12月24日ー
彼女が突然失踪したー。
”お前の彼女に憑依した”
謎の男の正体とはー…?
そして、彼女の運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「へへへへ…お前の彼女に憑依したって証、見せてやるよー」
男の声が響き渡るー
俊哉は再び”幸恵に憑依した男”からの連絡を受けて
表情を歪めていたー。
スマホを手に、俊哉が「ふざけるなー」と、声を荒げる
「ふざけてなんかいないさー
お前にはもうどうすることもできないー
彼女のことは忘れて、
大人しく大学生活を楽しむんだな」
男が俊哉をあざ笑うー。
俊哉は表情を歪めながら
「ーふざけるな!幸恵を返せ!」と、声をあげると
「ーーおいおい、これはお前のためでもあるんだぜ」
と、男は笑いながら答えたー。
スマホをギリッと握りしめる俊哉ー。
「ーーまぁいいー
お前のスマホに”面白い動画”を送っておいてやったぜー?
もう手遅れだってことがよく分かるはずだー」
男のそんな言葉に
「おいっ!待て!おいっ!」と叫ぶ俊哉ー。
しかし、スマホの通話は既に切れていて
男からの返事はなかったー。
俊哉は困惑しながら、
スマホを操作すると、
そこには”憑依された幸恵”の動画が届いていたー
恐る恐るそれを再生する俊哉ー
するとーーー
幸恵が顔を赤らめながら、メイド服姿で自分の胸を揉みー
ニヤニヤとしていたー
”えへへへへ…わたし、もう、元には戻れな~い♡”
笑う幸恵ー
顔を真っ赤にしながら、胸を揉みー
手をペロペロと舐めてー
不気味な笑みを浮かべる幸恵ー
「ゆ、幸恵ー…」
俊哉は震えるー
”そういうわけだからさー諦めなよー
この身体は俺のものー”
映像の中の幸恵はそこまで言うと、
”ばいばい、俊哉ー”と笑いながら手を振ったー
”忘れるのが、お前のためだー
これ以上、関わるなー
いいなー”
憑依された幸恵はそう宣言すると、
そのまま映像は途切れたー
「くそっ…くそっ…くそぅ…!」
床を何度もたたく俊哉ー。
彼女がいないことを姉や両親ー
大学の一部の友人からー
ずっと揶揄われ続けた俊哉ー
元々気にしやすいタイプである俊哉は
一時期、そんなことで自殺すら考えるような日もあったー。
気にしない人からすれば
全く気にならないことであるのも事実だろうー。
だが、俊哉にとっては地獄だったー。
そんな中、やっとできた彼女が幸恵だー。
それなのにー…
「ーくそっ…俺は…俺は諦めないぞー」
俊哉はそう呟くと、
”幸恵に憑依したやつを絶対に見つけ出してやるー”
と、強く決意してー、
警察署に直接足を運ぶ決意をしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー…」
警察署から出て来た俊哉は呆然としていたー。
結論を言えば、警察には相手にしてもらうことができなかったー。
憑依された彼女の動画やー、
男からのメッセージ
そういったものも伝えたー
しかし、それでも相手にしてもらえなかったし、
寧ろ、あざ笑うような感じで対応されてしまったー
やはり”憑依”など、簡単には信じてもらえないー。
そういうことなのだろうー。
だがー
捜索願を出すことはできるかもしれないー
事実、”江森 幸恵”は憑依されて
失踪している状態なのだー。
何とかして、幸恵の両親の協力を得ることができればーーーー
がーーー
ふと、俊哉はあることを思い出すー
そういえば、幸恵は両親は既に亡くなっていて、
親族はいない、というようなことを言っていたー。
だが、単に彼氏なだけの俊哉が捜索願を出すのもなかなか
難しい気がするー。
そもそも、幸恵は隣県に住んでいるということしか知らず
幸恵の自宅も知らないのだー。
「くそっ…俺は…俺はどうすれば」
焦りばかりが集っていくー。
親友の勝からも”落ち着けよ”と言われたものの、
俊哉は落ち着くことはできずに、
やがて大学生活にまで支障が出始めるー
「ーいい加減にしろ!俊哉!」
勝はそんな俊哉を見かねてそう言い放ったー
「お前は、幸恵ちゃんに遊ばれてただけなんだー
住所も、何も分からないなんて、おかしいと思わないか?」
勝のそんな言葉に、俊哉は
「住所教えないカップルなんて、いくらでもいるだろ!」と
反論するー
嫌だー
せっかくー
せっかく、彼女と出会えたのにー
”憑依されて奪われてしまった”
そんな結末を迎えるのだけは、絶対に嫌だー。
心の中でそんな悲痛な叫びを上げながら
俊哉はできることは何でもしたー
だがー
その結果ー
”江森 幸恵”という人間はー
”存在していない”ことを知ったー。
いや、厳密に言えばいるー。
だが、年齢や出身地などがどう考えても別人でー
”江森 幸恵”という名前の人間はー
そもそも”住民登録されていない”ことを知ってしまったー
そうなると幸恵は”偽名”を名乗っていたことになるー
「くそっ… くそっ… どういうことなんだー…」
俊哉は放心状態になってしまうー。
勝の言う通り、幸恵には騙されていた、ということなのだろうかー。
あの日ー
”憑依された幸恵”からもう関わるなと言われて以降ー
幸恵からも、あの男からの連絡も、ないー。
もう、どうすることもできないー
そんな、絶望が俊哉に襲い掛かったー。
”絶対、開けちゃだめ!”
