<憑依>友達が欲しいお姉ちゃん②~満喫~(完)

友達が欲しいと願う奥手なお姉ちゃんー。

そんな姉を前に、妹は自分に姉を憑依させて、
”友達作りの特訓”を開始するー。

その行く末は…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

妹・真希の友達の一人、ツインテールの香織が
希望した”ゴーカート”を楽しんだ三人ー。

真希に憑依している紀香は
遊園地自体は絶叫マシンを除いて好きだったし、
だんだんと楽しくなってきて、笑顔も増えつつあったー。

”ーーどう?お姉ちゃんー。楽しめてる?”
真希の意識がそう言葉を口にすると、
真希になった紀香は嬉しそうに頷くー

”よかったぁ~
 こうやって、”友達と遊ぶ”ってことにだんだんと慣れていくと、
 お姉ちゃんも友達、作れると思うから、がんばって!”

真希の意識のそんな言葉、真希になった紀香は
静かに微笑むー。

そんな様子に気付いているのか、
戸惑いの表情を浮かべたのは、
真希の友達の一人、長い黒髪が特徴的な美月ー。

しかし、そんな視線に気付かずに、
真希になった紀香は、ツインテールの香織から聞かれて、
「次は~コーヒーカップがいい!」と、そう言葉を口にしたー。

「ーオッケー!じゃあ次はコーヒーカップに乗ろ~!」
香織がハイテンションにそう言葉を口にすると、
遊園地のパンフレットを見つめながら、今度は
コーヒーカップがある場所へと向かって行くー。

「ーーー」
その後に続いて歩きだす真希になった紀香ー。

が、そんな真希になった紀香の方に近付いてきた美月が
小さく言葉を口にしたー。

「さっきから、独り言喋ってたり、
 急に笑ったりしてるように見えるけど、大丈夫ー?」
とー。

「ーーえっ!?あっ!?えっ!?えっ!?
 あっ!…はい!えっ!?」
普段のコミュニケーション不足を露呈するかのように、
真希になった紀香は奇妙な反応をすると、
真希の意識が”お、お姉ちゃん!落ち着いて!”と、
中からそう言葉を口にしたー。

「お…落ち着いてって言われても、ど、どうすればいいのー?」
真希になった紀香はつい反射的に
それを声に出して言ってしまうー。

「ーーー!」
ハッとする真希になった紀香ー。
長い黒髪の友達・美月の方を見つめると、
美月はじーっと、まるで犯人を疑うようなそんな目で、
真希になった紀香の方を見つめたー。

”わ…お姉ちゃんピンチ!”
しかし、真希の意識はこの事態をどこか楽しんでいるような
言葉を心の中で口にするー。

”も~…!真希ってば…!ど、どうすればいいのー?”
真希になっている紀香は心の中でそう呟きながらも
美月の方を見つめるー。

「ーーあ、えっとーホントに、ホントに大丈夫だからー
 ね…!香織ちゃんも、安心してー!」

真希になった紀香は、焦りからは、そう言葉を口にしたー。

がーー

「ー香織…?」
”美月”は、そう言葉を口にしたー。

”香織”は、前を歩いているツインテールの明るい子の方の名前だー。

”あ、あわわわわーや、やっちったー”
真希になった紀香は慌てた様子で、心の中でそう言葉を口にすると、
真希の意識も”あ~…でも、最初から名前を完璧に覚えるのって
なかなか大変だよねー”と、未だにのんきな様子で
そう言葉を口にしたー。

「ーーえ、えへへへへーー
 言い間違えちゃったー

 ごめんねー美月ちゃんー」

誤魔化すかのようにそう言葉を口にすると、
美月は歩き始めた真希になった紀香の後ろ姿を見つめながら、
”ふぅ”とため息をついたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コーヒーカップを乗り終えると、
真希になった紀香はイヤな予感を覚えるー。

それもそのはずー。
次は”美月”が、乗るアトラクションを選ぶ順番だからだー。

「も、もしまたわたしが気絶しちゃったらー…ごめんね?」
真希になった紀香が申し訳なさそうに真希の意識に対してそう言うと、
真希は”ーまぁ仕方ないよねー。全然大丈夫だから気にしないで”と、
そう言葉を口にしたー

美月は「じゃあー…次はアレ」と、
今度は一回転するスペースシャトルのアトラクション”スターシップ”を
指さしたー。

「ーひぃぃぃぃぃぃぃ…やっぱりー」
真希になった紀香がそう言葉を口にするー。

そして、案の定ー
失神したー。

「ーーあはは…お姉ちゃんってばー」
苦笑いする真希ー。
紀香が気絶したことで、奥にいた真希の意識がまた表に出てきて、
スターシップを代わりに楽しむことになるー

”わたしは全然怖く感じないけどー
 でも、人によっては怖いよねー”

