10年間も、”皮”にされて乗っ取られていた彼女ー。
その事実を知らされ、絶望する中
入院生活を送っていたもののー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”これ、去年の同窓会の時のみんなの写真”
数日後ー。
入院を続けている純恋の元に、
晴美からそんなメッセージが送られて来たー。
去年の行われたのだという
高校時代の同窓会の写真を晴美が送って来てくれたのだー。
「ーーー…」
純恋はその写真を見つめながら
「わぁ……美姫(みき)ちゃんに、これはー…香織(かおり)ちゃんかなー?」と、
少しだけ明るさを取り戻して、
懐かしそうに写真を見つめるー。
”去年の同窓会”ー
つまり、純恋が乗っ取られた時点から
9年以上は経過しているタイミングでの
高校の同級生たちの姿だー。
あまり変わっているように見えない子や、
誰なのかは分かるけれど、随分印象の変わった子ー
まだ20代後半だけどちょっと歳を取った感じのする子ー
そもそも変わり過ぎて誰だか分からない子ー
色々な子がいたー。
「これ、誰だろうー…?」
ずいぶんおしゃれで綺麗な子を見つけて、
純恋は少し首を傾げると、
晴美に対して
「手前の真ん中にいるこの子は誰?」と、
メッセージで返事を返すー。
すると、少ししてから晴美から返事が戻って来るー
”あ~それは青木(あおき)さんだねー”
とー。
”青木さん”ー
とても暗い性格で、前髪で目が隠れてしまっているような、
そんな感じの子だったのを覚えているー。
が、”去年の同窓会”で撮影されたという写真の”青木さん”は
とても美人でキラキラとしていてー
まるで別人のようだったー。
”青木さんは、夜の仕事を始めて、すっごい綺麗になってて
わたしも驚いちゃった”
晴美のそんなメッセージが続いているのを見て、
純恋は一瞬だけ、表情を曇らせるー。
”あの青木さんが夜の仕事ー?”
と、そんな風に思いつつ、
一瞬、自分と同じように皮にされて乗っ取られたのではないかと
そんな風に思ったのだー。
けれどー
”ーーあ、青木さん、お姉ちゃんの影響で
仕事始めたみたいでー”
晴美と会話を続けるうちに、”純恋とは違う”意味での変化で
あることが分かって、純恋はホッとすると同時にー、
急に寂しくなって、写真を見つめたー。
親友だった晴美もそうー。
そして、他の子たちもそうー。
みんな、この10年間で色々なことが変わったー。
けれど、純恋だけがー、自分だけが何も変わっていないー。
”あのとき”のままー。
「ーーーー…」
純恋は目に涙を浮かべながら
医師から借りているタブレットを置くと、
大きくため息を吐き出すー。
医師によれば”身体”は、
老化しておらず、乗っ取られた時のままー。
皮から、人間に戻ったことで、
ここから、また通常の”老化”が始まるのだろう、と
そう説明されているー。
ただー…それでもー
純恋はみんなと同じ時間を過ごしー、
そしてみんなと同じように歳を重ねることが
できなかった状況に、強い悲しみを覚えていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー辛いことをお話しなければいけないのは
心苦しいですが、捜査にご協力をお願いしますー」
数日後ー
男性刑事と女性刑事がやってくると、
純恋に対してそう言葉を口にしたー。
「ーーーはい」
純恋は暗い表情を浮かべながらも、
純恋を皮にしていた”後藤 辰信”に対する捜査のためと
やってきた警察官たちに協力することに決めて、
そう返事をするー。
「ーーこの男のこと、覚えていますか?」
男性刑事がそう言葉を口にしながら、
冴えないおじさんの写真を見せて来るー。
しかし、純恋にはそのおじさんに見覚えはないー。
「ーーー…いえ…分かりませんー」
純恋が素直にそう答えると、
男性刑事は言葉を口にしたー。
「この人は、松川さんー
あなたに1000万円をだまし取られた男ですー。」
男性刑事の言葉に、
純恋は泣きそうになりながら
「ど…どういうことですかー…?」と、そう言葉を口にするー。
すると、男性刑事は戸惑うような表情を見せてから
純恋の方に1枚の写真を向けたー。
そこには、冴えないおじさんにわざと身体を密着させて
笑顔を振りまいている、赤いパーティドレス姿の純恋の姿が
