”入れキチ”
それは、常人で計り知れないほどに
深い入れ替わり愛を持つ者たちー。
ある日、
とある場所で入れキチの男と入れキチの女が
入れ替わってしまったー。
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男子大学生・北沢 文哉(きたざわ ふみや)は、
”入れキチ”だったー。
入れ替わりが好きになったのは、3歳の時だった。
父親がリビングで見ていた、
入れ替わった男女があんなことやこんなことを楽しむ作品を
たまたま見てしまい、入れ替わりに目覚めたー。
自分でも、入れ替わりに目覚めた年齢は早かったと思うー。
今、思うと、父親が
リビングで何で堂々とあんな作品を見ていたのか?という
ことは疑問に感じるものの、
それでも、文哉はいつも思っていた。
”ありがとうー。
父さんのおかげで俺は今、入れキチだ”
休日を利用して、父親の墓参りにやってきていた
文哉は、そう言葉を口にすると、
父の墓前に”貴様の身体で泣きたい”と書かれたブルーレイを
置いていくー。
父の死後、公開された入れ替わり作品の一つだ。
父親が入れキチだったかどうかは、文哉は知らないものの、
”入れキチ”になるきっかけを与えてくれた父に、
文哉はいつも感謝の意を示し、
入れ替わりモノのブルーレイを必ずひとつ、持ってくるようにしていたー。
「ーーさて…と、墓参りは済ませたし、
帰ったら”論文”の続きを書くかー」
そんな言葉を口にしながら、街を歩く文哉ー。
が、ちょうど曲がり角を曲がったところでー…
「ーーえっ」
「ーーあっ」
反対側から歩いて来た女子大生とぶつかってしまったー。
…ぶつかった、とは言っても
そんなに激しくぶつかってしまったわけではなく、
軽くゴツン、と頭を打ち付けてしまった程度ー
がー…
どういうことだろうかー。
”それ”は起きてしまったー。
見ず知らずの相手とぶつかってしまったことを
すぐに謝罪しようと相手の顔のほうを見つめるー。
「ーーえっ……」
しかし、文哉は謝罪の言葉を出すよりも先に
”相手の顔”を見て驚いてしまったー。
何故なら、目の前に”文哉”自身がいたからだー。
「ーーえ……な、何だこれ……?
お、俺が、も、も、もう一人ー?」
文哉は思わずそう言葉を口にするも、
自分の口から、自分の声ではなく”女”の声が出ていることに気付き、
「って…えぇ…?」と、変な声を上げるー。
するとー、目の前にいる自分自身ー
”文哉”も、戸惑いながら、言葉を口にした。
「ーーえっ…う、嘘…!?
い、入れ替わってるー?
ほ、本当に入れ替わってるー?」
とー。
何だか嬉しそうな、興奮した様子の表情ー
「えっ…い、入れ替わー…」
突然、女になってしまった文哉も、
相手のセリフを聞いて”ま、まさか、入れ替わったのかー?”と、
思いつつ、自分の身体を見下ろすー。
そこには、あるはずのない胸の膨らみに、
自分の髪より全然綺麗で、そして長い黒髪ー
女の格好をした”自分の”身体が見えたー。
「ーーな……
えっ… こ、これって、どういうことですかー?」
女と入れ替わってしまった文哉がそう言うと、
文哉になってしまった女は、
「どういうってー…”入れ替わり”ですよ!!知りませんか!?」
と、そう興奮した様子で言葉を口にするー。
「い、いや、い、入れ替わりは知ってますけどー
そのー…え???現実で起きるなんてー」
女の身体でソワソワしながら、文哉がそう言葉を口にすると、
文哉になった女は「そうですよね!!現実で入れ替わりが起きるなんて!!夢みたいです!」と
心底嬉しそうに言葉を発したー。
「え…あ、あ、はいー」
実は、文哉も実際に入れ替わりが起きてドキドキしているし、
喜びの気持ちもあるー。
ただ、変な行動や変な発言をすれば
”後でどうなるか分からない”という恐怖がある、というのも正直なところだったー。
数えきれないほどの”入れ替わりモノ”を見て来たし
入れ替わる妄想も数えきれないほどしたけれど、
実際に入れ替わったとなると、
”社会的な死”を恐れて、案外、薄い反応をしてしまうものだと
