ホテルの支配人、名倉俊之(なぐらとしゆき)
彼は、人々の幸せを憎み、
ホテルにやってくる幸せそうなカップルや夫婦の人生を
”終了”させていたー
「あなたの人生ー終了でございます」
ホテルノシハイニンの最終章デス!
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”彼”には大切な彼女が居たー
蛭間 文恵(ひるま ふみえ)
ホテル支配人を務める彼にとっての
支えであり、癒しでもあったー
そんな彼女が、突然、豹変したー
何者かによって、憑依されてー。
「名倉さんー。
私たち、十分幸せだったよね?
もうあなたは
”人生の幸せ”全て使い果たしちゃったの。
だからもうおしまいー」
豹変した彼女に、彼はー
殺されたー。
最愛の彼女に、浮気され、
命まで奪われたと思った男はー
怨霊と化したー。
そして、彼はー
名倉俊之(なぐらとしゆき)は、
怨霊と化した際に、
その思想も歪んでしまった。。
プロポーズ間近の彼女に裏切られた名倉には、、
幸せの絶頂に居るカップルたち全てが敵に見えた。
彼の、今の目的はただ一つー
”幸せの絶頂にいる人間の幸せを壊すこと”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--わたしの人生、終了よ~!うふふふふふ!」
ホテルでの宿泊を終えて、
観光を続けようとしていたカップルに、
突然異変が起きたー
優しかった彼女が、豹変して、
笑いながら、観光名所の崖から飛び降りようとしているー。
「おい!どうしたんだよ!やめろ!」
彼氏が慌てて彼女を取り押さえる。
しかし、彼女は微笑んだ。
「わたしたち、もう、幸せを使い果たしちゃったの!
うふふ♡
いっしょに、堕ちましょ~うふふふ!」
彼女は、彼氏を引っ張り、
そのまま二人で崖から転落したー
彼女は転落する最中も
満面の笑みで笑っていたー
「わたしたちの人生、終了でございま~す♪」
彼女はピースしながら、
濁流に飲み込まれたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「----クク」
ホテルの支配人室で、目を瞑っていた
名倉 俊之は目を覚ました。
この身体は、知らない男の身体だー。
だが、元の名前なんて知らない。
今は、この身体が名倉俊之なのだ。
カップルの女性に憑依していた名倉の霊体が
戻ってきた。
「--幸せの上限値は決まっている。
彼女らは、それを使い果たした」
胡散臭い赤渕眼鏡に蝶ネクタイをした男ー
ホテルの支配人名倉は微笑んだ。
名倉がフロントの方に出ると、
声をかけられたー。
「--あの、すみません」
声をかけられて、ふと名倉が視線を
上げると、そこに優しそうな20代そこそこの男が居た
「--いらっしゃいませ」
名倉が営業スマイルで微笑む。
「--実は、今日宿泊するホテルを探しているのですが、
部屋に空きはありますでしょうか?」
男が言う。
「--ございますよ。何名様ですか?」
名倉が尋ねると、
男は2人だと言った。
「-ーかしこまりました。2名様ですね。」
名倉が、宿泊の手配をしていると、
後から女がやってきた。
「-良かった、宿泊できるってさ」
男が言う。
「-本当に?良かった~
ありがとうございます」
女が丁寧にお辞儀をした。
2人は、予約していたホテルの手違いで、
ホテルに宿泊できなくなってしまい、
途方に暮れていたのだという。
「--ありがとうございます」
男が今一度頭を下げる。
名倉は、308語室の鍵を渡し、
宿泊客に対するいつもの説明を行った。
説明を終えると、
男女が談笑しながらエレベーターの方に向かっていく。
「ーー初めてのお泊りデート、わくわくしちゃうな~」
女のその言葉が、名倉の耳に入った。
「----!」
名倉が目を見開いた。
名倉はーー
頷いた。
「そうかそうか。君達も幸せに満ちたカップルか」
名倉は表情を歪める。
ホテル支配人の顔は、表の顔。
裏の顔はー人に憑依する力を持った憑依人。
彼は、
”この世の幸せは平等であるべき”と言う
歪んだ考えの持ち主であり、
幸せそうなカップルや夫婦は”一生分の幸せ”を
その時点で使い果たしている、という考えを持っている。
「--あなた方の人生は、終了させなくてはならない」
名倉が不気味に微笑む。
「--わたしは、奥の部屋で事務処理を
