<憑依>友達が欲しいお姉ちゃん①~提案~

大人しい性格故に友達のいない姉ー。

姉とは正反対で明るい性格の妹ー。

ある日、姉から相談を受けた妹は
”あること”を提案するのだったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー…え?友達を作る方法ー?」

1歳年下の妹で、高校1年の中山 真希(なかやま まき)が、
そう言葉を口にすると、
「う、うんー」と、高校2年の姉・中山 紀香(なかやま のりか)が、
恥ずかしそうに頷いたー。

「ーーー…ほ、ほら、わたしー、友達が全然いないしー、
 どうすれば真希みたくー…なれるのかなって」

妹の真希に対しても、遠慮がちにそう言葉を口にする紀香ー。

「ーーえ~~~お姉ちゃん、別に学校でいじめとか
 受けてるわけじゃないんでしょ?」
妹・真希がそう言うと、姉の紀香は頷くー。

「ーうんー。いじめられたりはしてないけどー…
 友達がいなくてー」
紀香が改めて友達がいないことを強調すると、
真希は「そっか~…」と、頷くー。

「ーーお姉ちゃんなら、もう少し積極性を身につければ
 友達もたくさんできると思うんだけどなぁ~
 わたしと同じで可愛いしー」

真希の言葉に、紀香は「そ…そうー?」と、困惑の表情を浮かべるー。

さりげなく、”わたしと同じでかわいい”などと、
自分のことも可愛いと言った妹・真希を前に戸惑うー

”わたしには、自分を可愛いと思うなんて無理ー”
とー。

「ーーそうだよ~!
 後は、お姉ちゃんから声をかけたりとか
 積極的に絡んで行ったりとか、そういうことができれば
 すぐ友達出来ると思うよ!」
明るく笑いながらそんな言葉を口にする真希ー。

「ーー…実践あるのみってこと?」
紀香は、表情を曇らせながらそう言い放つー。

「ーうん!実践と勢い!
 友達を増やすにはやっぱりガンガンと押していかないとね!」
妹・真希がドヤ顔でそう呟くー。

がーー
紀香は苦笑いすると、
死んだ目で少し寂しそうにしながら言葉を口にしたー。

「ーーじゃあ、やっぱわたしには無理だねー」
とー、ネガティブなオーラを溢れ出させながらー。

「ーえ、えぇっ!?ど、どうしてそうなるの!?」
真希が思わずそう叫ぶと、
紀香は「わたしに実践なんて無理だし、勢いもないしー」と、
ネガティブなオーラを隠そうともせずに、そう言葉を口にするー。

「ーそ、そんなことないよーお姉ちゃんー
 お姉ちゃんだって、そういう機会があれば少しずつ
 周りの子と話す機会が増えたりするはずだしー」
真希のその言葉に、紀香は「ふっ」と笑ったー。

「ーわたしはこのまま友達もできずに
 生涯独身で、将来は孤独死して床のシミになるのーふふ」
紀香のその言葉に、
真希は「お、お姉ちゃん~ネガティブすぎ~…」と、
流石に戸惑ったような表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

「お姉ちゃん、心配だなぁ」
真希は、そんな言葉を口にしながらスマホをいじっていたー。

自分とは正反対の大人しい性格である紀香ー。
けれど、妹の真希は姉の紀香と仲良しだったし、
”お姉ちゃん”にも幸せになってほしい、と、
常々そう願っていたー。

「ーーーえ!?」
”お姉ちゃん”が友達を作るためにはどうしたらよいのかー。

そんなことを調べていた真希は、
ふと、あるものが目に入ったー。

それはー
”他人に自分の魂を吹き込んで一時的に憑依することができる”という
特殊な道具だったー。

「ーーーーーーーーーー」
真希は、しばらくそれを見つめていると
ふと、”あること”を思いつくー。

「ーえへへー…
 これがあれば、もしかしたらお姉ちゃんの”特訓”ができるかもー」
とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー。

「ーお姉ちゃん!今日、何か予定ある!?」

土曜日ー
真希がニコニコしながら、姉の紀香に対してそんな言葉を口にすると、
漫画を読んでいた紀香は少し苦笑いしながら言葉を口にしたー。

「それってーもしかして嫌味ー?」
とー。

「ーえっ!?」
少し驚く妹の真希ー。

「ーーどうせ、わたしにお休みの日の予定がないことを
 知ってて、わざと聞いてるんでしょー?

