常軌を逸するほどに心配性な彼氏を前に、
疲れ果ててしまった彼女…。
その彼氏に別れを告げて、
家も引っ越しー、新たなスタートを切ったものの…?
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「ーー俺は、彩香(あやか)が心配なだけなんだよー」
同居中の彼氏・塚山 信二(つかやま しんじ)が
そう言葉を口にするー。
しかし、彼女の皆川 彩香(みながわ あやか)は、
困惑の表情を浮かべながら、
「でも、こんな追跡アプリみたいなもの、勝手に入れられたら、
怖いし、イヤな気持ちになることぐらい、分かるでしょ?」と、
そう反論するー。
彼氏の信二はー、
常軌を逸するほどの”心配性”だったー。
信二とは、大学時代に出会い、
同じサークルで活動する”先輩”だったー。
彩香ーだけではなく、周囲の人に対して何かと親切にしてくれて、
とても優しい先輩に、彩香は次第に惹かれて行ったー。
そして、大学時代に二人は付き合い始めて
彩香の卒業を待って同棲を開始ー、
そのままー”順調に進めば”いずれ結婚もー、
とも、考えていたー。
しかし、同棲を始めてから1年ー
社会人2年目を迎えていた彩香は、
”もう限界”だったー。
どうして、大学時代、信二が誰にでも親切で、
優しかったのかー
それが、同棲してみて分かった気がするー。
信二は”常軌を逸するほどの心配性”ー。
しかも、自分のことではなく、
自分の周囲の人間を過度に心配してしまうタイプの
”心配性”だー。
「それに、私の部屋にカメラまで設置して!
どういうつもり!?」
彩香が不満そうに声を上げると、
「あ、彩香が急に部屋で心臓発作を起こしたり、
それに脳出血を起こしたりしたら
すぐに駆けつけないといけないから!」と、
信二が反論するー
「ーーな…なにそれー…?どういうことー?
そんなことそんなに簡単に起きるわけないし、
そこまで気にしてたら何もできなくなっちゃうよ!」
彩香も、信二に対して反論の言葉を口にするー。
「ーーいや、でもー、
ああいう病気は時間との勝負なんだー。
心臓でも、脳の病気でも、
1秒でも早く気付いてあげないと、
死んじゃう可能性が高まるんだー!
だから、そうならないよう彩香のこと、
このカメラでー」
信二がそこまで言うと、彩香は呆れた様子で
自分の部屋に仕掛けられていた小型のカメラを投げ捨てるー。
「ーー彩香ー」
小型のカメラを投げ捨てるという行動に出た彩香を前に、
信二が驚いた様子で、彩香のほうを見つめると、
彩香は言ったー。
「ーーもう、こんなことが続くなら限界ー。
ーーーこれ以上は無理ー」
”これ以外”にも、信二の異様な”監視”は今までにも行われていて、
彩香はもう我慢の限界だったー。
「さよならー今までありがとう」
我慢の限界を迎えて、彩香は信二に対して
別れの言葉を口にするー。
その言葉に、信二は驚いた表情を浮かべながらも、
何も返事をすることもできないまま、
彩香は立ち去ってしまったー。
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それから、しばらくの時が流れたー。
彼氏の信二と同棲していた家を飛び出し、
一旦実家に戻ったあと、
すぐに新居を探して、
数日前から、新居での生活を始めていたー。
信二と一緒に住んでいた時よりも狭いアパートでは
あるものの、
生活に必要なものは揃っているし、
会社と行き来するにも十分に通える場所だし、
一人になったことで、家の中の自由な空間は
むしろ広くなった気がするー。
そして何よりも、彼氏である信二の
”異様な束縛”から逃れることができた、というのは
それだけでも、彩香にとってはとても大きな”プラス”で
あったのは確かだー。
「ーーー…ふぅー、なんだか解放された気分ー」
今日は、会社は休みー。
休日を迎えた彩香は、のんびりと家の中の片付けや、
模様替えなどを進めていくー。
が、そんな時だったー
♪~~~
インターホンが鳴り、彩香は”誰だろう?”と一瞬思いながら、
来客を確認するー
”元カレ”の信二にはこの場所は伝えていないー。
この場所を伝えてしまうと、
また、何をされるか分かったものではないし、
監視でもされたら、たまったものではないー。
そんなことを少しだけ思いつつ、
モニター越しに相手を確認すると、そこには眼鏡をかけた大人しそうな
雰囲気の女性が立っていたー。
確かー、隣の部屋に住んでいる女子大生の村瀬 萌奈(むらせ もな)
という子だったはずー。
引っ越してきた初日に、彩香が挨拶に行った際に、
少しだけ会話をした子だー。
”あー、すみませんー。
隣の部屋の村瀬ですー”
萌奈のそんな言葉に、
彩香はインターホン越しに「こんにちはー。どうかしましたか?」と、
そう言葉を口にすると、
”あ、いえー、おばあちゃんの家から野菜がたくさん送られてきちゃってー
良かったらどうかなぁ~って、思ってー”
と、隣人・萌奈はそう言葉を口にしたー。
そして、萌奈はインターホン越しのカメラでも見ることができるように
野菜を持ち上げて、それを見せて来たー。
「ーーえ?いいんですか~?
