ある時代ー、
周囲から美男子と呼ばれる二人の剣客がいたー。
しかし、そのうちの一人が悪事に加担しようとしていることを知った彼は
宿敵が悪の道に堕ちてしまうのを阻止するべく、
自分自身を道連れに”女体化”のための秘薬を用いて…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お、お前…お前は元々女だったのかー…」
困惑の表情を浮かべながら、
女体化してしまった秀がそう言葉を口にすると、
宿敵・ユウリは「てっきり君は気付いていると思っていたが…」と、
呆れ顔でそう言葉を口にするー。
その言葉に、女体化した秀は気まずそうな表情を浮かべながら
「い…いや…ぜ、全然…」と、それだけ言葉を吐き出すと、
「ー俺と同じで、”女みたいだー”って言われてる男かとー…」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーはぁ……君は本物のバカだなー」
ユウリは首を横に振りながら”やれやれ”と、言わんばかりの表情を
浮かべるー。
そんな反応に、秀は
「い、いや、気付かないだろ!!大体、お前が周囲から
美男子扱いされていても、全然否定もしないから!」と、
可愛くなってしまった声でそう叫ぶー。
「ーーーまぁ…僕も、隠しているようなところはあるからなー」
ユウリは少しだけ申し訳なさそうに言うと、
「ー聞かれれば嘘をつくつもりはないがー、聞かれなければ
わざわざ女だと言うつもりもないー」と、それだけ言葉を口にして、
持っていた細剣をしまったー。
「ーー…ど、どうしてそんなー」
女体化した秀がそう言葉を口にすると、
ユウリは「”剣客”は男でないと舐められるからなー。だからわざわざ説明しないー。
それだけだ」と、そう続けるー。
確かに、秀はユウリの世界ではー…
この世界では”戦うのは男”だと、そういう価値観が染みついているー。
そのため、”剣を振るう人間”も、男でなくてはならないという
古い価値観に縛られている人間もいるし、
実際に、女剣客はこの世界では依頼が舞い込みにくいー。
だからこそ、ユウリは”嘘”をつくつもりはないものの、
”聞かれなければ”「僕は女だー」とは言わないようにしていたー。
一人称が”僕”なのは、彼女自身が三人の兄と共に育った影響もあるものの、
”声”に関しては剣客として戦う際に相手に”凄み”を見せ付けるために
意識的に低く喋っていたー。
そういったこともあって、宿敵である秀自身も、
ユウリのことをずっと”自分と同じような美男子”系の男であると
思っていたし、
それだけではなく、ユウリが出入りしている悪党”剛刃団”も、
男の出入りしか許していないと言うのに、
ユウリのことを男だと思い込んで、普通に出入りさせていたー。
「ーーー……」
じ~っと、ユウリのほうを見つめる秀。
「なにか?」
ユウリは視線が胸元に注がれているのに気づき、
「ー僕が本当に女か疑っているのか?」と、そう言葉を口にするー。
秀は苦笑いしながら頷くと、
ユウリは「やっぱり君は馬鹿だな」と、呆れ顔で首を横に振ると、
「ーーもちろん僕は最初から女だったけど、
仮に僕が本当は男だったとしても、君がさっき変な薬をまいた時点で
僕は君と同じように女になってるはずだー。
だから、元から女かどうかなんて、確認できうないだろ?」と、そう説明するー。
「ぐ、ぐぬぬー…」
女体化した秀は、悔しそうな表情を浮かべながら
それだけ言うと、
秀は振り絞るように言葉を続けたー
「バ、馬鹿だって言われても
俺はお前が、剛刃団なんかと、つるんでいるのを
見てられなかったんだよー」と、
感情を吐き出すー。
剛刃団は”男”だけで構成されている盗賊団で、
入団だけではなく、アジト内に男子以外が入ることも
禁じているという”男だけ”の掟を徹底して
守っている組織だー。
「ーーー僕を男だと思い込んでた君は、
僕が女になれば、剛刃団のアジトに入れなくなるって
そう考えたわけか」
ユウリはため息を吐き出すと、
少しだけ笑みを浮かべながら続けるー。
「でも、残念だったねー。女の僕でも、
普通にあのアジトに入ることができたー。
君と同じで、あの人たちも僕のことを男だと思ったようだよー」
とー。
「ーーーーぐぐぐぐぐぐ…」
秀のしたことは、”無駄に自分が女体化しただけ”ー。
そんな結果になってしまったことに、
秀は悔しそうな表情を浮かべると、
「ーーだ、だ、だったらー、
力づくでもお前が”剛刃団”とつるむのを
やめさせてやる!」と、剣を構えようとするー。
しかしー、秀が使っている剣は、どちらかと言うと、
”大型の剣”であったために、
女体化した秀の身体では、
”重く”感じられてしまったー。
「ーーー」
ユウリは少しだけ、そんな秀の様子を見ると、
「重いのか?」と、そう指摘する。
指摘された女体化した秀は悔しそうに
「ーお、お、重いよ!!お前のせいだからな!」と、
ユウリを指差すと、
ハッとした様子で、ユウリが持っている細剣のほうを見つめるー。
「お、お前ー…!