するから、ここは任せた」
名倉が受付のスタッフに言うと、
足早に支配人室へと、入り、扉を閉じた。
名倉は、いつも、この部屋に入り、利用客に憑依する。
利用客の、人生を破滅させるために。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
部屋についたカップルは笑いながら部屋を見回した。
「こんないいホテルに泊まれるなんて、ラッキーだね!」
女子大生の御木本 松香(みきもと まつか)がそう言うと、
彼氏の丹場 良司(たんば りょうじ)も、
「あぁ、良かったよ~」と微笑む。
二人は大学生カップルで、お互いの就職が決まったことを祝い、
卒業旅行も兼ねて、旅行に来ていたのだった。
手違いで、宿泊予定だったホテルに泊まれず、
途方にくれていたところ、このホテルを
見つけたのだったー
ここが、地獄の入り口とも知らずに。
「--お互いに就職も決まったし、
ほっと一安心だね!」
松香が言うと、
良司は「あぁ」と嬉しそうにうなずいた。
「--いい眺め~!」
窓の外の景色を見ながら嬉しそうに言う松香。
その時ー
”悪寒”を感じた。
「--!?」
松香は、今まで感じたことのない悪寒に
少し違和感を感じたが、
せっかくの楽しい旅行、
彼氏の良司を心配させまいと、明るく振る舞おうとした。
しかしー
その悪寒は、さらに強まった。
「---な、なんだろう」
窓の外を見つめながら呟く松香。
「--松香?どうした?」
良司が、窓の外を見つめながら青ざめた表情をしている松香に気付き、
心配そうに声をかけた。
「----え、、あ、だいじょうぶ…何でも…」
そう言いかけた時、
窓に反射してーー
”赤渕眼鏡の男”の姿が写ったー。
その顔は、青ざめ、まるで死人のようだったー。
ホテル支配人、名倉俊之の霊体ー。
死人のように見えるのは当たり前だー。
彼はもう、10年以上前に、
最愛の彼女の手によって殺されているのだからー
「--ひっ!?」
松香が叫んだその瞬間、
凍るような悪寒を感じて、
その意識は途絶えたー。
「---ねぇ」
松香は呟いた。
「ん?」
彼氏の良司が笑いながら返事をすると、
松香は振り返り、ニッコリと微笑んだ。
「--わたしの身体って、イケてない?」
松香が胸を触りながら笑う。
「は…?お、おいおい、いきなりエッチか?
まだ夕方だぞ~?」
良司は苦笑いする。
カップルでのお泊り。
夜になればそういうこともあるかもしれない。
だが、まだ夕方だ。
「--ふふふん…いい身体…
わたしったら、綺麗…」
松香は服をはだけさせて、
自分の胸をわしづかみにしている。
「--ちょっと、気が早いぞ、松香」
良司は、まだ事の重大さに気付いていない。
目の前に居る松香が、
ホテル支配人の名倉に憑依されたことにー
「---うふん・・」
スカートをめくって笑う松香。
そして、松香はニヤッと笑った。
「わたしたちの人生、終了にさせていただきま~す」 と。
「--!?」
良司が違和感を感じた
その時だった。
松香は突然、服を引き千切りながら、
部屋の出口へと向かっていく。
「--わたしの綺麗な身体、
み~んなに見てもらいたくなっちゃった♪」
そう言うと、部屋の扉を蹴り飛ばして外に出る。
「お…おい!」
良司は叫ぶ。
これじゃ痴女だ。
「--みんな~!
わたしの身体、見せちゃうよ~
大サービス!あはははははっ!」
服を乱暴に破きながら
廊下を歩く松香。
ホテルの利用客たちが、騒然としている。
「--ほ~ら!わたしのスカートの中~!」
ロビーにやってきた松香はスカートをバッとめくりあげて、
大笑いしている。
騒然とするロビー
戸惑う客も居れば、
嬉しそうな客も居る。
「---うふふふふふふ♡
うふふふふふふふ♡
やわらか~~~い!」
ロビーのど真ん中で
嬉しそうに両手で胸をわしづかみにする松香。
「お・・・おい!やめろ!やめろってば!」
良司が追いつき、松香を止めようと松香を掴んだ。
「--邪魔よ!」
松香は良司に強烈なビンタを喰らわせると叫んだ。
「みなさ~ん!わたしはヘンタイ女です~ふふふ!
ほら見て~!」
そう言うと、スカートを脱いで、
そのスカートのニオイを嗅ぎまわした。
「なんだよあの女…やばくね?」
「可愛そうな子ね…」
「警察呼んだ方が良くね?」
利用客たちが騒然とする
松香は、その状態のまま、
両手を広げて叫んだ。
「--ほら見て~!
