<憑依>過去のお前に憑依する②~悪意の改変~

結婚して、娘も生まれー、
幸せな日々を送っていた琴美ー。

しかし、そんな琴美の元に
高校時代の元カレがー、
今になって突然会いに来たー。

しかもー、彼は”過去の琴美”に憑依して
次々と歴史を変えていくー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ククククー」

琴美の元カレ・秀雄は笑みを浮かべたー

祖父の蔵で入手した”時間を移動する水晶玉”で
過去にやってきた秀雄は、
再び”高校時代の自分たち”を霊体となって見つめていたー。

タイミング的にはー
琴美が秀雄と別れてー、その後、将来の夫となる
駿介と付き合い始めた頃ー

「今度は”結婚”の事実を変えてやるぜー」
秀雄はそう呟くとー、
迷わず高校時代の琴美に憑依したー

「うっー…」
ビクッと震える琴美ー

「ククククー…この頃の琴美、マジで可愛いよなぁ」
胸を触りながら笑みを浮かべると、
「さ~て、”駿介くん”に嫌われるようなことしますかー」と、
笑みを浮かべたー。

その日からー
琴美は、素行不良の男子生徒を誘惑してはー
噂になるのもお構いなしにエッチなことを繰り返したー

やがて、噂はすぐに広まり、彼氏の駿介の耳にも入るー

「ーー琴美ー…噂は本当なのか?」
駿介のそんな言葉に、琴美はクスッと笑うー。

「だって、駿介といると~欲求不満になっちゃうだもん!
 全然わたしを満足させてくれないし、
 ゾクゾクさせてくれないー

 だから、他の男とヤッてるのー
 何か問題ある?」

開き直った態度を見せる琴美ー

「ーーそ…そんなー…
 う、嘘だろー…?」

呆然とする駿介ー

「ーわたしのこと、そんな子だとは思わなかった?」

クスっと笑いながら笑みを浮かべる琴美ー

「ーこれが、本当のわたしー
 満足させてくれないなら、平気で浮気しちゃう女なのーわたしは」

その言葉に、駿介はあきれ果てたような様子を見せながら
戸惑っているー。

「ーーー不満なら、別れてもいいけど、どうする?」
ニヤッと笑う琴美ー。

「ーーー…ーーそんな人だとは思わなかったー」
悲しそうに呟く駿介に対して
琴美は「わたしの性格、勝手に決めつけて勝手に失望するとか、
迷惑なんだけど?」と、笑みを浮かべながら言うと、
駿介は「わかったーごめん。別れよう」と、
諦めの表情を浮かべながら、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー」

