ネットで話題になっている謎の預言者・ビジョンー。
彼は、自身で行った予言を
”憑依能力”を使って実行に移す、極めて危険な人物だったー。
そんな”ビジョン”の予言で、親友が酷い目に遭ってしまった彼女は
怒りのメッセージを”ビジョン”へと送るも…?
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”あんた、晴菜に何をしたのー?”
ビジョンの予言通り、
授業中に”嬉しそうにお漏らし”をしてしまった晴菜ー。
けれど、やはり、どんなに考えても
晴菜がそんなことするはずなどないー。
この”ビジョン”に何かされたに違いないー。
由乃はそう思いながら、ビジョンにそんなメッセージを送りつけたー。
しかし、ビジョンから返って来た返信には、
”俺はただ、これから起きることを予言したに過ぎないー。
俺が予言していても、していなくても、
君の友達は授業中にお漏らしをしたー。それだけのことだ”と、
自分は何もしていない、
そして、自分が予言をしていなかった場合でも、
同じく晴菜は、同じタイミングで漏らしていたのだと、そう説明したー。
もちろんー、
それは”嘘”だー。
晴菜がお漏らしをしてしまったのは、ビジョンが晴菜に憑依して
そうさせたからで、
ビジョンが”予言”していなければ、晴菜は漏らしていないだろうし、
いつも通り普通に授業を受けていたはずだー。
しかしー、”もしも”の結末は、人には見ることはできないし、
憑依のことを証明する術もないー。
「ーーー…」
その返事を見て、由乃は悔しそうな表情を浮かべると、
「晴菜をあんな目に遭わせて、絶対に許さないからー」と、呟くー。
それと同時に、”ビジョンに対する怒り”だけではなく、
怪しげな予言者に、親友のことを予言してもらった自分自身にも
強い怒りを感じるのだったー。
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”大人気アイドルが、明後日引退会見を行う”
ビジョンは、数日後、そんな予言をネットに上げていたー
予言の対象となったのは、美姫(みき)という今、人気のアイドルだー。
ビジョンによれば、明後日、その美姫が突如として引退を発表するのだというー。
ビジョンがそれをネットに上げてから、
SNSでは”美姫引退” ”美姫ちゃん”などのワードがトレンド入りするような
始末となり、美姫の所属事務所および、
美姫本人がそれを否定するコメントを出すことになってしまったー。
”御心配をおかけしていますー
でも、わたしはまだまだやりたいことがたくさんあるので
引退することは絶対にありません!安心して下さいー”
美姫本人は、そんなメッセージを伝える動画までSNSに公開し、
預言者・ビジョンによる引退説を否定したー。
その結果に、ネット上では、ビジョンを良く知らない人間を中心に
”ペテン師” ”詐欺師” ”ほら吹き”などと、
散々なことを言い放ったー。
がー、ビジョンを知るユーザーや、ファンからは
”いや、必ず美姫ちゃんは引退する”と、
そんな声も上がっていたー。
そして、その2日後ー。
「ーわたしは、アイドルとしての活動に区切りをつけて、
新たな道を進むことにしました」
アイドル・美姫が会見を開き、
引退会見を行ったー。
昨日、突如として引退を口にし始めてー、
所属事務所や周囲は必死に説得したものの、
美姫本人の意思が固く、引退会見をすることになってしまったー。
「今まで、本当にありがとうございましたー」
美姫はそう言いながら、頭を下げるー。
そしてー、
ニヤリと邪悪な笑みを浮かべるー。
もちろんー、”美姫の意志”ではないー。
預言者を名乗るビジョンが、予言の翌日に美姫に憑依ー、
そして、今日、引退を発表したのだー。
しかしー、”憑依されている間の行動”は、
自分でしたこと、自分の意思でしたことだと、
脳が補正してしまうため、
美姫はもう、芸能界に復帰することはないー。
「ーークククククー
ネットが騒ぎになってるなー」
美姫はニヤニヤしながら、ネットで”美姫ちゃん引退”
”美姫ちゃん大丈夫”などと書かれたトレンドを見つめると
笑みを浮かべるー。
「ー大丈夫かどうかー、と言われると、
”大丈夫であって大丈夫ではない”状態だよなークク」
美姫はそう言葉を口にすると、ビクッと震えて、
スマホを持ったまま、白目を剥いて痙攣し始めるー。
美姫から抜け出した”ビジョン”は、
”俺の予言は絶対に的中するー。なぜなら俺自身が現実を作り出すからだー”
と、そう言葉を口にしてから、そのままその場から姿を消したー。
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”電撃引退”
そんなネットの記事を見つめながら、
由乃は怒りを覚えていたー。
”ビジョン”が、このアイドルの引退を予言していたのは知っているー。
きっと、”晴菜”にしたように、ビジョンが何かをしたに違いないー。
そう思った由乃は、
ビジョンにしつこく食い下がるー。
”晴菜に何をしたのか”
そして、予言には何かからくりがあるはずだとー。
するとー、
しばらくして、ビジョンから返事が返って来たー。
”これ以上関わるなー。これ以上関わろうとすれば
俺はまた君の身の周りの人間で”予言”するー”
とー。
「ーー!」
由乃は表情を歪めるー。
それでもー、由乃は引き下がらなかったー。
”それは、脅しー?”