あ、ちょっと待っててくださいね!」
彩香はそう返事をすると、インターホン越しの対応をやめて
玄関まで向かうー。
すると、萌奈が野菜を手に、
「すみません~急にー」と、苦笑いしながら、
「引っ越して来たばかりの人に急にこんなことお願いするのもなんですけど、
一番歳が近くて、一番相談しやすかったのでー」と、
たくさん貰ってしまった野菜を受け取ってほしいとそう言葉を口にするー。
確かに、この階の住人は、
彩香が律儀に挨拶した感じ、
萌奈の奥の部屋に住んでいるのは30代ぐらいの男の人だったし、
あとは、少し神経質そうな雰囲気の40代の男性と、
出張が多くて留守にしていることが多いのだという、30代の女性ー、
そんな感じで、
隣人の女子大生・萌奈からすれば彩香が一番、
野菜のおすそ分けをしやすい相手だったのだろうー。
「あ~…持ってるのも大変だと思いますしー、
良かったら中にどうぞー?」
彩香がそう言うと、萌奈は「あ、はいーお邪魔しますー」と、
そう微笑みながら言葉を口にしたー。
野菜を置くと、萌奈は「ふ~…”この腕”だと疲れますねー」と、
苦笑いしながらそんなことを口にするー。
彩香は特にその言葉を深い意味で気にすることはなく、
「ー野菜って重たいですからね~」と、そう言葉を口にするー。
「ーふふーそうですねー」
萌奈はそう言葉を口にしながら、後頭部のあたりに何度か手を触れるー。
そして、部屋を少し見回すと、
「ー皆川さんは、彼氏さんとかいらっしゃるんですかー?」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーえ?」
”いきなり彼氏の話?”と思いつつも、
彩香が苦笑いしながら、
「う~ん、実は少し前までいたんですけどー、別れてしまってー」と、
そう言葉を口にするー。
「あ~…そうなんですねー…」
萌奈は、そう言いながら、再び後頭部のあたりを気にする仕草を見せると、
それ以上は何も言わずに、
野菜の話をし始めるー。
”おばあちゃん”の作る野菜は美味しいんですよー、とか、
ちゃんと安全なので心配しないでくださいねー、とか、
色々な話をされたー。
彩香も、そんな萌奈と話をしながら、
10分ちょっと話をすると、
萌奈は「ーあ、すみませんー長居しちゃってー」と、
そう言葉を口にして立ち上がるー。
「ーいえー、あ、野菜、ありがとうございますー」
彩香が改めてお礼を口にすると、萌奈はにこっと微笑んで、
持って来た野菜の側に歩いて行ってー、
”何か”を服から取り出したー。
ニヤッと笑みを浮かべる萌奈ー。
”ーーー彩香ー。全部、お前のためなんだー”
手にしたのは、小型の盗聴器と小型のカメラー。
「ーーーー」
何食わぬ顔で、萌奈はそれを”今度はバレないように”と
セットするー。
「ーーー…ーーーーーそうそう、この野菜なんですけどー」
セットが終わると、萌奈は何食わぬ顔で
彩香に対して雑談をし始めるー。
彩香も、まさか隣人の萌奈がそんなことをするとは思わずに、
その話に乗ると、何も気づかないまま会話を終えてしまうー。
「ーじゃあ、ありがとうございますー。
一人じゃ食べきれなかったので助かりました」
玄関先までやってきた萌奈は
そう言葉を口にしながら頭を下げるー。
「ううんー。わたしの方こそ、助かりますー。
一人暮らしだと、何かとお金もかかりますしー」
彩香が穏やかな口調でそう返すと、
そのまま二人は玄関先で挨拶をして別れて、それぞれ自分の
部屋へと戻ったー。
「ーーーーーー」
彩香の部屋から出た萌奈はニヤニヤしながら
口元を手で抑えるー。
「ーーー彩香ー元気そうで良かったよー」
とー。
そして、隣の部屋である自分の部屋の中へと入っていくと、
萌奈は邪悪な笑みを浮かべながら呟いたー
