<憑依>返さなきゃお前の知り合いでバンドを作るぞ①~借金~

借金を返せずに、逃げ惑っていた男。

しかしある日、借金取りの男は言ったー。

”これ以上返せないなら
 お前の知り合いでバンドを作るぞ”

とー。

意味が分からず、その言葉を無視していたものの…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー幸助(こうすけ)!
 また、競馬始めたんじゃないでしょうね???」

2つ年上の姉・石倉 真桜(いしくら まお)が
呆れた表情を浮かべながらそう言葉を口にすると、
大学卒業後、就職したものの上手く行かずに退職、
現在はフリーターとして働いている20代中盤の弟、
石倉 幸助は苦笑いしながら競馬中継を見つめつつ
「いやいや、もうしないって姉さんー。安心してよ」と、
そんな言葉を返したー。

幸助は半年ほど前まで、
競馬にのめり込みすぎて、
大金を使ってしまい、借金まみれになってしまっていたー。

そのことが両親や姉にも発覚ー、
散々叱られて”もう競馬はやらない”と、
そう約束させられて、今に至っているー。

「ーーホントに~?じゃあ何で競馬見てるの?」
疑いの目を向ける姉の真桜。

すると、幸助は苦笑いしながら
「競馬は買うだけじゃないんだってー。こうやってただ単に眺めて
 馬を応援するって楽しみ方もあるんだー」と、
そう説明するー。

「ーホントに~……????」
さらに疑いの目を向ける真桜。

「ーまぁまぁ、もう借金は返せたんだし、いいだろ?」
幸助はそう言うと、”それに、ホントにもう競馬にお金を使うのはやめたし”と、
そう言葉を口にすると、
真桜は「あんたみたいに無計画にお金を注ぎ込むような人は
やらない方がいいよね」と、そう言葉を返したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ーーコウちゃんさー、
 俺がコウちゃんの家に行かないであげている理由、分かるよね?

 ーー俺は優しいからさー。情けってやつだよ”

幸助は部屋に戻るとスマホを見つめながらため息を吐き出すー。

”でもさ、そろそろいい加減に返してくれないと、
 優しい俺もさ、流石にキレちゃうわけ。分かるよね?”

続いて届いたそんなメッセージを見て、幸助は青ざめると、
すぐに
”来月にはまた一部を返済しますからーもう少し待ってくださいー”
と、そんな返事を送るー。

「ーーーーー」
青ざめた表情のまま、メッセージの返信を終えると
幸助はため息を吐き出して首を横に振るー。

借金の原因を作ってしまった”競馬”に
お金をかけるのは本当にもうやめたー。
姉・真桜にも嘘はついていない。

勿論、幸助が借金まみれに競馬自体のせいではないし、
馬が悪い訳でもない。
幸助自身の意思の弱さ、計画性のなさが原因だー。
幸助自身もそれは理解しているし、”くそっ…!馬どもめ!”などと
言うつもりはないー。

ただーーー

両親や姉・真桜には”借金は返した”と、
そう説明している幸助はスマホの画面を今一度見て青ざめるー。

そうー、彼はまだ半年前に作った莫大な借金を
返済することができていないのだー。
何とか、借金取りの男を誤魔化しながら、コツコツと借金を
返してはいるものの、時間稼ぎももう”限界”のところまで
来ていたー。

「ーーーーあぁ、くそっー…
 これ以上どうすればー…」

そう言葉を口にしながらも、
ちょうどそのタイミングで、
”彼女”である伊藤 愛梨沙(いとう ありさ)から
メッセージが届いたのを見て、
「ーーえへー」と、すぐに悩むのをやめて
”ま、借金はどうにかなるだろ”と
楽観的な考えをし始めてしまうー。

これもまた、彼のダメなところの一つー。

彼女である愛梨沙は、幸助の幼馴染で
幸助のダメなところは理解し、苦言を呈してはいるものの
見捨てることなく、今も支えてくれている
幸助からすれば女神のような存在だー。

