<女体化>12月32日 屍(前編)

それは、この世の”バグ”ー

毎年、この世界では新年を迎えるたびに、
”新しい1年”ではなく、
”12月32日”と呼ばれる謎の空間に
迷い込んでしまう者たちがいたー。

それは、今年も例外ではないー。
またもや”迷い込んでしまった”者たちの物語ー。

※これまでの12月32日はこちらからご覧ください。

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「ーーこれは僕のものだぞ!」
「違うよ!わたしのだもん!!」

2025年12月31日ーー。
二人の子供がいる堀里(ほりさと)家では、
賑やかな時間が流れていたー。

兄の堀里 輝樹(ほりさと てるき)と、
妹の堀里 美彩(ほりさと みさ)は喧嘩ばかりー。

4年生と2年生の二人は、学校でもよく喧嘩をしていて、
両親共に頭を悩ませているー。

今日も、大晦日の日だと言うのに、
いつものように喧嘩をしていて、
クリスマスの日に”サンタクロース”から貰った
プレゼントの取り合いをしているー。

結局、兄の輝樹の方が力任せに
妹の美彩からおもちゃを奪い取り、
「お兄ちゃんなんて大っ嫌い!いなくなっちゃえ!」と、
泣きながらそう叫ぶー。

「こらこらー二人とも、喧嘩しないの」
母親の美智子(みちこ)が苦笑いしながら
そう言葉を口にすると、
父親の和樹(かずき)も、
テレビのほうを見つめながら、
「ほら、もう2025年も終わっちゃうぞ」と、そう言葉を口にしたー。

2026年まで、あと30秒ー。
それでも輝樹と美彩の兄妹は喧嘩するのをやめないー。

「お兄ちゃんなんていなければよかったのにー」
泣きながらそう呟く美彩ー。

その言葉に、ムッとした輝樹も
「俺だってお前なんていない方がよかった!」と、そう言い返すと、
その言い争いはヒートアップしていくー。

どうしても怒りが収まらないという様子で
兄の輝樹は叫ぶー。

「お前なんて、消えてしまえーーー!!」
とー。

2025年、最後の1秒ー。
そしてー、新年を迎えたー。

「ーーーえっ!?」

その瞬間、
妹の美彩の姿が急に目の前から消えたー。

「ーーえっ……??
 ーーーみ、美彩…?????」
困惑の表情を浮かべる兄・輝樹。

”消えてしまえーーー!”とは言ったものの、
本心からそう思ったわけではない。
が、そう叫んだと同時に、
妹の美彩が消えてしまったために、
輝樹は焦るー。

いや、それだけではないー。
ついていたはずのテレビが、砂嵐のようなものが表示されて
消えているー。

そして、妹の美彩だけではなく、
母親の姿も、父親の姿もなかったー。

「ーーみ、美彩ー?
 お父さんー?お母さんー!?」
輝樹が困惑しながら言うー。

しかも、”声”が何だか高くなっていて変だー。

まだ、”声変わり”する前の年齢であるために、
すぐには異変には気づかなかったー

けれど、やはり声が変だー。

そう思っているとー

「えっ…う、うわっー?な、何だこれー!?」

妹の美彩とは少し違うー、
けれどもどこか面影があるかのような
”美少女”に、自分の姿が変わってしまっていたー。

美彩の姿になったわけではない。
しかし、兄である輝樹が女体化したことで、
同じ血縁のもの同士ー、どこか似ているような
そんな状態となったのだー。

「お、俺、一体どうなって…?」
女体化してしまった輝樹は心底困惑した様子で
そう言葉を口にするも、
「そ、それよりー、美彩!!美彩!!」と、
妹の美彩を探し始めるー。