「ー野菜は、スーパーでわざわざ買って来たやつなんだけどなー」
とー。
笑みを浮かべながら、萌奈は自分の後頭部のあたりに手を触れると、
「ーー彩香ーー俺はお前を逃がさない」と、
そう言葉を口にすると同時にー、
まるで”着ぐるみ”を脱ぐかのように、”萌奈”が、”萌奈”自身を
脱ぎ捨てたー。
中から出てきたのはー、
彩香の”元カレ”となった信二ー。
脱ぎ捨てた萌奈の皮を雑にソファーの方に向かって
投げ捨てると、
「ー俺はお前が心配なんだよー彩香ー」と、
そう言葉を口にするー。
「ー彩香が傷ついたらと思うと、
彩香が病気で倒れたらと思うとー
頭がおかしくなりそうなんだー」
信二はそう言葉を口にしながら、
ニヤニヤと笑うー。
「でも、大丈夫だよ彩香ー」
信二は、部屋の中にこっそりと飾ってある
彩香とのツーショット写真を見つめると
「この先も、俺がずーっとお前のこと、見守っててやるからなー」と、
そんな言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーあ、おはようございます~!」
翌朝ー。
廊下で隣人の萌奈と鉢合わせした彩香ー
萌奈の元気な挨拶に、彩香も「おはようございますー」と、
返すと、彩香がゴミ袋を持っているのを見て、
萌奈が口を開いたー。
「ーあ、わたし、これからちょうどお出かけするので、
ついでに下のごみ置き場まで持って行きましょうかー?」
とー。
「ーーえ…?あははー大丈夫ですよー
そのぐらい自分でー」
彩香が、そこまでお願いするのは申し訳ない、と思いつつ
そんな返事を返すと、
萌奈は「いえいえ、全然気にしないでください!」と、
そう言葉を口にしながら、ゴミ袋を掴んで、
そのまま彩香のゴミを代わりに持って行こうとするー。
「ーー皆川さんが怪我したら大変ですしー、
わたしに任せて下さい!」
萌奈のその言葉に、彩香は
”あまり遠慮するのも悪いかなぁ…?”と思いつつ
「じ、じゃあ、今日だけはお願いしますー」と、
苦笑いしながら言うー。
「ー今日だけはと言わず、いつでも持って行きますよ~」
萌奈はそう言うと、そのままアパートの階段を下りていくー。
「ーーー」
彩香は”ほんの少しだけ”違和感を覚えたー。
敬語で話しかけて来てはいるものの、
なんだか、妙に馴れ馴れしいようなー、
まるで”前から知っているような”オーラを感じるー。
それとーーーー
”引っ越し初日”に少し会話をした時とは
別人のように思えるー。
もちろん、引っ越し初日に会話をした時は
そんなに長々と会話したわけじゃないし、
相手も初対面で緊張していたのかもしれないー。
でもー、
何だか”見た目の雰囲気”と、妙に違和感を感じるー
そんな、気がしたー。
「ーーーー」
彩香はしばらく考えていたものの、
やがて、ゴミ置き場にゴミを置く音が聞こえて
ため息を吐き出すー。
「ーー考えすぎだよねー。信二のことがあったからー」
異様なまでの心配性の元カレ・信二のことを思い出す彩香ー。
きっと、信二の異様な束縛があったから、
敏感になってしまっているのだろうー。
そう思いながら、彩香は、
そのまま部屋の中へと戻って行ったー。
「ーーー彩香ー。役に立ててうれしいよー」
一方、ゴミ置き場でゴミを出し終えた
萌奈はそれだけ言葉を口にすると、
興奮した様子でニヤニヤと笑みを浮かべるのだったー
②へ続く
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コメント
”彼氏”と別れたのに、まだまだ続く恐怖…!
恐ろしい気配がしますネ~…!!
今日もお読み下さりありがとうございました~~!!

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