<憑依>能力者たちを根絶せよ①~悪用~

数万人にひとりー。
その世界では、生まれつき”憑依能力”を持つ人間が
生まれていたー。

しかし、そんな世界で憑依能力の悪用が続き、
ついには世界は”憑依能力者根絶”のために動き出してしまうー…。

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「ーーえへへへへ♡ えへへへへへへ♡」
路上で、部活帰りと思われる美少女が
嬉しそうに自分の胸を揉みながら、
周囲からの視線もお構いなしに下品な笑みを浮かべているー。

どよめく周囲の通行人たちー。

「ーちょ、ちょっと!!恵麻(えま)…!
 き、急にどうしちゃったのー!?」
その近くでは、自分の胸を夢中になって揉んでいる恵麻の
友達と思われる子が戸惑いながら、
恵麻の異様な行動を止めようとするー。

しかし、それでも恵麻は止まらず、
通行人たちの注目をすっかりと集めてしまっている状況の中、
自分の服を引き千切りながら、
ゲラゲラと笑い始めるー。

口元をだらしなく歪めて、笑みをこぼしている彼女はー
”正気”ではなかったー。

「ーちょっと!!恵麻!!やめてってば!」
友達がなおも、狂ったように笑う恵麻を止めようとするも、
恵麻は止まることはなかったー。

今の彼女には、どんな言葉をかけても”無駄”だー。
何故なら、恵麻は”憑依”されて、
その身も心も乗っ取られているのだからー。

やがて、通行人の誰かが通報したのか、
警察官が駆け付けると、
夢中になって自分の身体を楽しんでいた恵麻は
そのまま警察へと連行されていくのだったー。

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”また憑依能力者による凶行”ー

数日後、ネットのニュースや新聞、
テレビのニュースなどで、
先日の”恵麻”の異様な行動について、
報道が行われていたー。

恵麻は”憑依能力者”に憑依されていたことが判明、
警察に確保されたあとに正気を取り戻したものの、
恵麻の痴態はネット上に拡散されてしまい、
既に取り返しのつかない状態になってしまっていたー。

本人も、”自分が憑依されていた”というあまりにも
衝撃的な事実を前に、立ち直ることが出来ない状態が
続いていて、その傷跡はあまりにも深いものになってしまったー。

そしてー…
ニュースで”また”と報じられているように、
近年、”憑依能力者”たちによる憑依の悪用が増え、
それが社会問題になっていたー。

数万人に一人の確率で誕生する”憑依”能力者ー。
もちろん、その多くは憑依能力を悪用することはせずに、
普通に生活を続けているー。

しかし、それでも”他人の身体を乗っ取り”自由にする力ー…
そんなものを持った人間の中には
当然、悪用する人間もいたー。

近年はそんな”憑依能力”の悪用が増えていて、
恵麻のような被害を受ける人間もいれば、
犯罪組織が憑依能力者を雇い、悪事に利用したり、
さらには恵麻のようなケースとは違い、
”その身体を乗っ取り続けて”全てを奪うような
悪用のスタイルも最近は増えてきているー、そんな有様だったー。

そんな状況が続き、
日に日に世間では”憑依能力者をどうにかしろ”と、いう声が大きく
なっていくー。

そんな声が日に日に高まったこと、
それに加えて憑依能力者たちによる”被害”がさらに拡大したことを受けて、
やがて、政府も”憑依能力者の取り締まり”を決意ー、
それがさらにエスカレートし、
今では”憑依能力者を根絶せよ”と、そんな流れになってしまっていたー…。

そんな世界でー…
”憑依能力”を持って生まれ、
弾圧され続けているカップルがいたー。

上村 真梨香(うえむら まりか)と、
海藤 涼介(かいとう りょうすけ)ー。
二人は、”憑依能力”を持って生まれた人間で、
憑依能力を悪用するようなことは二人とも
一切していなかったものの、
既に、二人が生まれた頃には
”憑依能力者は根絶やしにせよ”という世間の空気が
完成してしまっていたために、
二人は、表舞台で生活することが出来ず、
逃げるようにして生き延びて来たー。

