<皮>逃れられない呪縛③~執着~(完)

②にもどる!

異様なまでに心配性で、束縛してくる彼氏と別れて
新たな生活を始めたはずの彼女ー。

しかし、隣人の女子大生の様子が
何やらおかしいことに彼女自身も気付き始めてー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーな…何なのこのカメラー…?!」

帰宅後ー、
自分の部屋で小型のカメラを見つけた彩香は
震えながらそのカメラを見つめていたー。

こんなもの、最初にこの部屋を見せて貰った時には
なかったはずー。

元カレである信二のことを思い出して
震えが止まらなくなってしまう彩香ー。

恐怖の表情を浮かべながらも、
彩香は”こんなことするのなんてー”と、
頭の中で、彩香自身の部屋に
小型カメラを設置するチャンスがあった人々の顔を
思い浮かべるー。

この部屋に入ったのはー、
引っ越しの際に手伝ってくれた彩香の両親と、
後はこのアパートの管理人さんー、

そしてーーー

”野菜を持ってきてくれた隣人の萌奈”ーーーー

「ーー」
彩香は意を決して小型カメラを握りしめたまま立ち上がると、
自分の部屋を飛び出して、隣人の萌奈の部屋のインターホンを鳴らしたー。

アパートの管理人ーーの、可能性も0パーセントではなかったものの
今まで話をした言動や、
アパートの管理人にそんなことをするメリットは0に等しい状態で
あることから、”隣の部屋の村瀬さん”が、カメラを仕掛けた犯人だと
ほぼ、確信していたー。

「どうしましたか~?」
玄関の扉を開けて、顔を出した萌奈は
笑みを浮かべながらそう言い放ったー。

まるで、”彩香が来ること”を理解していたかのような
タイミングの良さだー。

「ーーーこれ…!!!どういうことなんですかー?!」
彩香が怒りの形相でカメラを向けると、
萌奈はニヤニヤと笑いながら、
「全部、皆川さんを守るためですからー」と、
悪びれる様子もなく、あっさりと自分が仕掛けたカメラであると
認めるような発言をした。

「ど、どういうつもりなの!?」
彩香がそう言うと、萌奈は少し笑みを浮かべてからー、
突然、彩香の腕を引っ張って自分の部屋の中に
引き入れたー。

「ーー!?!?!?」
部屋の中に引きずり込まれて、怯えた表情を浮かべる彩香ー。

「ーーーわたしは、皆川さんのことを
 ただ、守りたいだけなんですー」
萌奈はそう言うと、不気味な笑みを浮かべるー。

彩香は、ふと、萌奈の部屋の奥に
”彩香の写真”が大量に飾られていることに気付くー。

「ーな…なにこれ…!?」
彩香は驚いて、思わず変な声を出してしまうー。

隣人・萌奈の部屋に飾られていた彩香の写真ー。
しかも、その写真の中に貼られていた彩香の写真はー、
”萌奈と出会う前の写真”がほとんどだったー。

元カレの信二と一緒に撮影した写真ー
ここに引っ越してくる前の写真ー

萌奈が撮影できるはずのない写真ー
持っているはずのない写真がそこに飾られているー。

「ーーー彩香は女神だからー、守らなくちゃー」
萌奈はそう言うと、呆然としている彩香の横にやってきて
彩香の写真をペロリと舐め始めるー。

そして、彩香が見ているのもお構いなしに写真に
思いっきりキスをすると、へらへらと笑みを浮かべながら
「ーーーーー”彩香”のことは守るよー。必ずー」
と、萌奈はそう言い放ったー。

