<憑依>そこは身体の廃棄場③~悪意~(完)

②にもどる!

憑依されたことにより、廃人同然になってしまった人々が
”廃棄される場所ー…
通称”身体の廃棄場”ー。

その原因となる質の低い憑依薬の蔓延。
背後に潜む黒幕とは…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーがっー」
廃棄場に”廃棄”されていた女の身体に
間違って憑依してしまった憑依人の男は、
和徳から強烈な拳を叩きつけられて、
鼻血を流しながら動揺していたー。

「次はもっと強く行くぞ」
和徳がそう言葉を口にすると、
女に憑依している男は、
「ーーま、待てよ!この女の顔がぐちゃぐちゃにー」と、
そう叫ぶー。

この前、真帆に憑依していた男と同じような反応だー。

”憑依している人間”は、今回は別人であるものの、
追いつめられると同じような反応をしてしまうのだろうかー。

「ーー構わんー。
 お前ら卑劣なクソどものせいで、この子はもう、
 頭の中がぐちゃぐちゃだー。元には戻せないー」

そう言葉を口にすると和徳はさっきよりも強く、
拳をその顔面に叩きつけるー。

「だったらせめて、この子の人生を壊した
 お前たちのようなクソどもの黒幕を突き止めて
 ぶっ潰すのがこの子のためってもんだろうがー」

和徳がそう言うと、女に誤憑依してしまった男は、
その身体のまま泣きながら「や、やめてくれー」と、
そう言葉を口にするー。

「ー情けないやつだー。
 どうやら俺に憑依したようだが、
 誰に頼まれた?」

和徳がそう言葉を口にすると、
「ーこの前の野郎か?」と、真帆に憑依していた男の事を言うー。

和徳は”似たような反応”をされつつも、
今、目の前にいる女に憑依している男が、
先日の男とは別人であると見抜いていたー。

だからこそ、この男に”和徳への憑依を依頼した”のが、
先日の真帆に憑依していたやつなのではないかと、
そう思ったのだー。

「ーーいや」
が、和徳は自らそう言葉を口にすると、
「あの野郎はそんな大物じゃねぇか」と、自ら答えを
導き出すー。

その上で、和徳は問うー。

「誰に依頼された?」
とー。

「ーーそ、それはーー…」
目に涙を浮かべながらも、
女の身体から出ようとせず、
”和徳に憑依しろ”と頼んで来た人物の名も明かさない男ー。

和徳は、2回目よりもさらに強い力で、
その男に拳を叩きつけると、
鼻が折れるような音がして、
泣きながら女の身体で、男は叫んだー。

「ーーま、ま、待ってくれーやめてくれー…い、言うー」
ボロボロになった顔で、そう言葉を口にすると、
「ーー言え。誰に頼まれた?」と、和徳はそう言葉を口にするー。

がー、
その時だったー。

シュッ、と、小さな音がすると同時に、
和徳が身体を動かすー。

”銃弾”が飛んでくることを和徳は瞬時に察知したのだー。

しかし、狙われたのは和徳ではなかったー。
男が憑依している女の身体が吹っ飛ぶー。

「ー!?」
和徳が驚いて女の方を見つめると、
憑依されていた”廃棄場に捨てられた女”は、
目を見開いて頭から血を流していたー。

「おいっ!」
和徳が声をかけるも、女は既に死んでいるー。

舌打ちをして、銃声がした方向を見つめるも、
既に和徳に追い詰められた憑依人を、身体ごと狙撃して
始末した人物はそのまま走り去ってしまったー。

「ーー…チッー」
和徳は今一度引き返して、
狙撃された女を見つめると、
「中の野郎ごと死んでやがるー」と、そう言葉を口にするー。

そのままため息を吐き出すと、
「ーーこの辺りの地域に憑依薬をばらまいた野郎も
 焦って来てる証拠だろうー」と、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

署内に戻ると、
課長の雨村から再び呼び出されたー。

「ーー何か成果は上がったのかねー?」
雨村課長がそう言葉を口にすると、
「ーー憑依人が俺に憑依しようと仕掛けてきました」と、
そう言葉を返すー。

「憑依人が?君に?」
雨村課長は少しわざとらしいトーンでそう言葉を口にすると、
「えぇ」と、そう言葉を口にした上で、
和徳は表情を曇らせるー。

そしてー、
「その憑依人は、死亡しましたー
 先ほど、管轄の部署に引き継ぎを行い終えたところです」
と、和徳はそう説明するー

「ーーそうか。では結局また、
 君は自分が命を狙われただけで、新たな手掛かりを
 手に入れることができたわけではない、ということかね?」
雨村課長がそう言葉を口にすると、
和徳は首を横に振ったー。