そ、それでそんな細い剣を持っていたのか!」
秀は、ユウリがずっと”細剣”を使っていた理由に
今更気付くと、
そう言葉を発するー。
そんな指摘にユウリは
「ふふー、まぁ、そういうことだねー
大型の剣はどうしても僕たち女にはー
よほど屈強な女ならともかく、
そうじゃないと腕に負担がかかり過ぎるからねー」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーっ…くそっー…」
秀は悔しそうな表情を浮かべながらそれだけ言葉を口にすると、
ユウリは笑いながら
「まぁ、でも、僕が悪党たちと組むのを君が嫌がってくれているってことは
分かったよー」と、どこか嬉しそうに、
そして、揶揄うような表情でそう呟くと
「ただー、やっぱ君は馬鹿だ」と、そう付け加えたー。
「なんだと!?」
女体化した秀が、悔しそうな表情を浮かべながら、
ユウリのほうを睨みつけるー。
すると、ユウリは
「その可愛い顔で睨まれても迫力がないよ」と、揶揄うように言葉を口にすると、
秀も、「お、お前だって、女だと聞いたら可愛く見えて来たぞ!!」と、
そんな言葉を返すー。
そんな反応にユウリは少しだけ苦笑すると、首を横に振ってから、
「僕は剛刃団と組むために、剛刃団のアジトに出入りしていたわけじゃない」
と、秀からすれば信じられない言葉を口にしたー。
「な、な、なんだって?」
女体化した秀は、心底戸惑ったような、
裏返った声でそう反応すると、
ユウリは「僕はこの地域一帯を統治している大名から、
依頼を受けてねー。剛刃団に潜り込んで内情を探っていたんだー
彼らのアジトの位置、目的、構成員の人数ー
そういったものは内部に入り込まないと
なかなか全容は見えて来ないー」と、そう説明したー。
「ーなっ…に…?」
女体化した秀は、唖然とした表情を浮かべると、
信じられないという様子でユウリを見つめるー。
「簡単に言えば潜入調査だ。
僕があんな盗賊団に加わるような人間だと
思っていたのだとしたら、心外だなー」
ユウリがそう言葉を口にすると、
女体化した秀は「ぐ…ぐ…だ、だったら俺にも一言ぐらい言えよ!」と、
可愛い声で叫ぶー。
しかしユウリは「君は別に仲間じゃないし、言う義理はないー。
それに、仮に味方だとしても
”敵を騙すにはまず味方から”だと言うだろう?」と、
少し笑いながらそう言い放ったー。
それ以上、何も言い返せない秀ー。
女体化した秀は「くそっー」と、そう呟くと、
ユウリは少しだけ心配そうにー、
「しかし、君はバカとは言え、元々男だった君が女になるのは
色々やりにくいこともあるだろう?」と、そう呟くー。
「元に戻ることができる方法はあるのか?」
ユウリのそんな言葉に、
秀はなおも悔しそうにしながらも、
「ーーある…あるからお前に心配されなくても大丈夫だー」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーなら、いいが」
ユウリはそれだけ口にすると、
「ー僕は剛刃団の調査を続けるー。邪魔だけはするなよ?」と、
そう忠告すると、そのまま立ち去って行ったー。
「はぁ」
女体化した秀は一人ため息をつくと、
性別を勘違いした挙句、ユウリが剛刃団のアジトに出入りしていた
理由も早とちりしていたことを
少し恥ずかしく思いながら、静かに首を横に振るのだったー。
そしてーー…
その翌日ー、
秀は、”転換の薬”を分けてくれた忍の隠れ里に向かうー。
がーーー
「ーーえっ…」
女体化した秀は、隠れ里の方向から火の手が上がっていることに
気付いて青ざめるー。
慌てて、隠れ里のある方向に走っていくと、
呆然とした表情で秀はそれを見つめたー。
忍たちの隠れ里に入ると、
既に忍たちや、住んでいた者たちが殺されている状態だったー。
ここの忍たちは優秀な者たちばかりだー。
