<入れ替わり>名前も身体もとられちゃった②~不安~

”悪霊を退治している親友”の影響で
霊に興味を持った彼ー。

トイレの花子さんと出会った彼は
”入れ替わり”の提案を受け入れてしまいー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーすっごいなぁ…」

”花子さん”と入れ替わった直樹は、
自分の身体を見つめていたー。

「ースカートなんてー履いたことないしー
 なんか……ーー変な感じ」
花子さん(直樹)はトイレの中でそう呟くー。

”幽霊”だからか、足が寒いとか、そういう感じは
特に感じないけれど、
それでも何だか、履きなれない”スカート”に
ドキドキしたり、落ち着かない様子を見せながら
トイレの中に設置された鏡を見つめるー。

「ーーーー」
そこには、可愛らしいけれど、どこか冷たいようなー
そんな”花子さん”の顔が映っていたー。

「幽霊なのに、鏡に映るんだー」
そんなことを思いながら、花子さん(直樹)が
そう言葉を口にすると、
「僕になった花子さー…あーいや、”直樹くん”は
 どうしてるかなぁ~」
と、今、この場に直樹(花子さん)はいないにも関わらず、
入れ替わった直後に言われた通り、
”自分の身体になった花子さん”のことを、
自分の名前で呼ぶー。

自分の名前を他人の身体で呼ぶー。
そんなことをすると、
なんだか身体だけではなくて、名前も一緒に持って行かれたようなー、
そんな不思議な気持ちになるー。

なんだか気恥ずかしいような、くすぐったいような、
不思議な感じだー。

トイレの中で、ひたすら楽しく過ごしていると
ふと、そこに人の気配がしたー

「ーー!」

トイレに隣のクラスの担任教師である男の先生が
入って来たのだー

「ーーわっ!?!?」
花子さん(直樹)が驚いて言葉を口にするー。

今の自分は”花子さん”
つまり、”女”だー。

男子トイレの中に、女子がいるー。
そんな状況になってしまっているー。

花子さん(直樹)は慌てて「せ、先生、こ、これはそのー」と、
咄嗟に”言い訳”を始めたものの、
先生は無反応で、そのまま奥に向かおうとするー。

「ーわっ!?わっ!?」
先生が、花子さん(直樹)の立っている位置に向かって来たため
”ぶ、ぶつかっちゃう!?”と、そう思いながら身構えたものの、
するっ、と、先生の身体が花子さんの身体をすり抜けたー

「ーーーー!…」
”人間が自分の身体をすり抜けていく”ー
幽霊でしか味わうことのできない、あまりにも不思議な”感覚”を
初体験して、花子さん(直樹)は思わず
戸惑いの表情を浮かべるー。

そしてー

「あ、そっかー…僕は幽霊だからー…見えないのかなー」
花子さん(直樹)がそう呟くー。

「ーーーう~ん、でもー」
花子さん(直樹)は少し不思議そうにすると、
「僕は見えたしー、それまでもトイレで花子さんを見たって子が
 いたけどー…」
と、不思議そうに考えるー。

先生は、そのままトイレを終えて、
”花子さん”も映っている鏡に視線を向けるー。

がー、”鏡に映っている花子さん”も、花子さんが見えている人以外には
見えないのか、そのまま先生は何も反応することなく、
そのまま男子トイレの外に歩いて行ったー。

”花子さん”がもしも全員に見えたら
今頃学校中はもっと大騒ぎになっているはずー。

が、あくまでも”都市伝説レベル”でしか学校では
騒がれていない、ということは
”花子さんが見える人”が限られているか、
あるいは”何か条件を満たさないと”花子さんが
見えないのかもしれないー。

花子さん(直樹)は
「幽霊の身体って不思議だなぁ~」と楽しそうに
そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「♪~~~~」

