<他者変身>人間に変身する虫(前編)

新種の”虫”が発見されたー。

その虫は”人間”に変身する性質を持ち、
社会に潜伏ー、
時には”本物”に成り代わることで、
人類を浸食し始めていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「なぁ、美優(みゆ)、話ってー?」
男子大学生の辻 陽太郎(つじ ようたろう)が
彼女の美優から呼び出されて、
その場所にやってくるー。

しかし、呼び出された場所は、
夜の河川敷ー。

どうして、こんな場所に呼び出されたのか、
陽太郎自身も、あまりよく分かっていなかったー。

陽太郎の父・辻 健介(つじ けんすけ)は、
有名な研究者で、
最近は”新種の危険な虫”が見つかったとして、
研究所に籠っているー。

父が何の研究をしているのかまでは具体的には知らないものの
最近は、その”危険な虫”とやらの調査で
かなり忙しい日々を送っている様子だったー。

「ーーふふー…
 ねぇ、陽太郎ー
 陽太郎のお父さんってー…、
 ”辻博士”だよね?」

そんな、確認の言葉を口にする美優ー。

「ーん?あぁー
 まぁ、何の研究してるのかは詳しくは知らないけどー」
陽太郎が苦笑いしながらそう答えると、
美優は言ったー。

「陽太郎のお父さんはねー、
 ”わたしたち”に歯向かおうとしているのー」
とー。

「ーー???」
陽太郎は、美優の言った言葉の意味が分からずに
困惑して首を傾げるー。

「それは、どういうー?」
陽太郎はようやく、戸惑いながらそんな言葉を
振り絞ると、
美優は突然、液体のようにドロドロとなってその場に崩れ落ちたー

「ーー!?!?!?!?!?」
やがてー、液体が集合していき、
”ハエ”よりも少し大きなサイズの”飛ぶ虫”に変貌するー。

「ーーこ、こ、これは、いったいー…?」
陽太郎が思わず叫ぶと、
虫の身体半分が液状に変化して、
”美優の顔”が、虫から生えて来るようにして
出現したー。

「あはははははー
 ごめんねー、本物の”わたし”は3日前に食べちゃったのー」
美優の顔が笑いながらそう言い放つー

「た…た…べたー?」
呆然とする陽太郎ー。

「ーそう、わたしたちは、お前たち人間に”変身”することができるのー
 こんな風にー」
美優の顔がそう言葉を口にすると、
虫の残りの部分が再び液状に変化して、
”美優”の全身を作り出すー。

「ーーーー…なーーー…ーーー」
陽太郎は、あまりの光景に言葉を失うと同時に、
少し間を置くと、ハッとした様子で、
「み…美優はどこにやった!?」と、そう叫ぶー。

「ーーあはーー人の話、聞いてなかったの?」
美優に変身した虫は呆れ顔でそう呟くと、
陽太郎は困惑の表情を浮かべながら、
美優に変身している虫を見つめるー。

何か言われた気がするー。
ただ、あまりの現実を前に、それを理解することが
できていなかったー。

「ーふふー理解できてないようだから
 もう1回、教えてあげるねー」
美優に変身している虫はそう言うと、
「ー3日前に~~わたしが~~食べちゃったぁ♡」と、
嬉しそうに、残酷な現実を披露してみせたー。

「ーーう…うわあああああああああああ!」
陽太郎は、美優の姿をした虫に襲い掛かるー。

がー、美優の姿をした虫は笑みを浮かべると、
「ーねぇ、陽太郎ー痛いよ?」と、
弱々しくそう言葉を口にしてみせるー。

「ーー!!」
本物の美優に言われているような気がして、
一瞬、手の力を緩めてしまう陽太郎ー。

美優に変身している虫は邪悪な笑みを浮かべると、
「人間って、バカだねぇ」と、グーで陽太郎を殴りつけるー。

「ーあらららー」
あまりにも強い力で陽太郎を殴りつけたせいか、
自分の腕まで変な方向に曲がってしまった美優の姿をした虫は
笑いながら、「人間ってもろ~い」と、そう言葉を口にすると、
一旦、ハエのような虫の姿に戻って、再び美優に変身ー、
腕が治ったことを確認して「あはは!面白い~!」と、
笑いながら腕を振り始めたー。