しかし、あくまでも隠密的な行動が中心で、
実際に直接戦うことは専門ではない上に、
人数はそんなに多くなく、”戦闘要員”である忍は限られていたー。
そんな、忍たちの隠れ里が襲撃されて
焼き尽くされてしまったのだー。
「ーーそ、そんなー…」
この隠れ里には”男体化”するタイプの薬も存在していることを、
里長から聞いていた秀は
それを使えば、男に戻ることができるとそう思っていたー。
がーー
隠れ里が焼き尽くされー、
男に戻るための薬も、その技術も焼き尽くされてしまった今ー、
秀が”男”に戻るための方法は
失われてしまったー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー」
女体化したままになってしまった秀は
悔しそうにしながら、
短剣と体術を組み合わせた特訓を行っていたー。
女体化した自分の身体では、
今まで使っていた大剣を振るうことはどうしても
難しく、体力が持続しないことに気付いたために、
新しい戦闘スタイルを確立しようとしていたー。
もちろん、ユウリが使っている”細剣”も試したものの、
細剣は自分に合わなかったため、
ユウリとはまた別の道を進むことにしたー。
「ーーくそっ…!奴らめ…!」
女体化した秀は、怒りに震えながら
慣れない身体で修業を続けるー。
自分が女体化してしまったまま、
”元に戻れなくなってしまった”という状況に
されてしまったことに対しても、
当然怒りは感じているー。
が、それ以上に、世話になった忍の隠れ里が、
滅ぼされてしまったことに
強い怒りを感じていたー。
秀が世話になった隠れ里ー…
そこを滅ぼした張本人はー…
”剛刃団”たちだったー。
ユウリが調査を進めていた例の盗賊団だー。
盗賊団の狙いは、隠れ里のお宝だった模様で、
秀が女体化の薬を貰ったことや、
ユウリが潜入調査していることとは無関係で、
たまたま狙われただけであったものの、
いずれにせよ、結果的に
秀がお世話になった人々が死に、
そして女の状態から元に戻ることができないという
そういう結果をもたらすことになってしまったー…。
「ーーくそっ!!俺がみんなの仇をとってやる!」
女体化した秀が、なおも悔しそうに修行を続けるー
が、そこに”宿敵”であるユウリがやってくると
「不慣れな身体で、剛刃団に一人で挑むつもりか?」と、
そう言葉を口にしたー。
振り返った秀は、少し不満そうにしながらユウリのほうを
見つめると、
ユウリは「やっぱり、君はバカだな」と、そう言葉を口にしたー。
「うるせぇ。剛刃団が強いのは分かってるー
でも、俺はこのまま引き下がることはできねぇ」
女体化した秀はそう言うと、
ユウリはため息を吐き出したー。
「ーー僕も行こう」
とー。
「あ?」
秀がそう答えると、
ユウリは「僕を救おうと勘違いして一人で女体化した挙句、
そのせいで男に戻れなくなって、一人で犬死しようとしているバカを
放っておくことはできないんでね」と、そう答えるー。
その上で、ユウリは秀を見て言ったー。
「僕も、宿敵の君には死んでほしくない」
とー。
「ーーー」
秀は少し驚いた表情を浮かべると、
「ーへっ」と、笑うと、
「ーーじゃあー美男子ーいや、”女同士”で、盗賊退治と行くか」と、
そう言葉を口にしながら、ユウリと共に
夜の道をゆっくりと歩き始めるのだったー。
おわり
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コメント
女体化したまま元に戻ることができなくなってしまう
結末でした~★
でも、二人のライバル関係(?)はこれからも続きそうですネ~!
お読み下さり、ありがとうございました~!★!
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