直樹になった花子さんは、
”幽霊”ではなく、”人間”の身体を手に入れて
上機嫌だったー。

「ーーふふーわたしはーううんー、僕は幽霊じゃなくて人間ー」

嬉しそうにスキップしながら、そんな言葉を口にするー

「”僕”は鈴野 直樹ー
 僕は鈴野 直樹ー
 えへへー”名前”がちゃんとあるっていいなぁー

 なおきなおきなおきー」

直樹(花子さん)は嬉しそうに笑うー。

”花子さん”はー、
”生きているときの自分の名前”を忘れてしまったー。

どうして、学校のトイレに”悪霊”として存在しているのかも、
ハッキリとは覚えていなかったー。

”花子さん”は、自然にそう呼ばれているうちに
そう名乗っているだけで、”元の自分の名前”は忘れてしまったー。

そんな彼女にとっては、
”名字もある、ちゃんとした自分の名前”が新鮮で
嬉しかったー。

”花子”
それしかなかった自分の名前ー

でも、今は”鈴野 直樹”というフルネームがあるー。

「ーえへへへ、ねぇねぇ、”僕”のこと見えてるー?」
公園にいた他の子供にそう確認すると、
「ーーえ…???」と、不思議そうな顔をされてしまうー。

「見えてるんだよね?僕の声、聞こえてるんだよねー?」
目を輝かせながらそう言葉を口にした
直樹(花子さん)は嬉しそうに滑り台に駆け上がると、そのまま
滑り台を滑り降りて、家の方に向かって歩いて行ったー。

帰宅した尚樹(花子さん)は、
そのまま家の中に駆け込んで、一人嬉しそうにはしゃぎ始めるー。

「ーーあら、直樹ー今日はいいことでもあったの?」
そんな直樹(花子さん)の様子に
不思議そうに笑いながら、直樹の母親が言うと、
「ーうん!とってもいいことがあってー」と、
直樹(花子さん)は嬉しそうに答えるー。

「ーふ~んーどんなこと?」
母親が穏やかに笑いながら聞くと、
直樹(花子さん)は「ひみつー」と、クスクス笑いながら
そう言葉を口にしたー。

「ーねぇ、お母さんー」
少し間を置いてから、直樹(花子さん)はふと、口を開くと、
「生きてるっていいねー」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー~~~…」
花子さん(直樹)は、夜になると不安そうな表情を
浮かべながら、トイレの中を徘徊していたー。

”暗い” ”怖い” ”寂しい”

夜になって、学校が真っ暗になって、
真っ暗なトイレで一人になってしまった花子さん(直樹)は
一人、怯えていたー。

電気のスイッチをつけようとしても、
それに触れることができないー。

ガタッと、風で窓が揺れると、
ビクッとして、花子さん(直樹)は怯えた表情を浮かべるー。

日が暮れるまでは、
”女の子”になった自分に、そして”幽霊”になった自分に
ドキドキして楽しく過ごしていたけれど、
日が暮れてからは、そんなことを楽しむ余裕もなくなってしまって、
只々、一人でいることの寂しさと恐怖に怯えていたー。

「ーーー…も、もう嫌だー!」
花子さん(直樹)はそう叫ぶと、トイレの出口に向かって走るー。

がーー

「ーー!?!?!?」
出口に突っ込むと、また”トイレ”に入ってきてしまったー。

「ーーあれ…」
が、今度はさっきいた男子トイレではなく、
同じ学校内の女子トイレに来てしまった様子だったー。

「ーーず、ずっとトイレなんて嫌だー!」
花子さん(直樹)はそう叫ぶと、またトイレの外に出ようとするー。

しかし、何度やっても結果は同じー。
”学校内のトイレのどこか”に、移動するだけで
トイレから外に出ることはできなかったー

”複数のトイレで花子さんの目撃情報”があったのは
恐らくこのためー。
トイレから出ると、同じ学校内の別のトイレに移動するー…
それで、複数のトイレから目撃情報が出ていたのだろうー。

「ーーーー」
何度も何度も”トイレから出る”ことを試して、
それが叶わないことをようやく認めると、
花子さん(直樹)は自虐的に笑いながら
言葉を口にしたー。

「ーーー今の僕は幽霊なのに、怖がってるなんてー
 なんだか、変だなー」
とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

「ーーねぇねぇねぇー」
直樹(花子さん)が学校にやってくると、
”幽霊を見ることができる”家系の康介に
向かって嬉しそうに声をかけたー。

「ーー?」
康介は、少し首を傾げながら、
「鈴野くんは、今日は妙に元気だな」
と、そう言葉を口にするー。

「ー”鈴野くん”かぁー
 ふふー」
直樹(花子さん)は嬉しそうに笑みを浮かべるー。

”鈴野 直樹”ー
その”名字”を呼ばれたことに喜んでいるー。

だってー、自分は”花子さん”であり、
名前はそれしかなかったのだからー。

名字を呼ばれるということはー、
とても新鮮でー、”久しぶり”のような気がして
ドキドキしたー。

「ーー?」
康介がそんな直樹(花子さん)の様子を見て
少し首を傾げると、
それに気づいた直樹(花子さん)は「なんでもないよ」とだけ
言葉を口にして、そのまま話題を変えるー

