<憑依>輪廻転生①~永遠の生~

永遠の生ー。

それに、憧れた人間がこれまでどれほどいただろうか。

憑依能力ー
その力で、”永遠に生き続けている男”がいた…。

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村上 茉穂(むらかみ まほ)-。
高校2年生の、超がつくほどの優等生だー

面倒見がよく、頭の回転が早く、
成績も優秀ー
ほぼ全てのテストで100点を取るほどだー。

そんな彼女に
クラスメイトの条川 快子(じょうかわ かいこ)は
憧れを抱いていたー。

ただ、
快子は少しだけ、茉穂に違和感を
感じることがあったー

それはー

「---はぁ~
 今日も楽しかった~!」
快子が言うと、
茉穂は、優しく微笑んだ。

戦国時代にタイムスリップしてしまう
恋愛モノの映画を見た帰りだった。

おしゃれな茉穂が、
苦笑いしながら言う。

「でも、正直、あんなじゃなかったけどね。
 すごい時代だったから」

茉穂がそう呟く。

「へ?」
快子は首をかしげた。

”すごい時代だった?”
どうしてそれが茉穂に分かるのか。

「--どういうこと?」
快子が言うと、
茉穂は苦笑いしながら言う。

「え?あ、ほら!小説とかいっぱい読んでるから
 現実の戦国時代はあんなに
 甘い出来事なんてなかったよ~!ってことね!

 本能寺のあとも大変だったんだから!」

ーー!?!?!?
快子はさらに首をかしげる。

”本能寺のあとは大変だった?”

まるで、自分が経験してきたかのような
物言い。

「---なんか、茉穂ちゃんって
 時々変だよね?」
快子が笑う。

「え?えぇ~?そうかなぁ~?」
茉穂が苦笑いしながら、目を背ける。

「--まぁ、茉穂ちゃんのそんなところも
 好きだけどね~!
 あんなに頭いいのに、
 なんか、不思議って感じで」

快子の言葉に、茉穂は微笑む。

夜道を2人で歩きながら、ふと、快子が言う。

「ねぇ、茉穂ちゃん…
 わたしたち、ずっと友達だよね?」

”ずっと”

茉穂は、ふと表情を歪めたー

”永遠、なんて、ないー”