競馬で借金を作ってしまった時には
もちろん怒られたものの、
それでも愛想を尽かすことはなく、
今もこうして支えてくれている状態だったー。

ただー、幸助は当然のことながら
この”愛梨沙”にも借金は返済できていると嘘をついていて、
本当はまだ、借金が残っていることを隠し続けているー。

けれど、幸助は時々そのことを心配しつつも、
”何とかなるだろ”と、楽観的に考えすぎてしまっていたー。

そして、その翌日ー。

バイト帰りに幸助は”借金”を十分に返済することなく、
先延ばしにしてきたことを後悔する事態に陥ってしまっていたー。

「よぅコウちゃんー。お疲れ」

「ーー!」

バイト帰りだった幸助は真っ青になるー。

それもそのはずー。
幸助の前に姿を現した軽そうな雰囲気の男は、
借金取りの男、御手洗 省吾(みたらい しょうご)だったからだー。

「ーーぇ、えへー…どうも、御手洗さんー」
幸助は青ざめながらそう言葉を口にすると、
省吾は笑いながら、
「コウちゃんさー。これから”ライブ”見に行くんだけど、
 一緒に行かない?」と、軽い口調でそう言葉を口にするー。

幸助は「え、えへへー…は、はい、喜んでー」と、
笑顔でそう返事をするー。

借金取りの省吾から”ライブを見に行かない?”と言われたら
その返事の選択肢は「はい」と「イエス」しか存在しない。
つまり、断ることはできないのだ。

省吾の運転する車に乗せられて、
幸助は青ざめながら省吾と雑談を続けるー。

「ところでさ、コウちゃんさー
 俺、コウちゃんの家にも職場にも行ってないよね?
 優しいと思わない?
 ずっと、十分に返済されてないのにさ」

「は、ははははーで、ですねー
 まるで仏様みたいですー」
幸助は真っ青になりながらそう答える。
正直、恐怖のあまり漏らしそうだ。

必死にそれを堪えながら、
笑顔で受け答えをすると、
「ーだよなァ」と、借金取りの省吾はそう言いながら
「お、見ろよ ついたぜ、ライブ会場」と、
そう言葉を口にするー。

が、その”ライブ会場”とやらは看板も出ておらず、
怪しい感じだー。

中に入ると、そこにはツインテールの美少女と、
ポニーテールの大人しそうな子、そして一人だけ
中年の女性がロック系の曲を演奏していたー。

「ーぉ~う、やってるねぇ」
省吾はそう言うと、部下らしき男に
「どう?」と、そう声をかけて
何やら雑談を交わしているー。

そして、その会話が終わると
幸助に向かって
「ほら、俺の隣座りなよコウちゃん」と、
ボロいパイプ椅子を指差して
そう言葉を口にしたー。

美少女二人と中年女性一人の謎のバンドー。

その演奏を聞かされながら
身体を震わせるー

”意図が分からない”ー
借金取りの省吾が、何をしたいのか分からず、
逆に恐怖に震えていたー。

バンドとして演奏している三人はー、
三人ともとてもバンドをするような感じの雰囲気のある子には見えないー。

もちろん、人を”見た目”だけで判断するのはアレだけれども、
それでも、何やら見た目と中身にギャップを感じるー。

「あの三人は、母親と娘二人だ」
隣に座ってバンドを見ていた省吾が言うー。

「ーーえ…?お、親子ー…?はは…すごいですねー」
幸助はなおも震えながらそう答えるー。

「ーーへへ。だろ?
 でさ、こいつらの”夫”は今どうしてると思う?」

バンドの演奏を満足そうに見つめながらそう言葉を口にする省吾ー。

だんだんと、幸助は省吾が何を言いたいのか、
予想がついてきてしまって、額から汗を垂らすー。

二人の娘にとっては父親、そして母にとっては夫であった男は
今、どうしているのかー。
恐らく、自分と同じように、この男たちに借金をしていて、
既にこの男たちによってー…

「あぁ、あぁ、そんな青ざめるなって
 死んでねぇよ」

省吾は笑いながらそう言うと、
「夫は生きてる。俺たちが拘束したりもしてねぇし、
 健康だ。安心しただろ?コウちゃん」と、
幸助の肩をポンポンと叩きながら、気さくな雰囲気で
そう言葉を口にするー。

「は、はははー…そ、そ、そうですかー」
幸助はなおも青ざめながら死んだ笑顔で
そう言葉を口にすると、
省吾は言葉を口にしたー。

「で、あの三人は、何でバンドなんか始めたと思う?
 3人はついこの間までさ、楽器なんか触ったことも
 興味もなかったんのにさ」

省吾は笑いながら、
楽器を楽しそうに演奏している三人を見つめるー。

借金があった男の二人の娘と、妻ー。
その三人が、激しく演奏している姿は
どことなく、見た目の雰囲気とズレを感じるー。

「ーー……え………えっとー」
幸助は震える。

三人を脅してやらせているのだろうかー。
それともー…?