 真希の思ってるとおりだよー
 わたしに予定なんかないー ふふー」

紀香の言葉に、真希は「も~~お姉ちゃんってば」と
あまりにネガティブな反応に対して、思わず苦笑いをしながら
「ーでもよかったー」と、そう言葉を口にするー。

「ー実はお姉ちゃんが友達を作るための”特訓”を考えたのー」
真希がそう言い放つと、
紀香は「特訓ー?」と、首を傾げるー。

「ーうん!この前お姉ちゃん、実践するような機会もないし
 無理、って言ってたでしょー
 だから、お姉ちゃんのために、特訓の機会を作ったの!」
真希がそう言葉を口にすると、
紀香は「ー…どういうこと?」と、戸惑いの表情を浮かべながらも
少し興味がありそうに話に食いついて来たー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数時間後ー。

「ーーね…ねぇ……ほ、ホントにやるのー?」
妹の真希が、おしゃれな格好で遊園地に向かいながら
そう言葉を口にしているー。

”ホントにやるの!大丈夫!わたしの身体なんだから!”
”真希”の頭の中にそんな言葉が響き渡るとー、
真希は”姉・紀香”のような弱弱しい表情で
「えぇ…む、無理だよ~」と、そう言葉を口にしたー。

妹の真希は今、”姉・紀香”に憑依されていたー。

数日前、ネットで見つけて注文した
”息を吹き込むことで他人に憑依することができる”
そんなアイテムを購入した真希は、
それを紀香に見せながら
”これでわたしに憑依して、わたしの身体でわたしの友達と過ごしてみて”と、
そう言葉を口にしたー。

友達を作りたいのならば、特訓あるのみー
場数を踏むことで、だんだんとコミュニケーション能力も身についていくし、
それが一番の近道だと、妹の真希は言うー。

けれど、そういう機会が無くて、そもそも特訓することが
難しい紀香のために”自分の身体”を貸して、
予め約束していた友達二人と”真希”として、遊びー、
”友達と遊ぶ”ことに姉・紀香を慣れさせようとそうしていたー。

”ほら!どうせわたしの身体なんだし、
 失敗してもお姉ちゃんが恥をかくことはないから、
 全然気にしないでー。

 お姉ちゃんが自分の身体で練習するよりも、
 やりやすいと思うんだけどー”

真希の意識が、真希の身体に憑依した紀香に
そんな言葉をかけて来るー。

「ーーーー…う、うんー。ありがとう」
真希になった紀香がそう答えるー。

”ー友達は、ツインテールの子の方が、香織(かおり)ちゃんで、
 髪の長い黒髪の子が美月(みつき)ちゃんねー”

真希の意識がそんな説明をするー。

「ーーで、でも…し、失敗しちゃったらどうしようー
 変な行動しちゃったりしたら、
 真希が嫌われちゃうかもー」

真希になった紀香はいつも明るい表情の真希の顔で、
暗い表情を浮かべながら、自信なさげな言葉を口にするー。

すると、真希の意識は笑いながら言ったー

”大丈夫大丈夫ー。
 わたしがすぐにカバーするし、
 みんなに変に思われちゃってもなんとかなるからー”

とー。

「ーーそ、そう?真希ってすごいなぁ…」
真希の身体になった紀香は苦笑いしながらそう言葉を口にすると、
”あ、でもさすがに友達の前で服を全部脱がれちゃったりとかしたら
 わたしでもカバーできないけどね!”と、
冗談めいた口調でそう言葉を口にしたー。

「あははー流石にそんなことはしないよー」
真希になった紀香がそんな風に言っていると、
”その先が、香織ちゃんと美月ちゃんとの待ち合わせ場所”と、
真希の意識はそう言葉を口にしたー。

ゴクリ、と唾を飲み込む真希になった紀香ー。

”大丈夫大丈夫ー。心配しないでー
 お姉ちゃんは二人と楽しく遊園地巡りをしていればいいだけだからー

 経験は、自然と身についていくものだし、
 難しく考えずにただ楽しんで!”

真希の意識がそう言葉を口にすると、
「ーーう、う、うんー…頑張ってみるー」と、
真希になった紀香は、そう言葉を口にしたー。

やがてー、ツインテールの香織と、
長い黒髪が特徴的な美月がやってくるー。

「ーー真希~!こっちこっち!」
ツインテールの香織が手を振って来るー

それを見た真希になった紀香は
「あ、あははははー」と、かなりぎこちない笑みを
浮かべながら手を振ったー。

”お、お、お姉ちゃんー笑顔が固すぎるよー”
真希の意識からそう言葉を告げられて、
真希になった紀香は「ーーえ、えへへへへへへへー」と、
香織に向かって、今度は唐突に、下心丸出しのおじさんのような
笑顔を浮かべてしまうー

