江戸時代のとある地域に出没する謎の辻斬りー。
彼は人を皮にする力を持っていて、
その力で、その都度、違う身体で辻斬りを繰り返していたー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
同心の蔵之介は
昨晩、”辻斬り”による被害が起きた事件現場へと
やってきていたー。
「ーーーー」
蔵之介は、昨日話をしたばかりの
食事処の店主が斬られて死亡しているのを見て
険しい表情を浮かべるー。
それと同時に、少し離れた場所で、
筋肉が破壊され、さらには複数個所骨折した状態ー、
加えて、着物のようにペラペラとした状態に
身体全体が変質しているー、
そんな、老人の遺体が発見されたー。
「~~~~~~~…」
蔵之介は困惑した表情を浮かべると、
集まっていた周辺の住人に対して
「ーここの奥さんを見た者はいないかー?」と、
そう言葉を口にするー。
食事処の店主が襲われたー。
が、その妻の”さや”の遺体は発見されておらず、
この場所にもいない状態だったー。
「ーーー…いえー
ただ、昨日、恐らくさやさんの悲鳴を聞いた者ならいますがー」
食事処の近所の住人がそう言うと、
別の住人は「昨日のーーー…そうですねー」と、
悲鳴を聞いた時間を思い出しながら
言葉を口にするー。
「ーーそうかー」
そう言葉を口にすると、
蔵之介は、恐らくは店主と一緒に、
妻である、さやも狙われたに違いない、
とそう分析するー。
がー、
「だが妙だなー」と、そう呟きながら
蔵之介は周囲を見渡すと、”血”が、二人分しか
存在しないことに違和感を覚えるー。
一つは、店主の血ー。
もう一つは倒れている老人の血であることは
ほぼ確実だー。
が、それ以外の血はないー。
「ということは、奥さんは逃げたか
辻斬りに攫われたかってことだろうなー」
同心・蔵之介は険しい表情を浮かべながら
そんな推理を口にすると、
不安そうな表情を浮かべる住人たちのほうを見つめたー。
「ー心配するな。
今夜から俺が直接、この辺の見回りをするー」
町人たちから慕われている蔵之介がそう言葉を口にすると、
町人たちの表情に安堵の表情が少し広がるー。
がー、
「だが、俺一人じゃ、全員を見守ってやることはできないー。
お前たちも夜間は外出せずに、しっかりと家の中にいるんだー。」
と、蔵之介は注意喚起の意味でそう言葉を口にするー。
すると、住人たちもゴクリと唾を飲み込むながら頷くと、
蔵之介は「何かあったらすぐに知らせてくれー」と、
そう言葉を口にして、
事件現場となった食事処を別の者に任せて移動し始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーークククククーー
今宵は、”誰”を斬ろうか」
人気のない雑木林の奥で、昨日、
夫を辻斬りに斬り殺されたはずのさやは
笑みを浮かべながら
自分の刀を見つめていたー。
「ーーー血だー。今夜も血が見たいー」
さやは昨日、怯えていた時とは
まるで別人のように邪悪な笑みを浮かべながら
刀を見つめるー。
そう、さやはあの後、
辻斬りの男に”皮”にされて斬られてしまい、
その身体を乗っ取られてしまっていたー。
”次はお前が辻斬りになるんだよ”という
辻斬りの男の言葉通り、
さやは、辻斬りにされようとしていたー。
「ーーー」
昨日着ていた着物姿のまま、ゆっくりと立ち上がるさやー。
彼ー、
辻斬りの男にとっては
乗っ取る身体は”誰でも”よかったー。
男だろうと、女だろうと興味はないしー、
子供だろうと、老人だろうと興味はないー。
容姿で特定の人間を狙うこともしないー。
ただ、使っている身体が”ダメ”になった時には、
思いつきで見かけた身体を奪っているー。
彼はー、”身体を乗っ取りたくて”乗っ取っているわけではないー。
身体を乗っ取るのは、あくまでも人を斬り続けるためー。
自分本来の姿で辻斬りを続ければ、
確実にいずれは捕まるし、
辻斬りを続けられる時間は短くなるー。
がー、他人の身体であればー、
いくらでも奉行所の目を逃れることができるー。
「ーークククーーー
あぁ…血が早く見たいー
夜まで我慢できねぇ」