わたしの生まれたままの姿~~~!えへへ~~」
唖然とする周囲。
この子はおかしくなってしまったのだろうと、
周囲が同情するー。
”ヤベェやつ”
そんなタイトルで、利用客の一人が動画をツイッターに投稿した。
彼女の凶行は、一瞬にして世界に広がった。
「---おい!松香!松香!」
良司が叫ぶと、
松香は良司を押し倒した。
そして、目に涙を浮かべながら叫ぶ
「ハ~イ!リョージィ!公開エッチしよ~」
乱れきった松香が笑いながら言うー
その時ー
ホテルに警察が駆け込んできた。
警察を見た松香は叫ぶ。
「わたし、御木本松香!
変態女で~~~す!」
おかしなポーズをとりながら、
松香は警察に取り押さえられた。
「わたしたちの人生、終了でございま~~す!
あはははっあははははははっ!」
松香はそのまま連行され、
良司もそのまま参考人として連れて行かれるのだった。
・・・
支配人室で名倉は目を覚ますー。
「--あなたたちの人生、終了でございます」
そう、名倉にとってはいつものことだった。
昼下がりのコーヒーブレイクと、同じようなモノだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---」
翌日。
ホテルに男女がやってきた。
「--予約していた、深見(ふかみ)ですが」
男が言う。
「--深見様ですね。お待ちしておりました」
名倉が営業スマイルで鍵を渡す。
その時だったー
「~~~もう疲れたぁ~」
後から入ってきた女性を見て、名倉は表情を歪めた。
「---文恵…?」
名倉は呟く。
深見と名乗る男の後から入ってきたのは、
10年前に、名倉を殺したー
最愛の彼女ーー蛭間 文恵だった。
「---今日もエッチ三昧ね~ふふっ」
文恵が深見に笑いかけるー。
名倉は深見という男の顔を見たー
こいつはーーー
あの時の、文恵の浮気相手ー。
「---」
鍵を受け取り、深見と文恵は
そのまま部屋へと向かった。
名倉は知らないー
文恵はあれからずっと、憑依され続けて、
毎日のように、深見という男と
エッチ三昧の日々を送っていた。
あれから10年経った今も、
文恵は支配され続けている。
既に30代中盤だが、
文恵は今でも美貌を保っていた。
「---んんんんんん」
名倉は奇声をあげながら支配人室へと入って行く。
「ごめんね、名倉さん!
わたし、ずっとこの人とあなたで二股かけてたの!
浮気ってやつ?うふふふふふふっ!
でもねぇ、ようやく私、決めたの!
この人と一緒になるって!」
あの日の豹変した文恵を思い出す。
「--お前らの人生、粉々に砕いて、終了させてやる」
名倉は憎悪の眼差しで、壁を睨みつけた。
そしてー
霊体となって、二人の向かった部屋へと向かう。
305号室ー
「--その女も、そろそろ、衰えてきたよな?
どうだ?また、別の女に憑依しねぇか?」
深見が言うと、
文恵は笑った。
「いいじゃない~もう少し!
ま、確かにババアになってきたけど~!
こういう大胆なミニスカートもそろそろきついよね~」
文恵が太ももをベタベタ触りながら笑った。
「---」
名倉の霊体が部屋に入ってきた。
当然、二人は気づかない。
「--地獄を見せてやる…文恵…
私を裏切った罰だ」
名倉は、いつものように、憑依したー
元・最愛の女性にー
「うっ!?」
文恵がビクンとなる。
「どうした?」
深見が笑いながら言うー。
文恵は、催眠術にかかったかのように、うつろな目で
その場に立ち尽くしていたー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ホテルノシハイニンの最終章です!
過去作品を読んでいないと分からない部分もある作品ですが、
お許しください~!
あと2話、最後までお楽しみ頂けると嬉しいデス!
コメント
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FINALってそう言う事か・・・
まさか名倉にそんな経緯があったとは。
まさにラスボス対決?なだけに流石に今回はすんなり行かないような気もするがどうなんだろ。
改めて過去作品もチェックしてきます。
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> FINALってそう言う事か・・・
> まさか名倉にそんな経緯があったとは。
>
> まさにラスボス対決?なだけに流石に今回はすんなり行かないような気もするがどうなんだろ。
> 改めて過去作品もチェックしてきます。
ありがとうございます~!
初期からの作品なので、そろそろきっちり完結させないと…!
ということでFINALです!