「ーーただいまー」
涼介がそう言葉を口にしながら、
”地下”へと戻って来るー。

そんな涼介を彼女の真梨香が出迎えると、
涼介は「食料ー手に入れて来たよー。みんなも喜ぶよー」と、
穏やかに笑いながら真梨香を見つめたー。

真梨香は「あまり危ないところまで行かないようにねー?」と、
心配そうにしながら、地下に続く長い通路を歩いていくー。

ここでは、世間から逃れた”憑依能力者”たちが
生活を続けているー。

「ー分かってるよ。捕まったら”処分”されて終わりだからなー」
涼介はそう言葉を口にすると、
地下通路を真梨香と共に真っすぐ進んで、
奥にいた子供たち数名に「ほら、お菓子も買って来たぞ」と、
そう言葉を口にするー。

そして、別の場所にいた大人たちにも
「こんなものしか手に入りませんでしたけど」と、
少し申し訳なさそうにしながら”地上”で手に入れた
食料の数々を手渡すー。

「ーーいつもありがとうねー。
 わたしも地上に行ければいいんだけどー」
地下で暮らすおばあさんがそう言葉を口にすると、
涼介は「いえ、いいんですー」と、そう言葉を返すー。

この”地下”で暮らしているのは、
全員”憑依能力”を持つ者たちー。

今、この世界では”憑依能力”を持って生まれた人間は
”処分対象”とされ、生後、憑依能力持ちであることが
発覚した時点で”処分”されることになっているー。

しかし、そうなる前から生きている高齢の憑依能力者や、
生まれてからしばらくの間、憑依能力が発覚せず、
結果的に処分されずに生き延びている者ー、
そして”我が子”に憑依能力が判明した段階で、
そのままでは処分されてしまうため、
子供を逃がす親もいるために、
”処分を逃れた憑依能力者”たちがそれなりの人数、
存在していたー。

とは言え、憑依能力者たちは
発見されれば”処分”されるー。

既にこの世界では憑依能力者たちは
”人間”ではなく”化け物”の類の扱いを受けるようになっていて、
バレれば、無慈悲にも命を奪われてしまうー。

そんな状況下であるために、
憑依能力者たちはこうして”世間から離れた場所”で
生活を余儀なくされていたー。

この地下施設はそんな”憑依能力者たちの隠れ家”の一つー。

他にも山中だったり、森の中だったり、廃墟地帯だったり、
そういった場所にも”憑依能力者たちの隠れ家”が点在している状況だ。

涼介・真梨香も、
そんな”憑依能力持ち”の人間で、
涼介は生後間もなくして憑依能力を持っていることが検査で判明、
そのまま処分されそうになったものの、
親が涼介を逃がしたことで、今、こうしてこの場にいるー。

ーもっとも、涼介の両親は、
憑依能力者であった赤ん坊…当時の涼介を逃がしたことで、
その後捕まり、死刑となってしまっているー。

一方の真梨香は、
生後、検査には引っかからずに
普通の人間と同じように過ごしていたものの、
ある時、学校で”自分が憑依能力を持っている”ということに気付き、
そのまま学校を抜け出して逃亡ー、
以降、家には一度も帰っておらず、こうして
避難生活を続けているー。

「ーーわたしたち、この先もずっとこんな生活なのかなー」
ふと、真梨香が悲しそうな表情を浮かべながら
そう言葉を口にすると、
涼介は「真梨香ー…」と、心配そうにその名前を口にしながら、
真梨香の方を見つめるー。

涼介と真梨香はお互いに”憑依能力者”ー。
しかし、これまでの境遇には決定的な違いがある。

それはー”憑依能力を持たない人間”ー、
つまり、”普通の人間の生活”を知っているかどうか、だー。

「ーーそういえば、”また”取り締まりが厳しくなるかもしれないー」
ふと、そんな声が聞こえたー。

「ーー足立(あだち)さんー」
涼介がそう言葉を口にすると、
”憑依能力者”たちが隠れて暮らす拠点の一つー、
この地下施設のリーダー的存在、足立 祐也(あだち ゆうや)の
方を見つめたー。

裕也は40代の男で、頼れる雰囲気に、見た目通りの統率力で
この地下で暮らす人々をまとめているー。

「ーーそれは一体どういうことですかー?」
回収してきた食料を手に、涼介がそう確認すると、
裕也は「”黒”の奴らのせいだー」と、そう言葉を口にしたー。

”黒”とは、憑依能力者を持つ者たちの間で
主に使われる言葉で、
”憑依能力を悪用する人間たち”のことを示す言葉だー。

憑依能力を悪用する人間=”黒”の能力者たちは、
未だに点在していて、
憑依能力者たちを根絶する流れになった今でも、
以前ほどではないものの、各地で”憑依”されて、
人生を滅茶苦茶にされる人間が増えているー。