辻斬りの男に乗っ取られている状態のさやは、
そう言葉を口にすると、
ニヤニヤしながら、刀で自分の指に傷をつけたー。
そこからはすぐに、”さやの血”が流れ始めるー。
「ーふふふふふー血だ」
さやは目を輝かせながら、そう言葉を口にすると、
自分の口をペロリと舐めるー。
「ーふひっ…うはははははっ!血だ!」
興奮した様子で、たった今、自分で斬り付けたばかりの指を
しゃぶるようにして舐め回すと、
はぁはぁと荒い息を吐き出しながら、
笑みを浮かべるー。
しばらく、夢中になって自分の指を舐め続けていたさやー。
そんなことをしているうちに、
周囲が暗くなり始めて来たのに気づくと、
さやはニヤッと笑みを浮かべるー
そして、刀を手にすると、
ゆっくりと雑木林の中を歩き始めるー。
そろそろ、楽しい楽しい”人斬り”の時間だー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夕刻ー。
蔵之介の上司である雄之進は、
蔵之介から”今夜から見回りの強化を”と、提案を受けていたー。
「うむ。これ以上、我々の街で好き放題させれば、
この奉行所の名にも傷がつくー。
中川ー。お前に現場の指揮は任せる」
雄之進はそう言葉を口にすると、
蔵之介は「承知しました」と、そう言葉を口にしてから
そのまま刀を携えながら、奉行所の外へと出ていくー。
”どこの誰かは知らんが、
これ以上、好き放題はさせない”
蔵之介はそう思いつつ、街の人々たちを守る、と
改めて心の中でそう呟くと、
そのまま夜の街の見回りを始めたー。
見回りを開始してから数分ー。
蔵之介は”怪しい人影”を発見したー。
「ーーー何奴?そこで何をしている?」
蔵之介がそう声を掛けると、
振り返ったのはーー…
立派な剣を携えた剣客だったー。
一瞬、蔵之介はこの男こそ辻斬りだと思い、
身構えるー。
がー、その男は
「いやいや、旦那ー。俺は辻斬りじゃありませんぜ?」と、
そう言葉を口にすると、
笑みを浮かべながら蔵之介に近付いて来たー。
「ーー俺は各地を渡り歩いている剣客でねー。
名を龍八郎(りゅうはちろう)と申しますー。
最近、この辺で凄腕の辻斬りが出ていると聞きましてねー
そいつを成敗しようと、こうして見回ってるわけです」
龍八郎のその言葉に、
蔵之介は少し戸惑ったような表情を浮かべると、
「ー本当だろうなー?お前が辻斬り本人ということは?」
と、そう言葉を口にするー。
その言葉に龍八郎は思わず苦笑すると、
「人相書きとは違うでしょう?」と、揶揄うようにして笑うー。
その上で、
「まぁ、でも疑われちまうと、参ったな」と、
戸惑いの表情を浮かべるー。
彼自身には”無実”を証明する手段がないようだー。
蔵之介は疑いの目を抱きつつも、
口を開こうとしたー。
がー、その時だったー
「ーー!?」
蔵之介と、剣客・龍八郎はほぼ同時に、
横から現れた”人の気配”に気付いてその方向を見つめたー。
するとそこにはー…
昨日”辻斬り”によって殺された店主の妻である、さやの姿があったー。
「ーー無事だったかーよかー」
蔵之介はそこまで言いかけて口を閉ざすー。
何故なら、さやが刀を手に、邪悪な笑みを浮かべながら
こちらに向かって来たからだー。
「ーー!?!?
つ、辻斬りは男だと聞いていたがー!?」
横にいる剣客・龍八郎がそう叫ぶと、
同心・蔵之介も困惑しながら
「とにかく来るぞ!」と、そう叫ぶー。
「ーうははははは…!血だ!血を見せろ!」
さやは、その優しそうな顔に狂気を浮かべながら
そう言葉を口にするー。
その様子を前に、同心の蔵之介は
困惑した表情を浮かべるも、
すぐに「止まれ!今すぐにその刀を捨てろ!」と
凶行に走ろうとするさやに対して、止まるように
言葉を口にするー。
しかし、さやは一切動じる様子はなく、
狂ったように笑いながら、同心の蔵之介と
剣客の龍八郎に襲い掛かって来たー。
蔵之介も、龍八郎も必死になって
さやの刀を防ぎながら応戦するー。
が、さやは二人を前にして
一歩も引くことなく、異様なほどに卓越した刀捌きを見せると、
何とかそれを防ぎながら、
剣客の龍八郎が口を開くー
「いったい、何者なんですー?
