる人もいませんし、
みんな忙しいので」
浩平はそれだけ言うと、立ち去っていく省吾を見つめながら
汗を垂らしつつ、慌てて家に向かって走り出したー。
当然、都合よく宝くじが当たるはずもなく、
当たり前のように宝くじはハズレてしまったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「ーーーー姉さん、バンドに興味なんてないよな?」
幸助が会社に向かう準備をしていた姉の真桜に向かって聞くと、
「はぁ?バンド?」と、困惑した表情を浮かべながら言ったー。
「ーー全然、わたしには無理だしー
仕事も忙しいし」
真桜がそう言うと、
幸助は「誰かに誘われてもバンドを始めたりしないよな?」と、
そう続けるー。
質問の意図が分からず、真桜は困惑した表情を浮かべながら
「あんた何言ってんのー?」と、そう言葉を発すると、
幸助は「いや、いや、へへー何でもないー」と、
それだけ言葉を口にしたー。
「ーー?
変なのー。
っていうか今度はバンドがどうこう言って
借金作るつもりじゃないよね?」
姉・真桜がそう言うと、
幸助は慌てた様子で「いやいや、そんなことはしない。しないよー」と、
そう言葉を口にするのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日の夕方ー。
オフィスを出て
「あ~あ、今日は残業かぁ」と、少しだけ休憩時間を貰い、
ため息を吐き出した真桜ー。
このあとの残業に備えて
コンビニで飲み物と軽い食事を買っておこうと、
そんなことを考えていたその時だったー。
「ーーコウちゃんのお姉さんだねー?」
背後から男の声がしたー。
「はい?」
真桜が不思議そうに振り返ると、
そこには借金取りの男・御手洗 省吾がいたー。
「ーーーあぁ、あぁ、急にすみませんねー
俺は、あなたの弟さんに金を貸しているこういう者でしてね」
省吾はそう言いながら名刺を差し出すー。
「ーーー…え…」
呆然としながら”信じられない”という表情を向ける真桜ー。
「ーーおやおや、その顔を見ると
コウちゃんが借金してること、知らなかったのかな?」
省吾はそこまで言うと、
真桜は「ーお、弟はお金を返したってー…」と、そう呟くー。
「ーははっ、コウちゃん、嘘つきだからなぁ」
省吾はそこまで言うと、
「今日の朝までに返す約束になってたんだけど、
や~っぱり、約束を守ってくれないみたいでさ」と、
そう言葉を続けた上で、笑みを浮かべたー。
「ーだから、お姉さんには”バンド”をやってもらうよー」
省吾の言葉に、
真桜は「バンドー…?何を言ってー?」と、表情を歪めるー。
「ーわたし、このあとも仕事がーー…」
そう言葉を口にすると同時に、
背後からゾワッと、背筋が凍るようなー、
謎の感触がしたー。
その直後、ビクッと震える真桜ー。
「ーへへへー上手く行ったか?」
省吾がそう言うと、
真桜はニヤッと笑みを浮かべながら
「ーはいー御手洗さんー」と、そう言葉を口にするー。
省吾が背後から声をかけたタイミングで、
省吾の部下が、真桜の背後から真桜に迫り、
そして、真桜に”憑依”したのだー。
「へへへー
確かお前は”ギター”できるんだったよな?」
省吾がそう聞くと、「はいー」と、真桜に憑依した男は
真桜の身体でそう答えるー。
「ーへへ。じゃ、残りのメンバーも集めるから、
先にお前はその身体に馴染んでおけ」
省吾はそう言うと、邪悪な笑みを浮かべながら
憑依された真桜と共にゆっくり歩き始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーそういえば、姉さんはー?」
翌日ー
幸助は、昨日は姉の真桜が帰宅してこなかったことに不安を覚えるー。
「ーーーー」
幸助はふと、先週、省吾に連れられて見せられた
