<憑依>はじめてのお使い①~親心~

娘が初めてのお使いに行くことになったー。

心配性すぎる父親は、
憑依薬を飲んで、
色々な人に憑依しながら、娘のお使いを見守ることに…。

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「ーーーこれと、これを買って来ればいいんだねー!」
娘の杉村 日葵(すぎむら ひまり)が、
明るい笑顔を振りまきながらそんな言葉を口にするー。

「うん!でも、本当に大丈夫~?」
穏やかな雰囲気の母親・杉村 由紀(すぎむら ゆき)は、
そんな娘の日葵に対して、少し心配そうに言葉を口にすると、
「だいじょうぶ!友達の愛(あい)ちゃんもお使いできてたもん!」と、
そんな言葉を返してくるー。

今日は、娘の日葵の”はじめてのお使い”ー。

どうやら、友達から”お使い”に行った話をされたみたいで、
”わたしもお使いする~!”と、家でそう言い出したのだー。

そんな、日葵の言葉に、母・由紀は心配しつつも
”それならー”と、もうそろそろお使いできる頃かなー?と、
できる限り近くのお店で、簡単なものを考えて、
それを日葵にお願いしたー。

がー、そんな日葵のことを、
父親である杉村 喜明(すぎむら よしあき)は、
母親の由紀以上に、心配そうな視線で見つめていたー。

「日葵~本当に大丈夫か?」
心配性の父親・喜明が日葵に対してそう言うと、
日葵は「わたし、お使いぐらいできるもん!」と、
そう言葉を口にしながら、得意気な表情を浮かべるー。

頼んだものは、豆腐とバナナと、チョコレート。
チョコレートは日葵へのご褒美にそのままプレゼントする予定だー。

他にも色々、家にないものはあったけれど、
あまりいきなり色々なものを頼んでしまっても大変だし、
”買ってきてもらう”ということよりも、
”お使いを体験させてあげる”ということが目的であったため、
それ以上は頼まなかったしー、
もし、間違えちゃったりしても仕方ない、という気持ちでの
お願いだったー。

「ーーーパパ、わたしについてきちゃだめだからね~!」
日葵がそう言いながら玄関先に向かうー。

「ーはははーわかったわかったー」
父・喜明は日葵の見透かすような言葉に思わず苦笑いすると、
日葵はそのまま「いってきま~す!」と、
母親の由紀にも手を振って、そのまま”お使い”へと出かけて行ったー。

「ーーーーー」
日葵が出ていくと同時に、心底心配そうな表情を浮かべる
父・喜明ー。

「大丈夫よー。日葵ならー」
母親の由紀も、心配はしながらも
”日葵なら大丈夫”だと、そう伝えるー。

がー、それでも、ソワソワした様子の父・喜明は、
「ーー少し、散歩してくるー」と、そう言葉を口にしてから、
立ち上がるー。

「ーーちょっとー?
 パパはついてこないで、って言われてたでしょ?
 パパがついてきてるって知ったら、
 日葵もショックだろうしー」

母・由紀は、喜明にそんな言葉をかけて、
喜明を止めようとすると、
喜明は苦笑いしながら首を横に振ったー。

「いやいや、日葵についていくわけじゃないんだー。
 せっかくの休日だし、少し散歩しようかなってー」

そう言いながら、喜明は自分の部屋にいったん戻ると、
そのまま外に出かける支度をして、玄関の方に向かって行く。

「ーーー日葵についていっちゃ、ダメだからねー?」
母・由紀が釘を刺すようにして言うと、
父・喜明は「ははー大丈夫ー」と、それだけ言葉を口にして
そのまま玄関の外へと向かって行ったー。

「ーーーーー」
一人残された由紀は、少しだけ心配そうに表情を曇らせると、
「パパってば、本当に心配性なんだからー」と、
そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

家を出た喜明は、
”自分の部屋”から持ち出したあるものを手にしていたー。

それはー
”憑依薬”と呼ばれる薬ー。

これを飲むと、霊体になることが出来て
他人に自由に憑依することができるという薬だー。

大学時代、サークルの先輩から貰ったもので、
大学時代に一度使ったものの、
”人の身体を一時的にでも奪う”ということに
申し訳なさを感じた喜明は、それ以降は
一度も使わずに、保管していたー。

捨てようと思ったこともあったものの、
憑依薬を捨てたことによって誰かがそれを拾って
悪用してしまったり、更なるトラブルを恐れた喜明は
ずっと、自分の部屋にしまい込んでいたのだー。

