<憑依>中途半端な憑依人たち③~残る者~(完)

②にもどる!

出世のために”憑依人”を利用しようと
”報酬”を用意して10人の憑依人を招集した男ー。

しかし、どの憑依人も中途半端な憑依能力しか
持っておらずー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーえへへへへ♡ えへへへへへへ♡」
憑依された美桜が、嬉しそうに自分の胸を揉みながら
ニヤニヤと笑みを浮かべているー。

そんな姿を、
冴えないおじさん風の憑依人・山田と、
サングラスの憑依人・瀬島、
そして博士風の憑依人・栄田が
困惑した表情で見つめるー。

「ーーはぁ~…やっぱ女の身体って気もちいいなぁ、へへー」
フクロウを頭に乗せた憑依人・阿波野に憑依された美桜は、
頭にフクロウを乗せたまま、そう言葉を口にしていたー。

「ーーー…」
憑依人を招集した銀狼幹部候補の男・豪人は
その様子を見つめると、
美桜の頭の上に乗っているフクロウを取り上げるー。

するとーー

「ーーはっ…!? えっ…」
美桜が正気を取り戻したー。

…と言っても、正確に言えば
先程美桜に憑依した”元の身体は壊れてしまう憑依人”瑠香が、
憑依している状態の美桜ではあるけれどー…

「ーーフクロウを頭に乗せていないと憑依できないーか。
 使えないなー」
豪人は苛立ちを見せながら、フクロウを倒れている憑依人・阿波野の頭に戻すと、
阿波野は意識を取り戻したー。

「ーーーぁ…いいところだったのにー」
自分の身体に戻ってしまったと気付いた阿波野は、
少し不満そうにすると、
「ーフクロウが急に飛び立ったり、頭から落ちたら憑依も解除されてしまうってことだな?」と
豪人がそう確認するー。

フクロウ憑依人・阿波野は「ま、まぁーそういうことだな」と頷くと、
豪人は首を横に振りながら
残りの三人を見つめたー。

残りは、眼鏡をかけた男、人形のような雰囲気の美少女、
そしてフルフェイスヘルメットの男だー。

「ーーどうしますの?
 わたしは別にどちらでもいいですわー」
人形のような雰囲気の美少女がそう言葉を口にすると、
眼鏡をかけた憑依人が「なら、僕の出番だね」と、
そう言葉を口にしながら前に出るー。

「ー僕は鈴木(すずき)ー。まぁ、よくある名前だね」
眼鏡の男・鈴木はそう言葉を口にすると、
笑みを浮かべながら、”憑依される”美桜と、豪人の方を見つめるー。

「ちょ、ちょっとー…また憑依されろって言うのー?」
美桜に憑依している女子高生風の憑依人・瑠香がそう言葉を口にするー。

もっともー、”瑠香”も乗っ取られた身体であり、
元々の”彼”あるいは”彼女”がどんな人間で、どんな名前なのかは
もう本人しか知ることはできない。

「ーー仕方がないだろうー。お前が使ってた身体はあのザマだー」
部屋の端に部下によってどかされた”瑠香”の遺体を見つめながら
豪人がそう言うと、
美桜は不満そうに「ーーチッ」と、だけ言葉を口にしたものの、
それ以上は何も言わなかったー。

「ーじゃ、そろそろ僕の憑依能力をお見せしよう」
眼鏡の憑依人・鈴木はそう言葉を口にしてから、
憑依能力を発動するー。

その場で姿を消した眼鏡の憑依人・鈴木。

身体がその場に残っている様子はないし、
霊体がそのまま見えてしまっている様子もないー。
今のところは完璧だ。

銀狼幹部候補の男・豪人はそんな様子を見つめながら
”ようやく、コイツはアタリかー?”と、
心の中でそう呟くー。

残る2人の憑依人ー
人形のような美少女風の女と、
フルフェイスヘルメットの男のほうを見つめると、
豪人は”残りの二人も得体が知れないしなー”と、内心で
少しだけ戸惑いの言葉を口にするー。

「ーーーぁ…」
美桜がビクッと震えて、眼鏡の憑依人・鈴木に憑依されると、
少し周囲を見渡した後に
「これで、憑依 成功 で す」と、そう言葉を口にしたー。

が、その発音が変だー。

「ーーー?」
豪人は「話し方が変だぞ?何か問題でも」と、
すかさずすぐにそう確認するー。

しかし、眼鏡の憑依人・鈴木に憑依された美桜は
視線を不自然に泳がせるだけで、
まともな反応を見せないー。

「ーーーおいっ!」
豪人が戸惑いながら聞くと、
「これが僕の 憑依だー すばらしぃだろぅ?」と、
変な発音で美桜がそう言葉を口にしたー。

すると、サングラスの憑依人・瀬島が、
「コイツ、目が見えてねぇし、耳も聞こえてねぇな」と、
豪人にそう伝えたー。

「ーー!」
表情を歪める豪人ー。

が、眼鏡の憑依人・鈴木は
豪人から”正式に雇われる”ためだろうかー、
美桜の身体で見えているフリ、聞こえているフリをするために、
「僕の憑依の素晴らしさ、 満足 した だろぉ???」と、
少し怪しい発音で言葉を口にしているー。

