目の前で通り魔の男に
一緒にいた姉の命を奪われた妹。
彼女は何とかその男を捕まえようと追いかけたものの、
今度はその男と入れ替わってしまい、
”自分の身体”をも奪われてしまうー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「純恋(すみれ)も、もう少し、
グイグイ行ってもいいと思うけどなぁ~
高坂(こうさか)くんって
前に文化祭の時に一緒にいた子でしょ?
たぶん、あの子も自分からはなかなか積極的に
なれない感じだと思うしー」
帰り道ー…
急に雨が降り出したために
高校帰りの妹・純恋のために
駅まで傘を持ってきてくれた大学生の姉、
柏木 美咲(かしわぎ みさき)がそう言葉を口にするー。
「ーう~ん…それはーそうかもだけどー…」
眼鏡をかけた大人しくて真面目そうな雰囲気の純恋が
そう言葉を口にすると、
美咲は苦笑いしながら、
「ほら!来月、ちょうどバレンタインデーもあるし、
チャンスじゃない?」と、笑うー。
ポニーテールの姉・美咲は
妹の純恋とは違い、明るそうな雰囲気の溢れる
お姉さんオーラが強いそんな感じの子ー。
幼馴染の彼氏・啓太(けいた)と共に
毎日楽しそうに大学に通っているー。
そんな姉・美咲は純恋にとって
憧れの存在でもあり、
高校生になった今でも大の仲良しだったー。
駅から離れて、雨が降る中、
ゆっくりと道を歩く二人ー。
そんな中でも、二人は楽しそうに会話を続けるー。
「ーわたしも、お姉ちゃんみたいになれたらなぁ…
お姉ちゃん、綺麗だし、優しいし、何でもできるしー」
雨の中、傘を手に歩きながらそう呟く純恋ー。
すると、美咲は笑いながら
「純恋にだって、わたしにないいい部分、たくさんあるでしょ?」と、
そう言葉を口にするー。
「え~?ホントにそう思ってる~?」
純恋は笑いながらそう言葉を口にすると、
姉・美咲は立ち止まって純恋の方を見つめたー。
「ーもちろんー。
本当にそう思ってるに決まってるでしょ?
純恋はわたしよりももっとー」
美咲がそこまで言いかけると、
突然「うっー」と、美咲が苦しそうな声を上げたー。
「ーーえっ…お姉ちゃーー」
純恋がそう言いかけると、
いつの間にか、二人の近くにやってきていた
”通りすがり”のレインコートの男が美咲にナイフを突き刺しているのが見えたー
「お、お姉ちゃん!」
目の前で起きた出来事の深刻さに気付いて
すぐにそう叫ぶ純恋ー。
「ーー…ぁ…」
刺された美咲は、自分でも何が起きたのか理解できていない様子で、
自分の身体から流れている血に気付くと、
「う…うぅぅぅぅ」と、声を上げながら
レインコートの男にしがみついたー。
男は無言で、美咲を振り払おうとするー。
「お姉ちゃん!」
純恋が声を上げるー。
姉・美咲は刺されたことに気付いて、
咄嗟にレインコートの男にしがみついていたー。
それはーー
妹である純恋を守るための咄嗟の行動ー。
自分が男にしがみつくことで、
男が純恋の方に向かうまでの時間を稼ぐことができるー。
そう思っての行動ー。
が、男は美咲にしがみつかれると、邪魔そうに美咲の腹部に
突き刺したナイフを抜いて、
再びそれを美咲に突き刺したー。
「ぅ……」
恐ろしいうめき声が聞こえて、純恋は悲鳴を上げるー。
美咲がその場に崩れ落ちて、
血のついた傘がその場に転がり落ちるー。
「ーーー」
男は、純恋の方を見て、ニヤリと笑ったー。
狂っているー
純恋はそう思ったー。
そして、男が純恋の方に向かおうとするー。
しかしーー
「ーー!」
レインコートの男は、足元に倒れていた姉・美咲が
自分の足を掴んでいることに気付くー。
「うっ…うーー
うああああああああああああああ…!」
美咲が大声を上げるー。
力を振り絞って、大声を出したー。
それは、苦しい中で、言葉も発することができない中ー、
それでも、周囲に異変を知らせようと発した大声ー。
雨にかき消されても、それでも誰かに届けばー、
そう思って発したうなり声ー。
男は少し驚いたような表情を浮かべながら
倒れている美咲にまたナイフを刺すと、
美咲は、信じられないことにそのナイフを掴んで
自分の奥深くに差し込み、血を吐き出したー。
全ては妹の純恋を守るための行動ー。
”わたしの身体からナイフが抜けないようにしちゃえばー
純恋は刺されずに済むーー”
そう思っての判断ー
「ーお、お姉ちゃん!!」
純恋が泣き叫ぶー。