いつの間にか下の名前で呼ばれていることに
彩香は困惑しながら
「あ…あなたはー………だ、だれー…?」と、呟くー。

信二と彩香の写真を持っているなんて、
どう考えてもおかしいー。

考えられるとすればーー

「あ、あなたー、し、信二のこと、知ってるのー!?
 信二に言われて、こんなことしてるのー?」

彩香は、そう叫ぶー。

萌奈は信二の女友達かー、
それともー…

とにかく、何か”繋がり”があるはずだと、
彩香はそう考えて声を上げるー。

「ーそんなこと、どうだっていいじゃないかー
 彩香ー」

萌奈は、突然、喋り方まで変えて
彩香に近付いて来るー。

「ーこれは、全部、彩香のためなんだー」
萌奈は、笑みを浮かべるー。

見た目も、性別も、何もかも違うー
でも、目の前に信二がいるような、そんな気持ちになって彩香は震えるー。

「ーーー”俺”が彩香を守るよー
 絶対にー」

萌奈はそう言いながら、笑みを浮かべると
彩香は「ひっ…!近寄らないで!」と、萌奈を突き飛ばして
そのまま部屋の外に逃げ出そうとするー。

「ーっ…」
後頭部を戸棚に打ち付けた萌奈は
「ーー彩香ぁ!」と、声を上げると、
そのまま彩香の後を追ってくるー。

”何なのー…!?あの子は一体、何なのー!?
彩香は逃げながら、そんなことを考えるー。

まるで”信二”みたいだー。
でも、信二であるはずがないー。

仮に信二が女装したとしても、
ああはならないー。

それに学生証も前に見せてくれたことがあったー。

信二が、あんなに”見た目”が可愛い雰囲気になれるとは思えないし、
声も、体格も、絶対に信二ではないー。

それなのにー

「ーーっ」
彩香を追いかけていた萌奈が後頭部のあたりを触りながら
表情を歪めるー。

そしてーー

ぺりっー…

イヤな音がして、”萌奈”の皮が、ペロリと剥けるようにしてー、
中から、”信二”の顔が飛び出したー。

先程、彩香に突き飛ばされて後頭部をぶつけた際に
萌奈の皮が脱げかかっていて、
全力疾走したことで、萌奈の皮が走っている最中に取れてしまったのだー。

「…っっ…!」
萌奈の皮が突然脱げたことで、その場で躓くようにして倒れ込んでしまう
萌奈の首から下を着た状態のままの信二ー

「ーーー!!」
萌奈から逃げていた彩香もその様子に気付きー、
”え…?なにー?”と、状況をよく把握できないままー
恐る恐る、倒れ込んだ萌奈の様子を確認するー。

するとー、首から下は”萌奈”を着たままの状態の
元カレ…信二が立ち上がって笑みを浮かべたー。

「ー彩香ぁ……全部、お前を守るためなんだー」
と、そう言葉を口にして立ち上がりながらー…。

「し、し、信二ー…?」
震える彩香ー。

がー、”首から下”は、萌奈の姿のままー

「ーな…何なの、それー…
 ど、どうなっているのー…?

 ーーむ、村瀬さんはー!?」

いつの間にか隣人の”萌奈”が、
信二とすり替わっていたというのだろうかー。

「ーーー」
彩香は、”初日に軽く挨拶をして時の萌奈”と、
”それ以降の萌奈”で、印象が大きく違ったことも
同時に思い出しながら、
「ーーー本物の村瀬さんはどこー!?」と、
そう叫ぶー。

がー、そんな言葉に、顔だけ”外”に出ている状態の信二は笑うと、
「本物の村瀬 萌奈は”これ”だよー」と、
着たままの萌奈の胸のあたりを触りながら、
そう言葉を口にするー。

「ーへへっー…彩香を守るためには、
 彩香の近くにいる必要があるからー
 この子の身体を貰ったんだー」

信二がそう言うと、彩香は
「な…何を言ってるのー?」と、そう言葉を口にするー。

「ーーーへへへーだからー
 この身体は、”村瀬 萌奈”本人だってことだよー」

信二はそう言うと、再び”萌奈”の首から上をしっかりと着込んで、
後頭部のあたりに何度か手を触れると、
「これで、よしー」と、笑みを浮かべるー。

「ーー………ーーそ、そ、その人に、な、何をしたのー?」
後ずさりながら、萌奈をほうを見つめる彩香ー。

「ーーまぁ、なんだっていいじゃんー。”彩香”ー
 これからは”女同士”でも構わないー

 お前を幸せにするためなら、なんでもするからー」

歪んだ笑みを浮かべながら
近付いて来る萌奈ー。

「ーーーーこ、来ないで…!」
隣人・”萌奈”の身に何が起きているのか、
彩香からすればサッパリと理解できないー。

でも、とにかく、この”萌奈”は、
元カレの信二と同じ、
”危険な存在”ー。

彩香は震えながら「来ないで!!!!」と、
涙目で叫ぶもー、
萌奈はニヤニヤしながら、彩香に近付いて来るー。

「ーそんなに怖がるなよー
 俺は、彩香を守りたいだけなんだー」
萌奈はそう言うと、彩香の髪を触りながら笑みを浮かべるー。

彩香はゾワッと悪寒を感じながら、
「誰か!!!誰か助けて!!!」と、悲鳴を上げるー。

「ーおいおいやめろよー”誤解”されるだろ?」
萌奈はあくまでも、”彩香を支えるため”の行動だと
思い込んでいて、自分が悪いことをしているなどとは
夢にも思っていないー。