「ーートイレの幽霊の”花子さん”のことだけどー…」

と、”花子さん”の話題を出すー。

「ーー花子さんと会ったのかー?」
康介が少しだけ驚くー。

「ーあ、えっとー、そうじゃなくてー
 その”どうするつもりかな”ってー」
直樹(花子さん)がそう尋ねると、
康介は「驚かされてる子もいるし、早いうちに退治するつもりだよ」と、
それだけ答えるー。

「俺の手にかかれば、すぐに退治はできると思うからー。
 昨日も、”家”を腐食させる悪霊を退治してきたところだし」

康介が言うー。

昨日は、欠陥住宅を掴まされた挙句、自ら命を絶った男の”悪霊”を退治したー。
その悪霊は、”夢のマイホーム”に執着し、人々の家を腐敗させる力を持っていて
康介の近所の家を腐敗させようとしていて、康介に退治されたー。

「ーーへ~~」
直樹(花子さん)は”いつもとは違って”
幽霊の話をしてもあまり興味を示さずに言ったー

「ー”もう少しの間”退治するの、待ってもらえるかなー?」
とー。

「ー何で?」
康介のその言葉に、
直樹(花子さん)は少しだけ考えてから言ったー。

「ーー僕が1回、花子さんに会ってみたくてー」
とー。

その”真意”は、直樹と入れ替わって、
今は”直樹”として行動している花子さんにしか分からないー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー…どうだったー?」

昼休みー
ほとんど使われない男子トイレにやってきた
直樹(花子さん)は、花子さん(直樹)を見つけて声をかけていたー。

「ーーーー…うんー楽しかったし、怖かったし、寂しかった、かなぁー」
花子さん(直樹)が素直に感想を伝えると、
「ー”花子さん”も、こんな風にいつも過ごしてるんだねー」と、
そう言葉を口にしたー。

がーー

「ーー”花子さん”は、あなたよー」
と、直樹(花子さん)に言われてしまうー。

「ーー…え…あ、うんー」
花子さん(直樹)が戸惑うー。

「ーーあ、あの、”花子さん”ー」
花子さん(直樹)が”元に戻ろう”と、そう言葉を口にしようとするー。

ちょうど、そのタイミングで
トイレに差し込んでいた太陽の光が
雲によって遮られて光が失われるー。

「ーーーーー”僕”は、直樹だよー。
 話をしたいなら”直樹くん”って呼んでー」

直樹(花子さん)がそう指摘するー。

花子さん(直樹)は、
「い、いやー、あの、花子さんー」と、
手を合わせる仕草をするー。

入れ替わった時と同じように、手を合わせて
元に戻ろうとするー。

がー、直樹(花子さん)は何の反応も示してくれないー。

”花子さん”と呼んでいるからだと悟った
花子さん(直樹)は「な…な…直樹くんー」と自分の名前を
口にすると、ようやく直樹(花子さん)は、口を開いたー

「ーもう1日だけ!」
とー。

「ーーえ?」
花子さん(直樹)が少し驚くー

「もう1日だけ!”人間”として過ごしたいの!」
直樹(花子さん)の言葉に、
花子さん(直樹)は”またあんなに寂しくて怖い夜を過ごすなんて嫌だー”と、
心の中で思うー。

「ーーえ…い、イヤだよー…!ぼ、僕はもうー
 元に戻りたいー!」

花子さん(直樹)がそう叫ぶと、
直樹(花子さん)は少しだけ寂しそうな表情を浮かべるー。

「ーーー……わたしも、ずっと一人で辛かったのー」
とー。

そんな悲しそうな表情を見て、花子さん(直樹)は
心の中で”花子さんー”と、そう思うと、
仕方がなく、歯を食いしばりながら言ったー

「じ、じゃあ、あと1日だよー
 絶対、約束だからね!」
花子さん(直樹)のその言葉に、
直樹(花子さん)は、
「ーーありがとう”花子さん”ー」と、
中身が直樹の花子さんのことを、再びそう呼ぶと、
そのままトイレの外に出て行くー。

「ーーーー」
トイレの外に出た直樹(花子さん)は少しだけ笑みを浮かべると、
「ートイレの外に出られるって本当に、いいなぁー」と、
それだけ言葉を口にしたー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

漂う不穏な空気…★!

明日の最終回も
ぜひ楽しんでくださいネ~~!!★

今日もありがとうございました~~!

コメント