姉・紀香が気絶してしまうことに理解を示しながら、
真希は”せっかくだから、楽しも~”と、スターシップを堪能するー。

がー、次の瞬間ー

”えっー!?”
真希は、再び自分の身体の主導権を失い、
心の奥底に引っ込んでしまい、一瞬驚きの表情を浮かべるー。

「ーーーひっ…ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
真希の身体が勝手に悲鳴を上げているー。

”あー…気絶してたお姉ちゃんが目を覚ましちゃったんだー…”
そう思いながら、真希の意識が、内側からその様子を見ていると、
真希の身体を使っている紀香はまたもや失神してしまうのだったー。

「ーーーぅーー」
また表に出てきた真希ー。

”なんか、ヤバいことになってそうー”
真希がそう思っていると、
真希と少し離れた場所に座っていた美月が
スターシップに揺られながら、真希の方を心配そうに見つめるー。

さっきから、真希がかくっと気絶したり、目を覚ましたりー、
白目を剥いたりー、また目を覚ましたりを繰り返しているー。

美月は”また”急に悲鳴を上げ始めた真希の姿を見つめながら
”絶叫マシン、選ばない方がいいかなー?”と、
心の中でそう呟くのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ご、ごめんねー何回も気絶しちゃってー」

”大丈夫大丈夫ー。
 外から見たらすごいことになってたかもだけどー
 なんか新鮮な体験だったし!”
妹の真希は笑いながらそう言うと、
真希に憑依している紀香が、真希の友達の
美月・香織の方を見つめるー。

「ーーじゃあ、次はあたしだねー。」
ツインテールの香織がそう言うと、
時計をチラッと見てから「ーあたしはー”お昼ごはん!」と、
そう希望を口にしたー。

「ー確かに、そろそろお腹すいたかもー」
長い黒髪が特徴的な美月がそう言うと、
三人は遊園地内のフードコートのようなスペースで
お昼にすることにしたー。

真希に憑依している紀香は、大好きな抹茶のアイスクリームを手に、
戻って来るー。

「ーわ~!抹茶アイス~!たまにはおいしいよね~!」
ツインテールの香織はそう言いながら、
パフェのようなものを手に持っているー。

黒髪の美月は、ラーメンをがっつりと食べるようだー

「えっ…すごい量…食べるねー?」
真希に憑依している紀香が思わずそんな声をかけると、
美月は「わたし、いくら食べても太らないしー」と、
そう言葉を返して来たー。

「へ~~…すごいなぁ」
真希に憑依している紀香は、興味深そうに
美月と色々話しながら、抹茶アイスを口に運ぶー。

がー

「あれ…」
真希に憑依している紀香が”変な味”と思いつつ
表情を歪めると、
真希の意識が言ったー。

”お姉ちゃんー。わたし、抹茶苦手だからだと思うー”
とー。

「ーー…え?」
真希に憑依している紀香が、美月・香織の前であるために
かなり小声でそれだけ反応すると、
真希の意識は続けたー

”ほら、だってお姉ちゃんー、わたしの身体使ってるわけだし、
 味覚もわたしのものってことでしょ!
 だから、わたしが苦手なものは、いつもと違う味に
 感じるんだと思うー”

真希の言葉に、
真希になった紀香は納得しつつも、
”じゃあ、真希の好きな味を食べればよかったなぁ~…”と、
心の中でそんな風に呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その後も、真希になった紀香は、
遊園地で色々なアトラクションを楽しんだー。

だんだんと、妹・真希の友達である
香織と美月の二人にも慣れてきて、
本当の友達のように錯覚するようなこともありながら、
色々なアトラクションを楽しんでいくー。

真希になった紀香が観覧車をー、
美月が回転するボートのアトラクションをー、
香織は、飛行機のアトラクションを選んだー。

美月があまり絶叫マシンを選ばなくなったことで、
真希になった紀香も、気絶することなく
遊園地の時間を楽しんでいくー。

やがてー、遊園地での楽しいひと時は終わり、
解散の時間となったー。

「ーー今日は楽しかったぁ~」
ツインテールの香織が言うと、
「ーうん。わたしもー」と、
長い黒髪の美月も静かに頷いたー。

そんな二人を前に、真希になった紀香も、
「ーわたしも楽しかった!」と、そう言葉を口にすると、
「また遊ぼうね」と、香織は笑顔でそう応じたー。

無事に遊園地での1日が終わったー。

”ーお姉ちゃん、後半はすっごく楽しそうにしてて安心した~!”
真希の意識が心の中からそう語り掛けて来るー。

「ーあははー…おかげで楽しかったよー!ありがとう!」
真希になった紀香がそう言葉を口にすると、
通行人と目が合うー。

「あ…」
通行人からは独り言を言っているようにしか見えない状態ー。

”ーーやばっ!変人だと思われてるよ絶対!”
真希の意識はそう呟くと、
”家に帰るまで、わたし、静かにしてるね!”と、
それだけ言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅して、真希に憑依していた紀香は、
真希の身体から抜け出すー。