映し出されていたー。
”乗っ取られている最中”の純恋だー。
「ーー…失礼。あなた、という表現は不適切ですねー。
あなたの身体で、後藤 辰信が誘惑してー
お金を騙し取ったー
そういうことです。
ただ、この1000万の行方がまだ分かっておらずー、
松川さんー、あなたに記憶がわずかでも残っていればと
そう思ったのですがー」
男性刑事のその言葉に、純恋は「すみませんー」と
涙目になりながら言葉を吐き出すー。
「ー乗っ取られていた間の記憶はーー
全くないんですー」
純恋がそう言葉を口にすると、
背後にいた女性刑事が続けて、
言葉を口にするー。
「ーこの人のことはー?」
女性刑事がそう言うと、
今度は真面目そうな女性の写真を取り出して、
それを純恋の前に置いたー。
けれど、当然、純恋の中にその記憶もないー。
女性刑事は
「この人は、あなたと”恋人関係”にあった女性ですー」と、
そう言葉を口にするー。
「こ、恋人ー!?」
純恋が困惑すると、
女性刑事が「あなたから誘ってー…女同士でもいいからと、
そういうことでお付き合いしていたようです」と、
そう告げられるー。
純恋は不安な表情を浮かべながら
「そ、その人は、どうなったんですかー…?」と、
そう聞くと、女性刑事は「あなたに散々乱暴なことをされてー…
ーー今は精神的に病んで入院中です」と、そう言葉を口にしたー。
そして、証拠映像として確保したのだという動画を
純恋に見せて来るー
そこにはーーー
”おいっ!!わたしの言うことが聞けないのか!!
お前はわたしのペットなんだよ!!”
純恋が声を荒げながら”恋人”なのだという女性の
髪を引っ張り、乱暴に蹴りつける姿が映し出されているー。
それを見た純恋は「ひ、ひどい…」と、思わず涙をこぼすと
女性刑事は「ーー見るのもつらい映像だとは思いますがー」と、
そう言いながら、さらに別の映像を再生するー。
純恋に”乗っ取られていた時の映像”を見せることで、
純恋の中に眠っているかもしれない、
”乗っ取られていた間の記憶”を引き出すことができれば、と
男性刑事が心底申し訳なさそうにしながらそう説明するー。
映像では、乗っ取られた純恋が
”恋人”とされる女性を蹴り飛ばして
「使えねぇ女だな!」と、叫ぶ様子が映し出されているー。
純恋の口から、信じられないほどの汚い言葉が飛び出し、
その恋人とされる女性は泣きじゃくるー。
そんな映像を見て、純恋も泣き出してしまうと、
二人の警察官は顔を見合わせてから、
「辛い思いをさせて、申し訳ありませんでしたー」と、
そう言葉を口にして退出していくー。
純恋は「わたしー…」と、自分の酷い仕打ちに心を痛めながら、
一人、涙を流し続けるー。
どれだけ、今の”現実”が夢であって欲しいと、
そう思っても、それでもー、
夢ではなかったし、これは現実だったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからさらに数日が経過したー。
純恋の元に、男性医師と女性看護師がやってくると、
男性医師は「松川さんー」と、渋い声を振り絞るようにして
言葉を口にしたー。
純恋は、男性医師の表情から”イヤな予感”を覚えつつ、
男性医師の方に視線を向けるー。
もう今更、これ以上どうということもないー。
既に、地獄のような思いは何度もしたー。
そんな風に思っていると、
やがて、医師はゆっくりと口を開いたー。
「ー松川さん、精密検査の結果ー、
長時間、”皮”にされていたことによる、
臓器への深刻なダメージが確認されましたー」
とー。
「ーーえっ…」
純恋は思わず表情を歪めるー。
”臓器への深刻なダメージ”とは一体何だろうかー。
そんな風に思いつつも、
純恋は震える思いで、
「それはいったい…ど、どういうことですかー?」と、
言葉を続けるー。
すると、医師と女性看護師は顔を見合わせてから、
どちらも”言いたくない”ような表情を浮かべるー。
純恋はそんな二人を見て、涙目で
「お願いしますー…教えて下さい」と、そう言葉を吐き出すと、
ようやく、医師は言葉を口にしたー。
「ー持ってあと2か月ー。
それがーーーー…現実です」
とー。
「ーーーーーーーあと…2か月ー」
純恋は、目の輝きを失うぐらいの絶望を味わいながら、