「ーいえ。このあたりに憑依薬が出回り始めた原因ー
 ”身体の廃棄場”なんてクソみたいな場所が出来上がるほどに
 憑依が蔓延した元凶は、
 焦ってますー。

 だからこそ、俺の命を直接狙った」

和徳はそう言いながら、雨村課長の目をじっと見つめるー。

雨村課長はその目を揺らぐことなく見つめ返すと
「また、君を狙ってくるー…そこがチャンスだと言いたいのかね?」と、
そう言葉を返して来たー。

和徳は少しため息を吐き出すと、
「えぇ、そうです」と、言葉を口にするー。

すると、雨村課長は少しだけ頷き、
「ー君は良くも悪くも無茶をするー。
 命を捨てるような捜査は許可できん。分かっているかね?」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーーもちろんです。
 ー課長のうるさい小言も聞けなくなりますからね」
和徳がそう言うと、
雨村課長は「君は一言多い。ーだが、私の小言をこれからも聞きたまえ。
そのためにも、死ぬようなことはするなよ」と、それだけ言葉を口にして
立ち去って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ー結局、今日も手掛かりはなしかー」
和徳が警察署の外に出ると、
「ーー丹沢さん!」と、若手刑事の健吾が駆け付けて来たー。

「ー水野 真帆が廃棄されていた現場の近くで、
 何か手がかりはあったか?」
和徳がそう言葉を口にすると、
健吾は「はいー。大変なことがー」と、そう言葉を口にして、
「ーとにかく、乗って下さいー」と、自分の乗っていた車を指差すー。

「ー大変なことー?」
健吾がそう言うと、
「実はその場所で、水野 真帆に憑依していた男に襲撃されたんですー」
と、健吾はそう説明したー。

「ーー何だと?」
和徳がそう言葉を口にすると、
健吾は「ーー”恵美”というまた別の子の身体を使ってましたー」と、
そう説明した上で「その場所に案内します」と、車を走らせ始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

やがて、健吾が車を止めると
「ここですーー。奴はこの先の施設に逃げ込みましたー」と、
”真帆に憑依していた男”が恵美の身体で逃亡した場所を
指さすー。

山中の不気味な館ー。
いかにも怪しい場所だー。

ここに、”憑依薬”に絡む黒幕がいるのだろうかー。

そう思いつつ、和徳がゆっくりと歩き始めるー。

がーー
その時だったー。

背後にいた若手刑事の健吾が”憑依薬”を手にするー。
それと同時にーーー

和徳が振り返って、銃を手に、健吾の手を撃ち抜いたー。

「ーー!?!?!?!?」
健吾が憑依薬の容器を落とすー。

「ーーた、た、た、丹沢さん!?」
手を撃たれた健吾が驚いた表情を浮かべると、
和徳は言ったー。

「やっぱテメェかー新崎」
和徳が怒りの形相を浮かべながら言うと、
「ーーな、な、何のことですー!?」と、健吾はとぼけるー。

和徳は、健吾が落とした憑依薬を手にすると、
「俺が”身体の廃棄場”に今日も行くことを知ってたのは
 課長とお前だけだー。
 そこにピッタリと、俺に憑依しようとする刺客が来たー。
 だから俺はお前か課長、どっちかがクロだと判断したんだよー」と、
そう説明するー。

その上で「さっき課長と話したー。
けど、課長は違った。
課長はうるせぇ奴だがー、目を見て確信したー。
課長ではない、ってな」と、そう続けたー。

雨村課長の目を見て”命を狙われた”ことを話した時も
課長の目に揺らぎはなかったー。
課長は課長で、嫌味ではあるものの確固たる信念を持っているー。

「新崎ー…テメェ、憑依薬とどんな繋がりがあるー?」
和徳がそう言い放つと、健吾は困惑したような表情を浮かべつつ、
笑みを浮かべたー

「ーなんだー…チッー…だから嫌なんだよー
 丹沢さんーいや、丹沢ーあんたみたいな刑事はー」
健吾はそう吐き捨てると、
「ー俺が”憑依薬”をこの辺りに売り捌いた張本人さー」
と、自らが憑依薬の売人であることを認めたー。

