<入れ替わり>分かってて結婚したはずなのに①~報告~

妻は”学生時代に同級生と入れ替わってしまった過去を持つ”
そんな、人間だったー。

そうだとは知りつつも、彼は”中身は男”である彼女にプロポーズ、
その際に”元に戻る方法がもしも見つかったら、わたしは元に戻るつもり”だと、言われ、
その条件を呑んだ上で結婚するー。

しかしー…?

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沢木 和雄(さわき かずお)は、
驚きの表情を浮かべていたー。

「ーーえ…?」
思わず、言葉を失う和雄ー。

すると、和雄に対し”ある話”を口にした妻、
沢木 百恵(さわき ももえ)が言葉を続けたー。

「ーだからー、そのー…”元に戻る方法”が見つかったのー」
とー。

「ーーえっ…?えっ…?」
和雄は、なおも戸惑いの言葉を口にするー。

いやー、実際には”分かっている”
妻の百恵が何を言っているのかをー。

妻の百恵は、百恵であって、百恵ではないー。

和雄と出会った”大学生”の頃よりも前ー、
”高校時代”に同級生と階段から転落、
その中身が入れ替わっていて、
百恵の”中身”は、百恵の高校時代の同級生、
戸塚 明信(とつか あきのぶ)ー。

当時、元に戻る方法が分からず、
百恵と明信はやむを得ず、そのまま生きていくことを受け入れ、
明信は百恵として、百恵は明信として生活を始めたー。

そして、大学時代ー、
和雄は、”何も知らずに”百恵(明信)と出会ったー。

既に入れ替わって数年経過していた百恵(明信)は
すっかり、女子っぽい振る舞いに慣れていて、
和雄は何も知らないまま、百恵(明信)に告白してしまったー。

その際に、百恵(明信)は
”あまり、誰にも広めないでほしいんだけどー、隠したまま
 付き合いたくはないからー”
と、”高校時代の同級生と入れ替わっている”という事実を告げて来たー。

和雄は最初「え?いやいや、そんなことあるわけー…?」と、いう
反応を見せていたものの、明信(百恵)と会わされたり、
数々の証拠から、入れ替わりを認めざるを得なかったー。

それでも和雄は、”俺が出会ったのは、今の君だからー”と、
百恵(明信)と付き合い始めるー。

百恵と明信の二人も、既に”元に戻れる可能性は低い”と判断していたらしく、
恋愛や就職なども”相手任せ”で、二人の間で約束していたようでー、
明信(百恵)も、百恵(明信)と和雄の恋愛を応援してくれたー。

そしてー、やがて、和雄はプロポーズをしたー。

百恵(明信)は「わたし、中身は男なんだよー?」と、戸惑いつつも
喜んでくれたー。

ただ、百恵(明信)はその時にこうも言ったー。

”もしー、もしもこの先、わたしたちが元に戻る方法が見つかったらー
 わたしたちは元に戻るつもりー

 見つからなければずっとこのままだけどー
 もしも見つかったその時はーー…”

そんな言葉に、
和雄は複雑な感情を抱くー。

その時には、”元に戻った百恵”に判断を委ねるー、と。
そして、さすがに子供を巻き込むわけにはいかないから、
”わたしは子供を産むことはできない”とも、
そうも言ったー。

出産した後に、もしも元に戻る方法が見つかり、
元に戻ることになったら
子供からすれば母親を失うことになるー。

そんなことに、子供を巻き込むわけにはいかないから、
子供を産むことはできない、と、百恵(明信)はそう言ったー。

”隠したまま、嘘をついて結婚するのは、嫌だからー。”
百恵(明信)はそう言葉を口にした上で、
”こんなワガママな条件付きでもいいならー…”と、
そう続けたー。

百恵(明信)も、断られると思っていたのだろうー。

けれど、和雄はそれを受け入れたー。

「わかったー
 元に戻れるその日が来るまででもいいー。

 それに、もしも、元に戻れなかったら
 俺がずっと百恵を支えたいー」

穏やかな表情でそう言葉を口にする和雄ー。

百恵(明信)はそんな言葉に心底嬉しそうにしながら、
和雄のプロポーズを受け入れたー。

好きになった人ー、百恵の中身が、
出会った時点ではすっかり”女子”としての振る舞いに
なっていたものの”男”であることー、
そして、百恵と入れ替わった相手である明信の二人は、
”元に戻る方法が分かったら元に戻る”つもりであることー、
それらを全て受け入れた上で和雄は”結婚”の道を選んだはずだったー。