「ーこうして練習を重ねて行けば、お姉ちゃんも友達を作れるようになると
 思うから、これからも機会があったら、わたしの身体を使って、
 特訓していいからね!」

真希の言葉に、紀香は「本当にありがとう!」と、穏やかに微笑むー。

そしてー、紀香は
「なんだか、友達が作れそうな気がしてきた!」と、
笑顔でそう言い放ったー。

・・・・・・・・・・・

部屋に戻った妹・真希は
スマホを手にすると、友達の香織・美月の二人に
メッセージを送ったー

”今日は、”お姉ちゃんの特訓”に付き合ってくれてありがとうー”

とー。

”ーーううん!全然!あたしは楽しかったし!”
香織からそんな返事が届くー

”絶叫マシン、ダメなこと知らなかったから、気絶させてごめん”
美月からそんな返事が届くーーー

真希はーー
事前に、香織と美月には話を通していたー。
その上で、二人は”知らないフリ”をして、付き合ってくれていたのだー。

”でも、お姉さんも面白いし、またいつでも”
香織の返事に、真希は”ありがとう”と、そう返事を送って、
満足そうに微笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

半月後ー

「ーえ!?お姉ちゃんの友達が家に来るの!?」
真希が驚くと、照れ臭そうにしながら姉の紀香が
「うんー」と、頷くー。

「へ~!お姉ちゃん、すごいじゃん!
 早速友達が出来たんだね!」
真希が嬉しそうに言うと、
紀香は「真希のおかげだよー。真希のおかげで一歩を踏み出せたしー」と、
感謝の気持ちを改めて口にすると、
真希は嬉しそうに「えへへへーお姉ちゃんの役に立ててよかったぁ」と、
嬉しそうに、少し得意気な表情を浮かべたー。

♪~~

そうこうしているうちに”友達”がやってくるー。

紀香が「あ!来た!」と、そう言いながら
玄関の方に向かうー。

まだ”憑依”による特訓は1回しかしていないものの、
予想よりも早く”お姉ちゃん”に友達が出来たことに
安堵の表情を浮かべる真希ー。

「ーーお姉ちゃんの友達、どんな子かなぁ~…
 やっぱり、お姉ちゃんと同じで大人しい感じの子なのかなぁー

 あ、でも、どっちにしても先輩だから、
 可愛がってもらえるように挨拶しなくちゃ!」

真希が一人、”お姉ちゃんの友達”の妄想を膨らませながら
色々言葉を口にしていると、
やがて、姉の紀香が友達二人を連れて部屋にやってきたー。

「ーーーえ?」
真希が少し戸惑うー。

何故ならー
やってきたのは、真希の友達である
香織と美月だったからだー。

「ーやっほ~!来ちゃった!」
ツインテールの香織の言葉に、
真希は「え??え???香織がなんでここに?」と、
あたふたするー。

すると、照れ臭そうにしている姉の紀香に変わって、
黒髪の美月が答えたー。

「ーあのあと、先輩から連絡があってー…」
”先輩”とは紀香のことだー。
真希と同学年の美月からすれば、紀香は年上だー。

「ーーわたしたちと、友達になりたいってー」
美月がそう言うと、
紀香は「ま、真希に憑依して遊園地に行った後ー…
そのー、二人と友達になれるような気がしてー」と、
そう説明したー。

どうやら、紀香は二人に連絡を取り、憑依のことを
打ち明けた上で友達になったようだったー。

真希は驚きながらも、
「あ、あははー…予想外の方向に大胆だねお姉ちゃんー」と、
そう笑うと、
香織、美月の方を見て、
「じゃあ、これからはお姉ちゃんのこともよろしくね」と、
笑いながらそう言い放ったー。

”お姉ちゃんの初めての友達はわたしの親友”ー
真希はそのことに驚きながらも、
それもいっか!と、姉に友達が出来たことを喜ぶのだったー

おわり

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コメント

平和的な憑依モノでした~!

最近行けてないので遊園地に行きたい~!!と、思いながら
書きました★笑

お読み下さりありがとうございました~~!

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