「ー!」
和徳は表情を歪めるー。

この辺りに質の悪い憑依薬をばらまき、
憑依人たちに”身体の廃棄場”を呼ばれる場所を用意ー、
金を荒稼ぎしていたのは、この健吾本人だったのだー。

先程、和徳に憑依しようとした憑依人に
和徳に憑依するように依頼したのも健吾ー
そして失敗した彼を狙撃したのも健吾ー。

さらには先日、水野 真帆に憑依していた男が
和徳に真帆ごと殴られて追い詰められていた際に
”わざと”和徳に”これ以上の暴力は”と、止めに入ったのも
男を逃がすためだったー。

そして、今日、健吾が”売人”であると知らずに
健吾に襲い掛かった”真帆に憑依していた男”は
返り討ちに遭い、既に始末されてしまっているー。

「ーーー……随分と素直に喋るんだな」
和徳が呆れた表情を浮かべながら言うと、
健吾はニヤニヤしながら頷いたー。

「ーーえぇ」

そして、顔を上げると、
”憑依薬”を手に笑みを浮かべたー

「ーあんたはこの場で俺に憑依されて脳を破壊されるんだからな!」
健吾がそう叫ぶと、
和徳はその瞬間に、健吾の顔面を思いっきり蹴りつけたー。

「がっ!?」
憑依薬は吹き飛びー、落下するー。

和徳はそれを拾うと
「お前に憑依して、廃棄場の奴らと同じ目に遭わせてやろうか?」
と、そう言葉を口にするー。

健吾は震えながら「た、丹沢さんー御冗談をー…」を、
と、そう言葉を口にすると、
和徳は「俺の相棒だったんだー。俺のやり方はよく知ってるだろ?」と、
そう言葉を口にして、憑依薬を飲み干そうとするー。

「ーーひっ…ま、待ってくれー…ぜ、ぜ、全部話すー!」
健吾は半泣きでそう叫んだー。

”言わなければ”
和徳は後のお咎めを気にせず、
健吾に憑依して、健吾の脳を破壊するー。

犯罪者を半殺しにしてきたこともある和徳のことを
よく知っている健吾は、あっけなく降参の意を示したのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「まさか、内部に憑依薬に絡む者がいたとはなー」
雨村課長が険しい表情で呟くー。

「ーーまぁ、警察内部という立場は
 やりやすいでしょうからね」
和徳がそう言うと、
雨村課長は「ー私のことも疑っていたわけかね?」と、そう言葉を口にするー。

「ーえぇ。」
和徳は忖度することなく即答すると、
雨村課長は少しだけ頷きながら
「それでいい。君は面倒で厄介な刑事だが、疑うのは大事なことだ」と、
それだけ言葉を口にしたー。

「ーで、廃棄場の人間を元に戻す方法は?」
雨村課長が行くと、
和徳は「新崎のやつも、元に戻す方法は分からないし、恐らく無理だと言っていますね」と、
そう説明するー

その上で
「この地域でアレを売り捌いていたのは奴だけですが、
 憑依薬を奴から購入した人間は
 死んだ2名以外にもまだいるようですー」と、
そう言葉を口にするー。

「なるほどなー。新崎から憑依薬を買った人間の一部は
 まだ野放しで、
 新崎が売り捌いていた憑依薬は、犯罪組織から購入したものを
 高値で売り捌いていたもので、その組織もまだ健在ということだな」

雨村課長はそう言葉を口にするとため息を吐き出したー。

「ーまぁ、俺がクズどもをぶちのめしますよ」
和徳はそれだけ言うと、雨村課長の部屋から立ち去ろうとするー。

「ーーーところで」
雨村課長が和徳を呼び止めると、
和徳は面倒臭そうに振り返るー。

「ー逮捕されてきた新崎ー
 鼻を骨折してたようだがー」
雨村課長は、先日、健吾が連れられてきた時のことを思い出しながら言うと、
和徳は少しだけ笑みを浮かべたー。

「ーーそれが俺のやり方だって、知ってるでしょう?」

そう答えると、
和徳はゆっくりと歩き出すー。

自分のやり方が正しいとは思っていないー。
ただ、家族の命を犯罪者に奪われた過去を持つ彼は、
この先、それが原因で職を失うことになったとしても、
そのやり方を貫くつもりでいたー…。

おわり

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コメント

最終回でした~!★
悪質な憑依薬をばらまく男は
ひとまず確保できましたネ~!!

でも、一度出回ってしまったものを根絶するのは
難しいのデス…!

お読み下さり、ありがとうございました~!★!

「そこは身体の廃棄場」目次

作品一覧

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