しかしー…

和雄はどこかで”こう”思っていたー。
”今まで何年も元に戻る方法が見つからなかったのだからー
 その方法は”多分”見つからないだろう”
とー。

しかしーーー
その考えは甘かったのかもしれないー。

”方法”が見つかってしまったのだー。

「ーーー…元に戻る方法、見つかったからー
 約束通りー、元に戻ろうと思ってー」

百恵(明信)のその言葉に、
和雄は「そ、そっかー、そっかそっかー」と、
動揺を悟られないように必死に明るい雰囲気を
絞り出しながら、そう返事をするー。

「ーはは、それはよかったー。
 いやぁ、よかったーめでたいー」
和雄は、思いついた言葉を次々と吐き出しながら、
「ーーでもさ、二人とも、今、元に戻ったら
 逆に辛いんじゃないかー?」
と、そんな疑問をぶつけるー。

「ー辛い?」
百恵(明信)は、そう言葉を口にしながら、
和雄のほうを見つめるー。

「ーーいや、ほら、だってさー
 二人とも、”入れ替わって”何年も経過しててー
 百恵だってもう”女”として過ごす方が慣れてるだろー?

 だから、逆に元に戻ったら色々大変なんじゃないかな~って」

和雄がそう言うと、
百恵(明信)は表情を曇らせるー。

そんな表情の変化を悟ったのか、
和雄は「あぁ、いや、別に元に戻るな!ってことじゃなくてさー
純粋に心配でさー。元に戻ったあと、二人とも大丈夫なのかなってー
ほら、仕事とかもあるしー」
と、そう言葉を口にするー。

「ーーーー…もちろん、大変だよー」
百恵(明信)はそう呟くと、
「ー和雄の言う通り、女として生活するのにもうすっかり慣れたしー
 男に戻るのも、なんか変な感じだしー
 それとー…和雄とこのまま一緒にいたい気持ちもあるしー」
と、寂しそうに言葉を口にするー。

「ーーそ、そっかー。じゃあ、このままー」
和雄は目を輝かせながら、そこまで言葉を言いかけるー。

けれどー、百恵(明信)は言ったー。

「でもー、決めてるのー。
 元に戻る方法が見つかったら、戻るってー。

 それに、今は辛くても、わたしたちはまだ20代だから
 先の人生が何十年も続くからー

 ”今”戻っておいた方がいいと思うのー。

 元の人生にー」

とー。

和雄は、激しい動揺を何とか隠しながら
「わ、分かったー。そうかー。そうだなー。分かったー」と、
そう言葉を口にすると、
「それで、元に戻る方法ってー?」と、そう言葉を振り絞ったー。

「ーーーー実は、わたしたち以外にも同じ状況に陥った人たちが
 何例か存在するみたいでー、
 そのうちの一組の親族に、研究者の人がいてー、
 疑似的に”入れ替わったときの衝撃”を与えて、元に戻すことができる
 研究が完成したんだってー」

百恵(明信)はそう説明するー。

和雄は、混乱しながらも
「とにかく、元に戻す発明をした人がいるってことだなー?」と、
そう確認するー。

百恵(明信)は「うんー」と、短く答えると、
和雄は深呼吸をしてから「それで、いつ戻るつもりなんだ?」と、
そんな言葉を口にするー。

「ーーー…来月の初めにはー」
百恵(明信)が、そう言いながらカレンダーを見つめるー。

今は”20日”ー。
大体、あと10日ほどで、百恵と明信は”元の身体”に
戻ることになるー。

「ーーーーー」
和雄は、色々と複雑な感情を抱きながらも、
プロポーズした時の”約束”を思い出しながら、
それを必死に飲み込むー

約束したのだからー、
約束したのだからー、と、
自分の心の中で自分に対して何度も何度も言い放つー。

「ーーーそっかー。分かったー」
和雄はそれだけ言うと、
百恵(明信)は少し不安そうに、
「ーーーごめんねー」と、そう言葉を口にするー。

「ーーいやー、いいんだー」
和雄は百恵(明信)に対してそれだけ言葉を口にすると、
「ーー何か、下準備とかはいるのかー?」と、
そんな言葉を口にすると、
「ーーあとは、行くだけー」と、そう言葉を口にするー。

その上で、百恵(明信)は、
”本当に元に戻れるのかどうか、その研究者に確認が取れるまでは
 言えなかった”と、既に治療を受ける約束を取り付けたあとー、
事後の報告になってしまったことを詫びるー。