由乃がそう言うと、
ビジョンは”いいやー、俺は予言をするだけだー。俺は何もしない”
と、そう返してくるー。
「ーーーーー」
由乃は怒りの形相を浮かべながら
”あんたの悪事、絶対に暴いてみせるからー。”
と、そんなメッセージを書くと、怒りに任せて
そのメッセージを送信したー。
”ーーーーー”
それを見たビジョンは”この女ー鬱陶しいやつだなー”と、
そう心の中で口にすると、
”全知全能の預言者となったこの俺に歯向かうとどうなるかを教えてやる”
と、邪悪な笑みを浮かべたー。
その翌日ー。
「ーーーーー」
学校内で、”お漏らし女”として孤立気味になってしまった晴菜は
「ーわたしがしたことだしー」と、自虐的な笑みを浮かべていたー。
「ー晴菜は悪くないよー。全部、全部アイツのせいだからー」
由乃は”ビジョン”のせいだと、そう言葉を口にしてから、
「アイツを絶対に懲らしめるからー」と、言葉を続けるー。
がーーー
その時だったー。
スマホが鳴り、SNSの通知が目に入ったー。
そこには、”ビジョン”からのメッセージが表示されていたー。
”今から30分後、君の母親が、日々の疲れに嫌気が差して、遺書を残して
家に火をつけて命を絶つ。ご愁傷様でした”
とー。
「ーー!?!?!?!?!?!?!?」
由乃は真っ青になって、そのまま教室を飛び出すー。
すぐに、母親に電話を掛けるも、返事がないー。
既に、母親は”ビジョン”に憑依されていて、
電話に出ないのだー。
しかもー”今から30分後”というのは、
由乃がギリギリ、全力でダッシュしても家に間に合わない時間だったー。
40分後ー。
由乃は何とか家に駆け付けるとー、
既に、家は炎に包まれて、消防車が出動していたー。
「嘘ーーー」
呆然とする由乃ー。
母親は、”日々の疲れ”で命を絶つような人じゃないしー、
それにー、いつも楽しそうにしていたー。
もちろん、人間だから内側に辛い気持ちを秘めていた可能性はあるけれど、
それでもーーー
「ーーアイツにーーーー…何かされたーー」
由乃は目から涙をこぼしながら、
そう呟くー。
由乃は、”ビジョン”によって、大事なものを奪われてしまったのだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
由乃は、復讐鬼となったー。
”ビジョン”の居場所を血眼になって探す日々を送るー。
そして、ビジョンを八つ裂きにしてやるのだー。
がー、そんな中、
由乃が必死に自分の近辺を探っていることを知った
”ビジョン”は、さらに”予言”を送って来たー。
”お前の父親が、ハンドルの操作を誤って、交通事故に遭って死ぬ”
とー。
「ーー!」
由乃は悔しそうな表情を浮かべながら
その様子を見つめるー。
絶対にー、
絶対に許さないー。
狂気の預言者・ビジョンをー。
”いいえー、あんな奴、預言者ですらないー”
由乃はそんな風に思いながらスマホをギシッと握りしめると、
”ある約束”を思い出しながら、大きく息を吐き出すー。
”約束、果たすからねー”
心の中でそう呟いた由乃はある場所へと向かって
ゆっくりと歩き出すー。
静かな怒りを感じながらー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”ーーなかなかしつこい女だー
ここまでしつこいのは、初めてだー。
だがまァー…そろそろ終わりだー”
憑依能力を使って、己の予言を己の手で実現している
預言者・ビジョンは笑みを浮かべるー。
まずは、残された父親をー、
そして、それでも止まらなければー…
”ビジョン”は笑みを浮かべながら
既に用意している”下書き”を見つめるー。
そこにはー
”明日の夜に、繁華街で奇行に走った上、警察に連行されて
人生が終わるー”
と、そう記された下書きー。
由乃の父親の”予言”を成就させたあとー、
それでもなお、由乃が止まらないのであれば、
由乃自身を予言のターゲットにするつもりだー。
