<憑依>フライトパニック①~予想外~

とある二人組の男が”憑依対象はランダム”の憑依薬を手に入れたー。

嬉しそうにその憑依薬を使う二人ー。
しかし、二人が憑依してしまったのは、フライト中の飛行機の
機長と副機長だったー…!?

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「ーー本日は、ティーエス航空をご利用いただき、
 ありがとうございますー。

 当機はーーー」

とある飛行機の機内ー。
そんなアナウンスが流れて、機内では穏やかな時間が流れていたー。

小説を手に、真面目な顔をしてそれを読み続ける男性客ー。
しかし、真面目な顔をして彼が読んでいるのは、
病院に行かないと喚く病院嫌いのおじいちゃんと女子高生の孫が
入れ替わってしまう小説だー。

その近くには、飛行機が初めてなのか、怯えた表情で
挙動不審にキョロキョロしている男性客ー。

寝不足なのか、早速爆睡している女性客ー。

カップルで新婚旅行にでも行くかのように
楽しそうに話をしているカップルの乗客ー。

鋭い目つきで周囲を見渡す、眼光鋭い男性客ー。

色々な客が、その飛行機の機内でそれぞれの時間を過ごしていたー。

そして、その操縦席では、
機長の岩本 円花(いわもと まどか)と、副機長の井原 沙耶(いはら さや)が、
この先の天気を確認しながら「今日は穏やかなフライトになりそうですねー」などと
そんな会話を交わしていたー。

元々、今日は別の男性副機長が搭乗する予定になっていたものの、
急遽、発熱によりそれが出来なくなってしまったため、
代わりに井原 沙耶が副機長として搭乗することになっていた。

「ーーーじゃあ、今日はよろしくお願いしますねー機長」
沙耶が少しふざけた口調で言うと、
円花は「やめて下さいよー」と、苦笑いしながら言葉を口にしたー。

二人は先輩と後輩の間柄で、
副機長の沙耶の方が先輩ー。
円花が新人時代は、年が近いこともあって、
よく色々サポートしてあげた間柄だー。

「ーーーふふー でも、円花ちゃんの隣にこうして座る機会なんて
 普段、ほとんどないし楽しみー

 あー、円花ちゃんじゃなくて、”機長”って呼ばなくちゃねー」

沙耶がそう言葉を口にすると、
円花は苦笑いしながら、客室の乗務員から、
連絡が入ったために、しっかりと機長としての仕事をこなし始めるー。

そんな円花を横目で見つめながら、
副機長の沙耶は後輩である円花の成長を喜ぶかのように
穏やかに微笑んだー。

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そんなー、フライト中の飛行機とは何も関係のない
男二人が、地上である会話をしていたー。

脇谷 龍太(わきや りゅうた)と、
春日 紀助(かすが きすけ)の二人はー、
今日”あるもの”を手に入れてここにやってきていたー。

「ーーおい、例のものは用意できてるか?」
鋭い目つきの男・龍太がそう言うと、
「ほ、ホントにやるのかよー?」と、
少し気まずそうな表情を浮かべながら、細身の男・紀助が
そう言葉を口にするー。

「馬鹿野郎!今更怖気づいたのか?
 俺たちは、新しい人生を手に入れるために
 ここまでやってきたんだろうが!」
龍太がそう叫ぶと、紀助は「そ、そりゃそうだけどー」と、
そう言葉を口にしてから
「でも、”手に入ったのが”こんなリスクの高い代物なんてー」と、
戸惑いの表情を浮かべながら
液体が入った2つの容器を手に、それを見つめるー。

「ーー大丈夫だってー。
 そのために”ここ”に来たんだろー?」
龍太はそれだけ言うと、視線の先にある女子高を見つめたー。

「ー女子高って言ったってー、用務員とか教師もいるだろうしー
 それに、女の中にだって微妙なやつぐらいいくらでもいるだろ?」
紀助はそんな言葉を口にしながら、”容器”のほうを今一度チラッと見つめると、
「ーククー俺たちの身体以上に微妙な身体なんて、そうそうあるもんじゃねぇよ」と、
笑みを浮かべながら、2つのうちの容器の一つを取り上げたー。

2人が持っていたものは”憑依薬”ー。
彼らは学生時代からの友人で、お互い、就職活動も上手く行かずに
30代後半になってもブラブラと遊び歩いているような、
そんな人生を送っていたー。

が、龍太が”憑依薬”なるものの存在を知り、紀助に対して
”俺たちのクソみたいな人生、逆転させようぜ”と、そう持ち掛けて、
二人で5年以上かけて、ようやく憑依薬を見つけたのだー。