「ーふざけるな…ふざけるな…美優を返せ!」
陽太郎は、血を流しながらそう叫ぶと、
美優に変身した虫のほうを見つめるー。

「ーーだからぁ、食べちゃったんだってば」
美優に変身した虫は、面倒臭そうにそう言葉を口にすると、
向かって来た陽太郎を、今度は思いっきり蹴り飛ばしたー。

足が折れて倒れ込む美優ー。

蹴られた陽太郎も腕が折れて、そのまま吹き飛ばされるー。

美優は足を押さえながら、
「面倒臭いなぁ」と、そう呟くと、また”虫”の姿に戻ってから
美優に変身し直して、「ふっか~つ!」と、
得意気な表情を浮かべながら、
陽太郎の方に向かって歩き出したー。

「ーーーーぐ…」
苦しそうに「美優」を見つめる陽太郎ー。

美優に変身した虫は、倒れ込んだ陽太郎を見つめると、
「大丈夫だよー。安心して。殺したりはしないから」と、
そう言葉を口にしてから、
「お前には、人質になってもらいたいのー」と、
邪悪な笑みを浮かべたー。

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陽太郎の父親、辻 健介は
昆虫の分野の有名な研究者で、
最近は”人間に変身できる虫”の研究に没頭していたー。

”この虫は危険だ”と、いち早くその危険性を訴えており、
現在は、その対策を練っている最中だったー。

「ー博士ー…息子さんはー…」
助手の少し妖艶な雰囲気を持つ女性・瀬田 弓香(せた ゆみか)が
そう言葉を口にすると、
「ー連絡がつかないままだー」と、
険しい表情を浮かべるー。

”まさか、奴らにー…”
健介は、イヤな予感を覚えながらも、
それを口に出せずにいたー。

もしや、あの”人間に変身できる力を持った虫”に何かされたのではないか、とー。

「ーーーー……ーー」
そんな健介を見て、助手の弓香は
「ー大丈夫ですよー。息子さんは、きっと無事ですー」と、
そう言葉を口にすると、
健介は「心配かけてすまないなー」と、そう言葉を口にしながら、
パソコンのほうを見つめるー。

が、その時だったー。

♪~~~

スマホが鳴るー。
そこには、健介の息子である”陽太郎”の名前が表示されているー。

数日間、連絡のつかなかった息子・陽太郎からの電話ー。
”陽太郎は無事だった”と、希望に満ちた表情を一瞬、
浮かべたくなってしまったものの、
すぐに、暗い表情を浮かべるー。

電話に出るまではー、
まだ”無事だった”とは、限らないからだー。

「ーー博士ー」
助手の弓香が、心配そうに健介のほうを見つめると、
健介は静かに頷いてから、
「もしもしー」と、どこか重々しく、言葉を口にしたー。

するとーー、電話の向こうからは
”陽太郎”の声が聞こえて来たー。

”父さんーーーごめんーーー”
とー。

「よ、陽太郎ー!?」
健介がそう言葉を口にすると、
”ー美優がーー美優が、虫に食われて、それでーー
 美優の姿をした虫に、捕まってー”と、
悔しそうにそう言葉を口にしたー。

その言葉に、息子の陽太郎がひとまず
”今の時点では”無事であることを知ると同時に、
一方で、陽太郎が”危機的状況”にあることも分かり、
衝撃を受ける健介ー。

「ーーよ、陽太郎ー
 近くに今、”やつら”はいるのかー?」
健介が震えながらそう呟くと、
陽太郎は”ーー美優の姿をしたやつが、いる”と、
悔しそうに、そう言葉を吐き出したー。

「ーーーー」
健介は表情を歪めると、
健介が言葉を口にする前に、陽太郎が次の言葉を発したー。

”父さんーーー俺のことはいいんだーーー
 それよりー、絶対にここに来ちゃだめだ!
 父さんをはめるための罠がそこら中に仕掛けられてるー!
 絶対にー、絶対にここに来ちゃー”

”ー余計なことを言うな!”

息子の陽太郎の声が、女の声にかき消されて、
殴られるような音がしたー。

「陽太郎ー!!陽太郎!!」
健介はそう叫ぶと、「おい!陽太郎に何をした!?」と、
”虫”に向かって叫ぶー。

”ふふふふー…
 自分の息子を助けたい?助けたいよねー?
 だったらー、これから指定する場所に”一人で”来なさいー”

高圧的な口調でそう言葉を口にするのは、
陽太郎の彼女の美優ー。

もちろん、本物の美優ではない。
”美優の姿”をした虫が、美優の声で話しかけているー。

「ーー息子の恋人をどうした?」
怒りの形相で健介はそう呟くー。

息子の彼女である美優とは、健介も面識があるー。
とても良い子でー、
この先、どうなるかは分からなかったけれど、
仮に、美優と息子の陽太郎が結ばれるようなことがあれば、
素直に応援したいと思えるような、そんな子だったー。

