<他者変身>変身を妨害したら大変なことになっちゃった②~混沌~(完)

弟の”変身”の最中に、
それを妨害した姉ー。

その結果、弟は大変なことになってしまったー。

軽い気持ちのイタズラが、思わぬ事態を生むー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーま、待って、お、落ち着いてー」
彩恵が困惑した様子で言うと、
彩恵に変身を途中で妨害されたことで、
不完全な状態の変身になってしまった弟・竜也が
「お、落ち着けるわけないだろ!」と、彩恵の声で叫ぶー。

「ーーー…くそっ…なんか、身体が熱いしー…
 姉さん…どうにかしてくれよ!」

そう叫ぶ竜也ー。

”自分の声”に怒られているような気がして、
彩恵が慌てて”他人に変身できる指輪”の説明書を見つめるー。

英語表記の説明書を改めて読み直す彩恵ー。
こんな性格だが、成績優秀の彩恵は、日本語の他、
英語をはじめ、複数の言語を読むことが出来るー。

「ーーーえ」
彩恵は思わず表情を歪めたー。

”変身の最中には絶対に衝撃を与えないでくださいー。
 予期せぬトラブルに繋がる恐れがあります”

と、そういう意味の文章が書かれていたのだー。

「ーーー…ね、姉さんー…
 身体が痛いー…」

苦しそうな声が背後から聞こえるー。

不完全な変身を遂げた竜也の
一部が、時々スライムのような、変身の最中に見える
ドロッとした形状に変わったり、戻ったりしているー。

「ーーーえ…えっとー…ど、どうすればいいのー?」
慌てた様子の彩恵ー

「ーし、知らないよ!どうにかしてくれよ!!」
彩恵の声で叫ぶ竜也ー。

「わ、分かってるー…分かってるけど…!」
彩恵は、そう叫ぶと、
竜也は、「説明書に何か書いてあったのかー?」と、
苦しそうに、”彩恵の声”を発するー。

しかし、彩恵は言えなかったー
まさか”変身の最中に妨害するな”と書かれているなどとは、
想像していなかったのだー。

口を閉ざす彩恵ー。

「ーな、何で黙ってるんだよー姉さん!」
説明書を自分の目で見ようと、竜也が歩き出すー。

がーー

片足が”彩恵”の姿にー、もう片方が自分の足のままで、
左右の足の長さが違う状況の竜也はー、
正しく歩くことが出来ずに、その場に転んでしまうー。

「ーう…うっ… あぁああああああっ!」
”不完全な身体”で転んだせいか、激痛に襲われる竜也ー

「ーーちょ…ちょっと!竜也ー…!大丈夫!?ねぇ!?」
彩恵はすっかり焦りきっていたー。

自分のイタズラが、とんでもない方向に進んでいるー。
もはや、親友の”葵”に変身してほしい、などと言っている場合ではなかったー。

「ーーーぐ… ……うぅ…」
痛みが少し落ち着き、竜也は立ち上がろうと、
床に手をつくー。

が、手がドロッとして、そのまま再び床に倒れ込んでしまうー。

”いつも強引な姉さん”を驚かせてやろうと、
頼まれた通り、葵に変身するのではなく、
一回、姉の彩恵に変身して、
目の前で胸を揉んだりー、ちょっとだけ驚かせてやろうと…、
仕返ししてやろうと思っていた竜也ー。

しかし、まさかこんな目に遭わされるなんてー。

”もう、こんな姉さんから早く離れたいー。”
竜也は、今回の件で改めて、心の中で強くそんな風に思ったー。

大学生になったら、絶対に一人暮らしを始めるんだー、と、
心の中で改めて、そう固く誓ったー。

「ーーー…ーーー…だ…ダメだ姉さんー」
竜也は、自分の身体の感覚から、そう判断して、声を上げるー。

「ー姉さんー救急車呼んでくれー…このままじゃヤバいよー」

”死ぬ”ー
真面目にそう思ったー。

彩恵は呆然としながら「で…でもー」と、言葉を発するー。

「ーーだ、だめだよ、今、何とかもとに戻すからー」

彩恵は、救急車を呼ぶことを拒んだー。
それはー”自己保身”のためー。
他人に変身する指輪なんてものを使っていることがバレるのも
何だか問題になりそうな気がしたし、
何よりー、”竜也の変身を妨害した”のは自分だー。