太刀筋がまるでプロだー」
とー。
その言葉に、同心の蔵之介も困惑の表情を浮かべながら
「ーこの人はー昨日辻斬りに殺された人の奥さんだー」と、
そう言葉を口にするー。
そんな会話もお構いなしに、さやは「血だ!血を見せろ!」と
狂った笑みを浮かべながら刀を振るい続けるー。
「ーー被害者の奥さんー
じゃ、この人が辻斬りってわけですかいー?
でも、手配されてるのは確か男じゃー?」
剣客・龍八郎はそう言いながら、
同心・蔵之介のほうを見つめるー
が、蔵之介にも”どういうことなのか”分からない様子で、
蔵之介は必死にさやの刀を防ぎながら、
「ーやめるんだ!刀を捨てろ!」と、そう叫ぶー。
それでも、さやは動じないー。
蔵之介も、龍八郎もそれなりの腕前の持ち主であるはずなのに、
さやはその二人を相手にしても、
全く怯む様子もなく、引けを取らない戦いを続けていたー。
がーー
ボキッ、とさやの身体が音を立てて、
足が変な方向に曲がって崩れ落ちるー。
「ーーっ…ひひーくそっ」
さやがニヤニヤしながら、それでも無理矢理立ち上がると、
刀を手に、先ほどよりも鈍い動きで戦いを続けるー。
髪が乱れ切ったさやの様子を見て、
同心の蔵之介は「いったい、どうなってるんだー…」と、
そう言葉を口にするー。
目の前にいるさやが、さや本人には見えないー。
まるで、刀に操られているような、
そんな風に、同心の蔵之介には見えてしまったー。
「ーーっ」
”さや”の身体で刀を勢いよく振り過ぎたせいか、
腕がおかしくなってしまったことに気付き、
”さや”を乗っ取っている辻斬りの男は
「あ~あ」と、小さく呟くー。
剣客の龍八郎はそれを見ると、
「ーー辻斬り女!これで終わりだ!」と、
そう叫んでから、そのままさやに向かって走り出すー。
「ー待て!」
同心の蔵之介は、元々の”さや”のことを知っているからか
そのまま斬り捨てるのではなく、
何とか捕らえて話を聞き出そうと、そう考えていたー。
がーー
「ぐあああああっ!」
龍八郎の刀によって斬られたさやは
苦しそうな声を上げて、その場に倒れ込むー。
「ーーーへへっ、辻斬りも俺の手にかかればこんなもんです」
剣客・龍八郎は得意気な表情でそう言葉を口にすると、
同心の蔵之介は”やってしまったかー”と、言わんばかりのため息を
吐き出すー。
「ーーーー」
そして、倒れ込んで動かなくなったさやを確認すると、
「この人は、こんなことをする人じゃなかったし、
まるで何かに操られている様子に俺には見えたー」と、
蔵之介はそう言葉を口にするー。
「ーー人は見かけによりませんぜー?
この女は、辻斬りをするような女だったー。
それだけのことだと思いますけどね」
剣客・龍八郎がそう言葉を口にすると、
同心・蔵之介は少し沈黙してから
「まぁいいー。この人を運ぶ準備をするー」と、
そう言葉を口にすると、
「ーじゃ、俺はここを見張っていて差し上げますよ」と、
剣客の龍八郎が頷くー。
その言葉に、蔵之介は静かに頷くと、
応援を呼ぶためにその場所を離れたー
がーーー
「ーーーーー」
剣客・龍之介が、周囲を見渡している中ー、
死んだはずの”さや”がピクッと動いたー。
”クククククー
皮にしてる人間を斬っても
俺の身体へのダメージはねぇー”
さやを乗っ取っている男は、
心の中でそう言葉を口にするー。
そもそも、”わざと”倒されたフリをしたものの、
辻斬りの男は”皮”にしている身体が死んでも
そのまま動かすことができるー。
まるで、ゾンビのようにー。
斬られても倒れず、そのまま戦い続けることが
できたのだー。
ただ、それはしなかったー。
流石に同心と剣客の二人が相手では分が悪いし、
”血”を見れないー。
さやは、ニヤニヤしながら自分の身体から出た血を舐めると、
剣客・龍八郎の背後でゆっくりと立ち上がったー。
「ー!?」
龍八郎は、死んだはずのさやが急に起き上がったことに驚き、
目を見開くー。
「血だ…!血だァ!」
さやの狂った声が響き渡りー、
その場に血が飛び散ったー…。
③へ続く
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コメント
人を皮にする力を悪用する辻斬りとの戦いは
まだ続きます~!★
ちゃんと倒せるのかどうかは
明日のお楽しみ~!!★
今日もお読み下さり、ありがとうございました~!★!

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