<皮>有名人だなんて聞いてない②~困惑~

ある日、家に遊びに来た親友から
”人を皮にする力”を見せ付けられた彼ー。

しかし、その親友によって”渡された皮”が
まさか有名人を皮にしたものだとは
夢にも思っていなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーー」
ゴクリ、と唾を飲み込む遼太郎ー。

”真綾”の皮を着れば、
自分があんなに可愛い姿、声、顔になることができるー。

実際に親友の盛明から目の前で
”それ”を見せ付けられても、
遼太郎はまだ、それを現実のものとして受け入れることは
できていなかったー。

「ーへへ、ほら、着てみろよー
 今日からお前は”真綾”になれるんだぜー?」

盛明はそんな言葉を口にすると、
遼太郎に”真綾”の皮を着るように改めて促したー。

「ーーーふ、二つ聞いていいかー?」
遼太郎は緊張した様子で言葉を口にすると、
盛明は少しだけ”早く着ろよ”と言いたげな表情を浮かべつつも
「なんだ?」と笑いながら呟くー。

「ーー…ま、まずさー
 俺、太ってんじゃんー?
 だから、田島、お前みたいに
 この子の皮を着れるとは思わないんだけどー」

遼太郎は、ある意味当然とも言える言葉を口にするー。

「ーはは、その点は心配いらねぇー。
 大体、”着た”だけで、その子の身体を乗っ取れるなんて
 不思議な力だろー?

 普通の洋服や着ぐるみとは違うー。
 ”未知の力”で、着る側の方が身体が大きくても
 ちゃんと、着ればその子の身体のサイズに変換させるから
 心配すんなー。

 大体、俺だって、”真綾”より身体大きいだろ?
 お前と違って太ってはないけどな」

盛明の説明に、
遼太郎は”なんか最後の一言は余計だな”と、思いつつも
もう一つの質問を口にするー。

「ーーーそ、その子の身体になったあとは、
 俺はどこにいりゃいいんだ?」

遼太郎はそう言葉を口にすると、
盛明は「あん?」と首を傾げるー。

「ーいや、だって、ほら、ここは俺の家だからー、
 こんな可愛い子が出入りしてたらヘンだろー?
 それに、この子にも家、あったと思うしー」

遼太郎がそう言うと、
盛明は「あぁー、そういうことかー」と頷くと、

「この子は一人暮らししててなー。

 ーーま、でも、ほら、ここにいても
 ”彼女です”とか適当なことを言えばどうにかなるだろ?
 それに、お前確か明日はバイト休みだろ?とりあえず
 今日と明日はここにいりゃいいー。

 そのあとのことは、明日にでも考えようー。」

と、盛明は笑いながら言うー。

「か、か、か、彼女ー?」
ドキッとしてしまう遼太郎ー。

「ーへへー。まぁ、ほら、早く着ろよー。
 可愛い身体がお前を待ってるぜ」

そんな盛明の言葉に、遼太郎は意を決して
”真綾”の皮を身に着け始めたー。

そしてー

「ーーう…うぉ、す、すげぇー身体の感覚が、変わったしー
 こ、この声…や、やっべぇ…」
真綾の身体を乗っ取った遼太郎は、
真綾の可愛い顔に、声に、身体にドキドキしながら
子供のように笑顔を浮かべながら喜んで見せるー。

「すげぇ…!すげぇよ田島ー!」
興奮した様子の真綾を見て、
盛明はニヤニヤしながら、
「ーへへーじゃあ、早速ー」と、
真綾の胸を揉み始めたー

思わず変な声を出してしまう真綾を乗っ取った遼太郎ー。

「ーへへへへっ!いい声だなぁー
 ほら、もっと気持ちよさそうにしろよー」
盛明は、心底嬉しそうに真綾の身体を
楽しそうに触っていくー

「ちょ!?おいっ!やめっーまだ心の準備がー」
真綾になった遼太郎はそうは言いながらも
どこか楽しそうに、気持ちよさそうにしながら、
盛明のされるがままに、色々なことをされてしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーさて、とー。
 俺はそろそろ帰るかー。
 
 また明日の朝、来るからさー。
 お前はとりあえず、家の中にいろよ?」

散々楽しんだ盛明は、
まだ少し興奮した様子で、
”真綾”になった遼太郎に対してそう言い放つと、
真綾はニヤニヤしながら、「へ…へへへー女ってすげぇなー」と、
気持ち良さの余韻を噛みしめながらそんな返事をしたー。