それにー、家族を持つことになった時に、喜明は
決めたのだー。

”この憑依薬は、家族にもしものことがあった時に使うのだ”
とー。

例えばー、家の中に凶悪犯が入ってきたりしたときに、
その凶悪犯に憑依することで家族を救うー…

憑依薬が手元にさえあれば、そんなことだった
不可能ではないー。
だから取っておいた。

そして、今が”その時”だと、喜明は思ったー。

「ーお使いは、日葵の成長のために必要なことだー。
 親として、日葵がショックを受けないようにするためにも
 ついて行っちゃいけない、というのも当然のことだー
 
 けどー」

喜明はそこまで言葉を口にすると”憑依薬”を飲んで
その場で”霊体”になったー。

自分の身体自体が一定時間、霊体になるタイプの憑依薬であるために、
”自分の身体が無防備になってしまう”と、いうことを
心配する必要はないー。

「ーーよしー、さぁ、日葵を探そうー」
霊体のまま、喜明は日葵がお使いを頼まれたお店の方向に
向かい始めるー。

”この状態”であれば、自分が日葵に見つかることはないー。

”透明人間”のような状態になっているのだからー。

「ーーお!いた!」
横断歩道を渡ろうと信号待ちをしている日葵の後ろ姿を見つけた喜明は
安堵の表情を浮かべながら、その様子を見守るー。

日葵が一瞬、後ろを振り返ったものの、
当然、”パパ”は憑依薬を飲んで霊体の状態であったために、
パパの存在に気付くことはなく、そのまま歩き始めるー。

「ふ~……いくら姿が見えない状態だって
 自分で分かっていても、何となく視線が合ったような気がすると
 緊張するなー」
そんな言葉を口にする喜明ー。

学生時代に憑依薬を使った際に、
”自分の声”も周りには聞こえない状態であることは
既にしっかりと確認済みで、その心配はないー。

ただ、そうは言っても”こっちを見ている”と、
”実は見えてるんじゃないか”と、心配になってしまうのも
また事実ではあったー。

「ーって、ひ、日葵!そっちじゃない!」
喜明はそう声を上げるー。

日葵が、母・由紀からお使いを頼まれたスーパーがある方向とは
違う方向に間違えて向かい始めてしまったことに気付くー

「日葵!こっちだ!こっち!」
慌てて日葵の横に駆け寄って、喜明はそう叫ぶー。

けれど、霊体の喜明の声は日葵には聞こえないし、
姿も日葵には見えないー。

「ぐぐぐーこのままじゃ日葵が迷子になってしまうー」
そんな風に思った喜明は慌てた様子で周囲を見渡すー。

日葵がこれ以上変な方向に進んでしまわないように、
一刻も早く日葵に”道が違うよ”と、教えなくてはいけないー。

が、路地のような場所に入ってしまったことで
周りには人がいないー。

「ーーだ、誰か憑依できる身体はー」
最初は”霊体の状態で見守るだけ”だったつもりの喜明は、
日葵に道が違うと伝えるために、
やむを得ず、通りすがりの誰かに憑依しようと考えて
周囲を見渡すー。

そしてーー

「ーー!」
喜明は、”憑依できる身体”を見つけたー。

がー、その相手は可愛らしい雰囲気の
ツインテールの女子高生だったー

「~~~~~~~」
学生時代に憑依薬を使った際にも男にしか
憑依したことがなかった喜明は、
”よりによって、一番憑依しちゃいけない気がする相手が目の前にー”と、
そう戸惑うー。

何となく、”おっさん”が、女子高生に憑依することには
強い背徳感のようなものがあったー。

「ーぐぐぐ…こ、この子に憑依するのはなんかとても
 してはいけないことのような気がー…」

喜明は、そんな言葉を口にしながら、
狼狽えたような表情を浮かべるー。

しかし、日葵はどんどん”違う方向”に進んでいるー。
このままでは絶対に迷子になってしまうし、
そもそもこんな裏路地みたいなところを
日葵に一人で歩かせるのも、とても良くない気がする。

「日葵っ…!日葵っ!」
霊体のまま必死にジェスチャーをするも、
当然、日葵にその姿は見えないし、
その言葉も届かないー。

「あぁ、くそっー!こうなったら日葵のためだー!」

仕方がなく、喜明は通りすがりの女子高生に憑依することを決意すると、
そのまま自分の霊体をその子に重ねたー

「うっ…」
ビクッと身体を震わせた女子高生ー。

「ーーーー…っ…」
喜明は、自分の手が憑依した相手・麻衣(まい)のものになっていることを
確認すると、ドキッとしながらも、
「ち、違う、俺はドキドキするために憑依したんじゃない」と、
自分に言い聞かせながら、そのまますぐに日葵のほうを向くー。