「ーーーーー」
俊哉は、ふと、自分の部屋にあった
幸恵の私物ー
大きな箱のほうを見つめるー
”そういえば、これ…”
そんな風に思いながら俊哉はこの箱に近付いていくー。
「ーーおいおいおいおい」
突然、声が響いたー
驚いてスマホのほうを見つめると
「やめとけ」と、
幸恵に憑依した男が語り掛けて来たー
「お、お前…!俺を監視してるのか!?」
俊哉が思わず叫ぶー
「いやぁ…へへ…とにかく、やめとけって」
男が言うー。
「ーーうるさい!お前には関係ないだろ!」
俊哉がスマホに向かってそう叫ぶと、
男は「開けてはならない箱だ。もう一度言う。絶対にやめとけ」と、
強い口調で、忠告するかのように言い放ったー
「知るか!」
俊哉がそう叫んでスマホから離れるとー
俊哉は、その箱を開いたー
「ーーーーーー…!」
その、中身はーーー
女物の服ー
”憑依された幸恵”が着ていたメイド服ー
謎の注射器ー
幸恵の私物の数々ー
幸恵のスマホー
「ーーー……」
何でメイド服がここにー?と思いつつも、
幸恵の服がここにあること自体は、そこまで不思議ではー
「ーーーー……!!!」
だがー、俊哉は箱の中にあった謎の注射器を見て、
表情を歪めたー
”これはー”
見覚えがあったー。
彼女がいないことを姉から揶揄われて
虚無感に襲われながらネットを見つめていた際に
偶然見つけたものー
”性別を変える注射器”
男が打てば女体化し、
女が打てば男体化するー
そんな、注射器だー。
「ーーーー……」
俊哉は瞳を震わせるー。
この注射器を”自分で”買った記憶があるー。
「ーーー…」
箱の中に入っている幸恵の服の数々を見つめるー。
幸恵のスマホを見つめるー。
「ーーー……」
俊哉は、”自分で無理やり忘れようとしていた”ことを
何となく思い出すー。
”これがあればー
俺にも、彼女ができるんだー”
性別を変える注射器を購入したあとー
俊哉は”女体化した自分”を見てー、
それを自分の彼女だと思い込み始めたー
「ー幸恵… 幸恵ー… 幸恵ー…」
いつしか、”女体化した自分”を
”幸恵”と呼び始めたー
幸恵とは初恋の相手の名前だー
告白なんかできないまま、小学校を卒業し、
それっきりの初恋の相手の名ー。
やがてー
俊哉は、”女体化した自分”を、幸恵と呼びー
次第に、”彼女”だと思い込み始めたー
やがてー
俊哉は自分の中に”幸恵”という架空の人格を生み出したー
そう、女体化して
”彼女役”と”彼氏役”をやっていた俊哉は、
いつの間にか人格が分裂しー
二重人格になってしまっていたー
性別を変える注射器を打ち、
一人二役を続ける俊哉ー
俊哉は、人格が分裂後、”幸恵”が女体化した自分であることも忘れー
愛で続けたー
写真は、女体化した自分のものー
幸恵とのLINEのやり取りは人格が交代しながら2台のスマホで
やり取りしていただけー。
幸恵に告白された時はー
”女体化した自分”が鏡に映っていただけー。
「はは…ははははは」
俊哉は全てを悟り、開けてしまった箱の前で笑い始めるー
”クリスマスデート”
どうあっても、直接会うしかないー、
そんなタイミングで、”幸恵”の人格は何とか俊哉を傷つけないようにー
俊哉の前から去る方法を強引に考えたー
だが、”幸恵”人格も、しょせんは俊哉が生み出したものー
アニメ好きな俊哉の記憶や知識から”憑依されたフリ”をして
立ち去ると言う無理やりな作戦を考えー
”憑依した男役”である俊哉の第3の人格”カズキ”を生み出したー。
”幸恵に憑依した”と名乗っていた男も、俊哉自身ー。
俊哉の中に生まれた更なる別人格ー
スマホを手に、男と喋っていたと思っていた俊哉ー
しかし、実際には
”スマホを手に”一人二役をボソボソと喋り続けていただけー
電話は誰とも繋がっていなかったー