「ーーっー」
男は雨に濡れながら、
自分が命の危険に晒されながらも
それでも意地でも妹の命を守ろうとする
姉・美咲に気圧されて
思わず舌打ちするー。
そして、そのまま足早にその場から立ち去ると、
純恋は泣きながら美咲に駆け寄ったー。
大雨に濡れながら美咲は
少しだけ微笑むと、
「ーー純恋が無事でよかったーー」
と、それだけ言葉を口にして、
ガクッと倒れ込むー。
「お姉ちゃんー…お姉ちゃんー」
泣きながらそう叫ぶもー、
大雨でも流れ切らないほどの血が美咲から
流れているのが見えるー。
「ど、どうかしましーー…う、うわっ!?」
さっきの美咲の声で異変に気付いた二人組の
サラリーマンの男がやってくるー。
純恋は泣きながら
「男に刺されましたー」と、そう告げると、
「救急車を呼んでくださいー」と、そう叫んでから、
そのままレインコートの男が逃げた方に向かって走り出したー
「許さないーー許さないー…絶対に許さないー」
純恋は走ったー。
普段は見た目通り大人しくて、控えめな純恋ー。
でも、純恋は大事な人が傷つけられることを何よりも嫌うー。
前にも学校で、友達の美彩(みさ)がいじめられていた際には
相手の生徒に向かって、怒りをぶつけたこともあったー。
「ーー許さないーー絶対にー許さないー」
純恋はそう言葉を口にしながら、必死に走ったー。
するとー
近くの公園の噴水の影に、レインコートの男を発見したー。
「ーーよくもお姉ちゃんをーーー!」
純恋は目に涙を溢れさせながらそう叫ぶー。
その男を追い、歩道橋の階段を駆け上がるー。
学校帰りの制服は既にずぶ濡れー。
でも、そんなことも忘れるぐらいに怒りをあらわにしながら
純恋は男に向かって行くー。
男は、慌てて逃げようとするも、
純恋に腕を掴まれるー。
ナイフは”1本”しか持っていなかったのか、
純恋に対してそういったものを取り出す様子はなかったー。
「どうしてー…どうしてあんな酷いことー
お姉ちゃんが何をしたって言うのー!?」
怒りの形相で純恋がそう叫ぶー。
しかし、レインコートの男は笑みを浮かべながら言った
「別にー」
とー。
「ー誰でも、良かったー
別に、お前でもーー
その辺にいるおっさんでもー」
レインコートの男は、
邪悪な笑みを浮かべたー。
彼は”通り魔”ー。
純恋の姉・美咲を襲ったのに理由などないー。
”そこに美咲がいたから”
ただ、それだけー。
彼は、最低最悪の犯罪者だったー。
「ーー許さない!絶対に許さないー!」
純恋がそう叫ぶも、
華奢な純恋の腕では、男を逃がさないようにすることなどできないー。
レインコートの男は純恋を振り払うと、
そのまま逃げ始めるー。
それでも純恋は男の腕に再び飛びついたー。
「ーーー!」
がー
ちょうど、レインコートの男は階段を降りようとしているタイミングだったー
「ーーうぉっ!?」
男がバランスを崩して、声をあげるー。
それに引っ張られる形で、純恋もバランスを崩すー。
ちょうど大雨が降っていることもあって、
階段が滑りやすい状況になっていたこともありー、
二人はそのまま勢いよく階段を転がり落ちてしまったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー!」
”誰かに蹴られて”
目を覚ましたー
大雨の中、首を傾げながら
視界を上に上げると、
そこにはー
”自分”がいたー
「え……」
目を覚ました純恋は、
目の前に何故か”ずぶ濡れのわたし”が
いることに気付いて、困惑の表情を浮かべるー。
”ずぶ濡れのわたし”が足でわたしを蹴っているー…
そんな状態に、純恋は心底困惑していると、
「ーーいつまで寝てるんだよ?おい」と、
目の前にいる”もう一人の純恋”がそう言葉を口にしたー。
「ーえっ…な、なんで…わたしがー…?」
ずぶ濡れになりながら、そう言葉を口にすると同時に、
「えっー…!?」と、純恋は混乱したような表情を浮かべるー。
それもそのはずー。
口から発されたのは、これまで長年付き合って来た
”自分の声”ではなく、
”聞き慣れない男の声”だったからだー。
「こ、これはーーど…どういうー…?」
目の前に自分がいるー
自分の口から”自分ではない声”が出ているー。
そのような状況に、困惑せずにはいられないー。
すると、足で純恋を蹴り起こしたもう一人の
純恋が、邪悪な笑みを浮かべながら言ったー。
「ークククー
面白いことになったぜー?
