<憑依>三年間の空白②~回想~

”娘のために”と、3年間”憑依”されていた事実を隠す両親ー。

自分の3年間の空白に疑問を抱く娘ー。

憑依による”空白”を巡る日々は続くー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3年前ー。

「ーー道に迷わずに行けるかなぁ~」
高校の入学式当日ー。
楓は苦笑いしながら、母・千秋に対して
そんな言葉を口にするー。

「ーふふー大丈夫でしょー。
 説明会の時も、試験当日も、迷わなかったんだしー」
母・千秋はそう言いながら穏やかに笑うー。

「ーーあははー…確かにそれもそうだねー」
楓は少し安心した様子で笑うー。

そして、少し間を置いてから
緊張した様子で「じゃあ、行ってきますー」と、
そう言葉を口にする楓ー。

「行ってらっしゃいー」
”高校初日”に向かう娘を見送る母・千秋ー。

これがー、”正気の娘”との最後のやり取りになるとは、
夢にも思わずにー。

娘の楓と再会できるのは”3年後”になるなどとは
夢にも思わずに、千秋は娘の楓を見送ったー。

そしてーーー
高校に向かう道を、少し緊張した様子で歩く楓ー。

”ーー聡美ちゃんと同じクラスだといいなぁ…”

中学までとは違い、周囲の顔ぶれは
”それなりに同じ”ではなく、高校はみんな、
それぞれ進路が大きく分かれるー。

そのため、親友の聡美の存在は楓にとって大きな存在だったー。

”あ~…部活何にしようかなぁ…
 また、秋になったら生徒会の書記でもやろうかなぁ”
色々なことを考えながら、楓は高校に向かうー。

がー、その途中の川辺に達したところで
”男”は、楓に目をつけてしまったー

”ククククー
 さっきのツインテールの子も可愛かったけどー
 こいつの方がもっと可愛いなー”

男は、笑みを浮かべながら呟くー。

彼はー、”JK”になるという夢を叶えるために
”憑依薬”を手に入れた男ー。

既に”3回”ほど、JKライフを楽しんでいてー
入学式の日に”憑依する子”を見つけて、
卒業式の日に”その子を捨てる”ことを繰り返しているー。

ちょうど、3月に”前に乗っ取っていた身体”で
卒業式を迎えたため、男は今日ー、
”次の3年間を楽しむ身体”を探していたー。

”ん~~~~…
 どうすっかなぁ…さっきのツインテールの子と、コイツー”

男は、そう呟きながら霊体のまま
楓のすぐそばまで近づいていくー。

しかし、男は”霊体”の状態ー。
楓は、危険な存在がすぐ近くにまで
近付いてきていることにも気づかずに
そのまま高校へと向かうー。

”ーーーー”
男は、楓の前にターゲットにしようとしていた子と
楓、どっちに憑依するかを散々悩みながらー
”ーまぁ、さっきのやつはもう学校についてるかもしれないし
 コイツの方がいいかー”と、
そう決断してしまったー。

もしーー…
もしも、この時ー、
男が楓の前に目につけていた子の方に憑依していればー
楓の運命は全く違うものになっていたかもしれないー。

楓は、憑依されることなく3年間を過ごしー、
そして代わりに別の子が、楓のように辛い3年間を過ごすことになったー…はずだー。

けれどー、男の気まぐれで、”人生を3年間も奪われる”のは
楓に決まってしまったー。

「ーーーひっ!?!?」
ビクッと震える楓ー。

楓の意識はこの瞬間に心の奥底に封じられて、闇に飲まれたー。

「ーーへへへ♡
 ー今日からはコイツの身体で女子高生ライフを楽しむぜー」
楓は自分の手を嬉しそうに見つめると、
「前の奴より、綺麗な手だなー」と嬉しそうに呟いてから
そのままペロリと手の甲を舐めるー。

「ぐふふふー”新しい俺の身体”ー
 今日からよろしくなー」
楓はニヤニヤしながらそう呟くと、そのまま学校に向かって歩き始めたー。

学校に到着すると、クラスを確認する楓ー。

楓と同じクラスには”親友”である聡美の名前もあったー。

楓本人が、そのことを知ればきっと、喜んでいたと思うー。
しかし、”憑依された楓”は聡美のことなど知らなかったー。

「ーーへへーーどんな子がいるか楽しみだぜー」
楓はそう言葉を口にすると、
そのまま教室へと向かうー。

「ーあ!楓!」
先に教室に到着していた聡美が、楓に気付いて手を振るー。

もうー、そこにいる楓は、
”楓であって楓ではない”と、言うのにー。

「ーーん?あぁーへへー」
ニヤニヤしながら近づいて来た楓に”違和感”を抱きながらも、
聡美は「楓と同じクラスでよかった~」と、そう言葉を口にするとー、
楓も「ーへへー”わたし”も嬉しいよー。”可愛い子”と同じクラスになれてー」と、
そう呟きながら、親友である聡美の胸をイヤらしい目つきで見つめ始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

