<入れ替わり>成りすまし結婚

兄のことが大好きな妹は
兄の彼女と入れ替わって、兄と結婚しようと画策する…!

※リクエスト作品デス!

--------------------–

吉崎 竜二郎(よしざき りゅうじろう)は
大学時代から付き合っている幼馴染と
結婚を目前に控えていた。

両親は長男である竜二郎の結婚に
お祝いムードだった。

だがー。
そんな竜二郎の結婚を
おもしろく思わない人間がいた。

それが、妹の
咲江(さきえ)だった。

咲江はー
兄のことが大好きだった。

小さい頃から兄の竜二郎とは
たくさん遊んできたし、
”将来はお兄ちゃんのお嫁さんになる”なんて
ことをよく言っていたぐらいだった。

兄の竜二郎も
”はは、大きくなったらな”などと言いながら
頭を撫ででくれていた。

だがー。
兄の竜二郎にとっては、あくまでも
子供の冗談でしかなかった。

けれどー。
咲江にとっては超がつくほど本気だった。

大学生になったばかりの咲江は。
今でも、竜二郎のことが大好きだった。

そんな竜二郎を奪おうとする
彼女が憎い。

咲江は、そう思っていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・

結婚式の日が目前に近づいている。

兄・竜二郎と、
その彼女・柚葉(ゆずは)の結婚。

「---お兄ちゃん…」
兄・竜二郎が”他の女”に取られてしまう。

実家暮らしの咲江は、
兄の写真を大量に張り付けてある
ノートを見ながら涙を流していた。

竜二郎が自分から離れて行ってしまう悲しみー
そして、竜二郎を奪う彼女・柚葉への憎しみー。

そんな感情がー

”闇”を呼び寄せた。

「---!?」
咲江が気配を感じて振り返ると、
そこには黒い人影があった。

「---ひっ!?」
咲江が思わず悲鳴を上げる。

しかしー
その黒い人影は微笑んだ。

よく見ると、
その黒い人影は
兄・竜二郎の婚約者である
柚葉に似ているようにも見えたが、
真っ黒な人影であるために
はっきりとその姿を確認することができない。

”欲しい…?”

黒い人影はにっこりと笑った。

「え…?」
咲江が怯えながら返事をすると
今度は、その黒い人が
はっきり分かるように微笑んだ。

”力、欲しい…?”

とー。

何のことだかは分からない。
けれども、咲江は頷いた。

”力が欲しい”

兄の竜二郎を振り向かせることが
できるだけの、”力”がー。

咲江の覚悟を受け止めた黒い影は、
咲江に”何か”をし始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

結婚式当日ー。

竜二郎と、柚葉が幸せ絶頂の
瞬間を迎えていたー。

「おめでとう!」
母親も、父親も、親戚も、
柚葉の両親も、
みんなみんな、二人を祝福している。

「---…」
咲江も、周囲の人々と同じように
笑顔で兄を祝福していたー

”最後の幸せを…楽しむといいわ”

咲江は心の中でそう思いながら微笑んだ。

柚葉は、自分よりも可愛らしく、とても美人だ。
咲江も十分可愛い方ではあるものの、
咲江は柚葉に対して、強い劣等感を抱き、
憎んでいた。

幸せそうな新郎新婦。
結婚式が終わったー。

咲江は不気味に微笑む。

「--もうすぐ、わたしがお兄ちゃんのお嫁さんに
 なるからね…」
とー。

本当は結婚式の前に入れ替わって
結婚式という幸せな瞬間を
味わうのもよかった。

けど、
咲江は鬼ではない。
柚葉に、”最後の晩餐”を楽しませてあげよう、
そう思った。

だからー。

結婚式が終わるまで
”力”を使うのを待つことにした。

”入れ替わりの力”を
使うのは、結婚式が終わってからー、だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日

竜二郎と柚葉が
新婚生活を始めるー。

「--じゃあ、行ってくるよ」
竜二郎が笑いながら、外に出かけて行く。

仕事に向かった竜二郎の姿を見て、
咲江はにっこりとほほ笑んだ。

「お兄ちゃん…
 今日から始まるのよ…
 わたしとお兄ちゃんの新婚生活が…」

そう呟くと、咲江は竜二郎と柚葉が
住んでいるアパートの
インターホンを鳴らした。

柚葉が応答する。

”はい…あ!咲江ちゃん!”

柚葉の方が少し年上で、
柚葉は、竜二郎の妹である
咲江のことを咲江ちゃんと呼んでいる。

”お前にちゃん付けで呼ばれる
 筋合いはないんだけど?”と
咲江は内心でいつも荒ぶりながらも
笑顔で対応してきた。

「---新婚生活どうかな~って
 思って見に来ちゃいました!」

咲江は笑みを浮かべる。

”あ、竜二郎は今、仕事に行ったばかりだから
 いないけど、それでもいいかな?”