お前、自分の身体を見て見ろよー」
そう言葉を口にする”もう一人の純恋”ー
純恋は混乱しながら、自分の身体を見下ろすとー
そこにはー
”レインコートを着た男の身体”が見えたー。
「ーえっ…!?えっー!?」
思わず、自分の身体を触ってしまう純恋ー。
その身体は、どう考えても自分のものではない
”男”の身体だったー…
「ーこ、これってー…えっ…!?ど、どうなってー…?」
泣きそうになりながら、純恋は”もう一人の純恋”の方を見つめるー。
「ククククー
信じられないだろー?
俺もだ」
そう言いながら、もう一人の純恋は
「でも、現実なんだよなァ」と、そう言葉を口にすると
心底嬉しそうに自分の胸を揉み始めたー。
自分自身が胸を揉む姿を間近で見せ付けられる純恋ー。
「ちょ…ちょっとー…」
純恋がさらに戸惑っていると、
もう一人の純恋ー
ーーー”純恋になった男”が言ったー。
「ー俺とお前ー
お互いの身体が階段から落ちた時に入れ替わったんだよー」
邪悪な笑みを浮かべながら
そう言い放つ純恋になった男ー
「ーーう…嘘ー…?そ、そんなこと…あるわけがー…」
レインコートの男になってしまった純恋がそう言うと、
制服姿のままずぶ濡れになった純恋(レインコートの男)は
嬉しそうに言い放ったー。
「ーそう。あるわけがねぇ。
でも、現実に起きてるー」
男は、純恋の身体でそう言い放つとー、
「ー生徒手帳で名前は確認させてもらったぜー」と、
ニヤニヤしながら濡れた生徒手帳を手にすると、
「今日から俺は柏木 純恋ー。
お姉ちゃんを刺し殺された可哀想な女子高生さー」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーそ…そんなー…ふ、ふざけないでー…!」
男の身体で目に涙を浮かべながら言うと、
純恋(レインコートの男)は、”元の自分の身体”の手を
踏みつけながらニヤリと笑ったー
「ーお前は今日から犯罪者の日高 譲司(ひだか じょうじ)だー。
ーー自慢じゃないが、俺の身体はそこそこ運動神経がいいんだぜー?」
純恋(譲司)は、笑みを浮かべながらそう言うと、
譲司(純恋)は「ーーお、お姉ちゃんは死んでない!きっと、きっと助かるから!」と、
そう叫ぶー。
その上で「ーわたしの身体を返して!」と、
そうも叫ぶと、
純恋(譲司)は笑いながら「ーもう一度入れ替わるなんて無理だろ?
入れ替わりなんてこと自体、奇跡みたいなもんなんだからー」と、
自慢気に言葉を口にするー。
そして、そこまで言葉を口にすると、
「さ~て、さっき刺したお前の姉が死んだか、見に行くかー。ふふっ」と、
心底嬉しそうに言葉を口にしたー。
「ーうっ…うぁぁぁ…!」
”わたしの身体”で、お姉ちゃんが死んだかもしれない状況を
喜ぶような振る舞いをされて、譲司(純恋)は怒りを露わにして、
”元自分”の足を掴むー。
しかしー
「ー邪魔すんじゃねぇよ!」
純恋(譲司)に思いきり顔を蹴り飛ばされて、
譲司(純恋)は痛みに転がり回るー。
「ー今のお前は犯罪者だー
今、俺が”きゃあああああ~!”とでも叫べば
どうなるか、分かるだろ?」
純恋(譲司)は邪悪な笑みを浮かべながら
脅すような口調でそう呟くー。
それを聞いた譲司(純恋)は、
”自分の置かれた立場”を理解して震えるー。
「クククー
でもまぁ、この場は見逃してやるー」
純恋(譲司)はそう言い放つと立ち上がるー。
「ここで助けを呼んで、お前を犯罪者に仕立て上げるのは簡単なことだー
けどー、ここでお前を見逃した方がー
ーーもっともっと面白くなるー」
純恋(譲司)はそう言うと、笑いながら立ち去っていくー。
雨の中、倒れ込んだままの譲司(純恋)は
悲しそうにその場で涙を流すー。
姉を奪われてー、
自分の身体すら奪われたー。
どん底に叩き落とされた譲司(純恋)は
しばらくその場から身動きを取ることもできなかったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
あまりにもダークなスタートの入れ替わりモノデス~!!
ここからのハッピーエンド…は、
想像できないぐらいに最悪のスタートですネ~…!!
どうなっていくのかは、明日以降のお楽しみデス~!!

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