<皮>有名人だなんて聞いてない③~真相~(完)

乗っ取った相手の身体は
”有名人”だったー。

そんなことを知り、困惑しながら
彼は連絡の途絶えた親友の家を目指すー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真綾を乗っ取っている遼太郎は、
連絡が途絶えた親友・盛明の家を目指していたー。

「ーーーあのーすみませんーーーー
 ず、ずっと、ファンだったんですー」

”また”だー。
盛明の家を目指している途中に、
また声を掛けられた真綾は、表情を歪めるー。

”この子、そんなに有名な子なのかー?”

真綾を乗っ取っている遼太郎は困惑しながら、
「わ、わたしは、真綾じゃないのでー…人違いですー」と、
人付き合い自体が苦手な遼太郎は、
少し言葉に詰まりながら、そう言葉を吐き出すー。

真綾なのに、真綾じゃない、と言わせていることに
改めてゾクゾクしながらも、
その男を無視して逃げるようにして立ち去るー。

”ファン”だと言ってくる人間がいる以上ー
恐らくこの真綾という女は、
アイドルか何かなのだと思うー。

しかし、遼太郎はそもそも
テレビやニュースを全く見ないし、
アイドルにも興味がないためにー、
この”真綾”という子がどれほど有名な子なのかも知らないー。

仮に”国民的アイドル”レベルの有名人だったしても、
遼太郎は”頭の中で思い浮かべられるアイドル”が一人もいないぐらいに
世間の事柄には疎いため、
真綾のことなど、知るはずもなかったー。

「ーーーーーってか、もしこの子がアイドルならー、
 俺はそのアイドルの身体で好き放題しちゃったのかー」

そう呟きながら、下品な笑みを浮かべる真綾ー。

真綾の喘ぐ声を知っているのはーー
真綾の身体の全てを知っているのはーー

”俺だけ”ー
そう思ったら途端に興奮してきた遼太郎ー。

がー、すぐに「いや、興奮してる場合じゃねぇ」と、
そう言葉を口にすると、
そのまま親友・盛明の家を目指したー。

やがてー、盛明の家に到着するとー、
盛明の住んでいるアパートに人が数名、集まっていたー

「ーーーなんだー…?」
真綾はそう言葉を口にしながら、一旦身を隠すー。

寂れた場所にあるアパートであるため、
普段は人が集まっているようなこともなくー、
”真綾の身体を乗っ取っている状態”でも、
たやすく盛明に会えるー…

そのはずだったのに、
今日に限ってアパートの周辺に人が集まっている。

しかも、よく見るとパトカーや救急隊員らしき人物の姿も
確認できるー。

「ーーーーー…」
真綾は、”くそっー。早く田島のやつに会いたいのにー”と、
そう思っていると、
やがて、アパートの一室から警官らしき人間が出てきたー

”って、あそこ、田島のやつの部屋じゃねぇかー”
真綾は物陰に隠れながら、落ち着かない様子で
内心でそんな言葉を口にするー。

親友・盛明の住むアパートで何かあったのかー?と、思っていたら、
同じアパートの住人ではなく、盛明本人に何かあったようだー。

慣れない女の身体だからか、余計にそわそわしながら
”何が起きているのか”と、不安になって、
物陰からアパートの方向を見つめるー

”いや、待てよー?”
真綾は険しい表情を浮かべながら視線を逸らすと、
”イヤな予感”を感じながら、表情を曇らせるー。

親友・盛明の部屋に警察官が出入りしているー。

その状況を冷静に考えた遼太郎はハッとするー。

”まさかー…田島のやつー、
 得体の知れない力でこの子を”皮”とか、
 訳の分からない状態にしたから、捕まったんじゃー!?”

そんな風に思う遼太郎ー。

この子は、恐らく”有名人”なのだろうー。
その”真綾”という子が、方法は詳しく分からないけれど、
盛明の手によって”皮”にされたー。

”皮”がどんな状態なのか、遼太郎にはイマイチ分からないし、
法律上に”他人を皮にしてはいけない”などという法律は
ないとは思うー。

しかし、この子が
”こんな風に身体を乗っ取られる”ことに同意しているとは思えないし、
盛明が無理矢理、”真綾”を皮にしたのだとすればー、
盛明が逮捕されても、全然不思議ではないー。

「ーーー…う…嘘だろ…
 お、俺もーーー…」
真綾は途端に弱気な表情を浮かべるー。
背筋がゾッとする思いをしながら、
”このままじゃ、俺も逮捕されるのかー?”と、
そんな風に思うー。