「こ、このあとは俺の好きにしていいんだよなー?」
真綾が盛明に対してそう言うと、
「へへー。あぁー」と、頷く。

「ーただ、まだ女の身体に慣れてねぇだろうし、
 一応、今日は外に出ず、家で楽しめよー?」
盛明は釘を刺すかのようにそう言葉を口にすると、
「分かってるよー、俺だってー、まだそのー
 こんな可愛い身体で外に出る勇気はないしー」と、
緊張した様子で、自分の身体を見つめつつ笑うー。

「ーははーそうだなー。小森、お前はそういうやつだったなー」
盛明はどこか安堵したような表情を浮かべながら
そう言葉を口にすると、
「じゃ、俺は一旦やることがあるから、また明日ー」と、
そう言葉を口にして手をあげるー

「ーあぁー
 あ、深夜までこの身体で遊んでて、
 朝、寝てたらごめんなー」

真綾はニヤニヤと自分の胸を触りながら言うと、
「ーそしたら、インターホン連打してお前を起こしてやるから心配すんなー」と、
盛明は得意気な表情を浮かべながら、
玄関先のインターホンを連打するジェスチャーをしてみせるー。

「ーーへへー朝っぱらからうるさい奴だなー」
真綾はそれだけ言うと、
盛明は「じゃ、今夜は存分に楽しめよ?」と、
そう言葉を口にして立ち去って行くー。

「ーへへー言われなくてもそうするさー」
盛明が帰ったあと、一人残された真綾を乗っ取った遼太郎は、
心底嬉しそうにそう言葉を口にしてから、
真綾の胸を無我夢中になって揉みー、
鏡にキスをしてー、
色々なポーズをしたり、色々な言葉を口にしてみたり、
さらにはトイレやお風呂までー、
存分に”真綾”の身体を堪能したー。

「ーってーー…
 ーーーーーあ~~~…服が欲しいなー」

すっかり乱れた髪を揺らしながら
真綾はそう呟くー。

”真綾の皮”を持ってきてくれた盛明が用意していた
服以外に、真綾に似合いそうな服はないー。

遼太郎は、当然女物の服なんて持っていないし、
女装する趣味もないため、
そういう服はないー。

「ーーーー…明日、盛明と相談して買うかー」
真綾はそう呟くと、ニヤニヤしながら
「さ~て、もう1回楽しむかなぁ」と、
ベッドの上に座り込んで、
嬉しそうに自分の身体を、再び堪能し始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーーーー」

「ーーーーーーーーーーーーーー」

翌朝ー

「ーーー!!!!」
ガバッと起き上がる真綾ー。

昨日は、盛明にも言っていた通り、
結局、真綾の身体を堪能しぐしてしまい、
寝落ちするまでの間ー、
かなり遅い時間まで夜更かししてしまったー。

「やべっ」
真綾はそう思いながらスマホを確認すると、
”翌朝”どころか、”翌昼”ーー…
既に、14時になっていることに気付くー

「ーやべぇ…かなり寝坊しちまったー」
髪がボサボサの状態のまま起き上がる真綾ー。

しかしー
親友の盛明が家に来た感じはないー

「ーーーインターホン連打されたのに、
 起きなかったのか、俺ー?」

真綾はそう呟きながら身体を起こすー。

しかし、遼太郎は元々”そこまで寝起きが悪い訳ではない”ー
酔い潰れていたわけでもないし、
盛明がインターホンを連打していれば、気付いていても
おかしくはないー。

それなのに、昼まで寝ていたー。

「ーーー…とにかく、連絡するかー」
盛明が来ても気付かずに、門前払いしてしまったかもしれない、と
そんなことを思いつつ、スマホを手にして
盛明に連絡を取ろうとする真綾ー。

が、意外にも盛明からメッセージや電話の一つもなかったようで、
他に特に友達もいない遼太郎のスマホには
何も届いていなかったー。

「ーーー…なんだよー田島も寝坊かー?」
盛明も寝坊したのだろう、と、ニヤニヤしながらそう呟くと、
そのまま盛明にメッセージを送るー。

がー、数時間経過しても盛明から返事はなくー、
そのまま夜を迎えてしまったー。

「おいおいー、明日はバイトだぞー?」
戸惑いの表情を浮かべる真綾ー。

後頭部に手を触れて、盛明がそうしていたように、
”真綾の皮”を脱ごうとするー。

しかし、何かやり方があるのか、真綾の身体は脱げないまま、
焦りを覚えていくー。

「ぐぐ…くそっー脱ぎ方を聞いておくんだったー」
真綾は表情を歪めながら、必死に”真綾”を脱ごうとするー。

が、予想に反して”自分の顔が引っ張られているかのような”
痛みを感じてしまい、
「ーあぁ、くそっー」と、自分の力で皮を脱ぐことを
諦めると、大きなため息を吐き出したー。