柚葉が申し訳なさそうに言う。

「いいですよー!」
咲江はそう答えた。

そう、竜二郎がいない方が好都合。
目的は、”あんたの身体”なんだからー。

黒い人影から闇の力を手に入れた咲江は笑う。

もうすぐー
もうすぐ、わたしはお兄ちゃんの妻に
なることができるー

部屋に到着した咲江は、
柚葉と雑談していた。

”最後の雑談”

「でも、咲江ちゃん、なんだか本当の妹みたい!」

楽しく雑談をしながら
柚葉はそう呟いた。

柚葉は咲江と仲良しだと思っている。

だが、咲江はそうは思っていない。
柚葉は、憎むべき”邪魔者”だ。
わたしからお兄ちゃんを奪った、悪魔だー。
咲江は、そう思っていた。

「は?妹?」
ずっと、我慢してきたー

耐えて耐えて耐えて耐えて

耐えてきた。

それも、もう終わりだ。
愛想笑いを浮かべる必要もない。

付き合う必要も、ない。

「ーーあんたに妹とか呼ばれる筋合いないんだけど!」
今まで我慢してきた怒りを咲江は
爆発させた。

これから身体を奪うのだからー
最後ぐらいは本音をぶつけてやる。

「--!?さ、咲江ちゃん…?」
柚葉が驚いた表情を浮かべる。

「--この泥棒猫!」
咲江は吐き捨てるようにして言った。

「---ど、どうしたの急に!?
 落ち着いて」

柚葉が困り果てた様子で言う。

「あんたはわたしからお兄ちゃんを奪ったの!
 大好きなお兄ちゃんを!!」

咲江はずっと隠していた本心を
柚葉にぶつけた。

柚葉は戸惑った様子で答えた。

「--さ、、咲江ちゃんから竜二郎を奪う気なんて
 全然ないよ…?
 と、とにかく落ち着いて!」

柚葉の言葉に
咲江はさらに怒りをたぎらせた。

「もう奪ってるじゃない!」
咲江は怒りにまかせて、柚葉を掴むと、
そのまま柚葉にキスをした。

「---!?!?」
柚葉が驚いて目を見開く。

「--あんたの身体、、貰って
 わたしがお兄ちゃんの妻になるの!」
咲江が一度唇を離して
そう宣言した。

あまりの事態に状況が飲み込めない柚葉は
必死にもがいたー。

けれどー。
柚葉も咲江も身体から
力が抜けて、その場に倒れてしまった。

「-----…ん…」
しばらくして柚葉が先に目を覚ます。

見た目は柚葉、
けれども、中身は咲江。

「くふ…お兄ちゃん…
 今日からわたしが、お兄ちゃんの奥さんになるの…♡」

柚葉(咲江)は歪んだ表情を浮かべた。

「--!!」
咲江(柚葉)も目を覚ましていた。

咲江(柚葉)は驚きの表情で
自分の方を見る。

”目の前に自分がいる”