しばらく口を半開きにしたまま、呆然としていたー。
しかし、やがて純恋は笑い始めるー。
「ー?」
医師が不思議そうに表情を歪めると、
純恋は言った。
「わたしの人生って、何だったんでしょうねー」
思わず笑ってしまいながら純恋は言うー。
「10年間も乗っ取られ続けて、やっと解放されたと思ったら、
余命あと2か月だなんてー。
あはー…あははははー…笑っちゃうーあははは」
気が触れたかのように笑う純恋。
狂ってしまっても無理はないー。
医師と女性看護師は、そんな純恋を見つめながら
静かに頭を下げると、
そのまま外へ向かって歩き出したー。
純恋は一人、笑いながらその目から涙をこぼすー。
”わたしの人生ーー何だったんだろうー…”
絶望しながら、クスクスと笑う純恋は、
もう、生きる希望すら無くしてしまっていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
純恋の病室から出た医師と、女性看護師は
ゲラゲラと笑っていたー。
”ここは、病院などではないーー”
医師と女性看護師の後頭部が割れてーー
中から二人の男が出て来るー。
そのうちの一人、”医師”風の男の皮を着ていた男はーー
10年前、純恋を乗っ取った男だったー。
”この力で、ありとあらゆることを楽しみ尽くすー”
男は、10年前にそう思ったー。
そして、その仲間の男もそうー。
彼らはー
”純恋”をあえて10年ぶりに解放して、
”医師”のフリをして、正気を取り戻した純恋の反応を見て
楽しんでいたのだー。
ここは、自分たちのアジトを
”秘密の病院風”に改造したものー。
”皮にされた人”という世間には明るみにできないものを
扱うところだから、と言う理由でひっそりした雰囲気なのは
説明をつけ、純恋に病院だと思い込ませていたー。
そして、先日ー、
純恋の捜査に来て、”わざと”純恋に乗っ取られていた頃の映像を見せて
純恋がショックを受ける様子を見て楽しんでいた”警官ふたり”も、
この男たちが別の人間の皮を着て、乗っ取っていただけー。
全ては、”正気を取り戻した純恋が絶望する様子”を見て楽しむー
そんな、悪趣味な趣味のためー。
純恋の親友・晴美は、この10年間、純恋を乗っ取っていた男の仲間ー、
”女性看護師役”をやっていた方の男が乗っ取っていてー、
”お見舞い”に来た時も、女性看護師風の女を乗っ取っていた男の方が
乗っ取っている状態だったー。
”晴美”はちゃんと年老いているように見えたのは
”あえて”そういうメイクや髪型、服装の雰囲気にしたからだー。
全ては二人組の男が楽しむためーーー。
純恋は解放などされていないー。
一時的に”正気”に戻されて、その反応を楽しまれているだけー。
”余命宣告”も嘘だー。
さっきの、純恋が絶望して笑い出す様子は最高だったと、
医師風の男の皮を着ていた男は笑うー。
そしてーーー
「ーさ~て、そろそろ病院ごっこは終わりにするかー」
男がそう言葉を口にすると、
もう一人の男も笑いながら
「へへー早く”本当の純恋ちゃん”を見せてくれよー」と、
ニヤニヤしながら笑うー。
この10年、”晴美”の身体で純恋を間近で見て来た相棒の男にとっては
”乗っ取られた純恋”こそ、”本当の純恋”だったー。
「ーーへへーだな。
今から乗っ取って来るから待ってろー」
そう言葉を口にすると、医師風の男の皮を着ていた男ー、
この10年間、純恋を乗っ取っていた男がそのまま
純恋の病室へと向かって行くー。
その様子を見つめながら、
もう一人の男は、純恋に対して
”純恋を10年間乗っ取っていた男”として写真を見せた
”後藤 辰信”の写真を見つめるー。
「へへーしかし、よくできたCGだよなー
こんな人間、実在しないのにー」
”後藤 辰信”として純恋に見せた写真を
男は破り捨てると、
「あの女は、永遠におもちゃだー」と、
静かにそう言葉を口にしたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!★
医師も警察官も全部偽物…!
大変な結果になりましたネ~…!
このあと、また乗っ取られて
使われる日々が続くのデス…!
お読み下さり、ありがとうございました~!!
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