全ての人間が”変身能力”を手に入れてしまった世界ー。
もはや、誰が誰だか分からない
そんな状況下の中でも、
人々は今日も何とか生き抜いていたー。
そんな中、妹を探している男の前に
妹が姿を現してー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あれ…わたし…?」
義也の妹・香織が
香織の姿に変身している義也を見て
そんな言葉を口にするー。
「ー香織ー…?」
香織の姿をしたまま、義也は
全人類が変身能力を手にして以降、
行方不明になっていた妹・香織の出現に
戸惑いの表情を浮かべるー。
「ーーえ…お前の妹ー?」
隣にいたアイドル・美鈴の姿に変身している
友達の純太も、困惑した表情でそう言葉を口にすると、
香織に変身している義也は小声で「分からないー…本物だといいけど」と、
それだけ言葉を口にしたー。
全人類が変身能力を持っている以上ー、
前の前に現れた妹・香織が本物である保証はどこにもないー。
「ーーーーー何でわたしの名前を知ってるのー?あなたは誰ー?」
妹の香織がそう言葉を口にするー。
「ーーえ、あ、いや、それはー」
香織に変身している兄・義也は少し気まずそうにしながら目を逸らすー。
相手が”本物の香織”ならば、
香織からすれば、”妹の姿に変身している変態兄”と
言うことになってしまうー。
”香織がいなくなったから、手掛かりを探すためだったんだ!”
俺が香織の姿をしてたから、香織だってこうして声を掛けて来てくれたんだろ?”と、
そういう風に誤魔化すこともできなくはないー。
ただー…
そう言って誤魔化したとしても、
”別に、お兄ちゃんの姿のままでいれば声を掛けるけど?”と言われてしまったら
ますます立場が悪くなるー。
「ーーー…そ、そ、そっちは、だ、誰なのかなー?」
自分が兄の義也であることを隠しながら、
香織に対してそう確認するー。
”見た目”通りなら香織ではある。
ただ、誰もが変身能力を持っている世界である以上、
相手が香織の姿をしているからと言って、
相手が香織とは限らない。
「だ、誰ってー?
光本ー 光本 香織だけどー」
香織はそう言葉を口にしたー。
がー、香織の姿に変身している義也と、
アイドル・美鈴の姿に変身している純太は
少し困惑した様子で顔を見合わせると、
やがて、香織に変身している義也が
”香織”の方を見て言葉を口にしたー。
「ー”本物”じゃないんだなー。
”本物”はどこにいるか知ってるか?」
とー。
「ーーー…っ…い、いきなり失礼よ!?
わたしは本物の光本 香織なのに!?」
香織がそう言葉を口にするー。
しかし、香織に変身している兄・義也は
「自分の姿をした見ず知らずの相手に
いきなりフルネームを名乗るなんて、
偽物の証拠だ」と、そう言い放つー
相手が誰かも分からないのに、
”自分の個人情報”を雑に明かすー。
それは本物ではない証拠だと、香織に変身している義也は言ったー。
全世界の人間が変身能力を手にしたこの世界ー。
実際に”自分自身の姿”で行動している人間よりも
”他人の姿”に変身して行動している人間の方が、
個人情報を平気で明かしたり、行動自体も
どこかいい加減なー、警戒心の薄い行動をする人間が多いー、
という傾向がこの世界ではハッキリと出ているー。
いきなり見ず知らずの相手に
無警戒でフルネームを名乗るような人間はー、
大抵の場合”偽物”なのだー。
特に、自分の好きな子や、お気に入りの子に変身しているような
人間ほど、”フルネームで名乗って興奮する”のか、
フルネームを口にすることが多いー。
「ーーーーチッー…」
目の前にいた妹・香織は不満そうに舌打ちをすると、
「ーーー悪いかよー」と、不貞腐れたような態度を浮かべたー。
その上で「で?お前は?誰なんだよ?」と、そう言葉を口にすると、
香織の姿をした義也は少しだけ躊躇ってから
「ーーお前が変身している子の兄だよー。聞きたいことがある」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結局ー、”ハズレ”だったー。
香織に変身していたのは、香織と同じ高校に通っていた
クラスメイトの男で、
クラスの集合写真を見て、香織に変身しただけで、