憑依薬を見つけるのに5年を要したために、二人は既に40代前半。

今日、二人は自分の人生を捨てて、
憑依した新たな身体で新たな人生を送る、”門出”の1日を迎えていたー

「ーーや、やっぱりやめようぜー…?ランダムなんてやばすぎるだろー」
紀助はそう言葉を口にする。

龍太は「大丈夫だって」と、うんざりした様子で再び言葉を口にすると、
「確かに、憑依できる相手はランダムだけど、この薬を使った人間から
 近い距離にいる人間に憑依する確率が高いんだー。
 そのために女子高の前に来たんだろー?」と、そう説明するー。

5年もかけてようやく龍太が手に入れた憑依薬はー
”憑依対象がランダムで決まる”
厄介なものだったー。

一応”近くにいる人間”に憑依する確率の方が高いとされているものの、
使うまで、誰に憑依できるか分からないー。

が、龍太はそれでも、この憑依薬を使うことを決意していたー。
これを探すだけでも5年かかったのだー。
もうこれ以上時間はかけられないー。

それに、”近くにいる相手”の方が憑依対象になる可能性が高いのであれば
こうして、女子高の近くにやってきていれば、
女子高生に憑依できる可能性は十分にある、と、そう判断していたー。

「いいから飲むぞ。
 俺たちは人生を変えるんだー」
龍太がそう言うと、
紀助は「わ、わかったよー」と、そう言葉を口にするー。

”後戻りもできず”かつ”憑依対象もランダム”
5年間かけても、そんな憑依薬しか入手することができなかった
龍太と紀助は、
”いい身体に憑依できること”を祈りながら、憑依薬を飲み干しー、
そして、数秒後には身体が光のようになって消滅するのだったー。

ちょうどその時ーー
二人の頭上の空を1機の飛行機が通過している最中だったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーぅ」
憑依薬を使った龍太が意識を取り戻すー。

直後、
自分の身体を見つめると、
そこにはー”胸”の膨らみがあったー

「ーーえっ…?へへへーー
 ははっ!やった!!やったぞ!!!
 女の身体だー!!

 へへへへっ!」

”憑依対象はランダム”
そんな、リスクのある憑依薬を使った龍太は
自分が女に憑依できたと確信して、
嬉しそうにその顔を確認しようとしたー。

「ーち、ちょっとー…だ、大丈夫ー?」
隣からそんな声が聞こえるー。

隣にいたのはーー
”副機長”の沙耶ー。

心底心配そうな表情を浮かべている沙耶を見て、
その周囲の光景に、”機長”の円花に憑依してしまった龍太は
表情を歪めたー。

”な、なんだここはー?そ、空ー?”
そう思いつつ、もう一度周囲を見渡すー。

「ーえ…ここってー?」
円花の身体でそう言葉を口にした龍太は、
副機長の沙耶のほうを見つめるー。

「ーーな、何言ってるのー?ほ、ホントに大丈夫ー?
 い、今はフライト中よー?」
副機長の沙耶の言葉に、
円花は「ふ、フライト!?」と、思わず叫ぶと
ようやく、自分がフライト中の飛行機の機長に憑依してしまったことに気付き、
「や…やべぇ…操縦なんてできねぇぞー?」と、小声で呟くー

なおも首を傾げる沙耶ー。

そんな沙耶に対して、円花は咄嗟に
「お、おれー、じゃなくて、わたしーき、記憶が急に飛んでー」
と、そう説明すると、
「ーそ、操縦、か、変わって貰っていいー?」と、
そう言葉を続けたー

”な、なかなか可愛い声だなー。顔もさっきちょっと反射して見えたけど、
 なかなかー”

そんなことを思っていると、
「ど、どうしちゃったのー?」と、副機長の沙耶が困惑した様子で
操縦をし始めようとしつつ、
何か機器を操作し始めたー。

がー、その時だったー

「ーーうっ…」
沙耶がビクッと震えるー。

「ーーー?」
円花に憑依している龍太がその声に首を傾げながら
「ー大丈夫かー?」と、つい、”いつもの自分”の口調で
そう言葉を口にしてしまうと、
副機長の沙耶はキョロキョロしながら、やがてーー
ニヤニヤしながら胸を揉み始めたー。

