本当の暗闇とは何か。
男はずっと、暗闇を生きてきた。
地獄のような世界をー。
そんな彼にとって、幸せは、憎むべき存在。
女子高生の身体を奪った彼は、彼女の幸せを奪い尽くす―。
※ダーク展開注意です!
苦手な方はご注意ください!
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「---きゃあああああああああ!」
母親の湯子が悲鳴をあげた。
キッチンの隅には、夫である譲二が血まみれになって
倒れていた。
そして、娘の愛紗美が、
手を真っ赤に染めながら、
オムライスを両手でわしづかみにして、食べている。
「---どうしたの?おか~さん!」
愛紗美がオムライスを口から吹き出しながら
行儀の悪い態度で母親を見つめる。
「な、、、何してるの…?」
母の湯子が尋ねると、愛紗美は笑った。
「なにって?ちょっとケチャップ薄かったから、
おとうさんにケチャップになってもらったのよ」
愛紗美は、そう言いながら、
両手でオムライスをつかみ、食べ続けている。
「--あ~家庭の味って感じでウゼェな!」
そう言うと、愛紗美はオムライスを倒れた譲二のほうに
向かって投げつけた。
「ふ~~~!」
愛紗美は汚れきった両手を顔にこすり付けるー。
綺麗な顔が赤く染まるー
母親の湯子は、何が起きたのか分からず、
身体を震わせていた。
「そんなに怖がらなくてもいいじゃん。お母さん。
わたしたち、もう十分幸せだったでしょ?
だからもう、終わり。
わたしがこの手で幸せを壊すの」
母の方に近づいていく愛紗美。
真っ赤に染まった手には、包丁が
握られている。
泣き崩れている母親を
見下しながら、愛紗美は呟いた。
「じゃあな、ババア」
その時だったー
2階からもの凄い勢いで痩せ細った男が
駆け下りてきて、怒りの形相で愛紗美に突進した。
「--ぐえぇ!」
悲鳴をあげて突き飛ばされる愛紗美。
「--お父さん…お父さん!」
痩せ細った男は倒れた譲二に近づく。
けれどー、
もう、譲二は死んでいた。
「---…だ、、、誰なの…?」
母親の湯子が言う。
「--お母さん!信じて!
わたし、わたしが愛紗美よ!
わたし、、身体を入れ替えられて、
奪われちゃったの…!」
男が叫ぶ。
母の湯子は、笑いながら起き上がる愛紗美と、
必死に叫ぶ痩せ細った男を見比べる。
「愛紗美、なの…?」
その言葉に、やせ細った男は頷いた。
奪われてしまった。
父も、弟もー。
けれどー、まだ、守れるものがある。
「--はぁああ・・・邪魔すんじゃねぇよ」
赤く染まったブラウスとミニスカート姿の愛紗美が立ち上がって
唾を吐き捨てると、
包丁を持って襲い掛かってきた。
「---わ、、私の身体を返して!」
男は叫ぶ。
包丁を持った愛紗美と乱闘状態になる男ー
だが、不思議と愛紗美は、包丁を
振ってはいるものの、
何故だが男を切りつけることはなかった。
「---チッ」
愛紗美は舌打ちをする。
入れ替わっているとは言え、これは自分の身体だー。
愛紗美は、”痩せ細った男”-自分の身体を
傷つけることはしたくなかった。
「---お母さんに、手を出さないで!」
男に突き飛ばされる愛紗美。
「--ぐああ」
服が破け、スカートは乱れ、髪も乱している愛紗美は、
まるで別人のようだった。
「--邪魔すんじゃねぇよ!
このクソ餓鬼が!」
大声で叫ぶ愛紗美。
食卓のテーブルは押し倒され、
食器が散乱するー。
「--きゃあああああああ!」
母親の湯子は、何もできずに悲鳴をあげる。
「--ね、、ねぇ、、やめて!やめてよ!」
男が叫ぶ。
しかし、愛紗美は、止まらなかった。
「せっかく人が気持ちよく家族の命奪ってんだからよ、
邪魔すんなよ?あぁ?」
愛紗美が怒鳴り声をあげる。
そして、男を殴りつけると、
手についた血をペロリと舐めた。
「---ほぅら、目の前でおかあさんを殺してあげるから
黙って見てなさい…ネ」
愛紗美はそう言うと、
はぁ、はぁ、と言いながら、
母親の方を見た
「や、、やめて…む、、、娘を返して!」
湯子は、泣きながら叫ぶ。
そんな湯子を無視して、
愛紗美は包丁を湯子に向けた。
「うあああああああああああああ!」
背後から痩せ細った男が、
お皿を愛紗美の頭にたたきつけた。
「--うぎっ!?」
愛紗美は、頭から血を流しながら
驚いた表情を浮かべる。
「-ーーお母さんは、、わたしが守る…
あんたなんかに、、何も・・・させない!」
痩せ細った男が叫ぶー。
男の中にいる愛紗美は思う。
例え自分の身体を傷つけることになってもー
守らなくちゃいけない、と。
「うぜぇええええええええええええ!」
頭から血を流しながら愛紗美は、大きな怒鳴り声をあげた。
そして、やせ細った男を殴り倒すと、
何度も何度も、男を殴りつけた。
「--ーー俺を馬鹿にしやがって!