でもー…

”ふふふふーこの子はもう”食べちゃった”ーーー”
美優の声で、そう言い放つ虫ー。

「ーー害虫めー」
健介がそう言葉を口にすると、
”人間にとってはーーね。”と、
美優がそう返してくるー。

”我々にとっては、人間こそ害獣…
 だから、駆除するのー
 特にー、我々に歯向かうあんたのような人間はー
 最優先駆除対象よー”

美優の姿をした虫のそんな言葉に、
健介は怒りを覚えながら、
「ー息子は、無事なんだな?」と、再度確認するー。

”ええー。”今のところ”はねー。
 でも、我々に従わなければ保証はできないー
 ここにーちょうど、食いしん坊な仲間もいるからー
 あまり待たせると、”食べちゃう”かもよー?”

美優の偽物の脅すような口調に、
陽太郎の父・健介は怒りの形相で拳を握りしめると、
「望み通り今から行ってやるともー。覚悟しておけ」と、
そう言葉を口にするー。

そして、そのままスマホを置くと、
助手の弓香に対して「すまないー。私は息子を救いに行く」と、
そう言葉を口にするー。

その上で、指定された場所には今から1時間もあればたどり着くことを
計算すると、
「2時間経っても私から連絡がなければ、その時はー」と、
”一人で来い”と言われた場所を弓香のスマホにも送信するー。

「ー博士ーこれは罠ですー。行っちゃダメですー」
弓香が困惑した表情を浮かべながら、そう言葉を口にするー。

明らかに罠だとー。
どう考えても、二人とも解放されずに、
その場で処分されてしまうとー。
だから、行くべきではないと、弓香はそう言い放つー。

けれど、健介は首を横に振ると、
「それでも、行かなければならないー。息子を見捨てるわけにはいかないんだー」
と、悲しそうな表情を浮かべながら言葉を口にするー。

「ーー博士…」
助手の弓香も、困惑した表情を浮かべると、
「万が一の時は、頼む」と、そう言葉を口にした上で、
自分が呼び出された場所を弓香に託す。

さらには「私の研究データの全てはここにあるー」と、
健介は”誰にも教えていない”全ての研究データを
保管している場所を弓香に伝えるー。

弓香は長年、健介の助手を務めている人物で、
その信頼は非常に厚いー。
万が一、何かあった場合には
彼女において、他の健介の研究を継ぐ人間はいないだろう、と、
そう断言できるほどの強い信頼がそこにはある。

「ーー…分かりましたー」
弓香は戸惑いながらそれを受け取ると、
「でも、博士ー」と、そう言葉を口にした上で、
健介のほうを見つめた。

「ー必ず戻って来て下さい。
 あの危険な虫から世界を救う研究ができるのは
 博士だけです。

 ですから、これは”お預かり”するだけですー。
 いいですね?」

弓香は、健介に”絶対に戻って来て下さい”と、
改めてそう伝えると、
健介は「分かったー。必ず、戻るよ」と、
そう言葉を口にした上で「そろそろ行かないと」と、
研究室の外に向かって移動を始めるー。

「ーーー分かりました。どうかご無事で」
弓香はそう言葉を口にすると、
健介を見送って頭を下げるー。

がーーー
顔を上げた弓香はー、
”邪悪な笑み”を浮かべていたー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

指定された場所に車でやってきた健介は、
廃墟のような場所を移動しながら
「いるなら出てこいー」と、そう言葉を口にするー。

”できる限りの対策”はしたー。
あとは、何とかして息子の陽太郎を救い出すだけだー。

そう思いながら、先を見つめると
物陰に隠れていた”美優”に変身した虫と、
陽太郎が姿を現したー。

陽太郎は縄で縛られて、口を塞がれているー。

「ーーこいつを見捨てて逃げなかったことは、褒めてあげるー」
美優に変身した虫が笑うー。

健介は、そんな”虫”を見つめながら、
「息子は返してもらうぞー」と、険しい表情を浮かべながら
言葉を口にするのだったー

<後編>へ続く

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コメント

人間に変身する虫…!!
そんな虫が本当にいたら、恐ろしいですネ~!!

毎週土曜日の作品は予約投稿の都合上、
続きはまた来週になってしまいますが、
楽しみにしていて下さいネ~!

今日もありがとうございました~~!!

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