<憑依>ストーカーに憑依された彼女③~想い~(完)

ストーカー男に憑依されている…

そんなことを知らずに、洋平は
里桜に対して「豹変した理由」を尋ねる。

しかし…?

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「--それじゃあ、教えてやるよ」
里桜が笑いながら近づいてくる。

ガムをくちゃくちゃとしながら
ポケットに手を突っ込んでいる里桜。

洋平にはー
その里桜の姿と
ストーカーの男が一瞬だぶって見えた気がした。

里桜が囁くー
「真面目にやるのがうぜぇなって思っただけよ」
とー

クスクスと笑う里桜。

そして、里桜は洋平から離れていき、
ソファーに座ると、足を組んで洋平の方を
バカにした目つきで見つめた。

ちょうど、部屋にかかっているバンドの音楽が
サビの部分になるー

里桜が、その曲に合わせて激しく身体を
動かして、ノリノリで叫んでいる。

「おい!里桜!」
洋平は思わず叫ぶ。

里桜はこんな子じゃない。

「うっせぇな!今いいところなんだよ!黙ってろ!」
里桜が叫ぶ。

そして、洋平を無視して
里桜は、歌に合わせて雄叫びを上げると、
「さいこう!」と口笛を吹いた。

洋平は唖然として
変わり果てた彼女の方を見る。

「---…あのストーカーに、何かされたのか?」
洋平が呟く。

里桜が鋭い目つきで洋平の方を見る。

「ーーー俺は1回しかあいつのこと見てないけどさ
 何だか、今の里桜を見てると
 あいつのことが浮かんでくるんだ」
洋平が吐き捨てるようにして言うと、
里桜はクスクスと笑いだす。

「--あのストーカーは、もう解決したって言ったじゃん」

里桜の言葉に洋平が言うー。

「嘘だ!あいつにまだ付き纏われてるんじゃないのか?
 それとも…あいつと付き合いでもし始めたのか!?」
洋平がムキになって叫ぶ。

「--」
里桜の中にいるストーカー男は笑う。

”ケケケ…最高だなぁ…
 彼氏さんよぉ!
 ほらほらぁ、もっと彼女を憎めよぉ”

「---だからぁ、言ったでしょぉ?
 これが本当のわ・た・し」
里桜が甘い声を出す。

「学校ではわたし、
 猫被ってたんだよ?ずっと!
 でもさ、バカらしくなっちゃった!
 あははっ」

里桜はそう言うと、
ガムをティッシュに吐きだして
それをゴミ箱に放り投げた。

「り、、里桜…」
洋平は唖然とする…。

これが、里桜の本性なのか…

と…。

「--女って怖いでしょ?
 んふふふふふ」
里桜はそう言うと、
「ほら!さっさと出てって!
 わたし、この後、男とエッチするんだから」

「--は?」
洋平が、思わず聞き返す。

「男と会う約束をしてるの!
 んふふふ…
 わたしね~?
 こう見えても、エッチ大好きなんだよ!
 うふふふふふ♡」

里桜が笑う。

「り、、里桜…じ、自分が何を
 してるのか、分かってるのか?!」
洋平が初めて怒りをにじませたー。

里桜に対して、怒っているー。

里桜はそんな洋平の感情を
感じ取りながら笑う。

”あぁ…いいぞぉ!
 この女は俺に乗っ取られてるだけなのに…
 彼氏に憎まれてる…
 あぁ…いいぞ…もっと俺を、里桜を興奮させてくれ”

里桜はニヤニヤしていて、何も答えない。

「---わかった…。もういいよ」
洋平は失望を露わにしたー。

そして、そのまま部屋から出て行ってしまった。

部屋から出て行った洋平を見つめながら
里桜は笑う。

「あっははははははははは~!
 どうだ?里桜ちゃん~?
 彼氏に嫌われちゃった!
 あっははははは!
 ははははははははは~♡」

里桜は狂ったように笑い続けるー

里桜に憑依しているストーカー男は思うー、
彼は、元々”憑依”が好きで
そういう小説や作品を見ていたー
だが、彼は”自分が憑依していること”を自ら
明かしてしまうやつが多すぎる、
とそう思っていたー

明かす必要なんて、ない。
憑依なんて、みんなフィクションの世界のものだと思ってやがる。
だからー自分から言わなきゃ、
まさか憑依されているとは思わないだろうし、
本人が変わってしまったと、最後には判断するだろうー