現代ー。
2022年ー

琴美は”今日も”いつものように会社にやってくると、
「おはようございます」と、上司に挨拶して、
そのままオフィスの座席についたー

”昨日”までー、
歴史が改変される前まで、
”別の仕事”をしていたのだがー、
今は”歴史”が変わっているー。

しかし、琴美にそのことを認識することはできないー

時空を超える水晶玉を使っている秀雄本人以外は
歴史がどういう風に改変されてしまったのかを、
知ることすらできないー

「ーーわたしは結婚とかいいかなぁ~」

昼休みー
同僚と話をしながら笑う琴美ー。

「ーえ~?そうなの~?」
同僚がそう言うと、
琴美は「わたしは仕事が恋人だしー、学生時代、恋愛上手く行かなかったから」と
自虐的に笑うー

秀雄と別れたあとー
クラスの駿介と付き合ったー

だが、それも上手く行かずに別れてー
大学でも一度付き合ったが
それも上手くいかなかったー

もう、恋愛はコリゴリだ。

そんな風に思いながら、今日も1日仕事を終えて
アパートに帰宅すると、
アパートの前に、元カレの秀雄が待ち構えていたー

「秀雄ー…」
表情を歪める琴美ー

「はははっ!”住んでる場所”も変わっちゃったかー」
秀雄がそう言うと、琴美は「何のこと?」と
表情を歪めるー

”最近”元カレの秀雄が度々姿を現している認識はあるもののー
”具体的”には記憶がハッキリしないー。

「ーーいやぁ、琴美、お前さー
 昨日まで夫とマンションに住んでたじゃん?
 それなのにー
 どうしたんだよ?
 こんなアパートに一人暮らしなんて」

秀雄がそう言うと、
琴美は「夫ー?わたし、ずっと独身だけど」と、答えるー。

「ーーはははははぁ…
 すっかり”改変”されちゃったか~」

秀雄がニヤニヤしながら言うー。

歴史の改変の影響が出るには少し時間差が生じることもあるがー
今回はかなりすんなり改変されたようだー。

「ーーー?
 言っとくけど、わたし、誰とも結婚するつもりないからね」

琴美はそれだけ言うと、アパートの中に入ろうとしたー。

「ーーへへー
 俺さー、”過去のお前”に憑依してきたんだよー」

秀雄が言うー。

琴美は「えっ!?」と、困惑した表情を浮かべるー。

この前も話した気がするが、歴史の改変の影響で、
”どこまであったことになっているのか”は、話をしないと分からないー

水晶玉で時空を遡っている秀雄本人以外にどんな影響が出ているのかは
その時にもよるのだー。
きっと、色々な条件があるのだろうー。

「ー今までで2回ー
 1回目はー結婚後のお前に憑依して”子供はいらない”と夫に言って、
 娘の存在を消したー

 2回目はー学生時代のお前に憑依して”将来結婚する相手”との
 仲を引き裂いたー」

秀雄が笑いながらそう言うと、
琴美はなおも首を傾げたー

「そんなことできるわけないでしょー。
 それにー
 今、わたし仕事で充実してるのー。
 結婚なんてしてる暇、ないからー」

琴美はそれだけ言うと、家の中へと入って行ったー。

「ーはははははは!
 面白れぇなぁ 歴史の改変!
 
 娘の”円香”と夫の”駿介”って言ってもー
 もう、認識できないのか?」

玄関の外から叫ぶ秀雄ー

「ーーー…まどか…
 しゅんすけ…?」

仕事の資料を見つめながら、そう呟く琴美ー

駿介は高校時代の元カレの一人だー。
何故か急に嫌われて、それっきりー。

”そんな女だったなんて”と言われた記憶もあるー。

「ーーー急に冷たくなった駿介と結婚するとか、
 あるわけないでしょ」

琴美は一人そう呟くと、
「今度のプレゼンの資料作らないといけないんだから、帰って!」
と、攻撃的に玄関に向かって叫んだー

「ーーへへへ はいはいー」
秀雄はアパートから離れると
「お~こわっ…仕事一筋で性格も少し変わっちまったかなー」と
笑みを浮かべたー。

だがー
すぐに秀雄は舌打ちをするー。

家族を奪っても、仕事があるってかー… と。

「ーーなら次は、”仕事”も奪ってやるぜー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

再び過去にやってきた秀雄ー。
今度は、”夫がいなくなった”世界観で、
琴美が就職したあとのタイミングにやってきたー

「ーーーへへへへ…よし、行くぜー」

そう呟くと、
琴美に憑依する秀雄ー

「ーーうっ…」
びくっと震えた琴美はー、
にやりと笑みを浮かべるとー
「さてと…クビになるためには、何をしようかなぁ」と、
ニヤニヤと笑い始めたー。

その日からー
琴美は豹変し、不真面目な仕事を繰り返し、
イケメン社員に執拗に言い寄るようになったー

しかも、その相手は彼女持ちー

「ーいい加減にしてくれ!」

数週間が経過したタイミングでー
その社員は琴美にそう言い放ったー

「ーえ~~~なんでですかぁ~?
 わたし、好きなんですぅ~♡」

ぶりっ子みたいなポーズ特徴で煽る琴美ー。

だが、悪評は次第に広まりー
ついに琴美は上司から呼び出されたー。

「ーーあ、何なら今、わたしとここでヤッちゃいます?」
笑いながら胸を揉む琴美ー

「なっー」
上司は一瞬顔を赤らめたもののー
「もういい!君の処分は後程知らせる!
 しばらく会社に来なくていい!」と、
怒られてしまったー

琴美は「は~い!」と、笑いながら会社を出ると、
帰宅したー

会社からの処分が知らされるまで、
琴美は酒を飲み、ゲーム三昧の日々を送りながら過ごすー

夜になると自分の身体で何度もイってーー
処分を待ったー

やがてー
数日後、会社を解雇されることが決まりー、
琴美はニヤリと笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーただいま~!」

2022年ー。

琴美は帰宅したー。

帰宅した場所は”実家”ー

「ーーごめん!店長に急にシフト頼まれちゃって~」
琴美がそう言うと、母親が「いいのいいの」と笑いながら
スーパーで頼んでいたお使いを受け取ったー。

秀雄により過去を改変され
”仕事”も失った琴美はー
”実家暮らし”に変わっていたー。

実家で暮らし、スーパーでパートとして働きながら
部屋で趣味を楽しむー。
そんな人生を送っているー

しかしー
再びそこに秀雄が現れるー

「ーーへへへー
 どうだ?過去をどんどん変えられてる気分はー

 お前から娘を奪い、夫を奪い、仕事を奪ったー」

秀雄が嬉しそうに言うー。

だが、琴美はやはり首を傾げたー。

「ーーーどういうこと?」
とー。

「ーだいたい、わたしみたいなやつに結婚なんて
 できるわけないでしょ?」

”ネガティブな発言”が目立つようになっている琴美ー。

秀雄は笑みを浮かべながら
「でも、幸せそうに見えるけどなー」と、
呟くー。

”少なくとも、俺よりは、なー”