「ー誰か!!!助けて下さい!!誰かー!」
彩香がそう叫ぶと、萌奈は
「おい、やめろよ彩香ー。冗談で誤解されたら困るだろ?」と、笑うー。

それでも周囲に助けを求める彩香ー。

「ーーやめろって言ってるだろー?
 俺がいなくなったら、誰が彩香を守るんだー?
 誰が彩香の健康を守るんだー?」

そう言うと、萌奈は彩香の口を手で塞ぎながら、
「ー彩香が心配なんだー。俺の気持ち、分かるよな?」と、
優しく笑顔を浮かべながら、彩香を見つめるー。

”萌奈”が一体何なのかー
彩香は理解できないまま、
目に涙を浮かべるー。

萌奈自身も、”彩香が隣の部屋にやってきたから”
信二に乗っ取られてしまった哀れな被害者ー。

けれど、彩香にはそんなことは分からないー。

なおももがく彩香に、萌奈は怒りの形相を浮かべると、
「彩香、これは暴力じゃないからねー?
 愛のムチだと思ってくれ」と、そう言うと、
彩香を突然ビンタしたー。

「ーー彩香ー俺は彩香を心配してるんだよ。
 どうして分かってくれない?」
狂気に染まった萌奈の目に、彩香は恐怖を感じながら震えるー。

「ー彩香が分かってくれるまで、俺は彩香を叩くよー」
そう言いながら、萌奈は再び彩香をビンタしようとしたー

がー
その時だったー

「ー!?」
萌奈の腕を誰かが掴んだー。

「ーーそこまでだー」
萌奈の背後にはー、警察官が数名立っていたー。

彩香の悲鳴を聞いて、誰かが通報したのだー。

「ーーーっっ、こ、これは彩香のためを思ってー!」
萌奈がそう反論するも、
警察官はすぐに萌奈を確保ー、
別の警察官が彩香に駆け寄って「大丈夫ですかー?」と、
そう声をかけてくれたー。

萌奈はそのまま連行されー、
彩香の前に姿を現すことはなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーー」
彩香は大きくため息を吐き出しながら、
職場で昼休みを過ごしていたー。

「ー大変だったねー
 元カレさんの次は、隣の部屋の人なんてー」
職場のお世話になっている先輩が、
心配そうに彩香に対してそう言葉を口にするー。

その言葉に、彩香は苦笑いしながら
「でも、もう大丈夫ですー。ようやくのんびりできそうですー」と、
そう呟くと、
スマホの画面を見つめたー

”村瀬 萌奈 容疑者は、全く記憶にないと話をしておりー、
 宅配便の男が、家に入って来たという意味不明な
 供述をしているとのことでー”

そんなニュースが、スマホの画面に表示されているー。

「ーーー」
そのニュースの内容に少しだけ
引っかかることを感じながらも、
”とにかく、もう大丈夫ー”と、
彩香は自分に言い聞かせるー。

結局ー、あのアパートは管理人さんに事情を話して、
そのまま引っ越しをしたー。

住んでいたアパートの管理人さん経由で
知り合いのアパートを紹介して貰ってそこに引っ越しをしたー。

”萌奈”は逮捕されたものの、
元カレの信二はどうなったか分からないし、
あの日、”萌奈の中から信二が出てきた”という謎の光景を、
彩香はまだ理解できていなかったー。

とにかく、”また”引っ越しをしたー。
前回よりも、慎重に周囲に情報が極力洩れないようにしてー。

今度こそ、元カレの信二も彩香の居場所を突き止めることは
これでできないはずー。

今度こそ、元カレ・信二の呪縛から逃れて、
自由な生活を謳歌できるはずー。

「ーーーあ、そうだー。
 今度、彩香ちゃんの新居、見に行ってもいい?
 色々バタバタしてて忙しいだろうし、
 何か手伝えることがあればな~って」

先輩のそんな言葉に、
彩香は「え~、先輩に手伝ってもらうなんてなんだか申し訳ないですよ~」と、
そう返すと、
先輩は「大丈夫大丈夫ー。彩香ちゃんは大切な後輩だしー」と、
そう言葉を口にしたー。

先輩に、新居の場所を教える彩香ー。

「じゃあ、今度の土曜日に!」
先輩はそう言葉を口にすると、
彩香は「あ、わたしはそろそろ仕事に戻りますね」と
休憩を終えて、先に立ち去って行くー

そんな彩香の後ろ姿を見つめながら、職場の先輩は少しだけ微笑むと
「ー彩香ー俺が守ってあげるからなー」
と、不気味な笑みを浮かべながらそう言葉を口にしたー

呪縛からは、逃れられないー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

”元カレ”からは逃れられないまま…!
まだ、この先も大変なことになりそうですネ~!
(いつか本人が乗っ取られちゃいそうな気もしちゃいます~笑)

お読み下さりありがとうございました~~!★

「逃れられない呪縛」目次

作品一覧

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