「ー昨日、憑依能力者の取り締まりを委託されている
 大企業のトップの娘が憑依されたらしいんだー。
 それで、政府もその企業のトップも
 憑依能力者の取り締まりを一層強化する流れになったー」

裕也がそう言葉を口にすると、
昨日起きたという事件の映像をパソコンで再生したー。

”ーーへへへへー
 お前ら、”憑依”の力を甘く見てるんじゃねぇぞ”

憑依されたお嬢様風の女が、そう言葉を口にしながら
自分にナイフを突きつけているー。

憑依能力者の取り締まりを委託されている企業トップの娘が、
憑依されてその父親を脅している映像だー。

それを見つめながら涼介と真梨香は表情を曇らせるー。

”へへへへーお前の娘は今じゃ俺のおもちゃだー
 こんなことだって、あんなことだって、好き放題さー”

憑依されたお嬢様はそう言葉を口にすると
父親の前で胸を揉んで挑発的な笑みを浮かべているー。

「ひどいー…」
その映像を見ていた真梨香がそう呟くのを見て、
涼介も悲しそうな表情を浮かべるー。

確かに、涼介も真梨香も
”憑依能力者”を弾圧するような今の世界には
不満は勿論あるー。

けれど、こういう”黒の能力者たち”の所業を
見せ付けられると、複雑な気持ちになってしまうー。

”えへへへへ~今からわたし、処刑されちゃいま~す!”
映像の中のお嬢様が嬉しそうにそう言葉を口にすると、
”やめてくれ!”と、そう叫ぶ父親の前で、
憑依されたお嬢様は笑いながら、自分自身を”処刑”するために
ナイフを自分に向けて振るったー。

映像はそれで途切れー、
地下の隠れ家のリーダー的存在・裕也が
「ーこれを受けて、政府も、関係者も憑依能力者の
 取り締まりを一斉に強化してしまったー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーーーそうですかー…」
涼介は暗い表情でそう言葉を返すと、
裕也は「今朝、別の隠れ家から連絡が途絶えたらしいという
話も聞いた」と、そう言葉を続けるー。

このグループとは直接の関係性はないものの、
どうやら、”憑依能力者”たちの隠れ家の一つが、
今朝から連絡が取れない状況が続いているらしいー。

「ーーそこにいた人たちはー…」
真梨香がそう確認すると
裕也は「分からないがー、見つかったのならば恐らくー」と、
そんな言葉を続けたー。

「ーー憑依能力者は、全員処分されるー…」
近くにいた憑依能力者の女が、険しい表情でそう言葉を口にすると、
その場にいた全員がしばらくの間、沈黙したー。

その沈黙を打ち破るかのように、裕也は
「うちは徹底した情報の遮断を行っているから、大丈夫だとは思うがー、
 君も、しばらくの間は地上に食料を探しに行かない方がいいー」と、
涼介に対して言い放つと、涼介も「そうですねー」と頷いたあとで、
しばらく落ち着くまでは地上に向かうことを控える、と、
そう言葉を口にするのだったー。

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その数日後ーーー

「ーーーここの食料にも限りがあるからなー…
 また、近いうちに地上に行かないとー」

涼介がそう言葉を口にすると、
地下の休憩スペースで、一緒に話をしていた彼女・真梨香が
「今度外に出るときはわたしも一緒にー」と、そう返すー。

「いや、だめだーそれは危険だー」
涼介が真梨香の同行を止めようと、そう呟くと、
真梨香は「でもー、涼介を一人にはー」と、
そう返事を仕掛けたー。

しかし、その時だったー。

地下の隠れ家の”入口”の方から悲鳴が聞こえたー

「なんだ!?」
涼介が驚いたような表情を浮かべると、
その直後、”銃声”が地下に響き渡ったー。

”逃げろ!!!対憑依治安維持局が来たぞ!!!”
そんな声が地下の隠れ家内に響き渡るー。

対憑依治安維持局ー。
憑依能力者根絶を専門とした特殊機関ー。

その舞台が、涼介らのいる隠れ家に入り込んで来たのだったー。

②へ続く

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生まれつきの憑依能力者たちが
弾圧されている世界の物語デス~…!!!

続きはまた明日~!!

今日もありがとうございました★!

続けて②をみる!

「能力者たちを根絶せよ」目次

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