秀雄は、琴美に振られてから、ずっとそれを引きずりー、
自暴自棄な生活を送り、
結果、就職にも失敗したー。

自分自身が琴美を束縛したことが原因なのだがー
それを自覚せず、
”琴美のせいで、俺の人生は壊れた”と、
就職の失敗すら、琴美のせいにしていたー。

そんなある日ー、
祖父の蔵で”なぜか”憑依薬と時空を超える水晶玉を発見し、
過去の琴美に憑依するという狂気を思いついたのだー。

「ーーーわたしは生涯独身で孤独死するからー
 放っておいてくれる?」

琴美がそう言い放つと、
そのまま家の中に入っていくー。

「ーーへへへへ…
 俺からすりゃー
 お前がどんどん変わっていく姿がたまんねぇよー」

夫と娘に囲まれて幸せそうだった日々ー
”娘”が消えて夫と幸せそうだった日々ー
夫もいなくなり、一人でキャリアウーマン生活を送っていた日々ー
仕事すら奪われてもなお、実家でそこそこ幸せそうに見える日々ー

「ー次は、そうかー…
 実家だなー」

秀雄はそう呟くと、邪悪な笑みを浮かべてー
再び過去へと戻ったー

今度はーーー
”複数”のことをこなすー。

琴美が大学生の頃の時代に行くー。
既に、その前の時代で、秀雄が琴美に憑依して
駿介に嫌われる行動をしたことは、変わっていないー。

だがー、
”仕事をクビになる前の時代”に戻ったため、
またそれもやらなくてはならないー。

けれどー
その前にー

「ーーー…あはははははははははっ♡」
琴美がいない間にー、
琴美の実家の母親に憑依した秀雄はー
狂ったように笑いながら夫ー

つまり、琴美の父親を刺したー。

「琴美ィ!お前の人生を壊してやるぜ!」

琴美の母親の身体でイカれた笑い声をあげながらー
自宅に火をつけー
琴美の実家と両親を奪ったーーーーー

その後の時代に飛びー、
一人でも何とか仕事をしていた琴美に憑依ー
再びクビになるように振る舞うとー
現代へと戻ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーなに?」

現代ー

琴美がアパートから出て来るー

「ーーへへへへ…お仕事はどうだい?」
秀雄が笑みを浮かべると、
琴美は「ーあんたには、関係ないでしょ」と、
キツイ口調で答えたー

実家も失った琴美はー
夜の街で働いているー。

ネットで出会った男とも会ったりして
かなり強引に金を稼いでいるようだー

「ーーーまさか、お前がこんな生活を送るなんて思わなかったぜー
 そういうの、苦手だったはずだろ?」

秀雄が笑うとー、
琴美は「仕方ないでしょ!こうしないと生きていけないんだから!」と、
荒い口調で叫んだー

過去を変える度にー
琴美の人格にも影響が出ているー

”生活環境に余裕がない”と、どんどん変化していくー
そういうことなのだろうー

「ーー娘が見たら、悲しむだろうなぁ?」

秀雄が笑うと、
琴美は「娘?あんた馬鹿にしてんの?」と、秀雄を睨みつけるー。

「ーーへへへ…なんでもねぇよ」

既に、琴美に”円香”という娘がいた自覚など微塵もないー

「ーーー…(でもーーーー)」
秀雄は立ち去りながら呟くー

”まだー生きる道があったかー”

娘を、夫を、仕事を、実家と両親を奪ってもーなお、
琴美は夜の街で働きながらしぶとく生きているー。

”そうかそうかー…じゃあ次はーーー
 その美貌をー”

秀雄はニヤァ…と笑うと再び過去の琴美に憑依するべく
時空を超えるのだったー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

抵抗しようもない”過去の改変”ー。
琴美の人生がどんどんおかしくなっていきますネ~…!

次回が最終回デス~!
今日もありがとうございました~!

コメント

  1. 匿名 より:

    秀雄は執念深すぎですね。
    そこまでやるかと言いたくなります。
    結末が楽しみです。

    どう考えても琴美が救われるようないい結末にはならなそうですけども。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!

      恐ろしいまでの執念ですネ~!
      最終回もぜひ楽しんでください~★!