「き、消えろなんて言ってごめん!
 謝るから、だからー!」
探しているうちに、涙目になりながらそう叫ぶ輝樹。

心から憎んでいたわけではないー。
本当は、美彩のことも大切に想っているー。
けれど、あんなことを言ってしまったー。

そう思いつつ、女体化してしまった輝樹は美彩を探すー。

しかし、美彩は見つからなかったー。
そしてー…

「ーーーえ…???」
リビングに置かれているデジタル時計の表示を見て、
女体化した輝樹は戸惑うー。

「ーー…じゅうにがつ、さんじゅうに にちー…???」

そう、そこには、
”2025年12月32日”と、そう表示されていたのだ。

先程、既に年明けしたはずー。
で、あれば、2026年1月1日になっていなければおかしい。

でも、デジタル時計には、”2025年12月32日”と
確かにそう表示されている。
絶対にあり得ない数字が、そこに刻まれている。

「ーー…」
輝樹は不安になって、長い髪を揺らしながら
「なんだよこの髪ー邪魔だなぁ」と、不機嫌そうにそう言葉を
口にすると、そのまま家の外に飛び出す。

しかし…
近所は不気味に静まり返っていた。

0時すぎだからー…
普段は静かでも、今日は大晦日、そして元旦ー。

しかも、どこの家も電気がついておらず、
人の姿はどこにもない。

そしてーー
空を見上げた女体化した輝樹は、思わず叫び声を上げてしまったー。

漆黒に染まった空に輝くのは、謎の赤い月ー。

しかも、夜空には星一つなく、
同じ”暗い空”でも、なんだかいつもとは違うような、
そんな不気味さを感じる。

「ーー……な、な、なんだよ…これー…」
女体化した輝樹は涙目になりながら、
慌てて、近所の家のインターホンを鳴らすー。

”こんな時間に迷惑だ”とは思いつつ、
何度も何度もインターホンを鳴らすー。

しかし、”人の気配”が全くせずに、
インターホンの音だけが不気味に鳴り響くー。

「ーだ…誰かー…誰かっ」
輝樹は、女体化してしまい、どこか可愛らしい雰囲気になってしまった
自分の身体で必死に走りながら”助け”を求めるー。

しかし、どこの家にも電気がついておらず、
”赤い月”は、不気味にその光を発しているー。

「ーー誰かーーー…」
女体化した輝樹は”どこにも人がいない”ことに恐怖し、
家の壁に寄りかかった状態で座り込むー。

体育座りをして、落ち込んだ様子を見せながら
「きっとー、きっと、バチがあったんだー」と、
そう言葉を口にするー。

「俺がー、美彩に消えてしまえなんて言ったからー…」
そう言葉を口にしながら、震える輝樹ー。

”ごめんなさいー”
”ごめんなさいー”
と、何度も謝罪の言葉を繰り返すも、
その言葉は誰にも届かないー。

そうーー
ここは、謎の異世界ー。
毎年、年明けのタイミングで
何人かの人間が”年越し”できずに、
この謎の空間ー”12月32日”へと引きずり込まれている。

”世界のバグ”とも称されるこの世界ー

この世界に引きずり込まれた人間
元居た世界から突然消えてしまい、
この世界で、”12月32日”という
本来存在しないはずの1日を過ごすことになる。

泣き付かれて眠ってしまった輝樹が目を覚ますと、
「ーー!」と、周囲を見渡してから
自分の股間のあたりを触るー。

けれどー…
残念なことにそこには”何も”なかったー。

寝て覚めても、何も変わっていなかったー。

”夢”だったらどんなに良かっただろうー。
そう思いつつも、これが”夢”ではないことを悟るー。

そしてーー

「ーど…どうなってー…いるんだよー」
呆然としながら空を見上げるー。

近くの公園の時計は、既に”10時”を示しているー。

寝ていた感じを考えると、”朝の10時”のはず。
それなのに、空は闇に染まり、赤い月が輝いているままー。

誰かが家から出て来る気配もないー。

震えながら、パニックを起こした輝樹は
「誰か!!!」と、再び叫びながら走り出すー。

するとーーー

”ーー誰かそこにいるの!?”と、
そんな声が聞こえて来たー

「ーー!」
輝樹は、”12月32日”に飛ばされてから
初めての人の声にドキッとすると、
そこにーーー”優しそうな雰囲気のお兄さん”の姿が見えたー。

「ーーー!」
知らない人ではあったものの、”人”の姿を見て
涙目で駆け寄ると、
女体化してしまった輝樹は、
「た、助けてー!お父さんもお母さんも、妹も消えちゃったんだー」と、
そう叫ぶー。

すると、その相手の青年は困惑した様子で、
「落ち着いてー」と、そう言葉を口にすると、
「わたしも、まだ”何が起きてるか”分からないのー」
と、そんな風に言葉を続けたー。

「ーーーーー」
不安そうな表情を浮かべる女体化した輝樹ー。

「ーあー、えっと、何故か見た目が”男の人”になっちゃってるんだけどー
 わたしは、吉井 史奈(よしい ふみな)ーあなたはー?」
”12月32日”に迷い込んで男体化してしまった史奈がそう言葉を口にすると、
女体化してしまった輝樹も、自分は男だと説明した上で
その名前を名乗ったー。