変身能力に全人類が目覚めたあとの香織の居場所を
知っているわけでも、香織本人と直接会って
変身したわけでもなかったー。
「ーまぁ、そう気を落とすなよー。
いつか、妹さんだって見つかるだろ」
アイドル・美鈴の姿に変身している友人の純太は
そう言葉を口にすると、
変身を一旦解除した義也は、
少しだけ寂しそうに、
「あぁ…そうだなー」と、そう言葉を口にするー。
妹の香織はいつの日か、見つかるのだろうかー。
誰が誰だかすら分からないこの世界で、
香織を見つけることはできるのだろうかー。
そう思いつつ、美鈴に変身している純太の方を見ると、
「ーま、気長に探すさー。
焦っても、変身まみれのこの状況じゃ、
どうにもならないからなー」と、
少し気を取り直した様子でそう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからしばらく経過したある日ー、
親友の純太は、今日もアイドル・亜優美の姿に変身して、
妹・香織の姿をしている義也と共に街中を歩いていたー。
「お、なぁなぁ!亜優美ちゃんがあそこにもー」
亜優美の姿をした純太がそう言葉を口にすると、
香織の姿をした義也は苦笑いしながら
「もう、亜優美ちゃんの姿は見飽きて来たよー」と、
人気アイドル故に”そこら中に亜優美に変身している人間がいる”状況を
苦笑いしながら”飽きた”と表現する義也ー。
「ーーはははーまぁ、でも、
こんなに可愛いしなぁ…」
亜優美の姿をした純太は嬉しそうに自分の姿を撫でまわすような
仕草をすると、
そのままゆっくりと歩き出すー
「ーーお!あそこに同じ顔をした3人組がいるぞー」
歩きながら、”同じ相手”に変身しているのか、全員同じ顔の
3人組を見つめると、亜優美の姿をしている純太は
笑いながらそう言葉を口にするー
「ーははー、でも3人とも同じ顔じゃ、
自分たちも相手が誰だか分かりにくいだろー」
妹・香織に変身している義也はそう呟くと、
純太も「まぁなぁ」と、亜優美の姿のまま頷くー。
そうこうしているうちに、
「お!!!あそこに瑠奈(るな)ちゃん発見ー!」と、
別の人気アイドル・瑠奈の姿をした人物ー…
恐らく本物の瑠奈ではないその相手を見つめながら
純太は、亜優美の姿から直接、”瑠奈”の姿に変身するー。
変身能力は”一旦解除”しなくても使うことが可能であるため、
純太は亜優美から、別のアイドルである瑠奈の姿にそのまま変身したー。
「に、してもお前、アイドルの姿にばっか変身するよなぁ…」
妹・香織の姿をしている義也は思わず笑いながら
そう言葉を口にするー。
「へへーまぁ、アイドルは可愛いからさー」
瑠奈の姿に変身した純太はそう笑うと、
少しだけ、香織の姿をした義也は寂しそうな表情を浮かべるー。」
「ーーどうかしたか?」
瑠奈の姿をした純太が少し躊躇いがちにそう確認すると、
香織の姿をした義也は少し寂しそうに笑ったー。
「いやーー香織もアイドル好きだったからさー
少し思い出してー」
香織の姿をしたまま、寂しそうにそう言葉を口にする義也ー。
すると、瑠奈の姿をした純太はポンポン、と、
香織の姿をした義也の肩を叩きながら
少しだけ笑うと、
「ーま、きっとどこかでお前の妹さんも元気でやってるさー」と、
そんな言葉を口にしたー。
「ーーそうだなー」
香織の姿をした義也は穏やかに笑うと、静かに頷くー。
誰が誰だか分からないこんな世界であってもー、
いつの日か、きっと妹の香織と再会できると信じてー。
「ーーお!」
そんな会話をしていると、アイドル・瑠奈の姿をしている純太は
再び別のアイドルを発見したのか、そう言葉を口にすると、
嬉しそうにその姿に変身するのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーふ~今日も楽しかったなー」
結局、純太が一番お気に入りの人気アイドル・亜優美の姿に変身した状態で、
帰路についていた純太ー。
家に帰る途中にも、
同じく人気アイドル・”亜優美”に変身している人とすれ違って
すれ違うタイミングでお互いに少し笑いながら「どうも」と
挨拶を交わすー。
相手が誰なのか分からなくても
同じ姿に変身している人間を見かけると、
ついつい親近感のようなものが湧いてしまうー。