そんな幸助に対して、省吾は「へへへ」と笑うと、
「ま、コウちゃんもさー、
 金、返せば”こういう風には”ならないから安心しなよ」と、
幸助をポンポンと優しく叩きながら、言葉を口にする。

そして、その上でこう言葉を続けたー。

「でも、返さなきゃ
 お前の知り合いでバンドを作るからなー?」

とー。

「ーーえっ…え…へへー…
 お、俺の知り合いはー…バンドには興味ないと思いますよ」

幸助は、今、ステージ上で演奏している三人の女が
”どういう状況”にあるのか理解しないまま
そう言葉を口にすると、
「ーへへへへへ。コウちゃんは相変らず楽観的だねぇ」と、
借金取りの省吾は笑うー。

そして、それ以上は何も言わずに
ステージで演奏する三人を満足そうに見つめるとー
”コウちゃんは理解してねぇんだろうなー。
 借金取りの男と娘二人と妻ー
 この三人が俺の仲間に”憑依”されて
 身体を乗っ取られているー…なんてなー”
と、心の中でそう呟くー。

そう、今、バンドを組んでいる三人の女は、
”憑依”されてその身体も心も乗っ取られているー。

借金を返さなかった”夫”、二人の娘からすれば”父”である男への
”罰”として、三人の身体を貰ったのだー。

奪った身体に”バンド”を組ませているのは
省吾が元々音楽が好きであることー、
そして、裏の世界で生きる者たちを相手に
ライブを開催して、資金源にするためだー。

「ーーーいい演奏だったろ?コウちゃん」

憑依された三人によるライブが終わると、
省吾は立ち上がって、三人に拍手を送りながら
そう言葉を口にするー。

その上で「来週まで待つからさー。頼むよ?コウちゃん」と、
再度、借金を返すようにそんな言葉を口にするのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

しかし、幸助はあくまでも”楽観的”だったー。
愚かなほどにー。

「ーー御手洗さんって意外といい人なんだよなー
 昨日もライブ、無料で見せてくれたしー」

ご機嫌そうにそう呟きながら、幸助は
今日もバイトに向かう準備を始めるー。

「ーねぇ、昨日、帰り遅かったみたいだけど、
 ーどこで遊んでたの?」
OLである姉の真桜が会社に向かう準備を整えながら
そう言葉を口にすると、
「えっ、あ~、へへー競馬じゃないよ?」と、
借金を作った原因である競馬のことを口にする幸助ー。

その上で、”借金取りとライブを見に行ってた”などとは
口が裂けても言えず、「え、え~っと、愛梨沙とちょっとー」と、
幼馴染であり、彼女である愛梨沙の名前を口にして、
愛梨沙と会っていたのだと誤魔化すー。

「ーーー……まぁ、それならいいけどー…」
姉・真桜は少し疑いの視線を向けながらも
「わたし、そろそろ行かなくちゃ」と、そのまま会社へと
向かって行くー。

それを見送ると幸助は、
「あ~、そうだ、今日は大場(おおば)さんとだー」と、
コンビニバイトの後輩・大場 明日香のことを思い浮かべながら
彼女がいるのに、少しだけニヤニヤとしてしまうー。

そして、そのままバイトに向かう幸助ー。
もちろん、幸助に膨れ上がった借金を返すお金などないー。
バイトはしているものの、それだけで返せるような金額ではなく、
”来週までに”と、省吾に言われたものの
返すつもりはもちろんなかったー。

また借金取りの”御手洗さん”が来たら
適当に誤魔化せばいい、とそう考えているー。

しかしーーー

「ーー御手洗さんー
 憑依対象にできそうなのは、姉と彼女とー…
 あとは、もうしばらく監視しますー」

既に、幸助は”身の回りの憑依対象”を選定するために
監視されていることに気付いていなかったー…

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

2月最初のお話デス~!!

なんだか、いきなりとんでもない題名(?)のお話ですネ~!

改めて、今月もよろしくお願いします~★!

続けて②をみる!

「返さなきゃお前の知り合いでバンドを作るぞ」目次

コメント