どいつも、、こいつも!」
愛紗美はそう叫ぶと、
母親の方を見た。
そしてー
ニヤリと笑った
「そろそろ終わりにしよっか。
おかーさん!」
愛紗美が、母親の湯子に近づいていく。
倒れた男は、
悲痛な叫びをあげる。
「やめて…お母さんに…手を出さないで…!」と。
けれど、もう身体が動かないー
もうーーー。
「---ひぃああああああああああああっ!」
母の悲鳴が響き渡った。
悲鳴と、笑い声ー
「---うあああああ!ああああ!やめて!やめて」
母の声が聞こえる。
「--あははははは!どうだ!聞こえるか!
お母さんの悲鳴?うふふふふ?ははははは~」
愛紗美は自分の顔に血を塗りたくりながら
興奮して、ぽたぽたと液体を垂れ流していたー
そしてー
家の中は静かになった。
血まみれになった愛紗美が近づいてくる。
「----ふふふ、み~んな、居なくなっちゃった!」
笑う愛紗美。
痩せ細った男は、顔を見上げて、愛紗美を睨んだ。
「-ーーどうして…どうして…
こんなことするの…?」
やっとの思いで、それだけ口にした。
自分たちが何をしたと言うのか。
どうして、こんな酷いことをするのか。
「いったでしょ?
幸せが憎いって。
だからこうして、幸せを自分自身の手で
奪わせてやるんだよ…くくく」
愛紗美は、唾を吐き捨てると、
倒れた母親の上に足を置いて微笑む。
「どう?平凡な家庭の平凡な娘が、
こうして、自分の手で幸せを壊すー
ゾクゾクするでしょ?
ふふふふふ」
その言葉に、男は泣くしかなかった。
自分の手で家族を奪ってしまったー。
幸せを壊してしまったー。
愛紗美は、ゾクゾクが止められず、
その場で自分を抱きしめた。
「くふふふふふ♡
たまらない…
わたしが、わたしの幸せを壊したこの瞬間…
たまらない…」
真っ赤に染まった両手を見つめて愛紗美は
その手をペロペロと舐め始めた。
犬のようにペロペロペロペロといつまでも
その両手を舐めている。
「はぁぁあ…
この綺麗な手が…幸せを奪ったんだ…!」
近くにある鏡を見て、愛紗美は叫ぶ
「こんな可愛い顔して、、わたしが
幸せを奪ったんだ…!
あは、、あははは、あはははははははははっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・
数分が経過した。
男の身体にされてしまった愛紗美は、
泣き続けるしかなかった。
どんなに叫んでも、
もう、母も、父も、弟も、
帰ってこない。
「--じゃ、約束は守るぜ」
愛紗美が近づいてきた。
「…やくそく…?」
放心状態で男が返事をすると、
愛紗美は笑った。
「身体、返してあげるって、約束したでしょ?」
愛紗美はそう言ってウインクすると、
有無を言わさず男にキスをしたー
そしてー
「---っくく、確かに身体は返したぜ!」
痩せ細った男が笑いながら立ち上がった。
「---!!」
愛紗美は驚いた表情を浮かべる。
自分の、身体。
パトカーの音が聞こえてきた。
「--くくく、
愛紗美ちゃんよぉ、
”家族殺し”の罪、ちゃんと、償わなきゃな」
男が、この上ない凶悪な顔で笑う。
そうだー
この瞬間が何よりもたまらない。
身体を奪いー
目の前で幸せを壊していく自分の姿を見せつけてー
最後に、身体を返し、
罪を償わせる。
ーー幸せが憎いー
これは、復讐だー
「---いい顔だぜ、愛紗美ちゃんよぉ くくく」
男が大笑いするー
「---や、、、いやだ…いや…いやああああああっ」
愛紗美はその場に泣き崩れてしまう。
真っ赤に染まった手と顔ー。
そしてー
弟のスマホには、自らが家族を手にかける場面が
記録されているー
「犯人は、お前よだよ!
明日は大ニュースだぁ!うひひひひひひひ!」
男が大笑いすると同時に、警察が駆け込んできた。
「---は、、、早く!助けてください!」
痩せ細った男が叫ぶー
痩せ細った男は、近所を通りかかった際に、
この家の騒ぎを聞きつけて、助けに入ったと説明した。
警察は当然疑った。
けれどー。
愛紗美が、家族を手にかける場面が
映像として記録されていたー
さらには、愛紗美は身体を奪われている間に
ツイッターで家族の幸せを奪う、と
発言していたー。
警官たちが、
笑いながら弟や父を手にかける愛紗美の動画を見て、
愛紗美をすぐさま現行犯で逮捕した。
「---なんて少女だー」
警察官の一人が呟いた。
幸せな家庭を、自ら壊すなんてー
「---違う!違うの!!違う!!わたしじゃない!!いやだ!いやああ!」
パトカーに連れていかれながら、愛紗美は泣きじゃくっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日、
痩せ細った男は、警察の取り調べを終えた。
当然、現場に居たのだから参考人にはされたが、
何事もなく、解放されたー。
いつもは、警察の厄介になる前に身体を戻して
立ち去るのだが、今回はついついやりすぎた。
駅ビルに表示されたニュースを見つめる男。
「---幸せな家庭の長女が起こした凶悪犯罪ー」
そう、表示されている
笑みを浮かべて、ニュースを見つめていた男に、
通りすがりのサラリーマンが声をかけた
「どうしました?そんなに嬉しそうに」
サラリーマンの言葉に、痩せ細った男が返事をする
「いえ、怖い子がいるものだな~って、思いましてね」
痩せ細った男が、身体を入れ替えて、犯した罪だなんて
誰も、気づかない。
「--そうですねぇ、私にも同じぐらいの娘がいるので、
とても他人事とは思えませんよ」
サラリーマンが笑いながら言う。
「娘さんがいるのですか?