「ーへへっ…や、やったー、あたりじゃんー!」
そう言いながら、嬉しそうにー、
そして気持ちよさそうに胸を揉む沙耶ー。

「ーえっ…お、おいっー、そ、操縦を変わってくれるってー」
龍太は、円花の身体で困惑した表情を浮かべながらそう声を上げるー。

すると、気持ちよさそうに声を漏らしていた副機長の沙耶は、
「ーーん?操縦ー?」と、そう言葉を口にしながら
今一度周囲を見渡して、さらには操縦席の外に広がる光景を見つめたー。

「ーって、ええええええええっ!?!?」
沙耶が驚いた様子で叫ぶー。

「ーこ、ここどこー!?えっ!?飛行機ー?」
戸惑う沙耶の様子を見て、
円花は「もしかしてーお前……紀助か?」と、
困惑した表情を浮かべながら確認するー。

「ーえっ…」
沙耶は、一瞬戸惑ったものの、機長の円花のほうを指さしながら、
「り、龍太ー?」
と、そう言葉を口にするー。

「そ、そうだよ…!ま、まさか、お前ー…その女にー?」
円花がそう言うと、沙耶は戸惑った様子で頷くー。

「お、おいおいおいーふざけんなよ!」
円花はそう言うと、沙耶の胸倉を掴む勢いで沙耶に迫るー。

「ーーき、機長と副機長に同時に憑依しちまったら、誰が
 この飛行機、操縦するんだよ!?」
円花がそう叫ぶとー、沙耶は「し、し、知らないよー」と、
戸惑いながら目を背けるー。

「ーーだ、大体、憑依先はランダムなんだし、
 し、仕方ないだろー!?」
沙耶がそう言うと、円花は不満そうにしながらも「くそっ!」と、
そう叫んだー。

よりによって、飛行機の機長と副機長に同時に憑依してしまうとはー。
そう思う円花に憑依した龍太ー。

いくら、”憑依対象がランダム”とはいえ、
たまたま二人とも、上空を通過していた飛行機の機長と副機長に
憑依してしまうなんて、とんでもない低確率を引き当ててしまったー。

どっちか一人は乗客だったり、二人が立っていた女子高の生徒や関係者だったり、
それ以外の人間に憑依していたって、別におかしくはなかったのに、
こんなに”偶然”、飛行機内の機長と副機長に憑依してしまうなんて、
最悪だー。

”ーーいや、でも、この身体は最高だしー、上手くここを乗り切ればー”
円花に憑依した龍太は、そう考えると
「おい!紀助!お前、操縦できるのかー?」
と、そう叫ぶー。

「ーーえ、えぇっ…!?
 あ、ひ、飛行機のゲームならやったことあるけどー」
沙耶に憑依した紀助がそう言うと、
「ーくそっ!使えねぇなー」と、イライラした様子で円花はそう叫ぶー。

そして、操縦席の機器類を見つめると
「ダメだーまったく分からねぇ」と困惑した表情で、
素人からすれば全く意味が分からないボタンやレバー、表示の数々を
見つめていくー。

「ーへへっ♡ えへへ♡」
隣にいる副機長の沙耶は、ニヤニヤしながら胸を揉んでいるー。
それを見た円花は「おいっ!!!揉んでる場合じゃねぇだろ!」と、
円花の声には似合わぬ乱暴な言葉を口にすると、
沙耶は「だ、だって~、この身体、エロイしー」と、そんな言葉を口にしながら
ニヤニヤと笑うー。

「ーーと、とにかく!この状況をどうにかしねぇと、
 俺たちは墜落して、おしまいだー。
 せっかく俺もお前もエロイ身体を手に入れたんだから、
 とにかく着陸して、着陸したあとに、二人でヤリまくろうぜ?」

円花がそう言うと、沙耶は「そ、操縦なんてできないけどー」と、
そう言いつつ、表情を曇らせたー。

がーーーー

その頃、乗客のいる機内はどよめいていたー。

何故ならー

”ーーと、とにかく!この状況をどうにかしねぇと、
 俺たちは墜落して、おしまいだー。
 せっかく俺もお前もエロイ身体を手に入れたんだから、
 とにかく着陸して、着陸したあとに、二人でヤリまくろうぜ?”

ーーー後から憑依された副機長の沙耶が、
憑依される直前ー、何か機内放送を入れようと思ったのか
機内への放送のスイッチをオンにしていたためー、
今の会話がー、機内に流れてしまっていたのだー。

「ーーーーーな、何今のー?」
乗務員も困惑しながら、他の乗務員とそう言葉を交わすー。

”地獄のフライト”は、まだ始まったばかりだったー…。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

とんでもない憑依になってしまった二人…。
無事に着陸できるのかどうかは……

明日、分かるのデス…!

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