今までに何度も、
何度も何度も何度もー
”ずっと一緒にー”
そう言われてきたー

けれどー。
みんな、いなくなってしまった。

残されたのは、自分だけ。

快子もー
いずれ、いなくなるー。

「----…ずっと…」
快子の言葉に反応する茉穂。

茉穂は、
少しだけ考えたあとに微笑む。

今はー
そう、今、この瞬間を、楽しもうー。

「うんー友達でいようね」
優しく微笑んだ茉穂。

快子も、そんな茉穂を見て、微笑んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

彼女はーーー
村上 茉穂本人ではないー

いや、
身体は本人だー。

だがー
茉穂は”小学生時代”に
乗っ取られているー

彼女は、彼女ではないー
中身は”彼”だー。

彼はー
”憑依能力”を持って生まれたー。
どうして、憑依できるのか分からないー

死ぬ度に彼は、幽体離脱をしてー
また次の身体に憑依することで、
他人の身体を奪い、
”永遠の生”を手にしてきた。

一度憑依すると、
その身体が死ぬまでー
抜け出すことはできないが
死ぬと必ず、幽体離脱をし、
次の身体を選び、憑依することが
できるのだったー。

彼はもうー
”何千年”も生きているー

弥生時代も見てきた―
平安時代も戦国時代もー

いやー
それだけではない。
日本人以外も経験してきたし、
何なら黒船にも乗っていた。

男として生きたことも
女として生きたこともあるー

”今(茉穂)”のように真面目に生きていることもあれば、
大悪人として生きたこともあるー。

ある時は、大量に虐殺したこともあるし、
詐欺行為を働いたこともある。

生きることに疲れて、
憑依するのをやめて霊体のまま漂っていたこともあるー

けどー
また、しばらくすると現世に戻りたくなり、
誰かに憑依して、人生を始めるー。

そうこうしているうちに
彼は何千年もの時間、
他人の身体を渡り歩いて生きてきた。

「---…」
”今の身体”である茉穂は
超がつくほどの優等生を演じている。

勉強など、もうたやすいものだ。
見た目は女子高生でも
中身は何千年も生きた人間なのだからー。

・・・・・・・・・・・・

今日も学校に登校する茉穂。
女性として生きるのは、2回ぶりぐらいだろうか。

前回は男の身体に憑依していた。
もっとも、飽きて途中で自殺してしまったが、
今とは全く違う生活を送っていたのだー

「---ふぅ~♡」

トイレで一人、胸を揉んでいた茉穂は
服装を整えて、廊下に出る。

元々が男だったからだろうかー
時々急にエッチな気持ちになってしまうー。

もちろん、普通の女子の感覚かもしれないが、
元男の彼には、”急にエッチな気持ちになる”のが、
普通のことなのか、自分が元男だからなのか
分からなかったー

「茉穂ちゃんおはよ~!」
茉穂になついている女子生徒の快子が
声をかけてくる。

”彼女みたいに、
 何も難しいことを考えずに
 生きてみたいな”と
一瞬茉穂は思う。

何千年も生きていると
つい難しいことばかり考えてしまうー

これからも、自分は
何千年も生きるだろう。
茉穂としての人生もいつかは終わる。
そしたらまた新しい身体に乗り換える。

いずれー
自分が茉穂として生きていたことも
忘れてしまうだろうー。

彼は既に
”何個もの人生”を忘れかけているー

あの時、自分は何て名前だったかー。
何度もなんども人生を送りすぎて、
忘れかけているのだー

「お~い!だいじょうぶ~?」
クラスの女子生徒・英香(えいか)が声をかけてきた。

ぼーっとしていた茉穂のことを
心配しているようだ。

「え?あ、うん、大丈夫大丈夫」
茉穂は、そう呟くと
英香の方を見たー

英香とは小学校時代からの付き合いだー。
茉穂にとって幼馴染のようだが、
茉穂の身体に憑依したのが小学生のときだったから
”彼”にとってはその時からの付き合いだ。

偽りの人生ー
偽りの身体ー

こんなことが、いつまで続くのだろうー

夜ー
帰宅した茉穂は、
お風呂で髪を流しながら
ため息をつくー

奪われたこの女はー、
どうなってしまったのだろうー。
心の奥底に封じ込められているのだろうか。
それとも、憑依した瞬間に消えてしまったのだろうかー

それともー
今も、乗っ取られてこうしているのを
見ているのだろうかー。

足や胸を洗いながら
茉穂は思うー。

いつか、自分は完全に死ぬことができるのだろうかー

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最初はーーー

今でいう、原始時代だった。

狩を行い、
それを食べるー。

そんな世界。

確かに、何もなかった。
確かに、退屈だったかもしれない
けれど生きるのに必死だったし
あれは、あれで、楽しかった。

ある日ー
獣を狩に行っている最中に、
”彼”は、しくじった。
敵対する部族に弓を射られて、
深手を負ってしまったのだー。

彼はその時思った

”生きたい”
”生きたい”
”死にたくない”

とー。

彼を撃った敵対部族の男は、
不気味に微笑んで、
そしてー
彼にトドメを刺しに来たー

彼は
”死にたくない”
そう思ったー

そしてー
力の抜けて行く身体を無理矢理起こすと、
彼は、必死に暴れまわったー。

悲鳴が上がるー

気付いたときには、
敵対部族の男の喉元に
槍を突き立てていたー

敵対部族の男はー
”彼”を睨みつけながら、
死んでいったー

そしてー
”彼”も力尽きて死んだー

はずだったー

だが、
気付けば彼は”空中に浮いていた”

そう、霊体になったのだー

そしてー
彼はしばらく霊の状態で放浪してー
新しい身体を見つけたー

それが、彼にとっての初めての憑依だったー

その後も、彼は死ぬ度に
身体を渡り歩いた。
当時は、毎日が生きるか、死ぬかの時代。
初めて憑依した女の身体では、
エッチしまくったものだが、
その身体も、すぐに敵対部族の襲撃によって
死んでしまったー。

彼はー
死ぬ度に次の身体に憑依して
”永遠に生きてきた”