”ライブ”のことを思い出すー。
「ーーー…」
”借金を返さなかった男”の妻と娘で構成されたバンドによる演奏をー。
「まさかなー…」
幸助はそう思いつつ、
姉の真桜にメッセージを送ると、
少しして、”返事”が返って来たーー。
”幸助、”借金”してたんだってねー”
とー。
「ーーえっ」
幸助は青ざめた表情を浮かべながら
慌てて”し、してないしてない”と、嘘の返事を送るー。
がー、真桜の返事は
”幸助のせいで、わたし、バンドをやることになっちゃった♡”と、
何故か、どこか嬉しそうな感じの返事が返って来たー。
「ーー……ば、ば、バンドー…どうして?」
幸助は真っ青になりながら
”い、いったいどういうことー!?”と、そう返事を返すも、
返事はないー。
「ーー」
あの日見せられた、”妻と娘二人”がバンドをさせられている光景を思い出すー。
幸助には”妻”はいないし”娘”もいないー。
しかしー、あの三人に当てはめて考えてみるとー…
次に狙われるのはー…
「ーーーーーーーー!」
幸助はさらに真っ青になりながら、
自分の彼女である伊藤 愛梨沙のことを思い浮かべるー。
「ーー愛梨沙ー」
すぐに愛梨沙に電話をかける幸助ー。
確か今日は、愛梨沙も仕事が休みのはずだー。
しかし、愛梨沙に電話をかけても、
愛梨沙が電話に出る様子はないー。
戸惑いの表情を浮かべながら、
すぐに「あ、愛梨沙!もし、これを聞いたら
俺に電話をして欲しいー」と、そう告げると、
慌てた様子で部屋から飛び出すー。
がーーー
いつもは1階にいるはずの母親の姿がなく、
不安になった幸助は、
1階にある両親の寝室を確認したー。
父がいないのは”仕事中”であるため
当然ではあるものの、
”母”は今日は仕事もなく、
家にいるはずー
それなのになぜー?
心底不安になった幸助が
動揺しながら家を飛び出すと、
「ーーコウちゃんー」と、そんな言葉が聞こえたー。
「ーー!?」
幸助が振り返るー。
そこには、彼女の”愛梨沙”の姿ー。
「ーあ、愛梨沙ー…?」
幸助は、愛梨沙が無事だったことに
安堵の表情を浮かべながらも、
すぐに「え…今、何て?」と、そう言葉を続けるー。
それもそのはずー。
愛梨沙は普段、幸助のことを”コウちゃん”とは呼ばないー。
愛梨沙は幸助のことを”幸助”と呼んでいて、
”コウちゃん”と呼ぶのは、
幸助の身の回りでは、借金取りの御手洗 省吾だけだー。
「ーーーコウちゃんさ、お金はちゃんと返さないとダメだよ?」
ニヤッと笑みを浮かべる愛梨沙ー。
「ーーー…え……」
震えながら幸助がそう言葉を口にすると、
愛梨沙は、幸助に”いつもとは違う”馴れ馴れしさで肩を組んでくると、
「ーーへへーいい彼女さん、いるじゃん」
と、愛梨沙はそう言葉を口にしたー。
「ーー…え…え……~~…」
幸助は困惑するー。
今、ここにいるのは、彼女の愛梨沙なのに
まるで借金取りの御手洗 省吾のような、
そんな錯覚を覚えてしまうー。
「ーー……あ、愛梨沙ー…だ、だよな?」
幸助が震える声を絞り出しながら、愛梨沙の方を見ると、
「ー御手洗って言ったらどうする?」と、
愛梨沙はニヤニヤしながらそう言葉を口にしたー。
「ーそ、そ、そ、そ、そんなわけー…」
幸助は、驚いた様子で愛梨沙を見つめるー。
どう見ても愛梨沙にしか見えないー。
借金取りの省吾が仮に本気で女装をしたとしても、
このような姿になるとは到底思えないしー、
一体これはー…?
幸助が混乱していると、
愛梨沙は「ーへへー俺は御手洗 省吾だよ?
でも、まぁ、身体はコウちゃんの彼女のものだけどね」と、
ニヤニヤしながらそう言い放ったー。
「ーーえ…っ… は、はい…???」
幸助は一気に不安そうな表情を浮かべながら
震える声でそう言葉を口にすると、
愛梨沙は笑みを浮かべたー。
「ー”憑依”って知ってるー?