幸恵など存在しないー
幸恵は、性別を変える注射で女体化した自分自身ー
「ーう…うふっ…へへへへ…あははははははははっ!」
全てを知った俊哉は思わず笑ってしまったー
「ーえへへへへ…わたしが、わたしが幸恵だったんだぁ♡」
俊哉は、注射を打たずー、女体化もしていない状態でそう叫ぶー
「わたしは幸恵…わたしは幸恵…
あはっ!♡ あははははは♡」
俊哉の姿のままそう叫ぶー。
彼女がいないこと馬鹿にされ続けて
元々精神的に病んでいた俊哉ー
幸恵の人格が生まれた際には、大学をしばらく休んでいたこと俊哉ー
その時は表向き”体調不良”となっていたが
実際には精神を病んで、休み始めたもので、
幸恵の人格もその時に生まれたー
親友の勝が”幸恵”と出会ったのもその時だー。
幸恵の人格が表に出ている時には、
性別を変える注射器で女体化しているために、
勝も幸恵=俊哉とは気づかず、
本当に彼女に看病してもらっている、と、
そう思い込んでいたー。
「ーーあ~~~~あ…
だから言ったのに…
お前のためにも、これ以上関わるなってー!」
”憑依した男役”の人格”カズキ”は、
”幸恵は自分だった”と気づいてしまって
俊哉が壊れないようにするためー
自分自身を守るために緊急的に生み出された人格ー
だが、もう、俊哉は知ってしまったー
もう、手遅れだー
「あはっ♡ あははははははははははっ!」
自分に注射器を打ち込んで女体化する俊哉ー
「わたしは幸恵…わたしは幸恵…わたしは幸恵…♡!」
女体化した俊哉は、自分にそう言い聞かせるようにして
何度も何度もそう呟くー
目からは溢れるようにして涙が零れ落ちているー
”彼女ができないことを周囲から色々言われ続けて”
精神的に元々弱い俊哉は追い詰められてー
性別を変える注射器を見つけたことで
ついに、架空の彼女を自分の中に作り出してしまったー。
そのことすら忘れー
”幸恵”の存在がなんとか心を保っていたもののー
自分が幸恵だったと知り、ついに心は壊れたー
壊れた俊哉の人格は、急激に消えていくー
第3の人格・カズキも消えていくー
主人格のはずの俊哉をも飲み込み、3つの人格が
混ざり合ってできたのは、
俊哉が彼女だと思い込んでいた幸恵ですらないー
”幸恵”を名乗る別のなにかー
「ふふふふふふ…♡」
幸恵は笑みを浮かべながら歩き出すー。
女体化した俊哉は、二度と男に戻ることもなくー
幸恵と名乗り続けてー
この後、狂ったように男遊びを繰り返すようになるー
世間ではー
俊哉は失踪扱いになり、その行方を知るものはいないー
”メリークリスマス”
クリスマスの日が来るたびー、幸恵は苛立つー。
今年もー
幸恵は狂ったように、聖夜を堪能するのだったー
おわり
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コメント
女体化+二重人格という真相でした~!★
恋人なんて最初からいなかったエンドデス~!
①から伏線はいくつかあり、
私の最近の作品は電話相手の声は「 」ではなく” ”で囲んでいますが、
”幸恵に憑依した男”を名乗る男のセリフは
全部「 」になっていて、一人で俊哉が喋っていることを
示唆しています~★!
また、①で”部屋にあるスマホの一つが”とも書かれていて、
俊哉の部屋に複数のスマホ(幸恵の人格のときに使うスマホ)が
置かれていることも描かれていますネ~!
他にもいくつかありますが、このぐらいにしておきます~!★
お読み下さりありがとうございました~!
クリスマスもイブが終わり、半分以上過ぎ去った感じですが、
まだまだ予定がある人は、楽しんでくださいネ~!
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