想像以上に”綺麗な手”に少し感情が揺らいでしまったー。
しかし、憑依したのは日葵のためー。

「ーーひ、日葵!」
麻衣は、思わず日葵の名を呼んでしまうー。

「ーーえ…???」
日葵は戸惑いの表情を浮かべながら振り返るー。

「ーーーー…お、おねえちゃん…だれ~…?」
日葵がそう言葉を口にしながら、
父・喜明が憑依した麻衣のほうを見つめるー

”ーし、し、し、しまったー!?
 いつもの癖で名前で呼んでしまったー!?”

麻衣に憑依している喜明は心の中で
そう叫ぶと、
「えー、えっと、ぱ、パパはーー…通りすがりの女子高生なんだけどー」
と、さらによく分からないことを麻衣の身体で口にしてしまうー。

「ぱ…ぱぱ???」
日葵はさらに”意味が分からない”と言わんばかりに首を傾げるー。

「ーーち、ちがっ…え、えっとー」
麻衣の身体が冷や汗を噴き出し始めたことに気付き、
喜明はさらに焦っていくー。

が、焦っていても仕方がない。
そう思いながら、
喜明は、麻衣の身体ですぐに言葉を口にするー。

「え、えっとねー…
 ーーお、お使いしてるんだよねー?」
麻衣はそう言うと、
日葵は「なんでしってるの~?」と、不思議そうに
聞き返してくるー。

「え~~~~え~~っと、
 お、お姉ちゃん、ち、超能力者だから!」
麻衣に憑依している喜明は、さらにとんでもないことを
言い始めるー。

ますます、日葵の表情が曇っていくー。

「ーと、と、とにかく、ひ、日葵ちゃんの
 行こうとしているお店、こっちじゃなくて
 あっちだからー

 だから、パー、
 え、えっと、お姉さんが道を教えてあげるから
 ついてきてー!」

麻衣はそんな言葉を口にするー。
自分が、”こんなに可愛い声”で喋っていることー、
自分の口からこんな声が出ることにも
ドキドキしてしまいながら、
”それよりも日葵のお使いをちゃんと見守ってあげないとー”という思いで、
必死に言葉を口にするー。

しかしー
その言葉を聞いた
日葵が、逃げるようにして走り出したー。

「ーえっ!?ちょっ」
喜明が憑依している麻衣は困惑の表情を浮かべながら
そう叫ぶー。

日葵が、麻衣からどんどん遠ざかっていくー。

もちろん、日葵はまだ小さいー。
日葵がどんなに全力疾走しても、今、喜明が憑依している
女子高生の身体なら追い付くことはできるはずだー。

しかしー、どうして日葵は逃げたのかー。

そんな風に思いながら、
「あっ」と、思わず、麻衣の身体のまま声をあげる喜明ー。

”日葵ー、外で知らない人に声をかけられたら
 ついて行っちゃダメだからねー”

妻であり、日葵の母である由紀が、優しく日葵に
そう伝えていたことを思い出すー。

「ーし、し、しまったー…!」
そのことを思い出した喜明は、麻衣の身体で
必死に日葵のあとを追いかけるー。

「ひ、日葵ー走ったら危ない!」
麻衣がそう叫びながら日葵を追いかけるも、
「ーー!?!?!?!?」
突然、麻衣は顔を赤らめながらその場で足を止めたー

「ーーっっっ…」
落ち着かない様子で、制服のスカートを抑える麻衣ー。

「ーー~~~~~~~」
”スカートで走る”という初めての体験に、
喜明は”だ、だ、大丈夫なのかこれー?”と、
周囲からの視線やら、色々なことを気にしてしまうー

そうこうしているうちに、日葵は裏路地を飛び出して、
横断歩道を渡っていくのが見えたー。

「ーーーひ、日葵ー」
麻衣は慌てた様子でそう呟くと、
憑依している喜明は、麻衣の身体から抜け出して
霊体に戻って、日葵を追いかけ始めるー。

”ごめんなー”
喜明は、自分が憑依していた麻衣が、失神して
座り込んでいるのを見て、心の中でそう呟くと
日葵のことを、霊体の状態で追いかけ始めるのだったー

②へ続く

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コメント

”お使いを憑依で見守る”
そんなお話デス~!!

ドタバタした(?)憑依モノを
楽しんでくださいネ~!

今日もありがとうございました~!!

続けて②をみる!

「はじめてのお使い」目次

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