「そっかー…」
”どうやら、相手は子供”だと、そう思った男体化している史奈は、
”わたしがしっかりしなくちゃー”と、そう心の中で呟くと、
「ーーここに来るまでのことー聞かせて?」と、そう言葉を口にするー。

妹と喧嘩していたことや、
”こうなってから”今までのことを説明する輝樹ー。

それを聞いた史奈は「わたしは、年末最後のバイトを終えて家で一人でいたんだけどー」
と、そう言葉を口にした上で、
「ー特に誰かといるわけじゃなかったら、23時ぐらいには寝ちゃったのー
 それで、さっき起きたら男になっててー」と、
そんな言葉を口にしたー。

どうやら史奈は”寝ている間”に新年を迎えて、
そのまま12月32日に飛ばされてしまったらしいー。

「ーねぇー…あの、お兄さーーあ…お姉さんー」
女体化した輝樹が不安そうにしながら、そう言葉を口にするー。

”本当は女”であるのだと言う史奈を、
どう呼んでいいのか、あまりよくわからないー。

そう思いつつそう呼ぶと、
史奈は笑いながら、
「ーー輝樹くんと出会ったときにはわたし、もう男の人になってたんだしー
 急に女だって言われても、想像できないよねー?」と、苦笑いするー。

その上で「お兄さんでも、お兄ちゃんでも、呼びやすい風に呼んで」と、
優しく言葉を口にすると、
「う、うんー」と、女体化した輝樹は静かに頷いたー。

その上で「ほ、他のみんなはー?」と、不安そうに周囲を
見渡しながら言うー。

朝になったはずなのに、まだ漆黒に染まった状態の空ー、
赤く輝く不気味な月ー。

そんな光景を見て、改めて恐怖を感じながら、
史奈の方を見つめる輝樹ー。

しかし、史奈自身も”ここに来るまで誰も見ていない”のだと言い、
戸惑いの表情を浮かべたー。

「ーーもしかして、誰も見てないのー?」
男体化してしまった史奈がそう言うと、
女体化してしまった輝樹は弱々しく「うん…」と頷くー。

そんな輝樹を見て、
「大丈夫ー。きっと何かあって、
 みんな先に避難してるのよ」と、
男体化した史奈がそう言葉を口にすると、
女体化した輝樹は、不安そうな表情をしながらも頷くー。

”大丈夫ー絶対にー”
男体化した史奈はそう思いつつも、
スマホを見つめるー。

スマホには”12月32日”と刻まれていて、
ネットには先ほどから繋がらない状態ー。

SNSも使えず、情報の収集もできず、
電話もつながらないー。

そんな状況に、ゴクリと唾を飲み込みながらも、
史奈は、怯えている様子の輝樹を不安にさせないようにと、
そのことは黙ったまま、輝樹と共に歩き出したー。

そしてーーー
しばらくすると、街中で何かを集めている老人を見つけたー

「あ、あそこに人がいるよ!」
女体化した輝樹が目を輝かせながらそう言葉を口にするー。

「ホントだー」
男体化した史奈はそう言葉を口にすると、
史奈自身も少しホッとした様子で、
その老人の方に近付いて行くー。

「あの、すみませんー」
史奈が少し緊張した様子でその老人に声を掛けると、
街中で”焚火”のための材料を集めていた老人が振り返ったー。

「ーーおや、”迷い人”じゃなー?
 ということはもう、”元の世界”は年越しのタイミングってことか」

老人はそう言葉を口にしながら笑うー。

「ーーーえ…えっと、あのー…」
史奈は戸惑いつつ、そう言葉を口にすると、老人は言ったー。

「ようこそー12月32日へー」
とー。

「ーー…!」
史奈はスマホの表情を確認しながら、
再び老人を見ると、
「ーー12月32日っていったい、何なのですかー?」と、
そう言葉を口にする。

老人は、史奈と輝樹のほうを見つめながら
静かに頷くと、
「ーこの世界のバグじゃよー。
 なぁに、心配はいらないー」と、
そんな言葉を口にするのだったー

<後編>へ続く

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コメント

今年で4年目を迎える「12月32日」デス~!!
最初に書いた時は”毎年やる”なんてつもりは
なかったのですケド、
何となく、年末な雰囲気を高めるために
毎年続けています~笑

今年は最初の年以来の”2話構成”デス!
土曜日のみ予約投稿の都合上、
続きはまた来週ですケド、ぜひ楽しんでくださいネ~!

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女体化<12月32日>

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