それはさぞ幸せでしょうね~」
やせ細った男が言うと、
サラリーマンは答える。
「えぇ、とても。
反抗期もなくて、とてもいい子ですよ」
サラリーマンはそう言って、
「あ、急に声をかけてすみませんでしたね。それでは」と
言って立ち去った。
痩せ細った男は、笑みを浮かべたー
「---”反抗期もなくて、とてもいい子”かー」
男は笑みを浮かべると、
”次のターゲットは決まりだ”と呟いて、
ビルの外壁に表示されたニュースを見つめて、
微笑んだー
幸せから地獄に転落する瞬間の顔は、実に美しいー
現実を受け入れることができず、
何も見えていない
放心状態の瞳ー
地獄が映し出す”くらやみ”は実に美しいー
痩せ細った男は、次の幸せを壊すため、
歩き出した・・・。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最後までダークな入れ替わりモノでした…
入れ替わりの悪用は恐ろしいですね…!
お読みくださり、ありがとうございました!!
コメント
SECRET: 1
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お疲れ様でした。クレームではありませんが苦言を呈します。今回は今までの作品と違い残念すぎる話でした。いくらダークとは言え人が血を流して亡くなるのは、やり過ぎです。おまけに何人も、これでは、オカルト、ホラーになります。
全然萌えなくなってしまいます。暗い気持ちになり全然ハァハァしません。人生を乗っ取り魂は消えるにとどめて欲しいです。
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鍵付きコメントに対してのお返事です!
コメントありがとうございます!
毎日更新という性質上、色々なお話が出来てしまうので、
好き・嫌いも分れることがあるかと思います!
私自身も好き・嫌いな作品は色々ありますが、それが好きな人も
いるかと思いますので、今後も作風は話ごとによって色々になると思います!
ご期待に添えない作品や、嫌いな作品も出て来るかとは思いますが、
ご容赦下さいますと幸いです!
頂いたご意見を参考にして、
過激な作品には「続きを読む」前に注釈を入れるように
したいと思います!
ありがとうございました!!
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> 鍵付きコメントに対してのお返事です!
>
追記です!
ご意見を反映して、
「くらやみ」の続きを読む前に、ダーク作品注意の文章を
入れておきました!
今後も、何かご意見がありましたら
お気軽にどうぞ!
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お疲れ様でした。今回はかなり過激な内容でしたね(^_^;)
ダーク系は基本大好物なのですが、なかなか読み進めるのに勇気がいりましたw
しかし、読み始めると続きが気になり、ハラハラしながら読ませて頂きました。
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> お疲れ様でした。今回はかなり過激な内容でしたね(^_^;)
> ダーク系は基本大好物なのですが、なかなか読み進めるのに勇気がいりましたw
> しかし、読み始めると続きが気になり、ハラハラしながら読ませて頂きました。
ありがとうございます!
せっかく毎日書いているので、幅広いジャンルを…ということで
ダークに突き抜けたモノも書いてみました!
私自身も書いていてハラハラだったりします(汗
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"自分"が自分の家族を手にかけるところを見せつけられるーー。肉体のみならず、立場まで交換される入れ替わりの特性が最大限悪用された、恐ろしくダークな作品でしたね。
入れ替わり犯罪者の話もダークでしたが、あちらは女の子の苦しみはすぐ終わります。こちらは、これからずっと家族殺しの罪を背負って生きていくことになるわけで、その心情を思うと実にゾクゾクいたしますね。素晴らしかったです。
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> "自分"が自分の家族を手にかけるところを見せつけられるーー。肉体のみならず、立場まで交換される入れ替わりの特性が最大限悪用された、恐ろしくダークな作品でしたね。
> 入れ替わり犯罪者の話もダークでしたが、あちらは女の子の苦しみはすぐ終わります。こちらは、これからずっと家族殺しの罪を背負って生きていくことになるわけで、その心情を思うと実にゾクゾクいたしますね。素晴らしかったです。
ありがとうございます~
見せつけられた上に、その罪も背負っていく・・・
考えただけで恐ろしいことですよネ・・・!
入れ替わりモノは、また火曜日に用意しているので
ぜひお楽しみ下さい!