先に”元に戻れる方法が見つかった!”と騒いで、
”やっぱりその話はガセネタでした”みたいなことになってしまっては
逆に迷惑をかけてしまうかもしれないー、
そう思っての判断だったとー。

「ーーーーそれで、その先生ってー」
和雄がそう言うと、百恵(明信)は「北海道に研究所があってー」と、
そんな言葉を口にしながら、
その研究所らしきサイトも見せて来たー。

「ーー怪しく、ないのかー?」
和雄はそう言葉を口にするー。

「ーーー…」
百恵(明信)は少しだけ表情を曇らせると、
「ーーわたしも、最初はそう思ったけど、大丈夫ー
 ちゃんと、調べたからー」と、
そんな言葉を返すー。

「ーーーでも、怪しいと少しでも思うなら
 慎重になった方がいいんじゃないかー?」
和雄はなおもそう食い下がるー。

百恵(明信)は、そんな和雄のほうを見ると、
「ーー和雄は、わたしに元に戻って欲しくないんだよねー…?」と、
そんな言葉を口にするー。

さっきから、”何とか元に戻るのをやめる方向”に、
話を持って行こうとしているー
百恵(明信)には和雄がそんな風に見えたー。

「ーーごめんねー。わたしのせいで、
 和雄の人生まで振り回してー。
 本当に、ごめんー」

百恵(明信)も、”自分が結婚すれば”
相手を傷付ける可能性があったことは十分に理解していたー

だからこそ、付き合う前に全てを打ち明けたし、
プロポーズの時にも”元に戻れる方法を探すことは諦めていないこと”と、
”元に戻る方法が見つかったら戻ること”はしっかりと伝えたー。

元に戻る方法が見つかった場合”どうなるか”も、
和雄に説明していて、”こうする”ことは既に事前に伝えてあるー。

急に、このことを伝えたわけではないー。

しかし、それを聞いた
和雄自身は”まぁ、元に戻れることなんてないよな”と
軽く考えて、とにかく”百恵と一緒にいたい”という気持ちを優先して、
安易に考えていたー。

だからこそ、本当に元に戻ることができる方法が見つかったと聞いて、
和雄は激しく動揺していたー。

「ーーも、元に戻って欲しくないー…って気持ちはー
 正直、0ではないけどー」
和雄はやっとの思いで言葉を吐き出すー。

”0ではない”ーー
嘘だー。

本当は、”元に戻って欲しくない気持ちが100”だー。

けど、好きな人が、大事な人がそうしたいなら、
という気持ちや”約束したから”という気持ちも
和雄の中にはちゃんとあって、
必死に”元に戻るなんて言わないでくれよ!”という言葉を
飲み込むー。

「ーーー百恵がそうしたいならー、
 俺はーー……受け入れるよー約束だからー」
和雄がそう言うと、
百恵(明信)は「ありがとうー」と、それだけ呟くー。

「ーーー…」
二人の間に流れる沈黙ー。

「ーー…男に戻ったらー…”友達”になれるかなー…?」
百恵(明信)が沈黙を消そうとそう言葉を吐き出すと、
和雄は「ーーごめんー俺、今日は寝るよー」と、
それだけ言葉を吐き出して、自分の部屋に籠ってしまったー

「ーーーーー」
百恵(明信)は、戸惑いの表情を浮かべるー。

和雄の反応が”予想よりもよくなかった”ー。
そのことに、戸惑いを覚える百恵(明信)ー

もちろん”そうか!元に戻る方法が見つかったか!やったな!”
なんて、そんなさわやかな反応を予想していたわけではないー。

でもー…
約束もしていたし、念押しも当時していたし、
受け入れてくれるとは思ったー

ただーーー
和雄のあの顔はーー

”受け入れることが出来ていない顔”ー

結婚までした相手のことだからー、
百恵(明信)にはよく分かるー。

あの顔はーー

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部屋に籠った和雄は、
目に涙を浮かべながら、
”百恵”との写真を見つめていたー

「ーーダメだー…ダメだダメだダメだダメだダメだー」
写真を見つめながら
一人、小声でそう呟く和雄は、
その日は、百恵(明信)に顔を合わせることもできなかったー

②へ続く

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相手が入れ替わっていること、
そして、元に戻る方法が見つかったら元に戻ることに
納得した上で結婚した人のお話デス~!!

でも、なんだか色々大変そうですネ~…!

続きはまた明日デス~!!

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