日本だけにとどまらず
全世界で、彼は生きてきた。

平安時代では、
貴族として裕福な時間を過ごした。
教科書に載っていないようなことも
あったが、それはそれで、平穏な日々だったー。
が、その時の彼は、何者かに毒殺されたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ある日の昼休みー

友人の快子、英香の二人と
昼食を教室で食べていると、
急に胸のあたりに激痛が走った。

「--んくっ…!?」
茉穂は思わず胸のあたりを押さえる。

「だ、だいじょうぶ?」
快子が不安そうに尋ねる。

すぐに痛みは治まったー。
心配そうに見つめる快子と英香の方を見ながら
茉穂は「う、、うん…だいじょうぶ」と呟いた。

”また”だー。

茉穂は、昼食を終えて廊下を歩きながら思うー

”また”
死ぬのかー?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

戦国時代ー。
”彼”はとある大名の妻として
生きていたー

大名の妻としてー
夫を立派にサポートする日々を
送っていたー。

その時、既に彼は1000年以上
生き続けていたから頭の回転も
知識量も相当のもので、
周囲の武士たちを驚かせていた。

そんな彼女はー
本能寺の変に巻き込まれたー

本能寺でー
明智光秀率いる軍勢に
よって、殺されてしまったのだー。

「くそっ!くそっ!」
あの時ー
”彼”は命の危機を感じて、
女として振る舞うことも忘れて
炎の中必死に逃げていたー

だがー
彼はー
明智光秀は、
信長ではなくー
真っ先に”姫”を狙ったー。

何故ー?
何故なのかー。

彼は笑っていたー

「--くそ…あ、、やめろぉ…!」

姫としての人生は大好きだったー。
だから、死にたくはなかった。
姫として振る舞うことも忘れて
男言葉で苦しむ”彼”を見ながら
謀反を起こした張本人が、
いたぶるようにして、彼女をー
殺したー。

そもそも、彼がどうして謀反を
起こしたのか、未だによく分かっていないー。
”突如豹変した”という噂もある。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅した茉穂は溜息をつくー。

茉穂に憑依している男はー
”長生き”したことがないー。

もちろん、ある程度高齢になるまで
生きていたことはあるし、
高齢の身体に憑依したこともあるー。

だがー
”穏やかに死んだ”ことがないー

必ず誰かに殺されたりー
病気になったりー
事故に遭ったりー

何故だろうか。

「---……」
茉穂は、ため息をつきながら
スマホをいじる。

胸のあたりがずきずきと痛んでいる。

病気ー?

もちろん、普通の人間と違って
そこまでの恐怖はない。

仮に茉穂としては死んでも、
次の身体に憑依すればいいだけだ。

だがー
毎回、”死ぬ”ことは辛い。
痛みもあるし、
何より”その人間”としての人生は、終わりだ。
今回で言えば
クラスメイトの快子や英香、
茉穂の両親ー
そういった人間たちとは、別れることになるー。

一度、別れが惜しくて、死んだ身体の親友に
憑依して、人間関係を続けようとしたこともあったが
やはり、”同じ人間”としては扱ってもらえず、
あまりの辛さに逃げ出して、
自殺してしまったことがあるー。

茉穂として死んだらー
もう、ここからは立ち去るしかない。
仮に、英香や快子に憑依しても
”茉穂と英香や快子は別人”
周囲の扱いに苦しむだけだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

4時間目の授業の体育の授業。
体育着に着替え終えて
少し興奮した状態の茉穂は
そのまま授業に向かう。

元が男だからだろうか。
女子として着替えるのは興奮するー

「あ…!」

興奮してたら大事なモノを忘れていた。

忘れ物を取りに教室に戻る茉穂ー

そこに、
一人の女子生徒の姿があった。

「--?」
茉穂が教室の中を覗くと、
そこにはー

”茉穂の弁当”に
”何かを入れている”女子の姿があったー…

「---!?」

茉穂の弁当に何かを入れ終えた女子は
不気味な笑みを浮かべた…。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

何千年も憑依を繰り返していると、
憑依を楽しむというより…
なんだか違う気持ちになりそうな気がして
こういう内容になりました~。
作中の男性は、時々は楽しんではいるみたいですケド…!

過去と現在がどのように繋がるのか、
明日以降をお楽しみに~デス!

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憑依<輪廻転生>

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