明かして苦しめる楽しみ方もあるー。
だが、明かさず、”里桜として嫌われる”そんな道もあるー

嫌われることに興奮するー。
今、俺は里桜を支配して
里桜として彼氏に嫌われて興奮しているんだー

里桜はニヤニヤしながら、
「さいこうっ」と小さく呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

月曜日ー

学校に登校した洋平は、
かなり落ち込んだ様子だった。

”失恋”
とでも言うべきだろうか。

大人しく優しい里桜に惹かれた。
洋平もぎゃあぎゃあ騒ぐタイプではなく
普通に友達はいるが
どちらかと言うと大人しい部類。
二人は、相性ぴったりだった。

なのにー

「--おはよ~!」
里桜が登校してくる。

流石に学校には、ある程度
ちゃんとした格好で来るがー
髪は少し茶色になり、
化粧も濃くなった。
スカートも短い。

「---最近、里桜ちゃん、変わったよねー」

「え~?そう?うふふふふ」

女子たちと喋っている里桜。
今までよりも、むしろ友達が
増えているようにも思えるー

元の里桜は控えめな性格だったからー
それほど交友関係は広くなかったー

「里桜…」
洋平は、悲しそうに里桜の様子を見つめた。

文化祭の日も迫っている。
洋平は、里桜のことを忘れて
文化祭を楽しもうと、
そう決意するのだったー

それから1週間ー
文化祭当日を迎えるー。

洋平と里桜はほとんど会話することもなく
”事実上、破局”状態にあった。

あれだけ好きだった里桜に対する
愛情が、洋平の中から消え去っていたし、
洋平自身もそのことを自覚していた。

”女って怖いな”

そんな風に洋平は思いはじめていたー。

文化祭当日ー
元々は、里桜と一緒に行動しようと
前から里桜と約束していたが
当然、今の里桜はそんな約束を
守ることはせず、派手なギャルの女子生徒と
一緒に、文化祭を楽しんでいた。

「---ま、そう気を落とすなよ」
友人の吉太(よした)が言う。

「--ーまぁ、もうなんか諦めもついたよ。
 里桜はそういう子だったんだなって」
洋平が言う。

洋平は里桜のことを内心で
軽蔑し始めていたー
”憑依されていること”も知らずに。

「--ん?」
吉太が、ふと騒ぎに気付く。

「なんかあっちの方、騒がしくないか?」
そう言う吉太に、
洋平も「確かにな」と呟く。

「ちょっと行ってみるか!」
騒ぎが起きている方向に向かって行く吉太。

洋平も、そのあとを追う。

「----おらぁ!人にぶつかっておいて
 何だその態度は?」

怒鳴り声が聞えるー。

周囲は唖然としている。

その怒鳴り声の主はー
女性だ。

洋平が、乱闘の現場に
到着して驚く。

「----!!」

倒れているのはチャラそうな男ー

その男を、里桜がグーで
殴りつけている。

怒鳴り声を上げながらー

「な、何があったんだ?」
洋平が近くの別の生徒に聞くと、
「肩がぶつかったとかで、里桜ちゃんが
 急にキレてさ、、喧嘩が始まったんだ。

 しっかし、里桜ちゃんって強いんだなぁ」

別の生徒はそう答えた。

「--クソ野郎が!」
すっかり伸びきった茶髪の男に向かって
唾を吐き捨てる里桜。

里桜は周囲を見ると
へらへらと笑った

「何見てんだ?
 あ?」

中指を突き立てて
挑発的なポーズを取る里桜。

すぐに、騒ぎを聞きつけた先生が
やってくるー

「…!」
先生も里桜の起こした喧嘩に驚くー。

「さ、、笹川さん…?」
里桜の方を見ながら先生が言う。

里桜は不貞腐れた態度で
「はいはい、停学でも退学でもなんでもどうぞ」と
答えたー。

そのまま里桜は連れて行かれるー。

”何があった…?”
洋平は、今一度そう思ったー

里桜の豹変は明らかにおかしいー。

里桜の優しい笑顔が浮かぶー
あれは、全部、猫をかぶっていた?
洋平の頭の中にぐるぐると里桜との
思い出が浮かぶ。

だがー
ストーカー男に脅されているだとか
そういう雰囲気ではないー。
脅されている人間の行動ではないー。
最近の里桜の行動は、
”自分の意思”によるものだと
洋平は思う。