そして、その翌日ー。
盛明からは連絡もないままー。

真綾の姿でバイトに行くことは出来ず、
仕方がなくバイト先に”風邪で声が出なくなってしまったから”とLINEで
嘘の体調不良を伝えて、欠勤にしてもらったー。

「ーくそっー田島のやつ、何してるんだー」
盛明が来ないと、真綾の皮を脱ぐこともできないー。

「ーー~~~~~おいおい、マジかよー」
ソワソワした様子で真綾の身体を触りながら、
スマホを手にする遼太郎ー。

がー、これ以上このまま待っているわけにもいかないー。
”真綾”の皮を脱ぐことができないと、
バイトにも行けないし、
そもそもこの子がどんな子なのかも分からないー。
ずっと身体を乗っ取ったままというのもまずい気がするー。

「ー仕方ないー…田島のやつの家に行くしかないかー」
ため息を吐き出しながら、
真綾はそう呟くと、
ドキドキしながら服を整えて、玄関から顔を出すー。

”ーーーーい、いいんだよなー?この身体で外に出てー?”
妙な緊張感に襲われながら、意を決して真綾の身体のまま、
遼太郎は家から外へと飛び出したー。

目指すはー、親友である盛明の家ー。
どういうつもりかは知らないけれど、
とにかく盛明の家に行って、
元に戻る方法を聞き出さなくてはいけないー。

そう思いつつ、街を歩いていると、
「あっ!!!」と、通行人が突然声をあげたー。

「ーえっ…あれ、”真綾”ちゃんじゃねー?」
「ーいやいや、あり得ないだろー?
 こんなところに普通に歩いてるわけないしー」

別の通行人の男子大学生二人組もそんな言葉を口にするー。

”な…なんだー?”
真綾を乗っ取っている遼太郎は戸惑いの表情を浮かべるー。

なんだか、嫌な予感がするー。

ソワソワしながら目を逸らして進もうとすると、
「あ、あのー」と、さらに別の男から声を掛けられたー。

「ーーは…はいー?」
真綾は不安そうにしながら、
その男のほうを振り返ると、その男は
目を輝かせながら、緊張した様子で言ったー。

「あ、あ、あ、あのー…
 ま、真綾ちゃんですよねー?」

とー。

「ーーー~~え… え~~~っとー」
真綾を乗っ取っている遼太郎は、
”な、何なんだよー…”と、思いながら
目を逸らすー。

まだ、家を出てそんなに長時間、
時間は経過していないー。

短時間でこんなに何度も何度も声を掛けられてしまうほどに、
”真綾”とか言う子は、有名人なのだろうかー。

そんな風に思っていると、
「ーーえっ!?あれーーニュースでやってた子じゃない?」と、
主婦2人組が、真綾のほうを指さしたー。

「ーー!?」
真綾は表情を歪めるー。

そして、目の前にいる目を輝かせている男に対して
「ひ、人違いだと思いますー。失礼しますー」と、それだけ言葉を口にすると、
そのまま足早に移動を始めるー。

「ーあの子、真綾ちゃんだよねー?」
「えっ!テレビに出てた子じゃん!」
「サイン下さい!」

真綾の身体で歩いていると、
色々な人に声を掛けられたー。

元々、人間付き合いも好きではない
遼太郎にとっては苦痛この上ない展開に
遼太郎は心底戸惑いを見せるー。

「ーすみませんー人違いですー」
「人違いですからー」
「わたしは、”真綾”じゃありませんー」

真綾の身体でそう言葉を答えるー。

この”皮”を持っていた盛明も
この子のことを”真綾”だと言っていたー。

恐らく、”真綾”なのだろうー。
しかし、その真綾の身体で”わたしは真綾じゃありませんー”と言って
逃げている現在の状況に
ゾクゾクとした背徳感を感じていたー。

「ずっと、ファンだったんです!!」
そんな声をかけて来た人もいたー。

その人からも逃げながら、
真綾を乗っ取っている遼太郎は思わず舌打ちをするー。

”くそっ、この子が有名人だなんて聞いてないぞー”
とー。

困惑の表情を浮かべる真綾ー。

が、いずれにせよ、
早く盛明に会わなくてはいけないー。

そう思いつつ、遼太郎はどうやら有名人らしい真綾の身体で、
そのまま盛明の家を目指すのだったー。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回が最終回デス~!!

題名の通りの展開が出て来るまで
今回のお話は時間がかかりましたネ~笑

明日もぜひ楽しんでくださいネ~!!

コメント