耳が聞こえないために、自分の発音が合っているかどうか、
上手く調整できていないのだー。

「ーーもういい、出ろ」
豪人がそう言うも、眼鏡の憑依人・鈴木に憑依されている美桜には
言葉が届かないー。

「くそっー」
部下に指示をして、紙を手に
”その身体から出ろ”と、書いてそれを見せるも、
ジャージ姿のイケメン憑依人・大塚が
「紙に書いても無駄だろ?目も見えないんだからー」と、
そう言葉を口にすると、
豪人は不満そうに、美桜を押し飛ばして、
「その身体から出ろ!」と、そう合図を送ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー僕は、憑依すると
 憑依してる間だけ、視力と聴力を失うんだー。
 
 …できれば隠して正式契約を結びたかったけどー」

眼鏡の憑依人・鈴木がそう言うと、
豪人は怒りの形相で鈴木を睨みつけたー

そして、残りの二人の憑依人を見つめると、
人形のような美少女がフルフェイスヘルメットの男の方を見つめるー。

が、フルフェイスヘルメットの男が微動だにしなかったために
「ーじゃあ、わたしが能力を披露しますわ」と、
そう言葉を口にするー。

「ーわたしは天上院(てんじょういん)ー
 以後、お見知りおきをー」
人形のような美少女ー…お嬢様風の憑依人・天上院が
そう言葉を口にすると、
豪人は少しだけ笑みを浮かべながら言ったー。

「ところで”その身体”はお前のものかー?
 さっきの女は違ったようだがー」
とー。

女子高生風の憑依人・瑠香ーー
現在は美桜に憑依している瑠香は”瑠香”も、元々の身体ではなかったー。
雰囲気的に本体は”男”だったのかもしれないー。

そう思いつつ、豪人が天上院の方を見ると、
「ーふふーこの身体は正真正銘ーわたしのものですわー。
 こんなに美しい身体を手放すと思って?」と、そう言葉を口にするー。

「ーークククーどんなルートで”憑依能力”を手に入れたのかは知らんがー
 ”イカれたお嬢様”めー」
豪人がそう言うと、
「では、早速ー」と、お嬢様風の憑依人・天上院が
美桜の方を見て憑依しようとし始めたー。

がーーー
その時だったー。

♪~~~
お嬢様風の憑依人・天上院の持つスマホが突然鳴り響くー。

「あら」
そう言葉を口にすると「ちょっと待って下さるー?」と、
そう続けてからスマホを手にしたー。

「ーあらお父様ー。ええーええー
 まぁ、そうですのー?
 分かりましたわー」
お嬢様風の憑依人・天上院はそう言葉を口にすると
スマホをしまってから、豪人の方を見つめるー。

「ーー申し訳ありませんー
 帰らないといけない急用が出来てしまいましたわー

 では皆さんーごきげんようー」

人形のような美少女ーー
そんな風貌の憑依人・天上院は
”能力”自体はごく普通の憑依であるものの、
あまりにも気まぐれ、
そしてー、父親から呼び出されることも多く、
”別の意味でまともに使えない”憑依人だったー。

「ーーーーー」
残された豪人は、困惑した表情を浮かべながら
残り一人のフルフェイスヘルメットの男を見つめるー。

「ーーー…あと1回憑依されれば、わたしと契約してくれるんでしょ?」
”美桜”に憑依した瑠香が不満そうに言うと、
豪人は険しい表情を浮かべるー。

”憑依するたび”に、元の身体が壮絶な最期を遂げてしまう瑠香は、
正直使いにくいー。
ただー
それでも、使い道はあるかもしれないー。

豪人はそう思いつつ、
他の8人の憑依人たちを見つめるー。

憑依すると、その相手の顔が自分自身の顔になってしまう
冴えないおじさん風の憑依人・山田ー。

10秒しか憑依することができない
バンダナの憑依人・近藤ー。

憑依しても右手しか支配することができない
サングラスの憑依人・瀬島ー。

憑依するまでに数時間もの呪文のようなものを
相手の目の前で唱えなくてはいけない
博士風の憑依人・栄田。

憑依する際に自分の元々使っていた身体は
壮絶に苦しんで死に至る憑依人・瑠香ー。
…瑠香というのも、前に使っていた女子高生風の女の身体の名前で
本当の名前は分からない。