もしものことがあればー、自分が罪に問われるかもしれないー。
姉・彩恵はそんなことばかり考えてしまったー

「ーーーーーよ、呼んでくれよー…苦しいー」
竜也が、”彩恵と竜也の声が混じり合ったような”声でそう呟くー

顔が再びドロドロとして、顔半分が彩恵ー、顔半分が竜也のような
いびつな状態に変わるー。

「ーゆ、指輪!もう1回指輪!」
彩恵が思いついたかのように、さっき外した指輪に駆け寄るー。

あくまでも、救急車を呼ぶつもりはないようだー

「ーーう…ぅう」
苦しそうな竜也に指輪をはめる彩恵ー。

”もう一度”別の姿に変身すれば、この”不具合”とも言える状態を
解消できるかもしれないー。
彩恵はそう考えたのだー。

「ー達也!わたしを見て!
 早くわたしに変身して!
 そうすれば、ちゃんと変身できるかもしれないから!」

その言葉に、顔半分が自分に戻った状態の
さらに奇妙な状況に陥っていた竜也は、苦しそうにしながらも
頷くと、言われた通りにするー。

全身が、ドロドロとした状態に戻るー。

その様子を見て、彩恵はホッと安堵するー。

”変身”が、始まったのだー。

しかしー
今度はいつまでも”全身がドロドロした状態”が終わらずー、
スライムのような無機質な人型シルエットのままの状態が続くー

「ーーた…竜也ー…?」
彩恵は、怯えた表情を浮かべながら、そう言葉を口にするー。

しかし、顔の部分も含めて、全てがドロドロの状態が続き、
”変身途中”のまま、それが止まってしまうー。

「え…ち、ちょっと…竜也…!?」
彩恵が慌てた様子で叫ぶー。

しかし、竜也は”人型のドロドロ”の状態のまま、
変身が一向に終わる気配がないー。

「ーーーぅ…」
一瞬、顔の部分が彩恵の顔に変わるー。

「ーよ、よかった…竜也…!」
彩恵は、生きた心地がしなかったー。
自分のせいで、こんなことになっている、ということは
彩恵にも当然自覚があったからだー。

ようやく、ドロドロの状態から、顔の部分だけが”彩恵”の顔に変わった
竜也は苦しそうに彩恵の方を見つめたー

「ーーーーーー苦しいー」
とー。

「ーーー~~~…」
彩恵は青ざめたまま怯えた表情を浮かべるー。

「ーーー…姉さんー………ーー…苦しい」
”彩恵”の顔をした竜也の言葉に、彩恵は震えながら、ようやく言葉を吐き出すー

「ーも…もうすぐ、変身…ちゃんとできるはずだからー
 た、耐えてー」

とー。

何と言っていいのか、もはや彩恵にもよく分からなかったー。

適当に、その場しのぎの言葉を吐き出しながら、
今はただ、とにかく、竜也の変身が無事に完了してほしい、と
そう願うばかりだったー。

がーー…
ドロドロの状態のままの身体が、
突然、形を維持できなくなって、
その場に溶けるようにして、こぼれていくー。

「ーーひっ…!?」
彩恵は悲鳴に似た声を上げると、
そのまま部屋の扉の方に後ずさっていくー。

「ーーー……」
顔だけ彩恵で、後はドロドロの状態の竜也は、
彩恵の方を見つめたー

「ーーこんなことになったのはー、姉さんのせいだー」
とー。

「ーだから、俺はイヤだったのにー」
彩恵の顔で、怒りの言葉を口にする竜也ー。

「ーーーーーー姉さんなんて…嫌いだー」
竜也は、彩恵の顔でそう言葉を吐き出すと、
再び苦しそうに、声を上げたー

「いいから、救急車を呼んでくれよー姉さん!」
とー。

しかしーー
彩恵は涙目で悲鳴を上げると、
そのまま部屋から飛び出して、逃げてしまったー。

それを見た竜也は、彩恵の顔のまま、
絶望の表情を浮かべたー。

「ーーーー………酷すぎるだろーーーー
 何だよーこれ」

あまりにも酷い仕打ちだと、そう思ったー。

やがてー、
顔の部分も再びドロドロになっていきー……
”人型”も、保つことができなくなってー、
”竜也”はその場に崩れ落ちたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」

何分が経過しただろうかー。
いや、何十分かもしれないー。

あまりの恐怖にトイレに逃げ込んで、一人で震えていた彩恵は、
ようやく深呼吸をすると、トイレから出て、
2階にある竜也の部屋に様子を見に行こうとするー。

「ーーど、どうしたの?お腹でも痛いの?」
彩恵の様子に気付いた母親が心配そうに言葉を口にすると、
彩恵は「う、ううんー全然痛くないよ」と、苦笑いしながら、
2階にある竜也の部屋の方に向かって行くー。

”た、竜也ー…し、死んだりしてないよねー…?”