俺たちさ、他人に憑依することができる憑依薬っての持ってて、
それを使うとこうやって他人の身体を乗っ取ることができるんだよね」
愛梨沙は邪悪な笑みを浮かべながらそう言葉を口にするー。
「…い、いや…あ、愛梨沙ー、さ、流石に冗談ー」
幸助がそこまで言うと、
愛梨沙は「コウちゃんさー」と、そう言葉を口にしてから
自分の胸を両手で揉んで見せるー。
路上で胸を揉みながら気持ちよさそうに笑う愛梨沙を見て、
幸助は「お、おいっ!」と、それを止めようとするー。
「コウちゃんの彼女、人前でこんなことすんの?」
愛梨沙はニヤニヤしながらそう言うと、
他の通行人がどよめく中、幸助は
「わ、わ、分かりましたー…分かりましたー」と、
”憑依”を認めざるを得ない状況に、困惑しながらも
そう言葉を口にするー。
”憑依されている”愛梨沙は「分かればいいよ」と、
そう言葉を口にすると、
「ーじゃ、コウちゃん。行こうか」と、
そんな言葉を口にするー。
「い、行く…?行くって…ど、どこにですか?」
幸助は青ざめたままそう言葉を口にすると、
「ーライブだよ。コウちゃんも来るでしょ?」と、
愛梨沙の顔・声で、いつもの省吾のような態度を見せる。
「ーーー……い、行きますー…」
幸助は生きた心地がしないまま、やっとの思いで
そう言葉を吐き出すと、
省吾と共に、この前も訪れた
ライブハウスらしき場所へと足を運んだ。
「ーじゃ、コウちゃんに新バンドを見せてやるからー
そこで座ってのんびりしてて」
愛梨沙はそう言うと、そのまま奥へと引っ込んでいくー。
幸助は手汗や冷や汗が止まらない状況のまま、
ボロいパイプ椅子に座った状態で、
表情を曇らせるー。
「ーーーー~~…お、俺はー…」
幸助は今になって”金を返さないままでいた”ことの
重大さを感じながらも、どうすることもできずに
身体を只々震わせるー。
やがてー、
そうこうしているうちに、
ステージの幕が上がりー、
そこに、幸助の姉である真桜と、幸助の彼女である愛梨沙、
さらには幸助の母親の姿が見えたー。
ギターを手にした姉・真桜と、
ロック風な服装でドラムの前に立ちながら笑みを浮かべている愛梨沙に、
キーボード担当らしき母の姿が見えるー。
「ーーね、姉さんー!?母さんー!?」
幸助がそう言葉を口にすると、
着替えて別人のようになった愛梨沙が
「ーコウちゃんさー、金、返さなかったからこうなったんだよ?
分かるよな?」と、ニヤニヤしながらそう言葉を口にするー。
「ー俺はね、どうしても金を返さないやつから
身の回りの女をもらうことにしてるんだ。こういう風にさ」
省吾に憑依された愛梨沙がそう言うと、
「そっちの二人には俺の部下が憑依してる」と、そう言葉を口にするー。
「そ、そ、そんなーーー」
幸助が泣きそうになりながら言うー。
すると、愛梨沙は言ったー。
「ーバンド好きの俺の娯楽にもなるし、
他の奴をこの女に憑依させて、俺たちのビジネスの店で
働かせることもできるー」
愛梨沙はそう言うと、笑いながらドラムの方に向かうー。
「ーま、そういうことだから、コウちゃんの借金はこれでチャラ。
今日は家族、そして彼女さんとのお別れ演奏を聞いていきなー」
憑依された愛梨沙はニヤニヤしながらそう言葉を口にして
ドラムの演奏の準備を始めるー。
憑依された大事な人たちの演奏が始まる中、
幸助は座りながら一人、涙を流すことしかできなかったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
みんな乗っ取られてしまう結末でした~…!
もうちょっと早く手を打っていれば、
違う結末もあったかもしれませんネ~…!
お読み下さり、ありがとうございました~!★
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