楓は、その日から豹変したー。

”身体”は同じでも、
”中身”が変わったのだから、当然かもしれないー。

家では、親の言う事を全く聞かなくなり、
夜に遊びに行くことが増えたー。

学校でもクラスの女子に妙に触れて来たり、
イヤらしい視線を感じるようになったり、
男子を誘惑して遊んだりするようになっていたー。

「ーーねぇ、楓ー…最近どうしちゃったの!?
 なんで急にそんな風になっちゃったのー?」
親友の聡美が見かねて、そんな言葉を楓に投げかけるー。

がー、髪を茶髪にしてー、
メイクも濃くなった別人のような楓は、
聡美を見つめながら
「怒った顔も可愛いねぇ♡」と、不気味な笑みを浮かべるー。

ゾワッと、悪寒を感じながらも、
「は、話を逸らさないで!」と、声を上げる聡美ー。

「へへーーーーーわたしとHなことしようよー」
楓は邪悪な笑みを浮かべながら、聡美にそう耳打ちすると、
”な、何を言ってるの…?”と、呆然としている聡美に対して
「ーーわたしとシてくれたらー、教えてあげるー」と
クスクス笑いながら立ち去っていくー。

困惑の表情を浮かべることしかできない聡美ー。

家庭でも、楓の豹変ぶりに両親は心底戸惑っていたー。

夜になると、どこかへと出かけていく日も多いうえにー、
知らない男を連れ込んでは、部屋でHなことを繰り返す楓ー。

さらには、家にいるような日でも
夜になると、部屋から喘ぐような声が聞こえて来るー。

「ーー楓ー…いったい、何をしてるのー?」
母・千秋が戸惑いながら言うと、
「わたし、年頃の女の子なんだよー?Hなことに興味があったって
 不思議じゃないでしょ?」と、クスクスと笑いながら楓は
立ち去っていくー。

お風呂からも喘ぐような声が聞こえるー。

楓は”おかしくなってしまったー”
千秋は、そんな風に考えて、次第病んでいくー。

そんな”地獄”のような日々が続いたー。

しかし、父・紀明は”楓”が夜遊びを繰り返すことを心配し、
注意しても一向に止む様子のない楓を見かねて、
”探偵”を依頼したー。

その結果ーーー

「ーーーそれは、どういうことですかー?」
父・紀明が心底戸惑った様子で言葉を口にすると、
探偵の男は言葉を続けたー。

「ーー楓さんは”別人”だということですー」
とー。

「ー別人?」
紀明が再び聞き返すー。

探偵の言っている意味が分からないー。

がー、探偵は深刻そうな表情で言ったー。

楓が自分のことを別人のように言っている場面を何度も目撃したことー、
そしてーー

探偵は記録した映像を手に、
それを紀明に見せながら言うー。

「ーこれは、楓さんが男と”飲んでいた”時の映像ですー」
とー。

「ーか、楓が酒をー…?」
紀明は心底戸惑うー。

が、それ以上に、探偵が見せて来た映像に
更なる戸惑いの表情を浮かべるー。

”ーーへへー
 俺さ、コイツの身体、乗っ取ってるんだよねー”

顔を赤くして、かなり酔っている様子の楓が
男に対して言うー。

”はぁ?へへー何言ってるんだよー。楓ちゃんー”
その男は、当然、楓の言葉を本気にはしていないー。

がー、楓の異変を知る父・紀明たちは
その映像を見て、”楓が、”何か”に支配されているのではないか?”と、
そんなことを考え始めたー。

そしてーーー

父・紀明は、母・千秋と共に娘の楓を問い詰めたー。
その映像と共にー

「ーーわたしは、わたしだよー?」
すっかり派手な見た目になってしまった楓は、
当初、そんな風に誤魔化そうとしていたー。

しかし、紀明は
「嘘をつくな!お前は楓じゃない!一体何者だ!」
と、しつこく食い下がるー。

「ーーうざっ」
楓は露骨に態度を変えて、
「ーーいい加減にしろよー、クソ共ー」と、
そう言葉を口にするー

娘からの暴言に心を痛めながらも、
それでも、問い詰め続けた紀明ー。

粘り続けた結果ー、ついに、”憑依された楓”は
認めたのだー

”憑依”をー。

「ーーへへへー知ったところでどうする?
 通報でもするか?
 ーー誰が、”娘が憑依されている”なんて信じる?」

楓はニヤニヤしながら、勝ち誇った表情で言うー。

「お前たちが余計なことをしたら、
 コイツの人生を滅茶苦茶にしてやることだってできるんだぜー?

