<憑依>ナイトメアクリスマス①~聖夜~

クリスマス当日ー。

彼はいつも、とあるクラスメイトを馬鹿にしていた。
しかし、その馬鹿にしていたクラスメイトに
自分の彼女が憑依されてしまい…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーへへへへ 杉田(すぎた)ー
 お前、どうせ今年もクリぼっちだろ?」

男子生徒の山内 凌馬(やまうち りょうま)が、
そんな言葉を口にしながら、
大人しそうな眼鏡の男子生徒・杉田 紀明(すぎた のりあき)を
揶揄っているー。

「ーぼ、ぼ、僕はー」
紀明が、少し悔しそうにしながらも、
オドオドとそう言葉を口にすると、
「へへへへーやっぱ杉田はクリぼっちか!」と、
凌馬は”わざと”大きな声でそう言葉を口にするー。

凌馬はいつも、大人しい性格の紀明を揶揄っているー。

凌馬としては、紀明のことを嫌っているわけではなく、
単純に”面白い”と、そう思って揶揄うようなことを続けているー。

そのためー、
直接的に暴力を振るったりすることはないし、
モノを隠したりとか、実害が及ぶようなことは決してしないー。
場合によっては、紀明のことを助けるようなこともあるー。

ただーー
揶揄いの度が過ぎているー。

「ーまぁ、杉田みたいなやつはモテないもんなー。
 残念だけど、諦めろー
 へへー」

凌馬はそれだけ言葉を口にすると、
「ークリぼっちの連続記録更新、おめでとう!」と、
わざとらしく拍手してから、
「ま、何事もポジティブに考えないとな!」と、
ニヤニヤしながらそう言葉を口にするー。

「う、うんー…」
紀明は震えながらそう答えるー。

凌馬としてはー、これも
”前向きに考えようぜ”という励ましのつもりで、
仮に自分自身がクリぼっちだったとしても、
「連続記録更新だぜ!!!」と、自分で自分に拍手をするようなー、
そんな人間だー。

ただーー…
”彼女”がいる凌馬から、そんな言葉を受けた紀明は
”僕を馬鹿にしやがってー”と、そんな風にしか思えなかったー。

紀明がネガティブな性格の持ち主だからー、というのもあるかもしれない。

ただ、励ましの言葉のつもりでも、凌馬の振る舞いや
言い方が不器用すぎるのは事実だったし、
そもそも、紀明のことを嫌ってはいないものの、
心のどこかで紀明のことを馬鹿にし、
”俺より下がいる”という安心感に浸っていたのも事実かもしれないー。

「ーーもうやめなよ~!!
 美月(みつき)に言っちゃうよ~?」
見かねた周囲の女子生徒の一人が、そう言葉を口にすると、
「ーうわっ!それはやめてくれ!」と、凌馬は慌てた様子で言うー。

”美月”とは、
二つ隣のクラスの女子生徒ー、森内 美月(もりうち みつき)のことだー。

「ー俺は、杉田を励まそうと思ってー」
「励ましになってないよ~!バカにしてるだけじゃんー」

ツッコミを入れて来た女子生徒に対して
色々な釈明を口にしながら、凌馬はそう言葉を口にすると、
「あ、そうだ!杉田!クリスマスの予定は?」と、
紀明のほうを見つめながら言うー。

「ーえ…あ、うんー…
 僕はーー……家族でケーキを食べてー
 あとは…スマホでやってるゲームでクリスマスイベントがあるからー」
と、そう答えるー。

それを聞いた凌馬はニヤニヤしながら、
「へへー。俺は彼女と過ごすぜ!」と、自慢気にそう言葉を口にすると、
「美月のサンタコスーすっごい可愛いんだよなぁ」と、
去年のクリスマスを思い出しながらのろけ話を始めてしまうー。

”完全に馬鹿にしているー”
そんな態度だー。

「じゃ、ぼっちのクリスマス!楽しめよ!」
凌馬はそう言葉を口にすると、
意気揚々と自分の座席の方に戻っていくー。

そんな凌馬の後ろ姿を見つめながら、
紀明はギリギリと歯軋りをすると、
”僕を馬鹿にしやがってー”と、そう言葉を口にしたー。

凌馬としては、紀明の予定を聞いたのは、純粋な好奇心ー。
紀明の返事を聞いてニヤニヤしていたのは
”家族でケーキにスマホでゲーム”を聞いて、内心で
”へへー結構いいじゃん”と思いながらニヤニヤしていたー。
”彼女と過ごすぜ”も、馬鹿にした意図はなく、
彼としては単純に”人にクリスマスの予定を聞いたから自分も答える”という
だけのつもりだったー。