自分で変身を持ち掛け、
変身を途中で妨害してこんなことを引き起こしておきながら、
身勝手にもそんなことを心の中で思う彩恵ー。

部屋の扉を開ければ、弟の竜也が
いつものように呆れ顔でこっちを見るー…
そんな、光景を頭の中に思い浮かべる彩恵ー。

がー…
部屋の扉を開けるとー…

「ーーーーえ…… うそ…」
彩恵は、思わず膝を折るー。

そこに、もう、竜也の姿はなくー、
床にシミのようなものだけが残されていたー

「う…嘘でしょ…?」
呆然として、その場に座り込む彩恵ー。

「ーーーー」
やがてー、彩恵は
頭を抱えながら「どうしようーどうしようどうしようどうしよう」と、
言葉を何度も何度も口にし始めるー

「こんなことになるなんて思ってなかったのー。
 だからー… だからー…」

怯えた表情を浮かべる彩恵ー。

もちろん、弟がいなくなってしまったこともショックだったー。
しかし、それ以上に、自分自身の身が危ういことに恐怖する彩恵ー。

”このままじゃ逮捕されちゃうかもー”
そんな風に思いながら、彩恵はー、
咄嗟に、床に落ちていた”変身の指輪”を拾うと、
それを指にはめて、竜也の写真を見つめたー

「ーーた、た、竜也が消えちゃったことー…
 だ、誰にも知られないようにしなくちゃー」

そう言葉を口にすると、彩恵は”竜也”に変身したー。

「ーーはぁ…はぁ…はぁ…
 竜也……
 わたしー、竜也の分も、責任を持って生きるからー」

竜也に変身した彩恵は、そう呟くと
青ざめたまま、落ち着かない様子で息を吐き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その後ー、

”彩恵”は、竜也の姿と彩恵の姿を使い分けながら
生活し始めたー。

しかし、”二人分を一人でやる”のは流石に無理があるー。

そのため、彩恵は策を講じたー。
”彩恵”は大学を辞め、一人暮らしを始めると宣言、
少し離れた場所の安いアパートを借りて、
”そこで暮らしている”設定にして
親元からも、大学からも離れたー。

そして、普段は弟”竜也”の姿に変身しながら
高校生としてー、実家暮らしを続けているー。

時折”彩恵”に変身しては実家に帰って見せたり、
連絡したり、友達にも連絡しているため、
彩恵自身が”失踪した”という扱いにはなっていないー。

本当は、”彩恵”として生活したかったが、
実家と学校からどちらかが姿を消すなら、
”彩恵”が、消える方が不自然ではないと判断したー。

現在は弟の竜也の姿での生活が”メイン”となっていてー
高校生活を堪能しているー。

こっそり彼女まで作ってしまったりして、
今ではすっかりと”竜也”としての生活に慣れー、
”弟”にあんなことをしてしまったー、ということを完全に隠すことに成功ー、
彩恵は、姉弟、両方としての生活を続けていたー

「ーーーーーー」
この生活にも、すっかり慣れた彩恵ー。
今日も、竜也の姿で学校生活を終えて、
傘を手にゆっくりと家に向かって歩いていたー。

がー…
その時だったー。

「ーーーー…?」
背後に気配を感じて振り返る”竜也”の姿をした彩恵ー。

「ーーーー」
しかし、背後には何もいないー。

”竜也”の姿をした彩恵は、ホッと息を吐き出して
そのまま歩き出そうとすると、
足元にー、”ドロドロとした何か”がいることに気付いたー。

「ーーえ…なに???」
”竜也”の姿をした彩恵がそう言葉を口にすると、
”声”が聞こえたー

”ーーー姉さんーーー
 少しぐらい、反省するかと思って1年間、待ってたけどー…
 全然、反省しないんだなー”

「ーーえ?」

その声は、弟・竜也の声だったー。

あの日、”溶けて”身体を失い、液体となった竜也は、
そのまま窓の隙間から家を飛び出しー、
アテもなく、水たまりや、下水道を中心に、彷徨う日々を送っていたー。

そしてーーー
”姉”の様子をこの1年間ー、ずっと見ていたー。

こんな目に遭わせた姉に”仕返し”してやろうとも思ったー。

でも、こんな姉でも、竜也からすれば、
”たった一人の姉”ー。

少しでも、”弟をこんな目に遭わせた姉”が反省してくれると信じてー
”1年間”待ってきたー。

がーー…
姉・彩恵はこの1年、全く反省の色なしで、
むしろ、”竜也の姿”で日常をエンジョイし始めていたー。

1年待ったー。
もう、愛想もつきたー。

”許せないー”
もはや人型ですらないドロドロの竜也がそう呟くとー、
そのまま、竜也の姿をした姉・彩恵の口の中に飛び込みー、
そしてーーー

”ぐちゅ”

「ーーーーーぁ」
竜也の姿から、彩恵の姿に戻って、
彩恵が白目を剥いたまま、傘を落として路上に座り込むー

そんな、彩恵の耳から外に出たドロドロな竜也は、
そのままゆっくりと、排水溝の中へと潜って行ったー。

「ーーーー」
ずぶ濡れのまま、微動だにしない姉の彩恵ー。

軽い気持ちからの破滅ーー。

彼女自身も、竜也もー、
あの日の彩恵のイタズラにより、人生を狂わされてしまったのだったー…

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

不気味なエンドのお話でした~…☆

他人の姿に変身している最中は、
邪魔をしてはダメですネ…☆!
ちゃんと、邪魔をせずに見守るのデス…!

コメント

  1. 匿名 より:

    弟の事よりもどこまでも自分の保身だけしか考えない彩恵は最低すぎますね。

    最低最悪の姉です。ちゃんと報いを受けたので安心しました。

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~!☆

      今回はとっても嫌なお姉ちゃんをデザインしてみました~!☆!
      最後に報いがあった方が、読む皆様がスッキリすると思って、
      最後の結末を決めたので、安心して頂けて良かったデス!!