「ー俺は全知全能の支配者ー
憑依能力を持つ俺に死角はないー」
”ビジョン”は、勝ち誇った表情で
そう言葉を口にすると、
そのままネット上で自分を”神”だと崇めるファンたちに
反応をし始めたー。
「そうー俺は神だー
力を手に入れて、神になったのだー」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
由乃の父親が、交通事故に遭って、死亡したー。
全ては計画通りー。
ビジョンは、満足そうに
”本人になりすます必要がない預言の時は、
記憶を読む必要もないから、楽だよなー”と、笑みを浮かべるー。
以前、由乃の友達の晴菜に憑依した時のように、
予言を実行に移す前に、本人のフリをする必要がある時の方が、
何かと手間がかかるー。
「ーーーククククーさて、あの女も、
両親を失ったんだー。そろそろ俺に歯向かうことが
どういうことか、理解できただろー。」
自分の身体に戻ったビジョンは、そう言葉を口にしながら
パソコンの画面を確認し、
由乃にメッセージを送ろうとするー。
”次は君の予言をすることになるかもしれない”
と、脅しのメッセージをー。
がー、その前に
その由乃からメッセージが届いていることに気付いたー。
「ーーん?」
”ビジョン”がそう言葉を口にしながら、
メッセージを確認すると、
そこには”わたしも預言者デビューすることにしたの”と、
そう書かれていたー。
「ー?」
ビジョンが、そのメッセージをさらに確認すると、
”ーあなたは死ぬ”
と、そう書かれていたー。
「ー!?」
ビジョンが背後を振り返ると、ビジョンの家の中に
由乃が既に侵入していてー、由乃が刃物をビジョンの首筋に突き立てたー。
ぶしゅっ、と血が噴き出して
ビジョンは目を見開くと、パソコンをなぎ倒して悲鳴を上げながら逃げようとするー
これは、”約束”ー
由乃と、父親の約束ー。
母親を”ビジョン”に殺されたあと、
由乃は”ビジョン”のことを父親に話したー。
そして、由乃はビジョンのことを死に物狂いで調べ続けて、
ビジョンの住んでいる場所、
そして憑依能力を持つことを突き止めたー。
”予言のからくり”を突き止めたのだー。
そして、
次は”俺か由乃が狙われる”と、父はそう言ったー
どっちが狙われるか分からないー。
だからーーー
”狙われた方が囮になって、狙われなかった方が仇討ちをする”
そんな、約束をしたー。
ビジョンは、憑依する前に必ず”予言”をするー。
大体の時間帯も含めてー。
その間、ビジョンは無防備ー。
憑依しに行っている間に、”狙われなかったほう”がビジョンの家に侵入し、
ビジョンをーーー仕留める。
それが、父との約束ー。
「ーーーひぃ… ぁああああ… 待てー、やめてくれー」
首を押さえながら、もう助かる見込みの薄い量の血を流しつつ、
ビジョンが涙目で叫ぶー。
”く、くそっー、な、なんでこんなことにー”
ビジョンは自分の血を見つめながら涙目で呟くー。
不意打ちで致命傷を負ったー。
今から由乃に憑依しても、自分は助からないー。
「ーーーーた、助けてくれー頼むー」
ビジョンが半泣きで、由乃にしがみつくと、
由乃は言ったー。
「ーーいやだ」
とー。
そしてー、
由乃は、絶望の表情を浮かべたビジョンにトドメを刺したー。
「ーーーーはぁー」
大きくため息を吐き出す由乃ー。
預言者・ビジョンはこの日を最後に、ネットからも姿を消したー。
そして、由乃は消息を絶ち、
その後の行方を知る人間はいないー。
おわり
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コメント
バッドエンドな結末のお話でした~!
でも、預言者を止めることができたのは、
せめてもの救いかもしれませんネ~…!!
お読み下さり、ありがとうございました~~!
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