咲江(柚葉)は混乱して叫んだ。

「---ど、、どうなってるの!?」
いつも穏やかな笑みを浮かべているタイプの
柚葉が、咲江の身体になってしまったことで
激しく動揺していた。

「んふふふ…
 あんたからお兄ちゃんを取り戻すのよ」

柚葉(咲江)が笑う。

勝ったー。
咲江はそう思った。
これで、わたしは”お兄ちゃんの妻”だ。

もう、誰にもお兄ちゃんを渡さない。

咲江(柚葉)が叫ぶ。

「わ、わたしの身体を返して!」

とー。

だが、
柚葉(咲江)は言った。

「--最初に奪ったのはどっち?」

冷たい声だった。

”先に奪った”のは、あんただ。
大好きなお兄ちゃんを奪ったのは。

「な、、何を言ってるの…?」
咲江(柚葉)は
困り果てている。

「あんたは!わたしから
 大好きなお兄ちゃんを奪った!」
柚葉(咲江)が鬼のような形相で、
咲江(柚葉)を壁際に追い込んで睨みつけた。

「ひっ…!?」
咲江(柚葉)は思わず悲鳴を上げる。

「だからわたしは奪われたものを
 取り戻したの。
 大好きなお兄ちゃんを取すために
 あんたの身体を奪ったの!」

柚葉(咲江)の目は
正気ではないー。

咲江(柚葉)はそう思った。

「う、、う、奪うだなんて…
 わたしは…わたしは!」
咲江(柚葉)が叫ぶ。

「うるさい!お兄ちゃんは誰にも渡さない」
柚葉(咲江)が声を荒げる。

そして、咲江(柚葉)に対して
言い放った。

「ここはわたしの家なんだけど?
 さっさと出てってくれる?」

柚葉(咲江)は呟く。

そんなことー、と
咲江(柚葉)は、
自分のスマホで警察に電話をしようとする。

そんな様子を見て
柚葉(咲江)は笑った。

「電話したいの?
 すれば?
 でもさ…
 この状況、よく考えてみなさいよ?」

柚葉(咲江)がニヤニヤと笑う。

「--…え…」
咲江(柚葉)が手を止める。

「--今はわたしが柚葉なの…
 ふふふふ…
 あんたが警察に電話しても
 つまみ出されるのはあんたのほう…

 わたしとあんたが入れ替わったなんて
 誰が信じると思うの?」

柚葉(咲江)は勝ち誇った表情で笑う。

「ーーーそ…そんな…」
咲江(柚葉)はスマホを持ったまま
手を震わせている。

確かに、柚葉(咲江)の言う通り。
今、この状況、他人が見れば
追い出されるのは…

「--……か、返して!」
咲江(柚葉)は目に涙を浮かべながら叫ぶ。

「-ーーーふん」
柚葉(咲江)は見下したように
咲江(柚葉)の方を見て笑う。

「この身体はわたしのものよ…
 わたしが大好きなお兄ちゃんの妻になるの…
 うふふふふふ…♡
 ふふふふ…

 あぁ、お兄ちゃん…♡」

柚葉(咲江)は興奮した様子で呟く。

もう、咲江(柚葉)のことなど
目に入っていないようだ。

「ーーーふ、、ふざけないでよっ!ねぇ!」
普段は温厚な柚葉も
さすがに、声を荒げはじめた。

咲江(柚葉)は泣きながら
柚葉(咲江)のほうに突進する。

「わ、わたしの身体を返してよぉ…!」

突進してきた咲江(柚葉)を避けて、
柚葉(咲江)がスマホを手にする。

「---もしもし~?」
柚葉(咲江)が電話をかけた先は、
警察だったー。

泣きじゃくりながら咲江になってしまった
柚葉はその様子を見つめる。
柚葉になった咲江は勝ち誇った様子で
視線を送る。

電話をし終えた柚葉(咲江)は
勝利宣言をしたー。

「お兄ちゃんは、わたしのものよー」

とー…。

咲江(柚葉)は間もなく
乗り込んできた警察官に
連行された。

最初は「身体を入れ替えられて!」と
叫んでいたものの
それに耳を貸す警察官はおらず
柚葉(咲江)も、知らないふりをしたために
”狂言”とみなされて
そのまま咲江(柚葉)は連れ去られてしまった。

「くふふ…
 ふふふふ…
 ひひ、きゃははははははははは!!!」

警察官も立ち去り、
誰も居なくなった部屋で
一人笑う柚葉(咲江)

普段柚葉が浮かべないような
笑みを浮かべて、柚葉(咲江)は叫んだ。

「お兄ちゃんを取り戻した…!
 お兄ちゃんを…取り戻した!!!」

嬉しそうに何度も繰り返す柚葉(咲江)

ようやくー
ようやく、あの泥棒猫から
お兄ちゃんを取り戻した。

そう考えるだけで
柚葉(咲江)は興奮した。

「今日から…
 はぁ…はぁ…
 今日からわたしが、、、
 お兄ちゃんの妻…
 うふふ…
 ふふふふふふふ…
 ふふ…ふふふふふふ♡」

興奮を隠せなくなった柚葉(咲江)は
その場で狂ったように笑い続けたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

柚葉の夫となった
竜二郎が仕事を終えて帰宅する。

「ただいま~」
帰宅した竜二郎を見て
柚葉(咲江)は思わず飛びついた。

「おかえりなさい~♡」
柚葉(咲江)はとっても嬉しそうにしている。

「おわっ!?ゆ、柚葉!?
 どうしたんだよ~急に」

苦笑いする竜二郎。

「ううん!おに…いえ、
 竜二郎が帰ってきて
 嬉しくなっちゃって!」

「ははっ…そっかそっか」

竜二郎は笑顔で
柚葉(咲江)を抱きしめた。

自分が仕事中に何が起きていたのかも、
知らずに…。

<後編>に続く…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

1話で終わらせるつもりだったのですが、
続きモノになっちゃいました…!
ごめんなさい!

続きは来週の火曜日(火曜日の分だけ、
私の都合でいつも、予め書置きしてます)
に用意しておくので、しばらくお待ちください!

リクエストの原文は、

> ②女の子が兄の彼女と入れ替わって人生を乗っ取りなりすまし兄と結婚する。
> または男の子が妹の彼氏と入れ替わって人生を乗っ取りなりすまし妹と結婚する
話をリクエストします。

でした!

コメント