”何も知らなかったー”
それじゃ、済まされないと強い不安を感じながら、
ふと、もう一度アパートの方に視線を逸らすと、
部屋から、何かが運ばれてきたー。

「ーー!?」
真綾は表情を歪めるー。

アパートの一室から運ばれてきたのは”遺体”ー
はっきりとは見えなかったが、あの覆われ方は、
”遺体”が運び出されている状態で間違いないー。

「ーし、死体ー…だ、誰の?」
真綾が不安そうにそう呟くと、
「ーここの住人で間違いないそうだー」と
警察官の一人の声が聞こえたー。

「ーー通報のあったアパートの遺体は
 田島 盛明で間違いありませんー」

無線で警官がそんな言葉を口にしているー。

「ーーはっ…?い、いやいやー、う、嘘だろー?」
真綾は青ざめるー。

てっきり、”盛明が逮捕された”のだと思っていたら
そうではなく、アパートの自室で”遺体”となって発見されたという
状況を前に、激しく動揺するー。

そしてー、
真綾を乗っ取っている遼太郎は、ついつい物陰から飛び出してしまい、
遺体の元に駆け寄ってしまったー。

”田島のやつが死ぬはずなんてない”
”いや、死なれたら困るんだー”
”こんな状況のまま、死ぬとかナシだろー”

真綾を乗っ取っている遼太郎は
色々なことを思いながら、
運ばれている最中の遺体に近付き、
その顔を強引に確認するー。

「君!?何をしてるんだ!?」
警察官の一人が驚いて制止するー。

がー、それよりも前に
真綾は”運ばれている遺体”を確認することができたー。

見間違えることはないー。
その遺体は、確かに”田島 盛明”ー。
遼太郎の親友であり、遼太郎に対して”真綾”の皮も
持って来た盛明本人だったー。

昨日の朝、遼太郎の家にやってくるはずだったのに
家にやってくることはなくー、連絡もしてこなかったのは
恐らくー……

盛明はその時点で既に死んでいたのかもしれないー。

「ーーー…君はー」
ふと警察官の一人が、真綾を見て反応するー。

”やべっー、警察にもファンがいるのかー?”
真綾を乗っ取っている遼太郎はそんな風に思いながら
「あ、え~~っと」と、誤魔化す言葉を口にしようとしていると、
「数日前から行方不明のアイドルじゃないか?」と、
警察官の一人が言葉を口にしたー。

「ーー!確かにー。
 刑事さんー、この子、真綾ちゃんですよー!」

騒ぎを見守っていたアパートの他の住人らしき男が、
ふと、そんな言葉を口にするー。

「あ、いえー、ち、違うんですー
 わ、わたしは真綾じゃー…」
真綾を乗っ取っている遼太郎は咄嗟にそう誤魔化すー。

”数日前から行方不明”ーー
真綾は、今、そんな状態のようだー。

そういえば、ここに来るまでにも、
”テレビに出てた子じゃん”とか言っている人もいたー。

もしかしたら事件のことだったのかもしれないー。

「ーーーー少し、お話を聞かせて貰えますかー?」
警察官のそんな言葉に、真綾は青ざめながらも、
ここで逃げたら余計におかしなことになる、と判断してー
「ーい、いいですけどー…そ、そ、そのー
 ーーき、記憶がハッキリしなくてー」と、
咄嗟にそんな嘘をついたー

”我ながらいい嘘がつけた”と、
遼太郎は内心で思いながら、そのまま渋々と警察官に
ついていき、色々と話をすることになってしまったー。

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真綾は、やはり人気アイドルだったー。
遼太郎はテレビも何も見ないために
知らなかったものの、最近ではよくテレビに出演していたようで、
街中を歩くだけで多くの人が反応するぐらいには、
”知っている人が多い”ー、
そんな、人物だったようだー。

そしてー、その真綾は数日前から消息を絶っていて
事件としてニュースになっていたようだー。

テレビを全く見ず、スマホでニュースなども見ず、
SNSのトレンド欄なども全く見ない遼太郎は
そのことももちろん知らなかったー。

”アイドルの子が数日前から行方不明ってことはー
 田島のやつが皮にして連れ去ったからだよなー…?”