”えぇっ!?なんでそうなるのお姉ちゃん!?”
真希の意識も思わずそんなツッコミを入れてしまうー。

「ーーご、ごめんー」
ボソッと呟く真希になった紀香ー

”で、でもまぁ、最初からいきなりうまくできる人なんていないし、
 さっき言った通り失敗しても全然いいから、
 気にしない気にしない!”
真希の意識のその言葉に、なんだか申し訳ない気持ちになりながらも、
真希になった紀香は、静かに頷くー。

ツインテールの香織との挨拶を終えて、
もう一人の長い黒髪の子・美月とも挨拶を交わすー。

美月の方は大人びた雰囲気の大人しい子で、
どちらかと言うと、”紀香”からすればー、
この美月の方が話しやすい、というかー、
何となく安心できる親しみを感じたー。

「ーーまず、何に乗る~?」
香織がそう言葉を口にしながら歩き始めるー。

「ーーえ…え~、え~~」
真希になった紀香は、乗りたいアトラクションを
素直に言うことができずに、そんな反応をすると、
真希の意識が助け舟を出したー

”定番のものでも何でもいいから、とりあえず言っちゃえ!”
とー。

「ーめ、め、メリーゴーランドとか、ど、どうかなー?」
真希になった紀香がそう言うと、
ツインテールの香織は「いいね~まずはのんびり!」と、
すぐにメリーゴーランドの方に向かって歩き始めたー。

長い黒髪が特徴的な美月も、それに従うー。

メリーゴーランドにたどり着き、
アトラクションを楽しむ三人ー。

真希になった紀香は緊張からか、死んだ目で
景色を見つめているー

”お、お姉ちゃん!そんな固くならないで大丈夫だから!!”
真希の意識から、そんな言葉を投げかけられて、
真希になった紀香は「う、うんー」と呟くー。

そんな真希になった紀香の方をチラッと見つめる美月ー

やがて、メリーゴーランドが終わると、
美月は「じゃあ、次はわたしがー」と、行きたい場所が
あるかのような言葉を口にしたー。

「ーうんうんー
 じゃあ、真希、美月、あたしの順番で乗りたいものにいこっ!」と、
ツインテールの香織が言葉を口にするー。

「ーーわたしはー…最初はアレかな」
長い黒髪が特徴的な美月は、いきなり”ジェットコースター”を指差すー。

「ーーわお!いきなり本命来たねー」
ツインテールの香織が笑いながら言うー。

がーーー…
真希になった紀香はタラタラと冷や汗をかき始めたー。

紀香は”絶叫マシン”が大の苦手なのだー。

”お姉ちゃん?どうかした?”
姉・紀香が絶叫マシンが苦手なことを知らない真希は
中からそんな言葉をかけるー。

「え~……べ、べ、別にー」
真希になった紀香は強がるかのように、
それだけ言葉を口にするー。

紀香は、妹の真希の前では見栄を張る一面もあって、
小さい頃、一緒に遊園地に行った時も
”絶叫マシンが苦手”だということは、
必死にうまく隠していたー。

”ーーよかった~じゃあ、次はジェットコースターだね~!
 たのしみ!”
真希は絶叫マシンも平気なのかそんな言葉を口にするー。

真希になった紀香は、
冷や汗をかきながらも
”ま、真希の身体なんだから、怖さの感じ方もきっと違うよねー”と、
自分に何度も言い聞かせるー。

真希の身体なら、ジェットコースターのあの感じも
少しは薄れるのではないかとー。

がーーー

「ーきゃああああああああああああああああああっ!?!?!?!?」
真希になった紀香は悲鳴を上げると、
ジェットコースターが動きだして早々、失神してしまったー。

”あーー…”
真希の意識が戸惑うー。

それと同時にー
「あっー」と、ビクっと震えると
自分が表に出てきて、自分の身体の主導権を一時的に取り戻したー。

どうやら、憑依した紀香が意識を失うと、こうなるらしいー

「ーーー…お姉ちゃんってばー」
ボソっと呟いて苦笑いする真希ー。

やがて、ジェットコースターが終わると、
失神していた紀香の意識が目を覚ましー、
再び、真希の身体は紀香のものになったー。

「ーーー…あ、あれ、わたしー?」
戸惑う真希になった紀香ー

”お姉ちゃん、気絶しちゃってー
 あ、でも、気絶してる間、わたしが表に出てたから大丈夫”
真希の意識がそう説明すると、
真希になった紀香は少し申し訳なさそうに”ごめん”と、
そう言葉を口にしたー。

「ーじゃ~、次はゴーカート~!」
ツインテールの香織が張り切って言葉を口にするー。

移動し始める三人ー。

が、長い黒髪が特徴的な美月は、
”真希”の方を見つめながら少しだけ表情を曇らせたー…。

②へ続く

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平和的な感じの憑依モノデス~!

たまには、明るい感じでリラックスするのも
いいですよネ~?★

続きはまた明日デス!!!

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