その後も一人、”亜優美”に変身している人間とすれ違うと、
ようやく亜優美の姿に変身している純太は
自分が住んでいるアパートに到着ー。
アパートに入る前には余計な誤解を招かないように
純太の姿に戻って、部屋へと入るー。
そしてー、
部屋に戻った純太はひと息つくと、
”「いやーー香織もアイドル好きだったからさー
少し思い出してー」”
と、そう言葉を口にした友人・義也のことを思い出すー。
そんな言葉を思い出しながら純太はー、
いや、義也の友人”純太に変身している香織”は、
そのまま変身を解いて、自分の本来の姿ー、
義也の妹である香織の姿に戻ったー。
「ーわたしは、いつも近くにいるよー」
と、そう言葉を口にしながらー。
そうー、行方不明になっている妹の香織は、
義也のすぐそばにいたー。
いつも義也と一緒にいる義也の親友・純太は
純太本人ではなかったー。
義也はずっと、純太本人だと思って
一緒にいるものの、その正体は本物の純太ではなくー、
義也自身がずっと探し続けている妹の香織だったー。
妹の香織が、兄の親友である純太に変身して、
兄の義也と一緒にいるのだー。
そもそも、純太は元々別にアイドルにはあまり興味はなかったー。
義也は”変身能力を手に入れたからアイドルで騒いでるんだろうな”と、
そんな風に解釈しているものの、
実際には、一緒にいる純太は本物ではなく、
アイドル好きの妹・香織だったから、アイドルにばかり変身しているのだー。
香織本人も十分に可愛いものの、
香織は自分よりも可愛いアイドルのことが大好きで、
変身能力を手に入れる前から、色々なアイドルに憧れの眼差しを向けていた。
そんな香織が変身能力を手に入れたら、頻繁にアイドルに変身するのは
無理もない話だったー。
そしてー…
香織が、兄・義也の親友である純太に変身して過ごしているのはー…
”お兄ちゃんと仲良しな親友”に嫉妬したためー。
元々、兄・義也は親友の純太といる時間が長く、
妹の香織よりも、純太と一緒に遊んでいる時間が多かったー。
香織はいつも、密かに嫉妬していたー。
そんな中、全人類が変身能力を手に入れたー。
その状況に直面した香織は”わたしがお兄ちゃんの一番近くにいられるかもしれない”と、
そう思って、義也の親友・純太に変身、
純太として義也と一緒にいるようになったー。
「ーお兄ちゃん、わたしのこと探してくれてるのは嬉しいけどー…」
香織はそう言葉を口にすると、
”でも”と、今の生活ー…”親友”としてお兄ちゃんの側にいられる状況を
捨てる気はなかったこととー、
”わたしを探して心配してくれているお兄ちゃんを見るとドキドキする”という
理由で、香織は自分がいつもすぐ側にいることを明かすつもりはなかったー。
元々、香織は兄・義也に本音をペラペラしゃべるタイプではないため、
そもそもこのことも話すつもりはなかったしー、
兄・義也は妹の香織にここまで好かれているとは知らないー。
「ーーそれにしても、この前、わたしの姿に変身してる子をいた時は
驚いたなぁ…」
香織は、”香織の偽物”が、兄・義也に声を掛けた日のことを思い出して
思わずうっかり”本物はこっちなんだけど”と言いそうになって
咄嗟に誤魔化したことを思い出すと、少しだけ笑うー。
その上で「ーこれからも、わたしは側にいるからねーお兄ちゃん」と
そう呟くと、静かに微笑むのだったー。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この世界では”誰が誰だか”分からないー。
そしてー、偽物が多すぎて
時として、”死んでも”気付かれないー。
義也の友人、”純太”もそうー。
とある廃墟地帯に埋められている”本物の純太”ー
その死に気付く人間は、いないー。
おわり
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コメント
変死能力が蔓延している世界での
物語でした~!☆
周囲の人間も本物じゃなくなってるかもしれないので、
恐ろしいですネ~…!
お読み下さり、ありがとうございました~★!

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