どうしてあんな風になってしまったのかは分からない。

里桜本人の言うとおり、
今までは猫を被っていたのかもしれないー。

「---里桜…」
洋平は、どうすることもできず、
ただその場に立ち尽くしたー

そして後日ー
里桜の退学が決まったー。

あれだけ真面目だった
里桜が、問題を起こして
退学するなんてー。

洋平は、正直言って
失望してしまった。

里桜に何らかの変化があったのは間違いないー。

だがー
その理由が分からない。

”自分の意思”であることは間違いない、と
そう思うー
あの態度は演技だとか、そういう類のものじゃないー。

「----里桜」

放課後ー
廊下を歩いていると
洋平は偶然、退学の手続きをしに来た
里桜とすれ違った。

里桜は、ジャラジャラと鎖の音を
立てながら派手な格好で
学校にやってきていた。

もう、本性を隠す気もないようだ。

髪は、一部が赤く染まり、
化粧も派手だー
口元にピアスのようなものも見えるー。

「---ふふ…なによ?」
里桜がバカにしたように笑う。

「----…里桜…
 お前、本当にそれでいいのか?」
洋平が言う。

その言葉には悲しさと怒りのような
ものが混ざっていた。

「わたしの人生、どうしようと
 わたしの勝手でしょ?
 いちいち口出すんじゃねーよ」

里桜がうんざりした様子で言う。

「----わかった」

洋平は静かにそう答えて、
目を瞑る。
自分の見ていた里桜は、”幻”で
あったのだと、自分にそう言い聞かせながら。

夕日が差し込む廊下で、
洋平は呟く。

「---里桜…
 俺はさ、、里桜のこと
 本当に好きだった…

 でも…
 今の里桜は好きになれないー。
 いや…正直に言うよ…
 今の里桜のことは嫌いだ。
 今の里桜みたいな生き方は、
 俺には理解できない」

洋平が吐き捨てるようにして言うと、
里桜はクスクスと笑った。

「くくくくくく…
 くく、ひひひひひひひひ」

里桜に憑依している
ストーカー男は興奮したー

”この女が憎まれているー”
”この女が失望されているー”

最高の瞬間だー。

ゾクゾクしながら里桜は答えたー

「わたしも、あんたのことなんて
 大嫌いよー」

そう言って洋平を睨みつけると
そのまま里桜は、バンドの歌を
口ずさみながら、
立ち去って行ってしまったー

「里桜―」

洋平が、里桜の姿を見たのは
それが最後だったー

”嫌悪”

それしか、残らなかったー

ストーカー男は笑うー
”自分の思いが伝わらないならー
 奪ってしまえばいいー”

里桜の手を見つめながら笑う。

「くくく…俺は里桜ちゃんとひとつになったんだ」

里桜が自分の方を振り向いてくれないなtら
自分が里桜になって里桜を
自分好みの女に染めてやるー。

ガムを噛みながら
里桜は低い声で笑いながら、
夜の街へと向かうのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数年後

洋平は高校を卒業し、
大学に進学していたー

大学では新しい彼女も出来て、
幸せな日々を送っていた。

そんな、ある日ー

同じ高校の出身である友人・吉太が言う。

「なぁ、洋平、ひとついいか?」
吉太が気まずい表情で言うー。

洋平が不思議そうな表情を浮かべる。

吉太は、洋平の表情を見て、
言葉を止めた。

「いや、やっぱいいや」

「なんだよ」

笑いながら歩いていく洋平

吉太は、昨夜、渋谷で夜遊びしてた
友達から、あることを聞いた。

”たまたま一緒になって飲んだ女が変なことを言っていた”

ーと。

その内容はー

「 ”JKだったこの女の身体を奪ってやった”って」

「”元々ストーカーだった俺が、今はこの女なんだ”」

と、いうものだった。

里桜と名乗っていたらしいー。

その友人は里桜の高校時代を知らないから、
ただ単に、酔っておかしなことを言っている、
ぐらいにしか思っていないー

しかし、里桜の豹変を当時、目の当りにした吉太はー
”もしかして本当に?”とそう思って
洋平に伝えようとしたー
ストーカーに付きまとわれていた話も聞いたことがある。
もしも、里桜があの時、ストーカーに憑依されて
豹変したのだとしたらー

だがー
吉太は伝えなかったー

もしー
このことを伝えたらー
洋平は、里桜のことを助けに行くかもしれないー

だがー
全てはもう遅すぎるー
洋平には新しい彼女がいる。
もし、里桜のことを伝えたらどうなる?

里桜がもし憑依されていて正気を取り戻したらどうなる?

今の彼女か、里桜が悲しむことになるかもしれないー
いや、もしも他人に憑依できる人間がいるなら
今の彼女も被害に遭うかもしれないー
”関わらないほうがいい”

それに、数年間も支配されていた里桜が
今、正気を取り戻したらー?

彼女はきっと、耐えられないと、
吉太はそう思ったー

”遅すぎる 何もかも”

吉太は、
悲しそうに呟いた。

もう遅いー

洋平には新しい彼女が出来たー
洋平は里桜に愛想を尽かしてしまったー
里桜はもう数年間も乗っ取られたままー

もう、遅すぎるー

伝えれば
洋平は里桜を助けに行くかもしれないー

でもー…
その先にはーーー
光は無いー

そんな気がしたー。

結局ー。
洋平は、里桜のことを”最低な女”だと
思ったまま、真実を知ることはなかったー。

本来、結ばれるはずだったかもしれない
2人の道は、永遠に交わることはないー

そう、永遠にー。

おわり

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コメント

最後まで彼女が憑依されていることに
気付けず、そのまま嫌いになってしまう
パターンのお話でした~!

いつも私の作品の、彼氏持ちの彼女に憑依する人は
自分からペラペラ種明かししちゃうことが多いですが
今回はあえて種明かししない憑依者にしてみました~

お読み下さりありがとうございました!!

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