 例えばネットに、恥ずかしい姿の自撮りを顔出しで
 ばらまいたりもできるし、
 今、この場で服を全て脱ぎ捨てて
 そのまま玄関から外に飛び出すことだって、できるー」

邪悪な笑みを浮かべる楓ー。

真実を知っても、両親は何もできなかったー。

いやー、何もしなかったわけではないー。
楓の”憑依”について調べて、調べて、調べてー、
何とか助け出そうとしたー。

けれどー、どうすることもできないまま、
楓の高校生活三年間は奪われてしまいー、
そして、”この先も一生、楓はー…”と、
両親や楓の親友・聡美が絶望している中、
楓に憑依している男は言ったー。

「ーー俺はJKにしか興味がねぇー。
 だから、もう卒業したコイツには用はねぇー」

とー。

そして、楓は解放されて、
”3年間憑依されていた”という現実を楓にどう伝えるか、
それとも隠すのかを考えた結果ー、
楓の両親と、楓の親友・聡美、そして周囲の人々は
”隠す”ことを選択したのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

現在ー。

「ー大分、調子もよくなってきたみたいだねー。良かったー」

担当医の杉内 栄次郎が、穏やかな表情で頷くと、
楓は「ありがとうございますー」と、そう言葉を口にしながら、
「ーー最近はやっと、今の生活に慣れてきてー」と、
それだけ言葉を口にするー。

「ーーーただーー」
楓は、少しだけ戸惑いの表情を浮かべると、
「ただ、”やっぱり”事故で3年間眠っていたっていう実感はありませんー」と、
そんな言葉を口にするー。

「ーーははー、まぁ、無理もないよー」
杉内先生は、そう言葉を口にして笑うと、
心底、不安そうな表情を浮かべている楓のほうを見てから、
静かに言葉を続けるー。

「ーーーーー大丈夫ー。
 そんなに心配することはないよー

 君は今、こうしてちゃんと目を覚まして、
 ちゃんと自分の人生を送ることができてるんだからー。

 だからー、大丈夫ー。
 君はちゃんとやっていけるー」

不安を和らげようとしたのか、
そんな言葉を口にする杉内先生ー。

「ーーー」
楓は、そんな杉内先生の言葉を受けて、
少しだけ微笑むと、
「そうですねー…せっかく目を覚ましたのにー
 ずっと悩んでいるのも、良くないですよねー」と、
そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

楓は”昏睡状態にあった3年間”のことを気にするのを
やめて、前に進み始めたー。

親友の聡美も、そんな楓の様子を見て、
安堵の表情を浮かべるー。

楓自身、まだ腑に落ちない部分は色々とありはしたものの、
”お母さんとお父さん、それに聡美ちゃんが、もし何か隠しているんだとしても、
 みんなが何かを隠すのは、きっと何か考えがあってのことだからー”と、
大事な人たちへの”信頼”が、不安を次第に打ち消し始めていたー。

「ーーーーー最近、楓、元気になったよねー」
聡美が少し安堵の表情を浮かべながらそう言うと、
楓は穏やかに微笑みながら、静かに頷くー。

「ーーうんー。みんなにもきっと色々迷惑をかけちゃったしー、
 だからー、もう悩むのはやめて、前に進んで行こうって
 そう思ったからー」

楓がそう言うと、聡美は「ふふーよかったー」と、
心底安心した様子で微笑むと、
「ーーこれからも、よろしくねー」と、そんな言葉を口にしたー

”3年間の空白”ー
空白は、空白のままー
けれど、世の中には知らない方がいいこともきっとあるー。

知れば、楓はきっと苦しむー。

楓は”知らない方がいい真実”を知らないままー
”空白”の真実を知らないままー、
取り戻した自分の人生を大事にしていくのだったー

③へ続く

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コメント

「おわり」みたいな終わり方ですケド、
まだもう1話あります~!!!

…不思議ですネ~笑

今日もありがとうございました~!★!

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憑依<三年間の空白>

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