憑依した相手の背後に、2倍サイズで霊体が浮かび上がってしまう
ジャージのイケメン・大塚ー。
霊体があんなにハッキリ見えてしまうと、少し使いどころが限られるー。

憑依対象の相手の頭にフクロウを乗せていないと
憑依が解除されてしまうフクロウ男の阿波野ー。
何らかの衝撃でフクロウが落下しただけで憑依が解除されてしまうため、
使いどころが難しいー。

憑依している間は視力も聴力も失ってしまう
眼鏡の憑依人・鈴木ー。

そして、憑依能力は恐らく確かであるものの
本人自体が気まぐれで、しかも”お父様”から呼び出しがあると
帰ってしまうお嬢様・天上院。

”ーチッ”
豪人が不快そうに表情を歪めると、
ジャージのイケメン・大塚が言ったー。

「だから言っただろ?
 銀狼なんてよく分からない組織に
 金で釣られてやってくる憑依人なんて、
 俺も含めて”半端者”ばかりだってー」

とー。

「ーーまともな能力を持つ憑依人は
 わざわざあんたに雇われたりしなくても
 自分でいくらでも金を稼げるーーー
 
 ーーぁ…?」

会話中ー
突然、ジャージ姿のイケメン・大塚が表情を歪めたー。

その背後にはー
先程帰ったはずの人形のような美少女ー
お嬢様憑依人の天上院の姿があったー。

「ーーえ…」
彼女はナイフを握りしめて、ジャージ姿のイケメン・大塚を刺しているー。

「ーーーは…???」
大塚は驚いた表情を浮かべながらその場に倒れ込むと、
銀狼幹部候補の男・豪人も、
バンダナの憑依人・近藤も、サングラスの憑依人・瀬島も
驚いた表情を見せるー。

「ーーーー”俺”の憑依能力も披露してやろうと思ってよー」
人形のような美少女・天上院がニヤニヤしながら笑うー。

「ーーーお、お前ー、”父親”から呼び出されて帰ったはずじゃー!?」
豪人がそう言葉を口にしながら、
ハッとして、フルフェイスヘルメットの男の方を見つめるー。

残る最後の一人の憑依人・フルフェイスヘルメットの男は
既に”憑依能力”を発動して抜け殻になっていたー。

「ーそ、そのお嬢様に憑依したのかー!?」
豪人がそう言葉を口にすると、
「そうさー」と、憑依されたお嬢様・天上院が笑いながら
冴えないおじさん風の憑依人・山田と、フクロウを頭に乗せている憑依人・阿波野を
ナイフで次々と始末していくー。

どよめき、逃げ出す憑依人たちー。
豪人が用意した”美桜”の身体に憑依した憑依人・女子高生風の瑠香も
慌てて部屋の外に美桜の身体のまま飛び出すー。

「あっ!おいっ!」
豪人がそう叫ぶと、
「ーー俺はお前を殺すためにここに来たんだー」と、
フルフェイスヘルメットの男に憑依されたお嬢様・天上院が笑うー。

「ーーま、俺の能力も欠点持ちだー」
そう言葉を口にすると、憑依されたお嬢様・天上院は
”フルフェイスヘルメットの男”のヘルメットを引き剥がしたー

その下の顔は腐っていて、口も変形ー
だから、彼は一度も喋らなかったー、いや、喋れなかったー。

「ー俺はなー乗っ取った相手の身体を腐らせちまう欠点があってなー
 このお嬢様の身体も、3日もすりゃ、顔はボロボロー」
憑依されたお嬢様・天上院がそう言葉を口にしながら笑うと、
銀狼幹部候補の男・豪人は震えながら
「だ、誰か!こいつを始末しろ!」と、そう叫ぶー。

が、憑依人のうち3人は死亡ー、
残り6人は既に逃亡していて、この場にはいなかったー。

「ーーー憑依人の身元も大して調べず、10人を招集して
 その前に平気で姿を晒すー
 そういう詰めの甘さが、あんたが万年幹部候補で
 出世できねぇ理由だ」

憑依されたお嬢様・天上院はそう言葉を口にすると、
邪悪な笑みを浮かべながら、
銀狼幹部候補の男・豪人の喉元をナイフで引き裂いたー。

「がっー」
その場に倒れ込む豪人ー。

「ーークククー
 ま、中途半端な憑依人どもの茶番を見るのは楽しかったぜー
 じゃあなー」

敵対組織から依頼を受けて、豪人を始末しに来た
フルフェイスヘルメットの男は、
そのままお嬢様・天上院の身体を奪って、どこかへと姿を消したのだったー

おわり

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コメント

最終回でした~!★

招集された10人とも、
完璧ではない能力の持ち主でしたネ~!!

お読み下さり、ありがとうございました★!!

「中途半端な憑依人たち」目次

作品一覧

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