ただーー彼は、壊滅的に誤解されやすい態度を取ってしまう人間で、
実際にこれまでにもその振る舞いが災いしたこともあったー。

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昼休みー。

彼女である美月と合流した凌馬は
楽しそうに美月と話をしているー。

「ーーうん!じゃあー、イブの日は
 一旦家に帰ったら凌馬の家に向かうねー」
穏やかに笑う美月ー。

美月はとても可愛い容姿の持ち主で、
性格面も、とても優しいー。
生徒会の副会長を務めているほど、真面目な子だー。

そんな凌馬と美月が付き合い始めた頃には
”何でお前が森内さんとー”と、クラス内に不満の声も
上がっていたほどだー。

ただ、凌馬は本当に美月のことを大事にはしていたし、
凌馬自身のデリカシーのない振る舞いで美月を困らせたり、
悲しませてしまった際には、必死に謝ったりしつつ、
良好な関係を続けていたー。

美月自身は、凌馬の”人を馬鹿にしているような振る舞い”は
苦々しく思いながらも、
そこは叱りつつ、他の部分には不満はないために
付き合いを続けているー。

がー、クラスが違うために、
凌馬がいつも紀明のことを揶揄っているような状態に
なっていることは、美月自身も知らなかったー。

「ーーーーーー」
ギリッと歯軋りをしながら、
紀明は凌馬と美月のほうを見つめるー。

美月が、そんな視線に気付いて不思議そうな表情を浮かべると、
ちょうど、紀明のいる方向には背を向けて話していた凌馬が
「ん?どうした?」と、そう言葉を口にするー。

美月は少しだけ不思議そうな表情を浮かべたまま
「え?あ、うんー今、こっちをじっと見ている子がいたから、
 何か用だったのかなー?って思ってー」と、
そんな言葉を口にするのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして迎えたクリスマスイブー。

「ーへへへ~今日は楽しみだな~!」
凌馬が浮かれた様子で、紀明に声を掛けると、
「ー杉田もいいクリスマスを過ごせよ!」と、
そんな言葉を口にするー。

どこか、馬鹿にしたような言い方に
紀明は不満そうな表情を浮かべまま、返事をしないー

「おいおい何だよー?
 ”クリぼっち”なことなんて、あんま気にすんなよ。
 クリぼっちは恥なんかじゃない。堂々としてりゃいいんだ」

凌馬は励ますつもりでそう言葉を口にするー。

ただー、声が大きすぎて
まるで周囲に”コイツ、クリぼっちだぜ!”と、言っているようにも
思えてしまうし、
そもそも、紀明からすれば”リア充”の凌馬から
そんなことを言われても、ちっとも励ましになんて聞こえなかったー。

「ーーー俺だって、クリぼっちなんて気にしないしー」
紀明の怒りに気付かず、凌馬はそう言葉を口にすると、
「って、俺、リア充だったー」と、ギャグのつもりで
そう言葉を口にしたー。

周囲の生徒の一部が笑う中ーー

「ーーぶっ壊してやるー」と、
紀明が静かにそう言葉を口にしたことにはー
誰も、気付くことができていなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーお邪魔しますー」
サンタコスを身に纏ってやってきた美月を見て、
凌馬は「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!サンタさん!!!」と、
嬉しそうに叫ぶー。

美月らしい、派手過ぎない穏やかな感じのサンタコスー。
それを見て凌馬は心底嬉しそうに
はしゃいでいるー。

美月は苦笑いしながらサンタ衣装の上に羽織った上着を
寒そうにしながら少し触ると、
凌馬の母親に「あー、こんにちはー。お邪魔しますー」と、
ぺこりと挨拶をするー。

「ーあ、美月ちゃんー!凌馬、いつもうるさくてごめんねー」
凌馬の母親が苦笑いしながら美月にそう言葉を掛けると、
美月は「いえいえーいつも楽しませてもらってますー」と、
笑いながらそう返事をするー。

そのまま少し雑談を交わして、話を終えると
美月は2階にある凌馬の部屋へと向かって行くー。

凌馬の部屋にやってきた美月は、
凌馬が不器用ながら一生懸命用意したのだろうかー。
クリスマスっぽく飾り付けされた凌馬の部屋を見て
「わぁ…すごいー」と、感心した様子で言葉を口にする。