真綾を乗っ取っている遼太郎は、そう思いつつ
表情を歪めるー。

警察官から色々話を聞いていくうちに、
真綾は人気アイドルであり、
その人気アイドルを、親友の盛明が恐らく無理矢理”皮”にして
遼太郎のところにやってきたのだと、そう解釈したー。

しかしー、”真綾が皮にされた”とか、
”真綾が遼太郎に乗っ取られている”とか、
そういうことまで警察は突き止めている様子はなく、
単に”アパートで謎の死を遂げた盛明の元に足を運んでいた際に、
偶然、行方不明のアイドルを見つけた”と、
そんな感じの状況であることを悟ったー。

遼太郎の親友・盛明と、真綾は警察の中では結びついていない様子だったー。

”ーここはー、皮のこととか、俺が真綾って子を乗っ取ってることとか、
 言わない方がー…いいよなー?”

真綾を乗っ取っている遼太郎は、
「ー気付いたら街中を歩いていて、記憶がないんですー」と、
警察に対して誤魔化して、嘘をついたー。

警察に本当にことを自白して”この皮、脱げなくなっちゃったんです”と言えば、
真綾の皮を”脱ぐ”方法が見つかるかもしれないー
けれど、それ以上にそのことを自白すれば、
”自分の身が危うい”ことは遼太郎にも理解できたー。

悪者にされる可能性もあるし、逮捕される可能性もあるし、
この子がアイドルなら熱烈なファンから報復される可能性もあるー。

それにー、”人を皮にする力”を手に入れた親友の盛明が死亡したことで
このまま元に戻れない可能性もあるー。

”どうせ、元に戻れないなら、”記憶喪失のアイドル”やってた方が
 今後ー、俺も得しそうだしなーへへー”

真綾はそんなことを考えながら、一人、笑みを浮かべるー。

”アイドルをやるってのもいいかもしれねぇーへへへ”
警察官に気付かれないように、少しだけニヤニヤとすると、
この先のことを考えて、遼太郎はドキドキとし始めるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーすげぇー」

1週間前ー。
遼太郎の親友・盛明は”人を皮にする力”の存在を知り、
それを入手したー。

ネットでそういう力が取引されていることを知り、
バイトで貯めていた莫大なお金を使い、
それを手に入れたのだー。

「ーえへへーそうすりゃ、真綾ちゃんとあんなことやこんなことができるー」
笑みを浮かべる盛明ー。

盛明は、”真綾”の熱狂的なファンでー、
真綾の自宅や、仕事に向かう際の移動ルートまで把握しているほどの
狂気的なファンだったー。

力を手に入れた盛明は、帰宅中の真綾を”皮”にして、
そのまま支配ー、

しかしー、自宅で真綾を乗っ取った盛明は
「いやぁー俺自身が真綾ちゃんになりたいんじゃないんだよなー」と、
”誰かに「思い通りになる真綾」になってもらおう”と、そう考えたー。

そして、大学を辞めた親友の遼太郎を思い出すー。

”そういや、アイツなら喜びそうだしー、
 アイツ、ニュースも何も見てねぇから、
 真綾ちゃんのことも、真綾ちゃんが行方不明になったことも
 知らねぇだろうからー、平然と真綾ちゃんの皮を着てくれるだろー”

そう考えた盛明は、翌日ー、遼太郎の家に行き、
遼太郎に”真綾の皮”を渡し、遼太郎に真綾になってもらったー。

そして、”明日、朝来るから”と、約束して盛明は一旦帰宅したー。

がーーー

「ーーーよぉ」
盛明が帰宅すると、家の中に”男”がいたー。

「ーーあ、あんたはー…?」
盛明が表情を歪めると、
男は言ったー。

「ーその力、目立つことには使うなって、”売ったとき”に
 説明したじゃねぇかー

 よりによって、何で人気アイドルに使ってやがるー?
 おかげで世間は”アイドル行方不明”って大騒ぎだー」

売人の男の言葉に、盛明は青ざめながら謝罪の言葉を口にするー。

しかしーー
盛明は、その場で”始末”されたー。
”自死”に見せかけられてー。

”人を皮にする力”を私利私欲のために使おうとした親友・盛明は
こうして最後を遂げたのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんな真実を知らないまま、遼太郎は
”記憶喪失のアイドル”・真綾としての生活を始めていたー。

けれどー…
”人付き合いが苦手な遼太郎”に
アイドルができるはずもなくー、
すぐに”記憶喪失になってから、おかしくなったー”と、
世間ではそう言われ始めて、
”真綾”は表舞台から姿を消してしまったのだったー。

おわり

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コメント

元に戻ることはできない結末でした~!

結局、遼太郎くんは、
アイドルの身体でまた、バイト以外引き籠る生活に
戻って行くのデス…

お読み下さりありがとうございました~~~!!

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