「ーへへ…すごいだろ?」
凌馬は照れ臭そうに得意気な表情を浮かべるー。

そして、二人は楽しいクリスマスイブのひと時を
過ごし始めるー…
はずだったー。

しかし、そこに”招かれざる客”がいたー。

”ーーー僕のことを馬鹿にしやがってー…”
そう、紀明だー。

凌馬にいつも揶揄われ続けていた紀明は
今日、この瞬間ー、
凌馬の部屋にいた。

楽しそうに会話を続ける二人を見下ろしながら、
怒りの形相を浮かべている。

「ーーそういや、俺のクラスに毎年クリぼっちの奴がいてさ~
 アイツも誘ってやれば良かったかなぁ」
凌馬が冗談めいた口調でそう言葉を口にするー。

凌馬としては本当に”一緒に楽しませてあげたい”という意味合いでは
あったものの、状況的にも、言い方的にも誤解を招くだけの
良くない発言ー。

それを聞いた美月も少し苦笑いしながら、
「ーあんまりそういうこと言っちゃダメでしょー」と、
叱りつけるように言うと、
凌馬は「わ、わりぃ…いや、でも、ホントにさ、一緒に楽しめれば
アイツだってー」と、そう言葉を口にすると、
「ークリスマスのデートに他の子を連れて来るのは、
 わたしたちにとっても、連れて来られる子にとっても良くないでしょ」
と、申し訳なさそうにそう言葉を口にしたー。

「そ、そうかー?」
戸惑う凌馬ー。

がー、それを聞いていた紀明はー…
復讐のためにネットで手に入れた憑依薬を使って
霊体となってこの部屋に潜んでいた紀明はー
怒りの形相を浮かべたまま、
自分の霊体を美月の身体に突進させたー

「ーーうっ…!?」
ビクッと震える美月ー。

「ーーえ…?」
凌馬が戸惑いの表情を浮かべるー。

ちょうど、凌馬に背を向けていた美月の
表情から笑顔が消えて、一瞬にして怒りに満ちた不愉快そうな表情に変わる。

「ーー…美月?」
美月が急に変な声を出したことに戸惑いながら、
凌馬がそう言葉を口にすると、
美月は不愉快そうな表情を浮かべながら振り返ったー。

「ーーえ…あ、い、いやー…ご、ごめんー
 変なこと言ってー」
凌馬は戸惑いの表情を浮かべつつ、
謝罪の言葉を口にするー。

てっきり、”クラスのクリぼっちを連れて来ればよかった”などと言ったことで
美月を怒らせてしまったのではないかと、
そう思っていたのだー。

しかしーー

「ーーーーー」
美月は不満そうにクリスマス仕様の部屋を見つめると、
「ーー別れよ」と、突然それだけ言葉を口にしたー。

美月に憑依した紀明自身も、
これが”初めての憑依”ー。

美月のような可愛い女子にー、
しかも、サンタコスを身に纏う子に憑依して
少なからずドキドキしているー。

しかもー、今、自分の口から”美月の声”が出たー。
そんな状況に激しくドキドキを感じていると、
凌馬は「えっ…い、今、何て?」と、震える声で言葉を口にしたー。

「だからー…別れようって言ったんだよ」
少し、自分の口調と混じってしまったような形で
そう言葉を口にすると、
「わ、わ、別れるー…って…?え…」と、
凌馬は学校では見せることのないような、
情けない表情を浮かべながらそう言葉を口にしたー。

「ーーこれで、”お前”もクリぼっちだね」
美月は怒りの籠った表情でそう言い放つと、
美月から初めて”お前”などと呼ばれたことにも驚きながら
凌馬は呆然とするー。

そして、美月に憑依した紀明は
部屋に用意されていたケーキを見つめると、
”どうせ僕の身体じゃないからいいや”と、そう思いつつ
ケーキを素手で掴んで雑に食べ始めたー。

「ーみ、美月ー…?」
彼女である美月の突然のおかしな行動に、
困惑の表情を浮かべる凌馬ー。

部屋に飾られたイルミネーションが輝く中、
凌馬は呆然とすることしかできなかったー…

②へ続く

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コメント

メリークリスマスデス~~!!!

今年もクリスマスモノを書いて見ました~!!
去年は入れ替わりだったので、
今年は憑依ですネ~!!!

皆様のクリスマスも、素敵なクリスマスになりますように…★!

続きはまた明日デス~!!

続けて②をみる!

「ナイトメアクリスマス」目次

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