文哉は心の中で自虐的にそんなことを考えていたー。
しかも、相手は女性ー。
それもまた、文哉からしてみれば
困惑する理由の一つだったー。
男女の入れ替わりは、もちろん好きだし、
ドキドキもする。
ただ、現実で”そうなる”と、どうすればいいか戸惑ってしまうー。
”変態”扱いされたら社会的に死ぬ可能性があるからだー。
が、そんなことをぐるぐると考えていると、
やがて、文哉になった相手の女子大生が言葉を口にしたー。
「ーあの、すみませんー
”入れ替わり好き”の方ですか?」
文哉になった女は、文哉の身体で
どこか緊張した様子で言葉を口にするー。
「えっーー」
女になった文哉は戸惑う。
さっき”入れ替わりを知っている”と言ったからだろうかー。
それとも、入れ替わったこの子の身体でついニヤニヤしてしまったからだろうかー。
そんな風に思いながら、
女になった文哉は「あ、いえー…それなりにー…ですけどー」と、誤魔化すー。
本当は、3歳のころから入れ替わりに目覚めて、
これまでに見た入れ替わりの作品は数えきれないほどー、
そして家には無数の入れ替わり作品が置かれているー…
…などとは言えない。
女子相手にそんなこと言ったら、きっとドン引きされると、
文哉はそんなことを考えながら適当に誤魔化そうとしたー。
がーー
文哉になった女は、突然、「ちょっと失礼します」と、
文哉になった自分の手のニオイを嗅ぎ始めるー
「えっ、ちょ…何をしてー…?」
女になった文哉がそう言うと、
文哉になった女は笑顔を浮かべた。
「入れキチのニオイがします。
さては、あなたも入れキチですね???」
とー。
「い、い、い、入れキチ!?」
女になった文哉は戸惑うー。
”入れキチ”という言葉は知っているー。
いや、それどころか文哉自身も入れキチを自称しているー。
SNS上で、入れ替わり好きの人とそれなりに交流していて、
入れキチの話題や、他にも入れキチを自称している人を
複数見かけたことがあるー。
フォロワーの中には”いちご”さんという
入れ替わり好きの女性もいたー。
そんなことを思っていると、
「あ!そんな顔しないでください!
わたしは隣町の大学に通っている、沼津 彩菜(ぬまづ あやな)ですー
わたしも、入れキチなんです」
と、入れ替わった相手の女子大生・彩菜が自己紹介を口にするー。
「ーーえ、あ、い、入れ替わり好きなんですかー!?」
同志との出会いに、彩菜になった文哉は思わず興奮した様子で言うと、
「はいーとてもー」と、文哉になった彩菜は微笑んだー。
彩菜(文哉)は
「あ、俺は北沢 文哉ですー」と、自己紹介を返すと、
文哉(彩菜)は「じゃあー、北沢さんー早速行きましょ!」と、
そう言葉を口にするー。
「ーはい?え?どこへー?」
彩菜(文哉)が混乱した様子で口を開くと、
文哉(彩菜)は笑ったー。
「この先の神社に階段があるので、
そこに行って、二人で階段から落ちましょう」
と、そう言いながらー。
「ーー??????????」
彩菜(文哉)は頭の上にたくさんのハテナを浮かべながら
首を傾げると、
「あ、あぁ、階段から落ちたら元に戻れるかもってやるですねー?
でも、危なくないですかー?」と、そう言葉を返すー。
しかし、文哉(彩菜)は言ったー。
「あはは、違いますよー
ほら、今、なんか入れ替わりモノっぽくない感じで
あっさり入れ替わっちゃったじゃないですか~?
わたし、現実で入れ替わる時には
階段から転がり落ちるか、赤い糸を使うかって決めてるんです!
だから、入れ替わり気分を楽しむためにも
階段から転がり落ちましょ!」
文哉(彩菜)の言葉に、
彩菜(文哉)は、「え…え???あ、はぁ…」と、戸惑うー
”彩菜”は、文哉とは違う形での入れキチー。
”あらゆる作品”を鑑賞し、セリフや描写、
入れ替わりシーンが始まる秒数まで全てを暗記している
”鑑賞・データ型”の入れキチである文哉ー。
家の壁には”入れ替わり論文”を書いてしまっているほど、
文哉は入れ替わりに没頭しているー。
一方で、彩菜はその方面では文哉には及ばない。
彩菜も、彩菜でそれなりの数の作品を見ているし、
知識は常人と比べればはるかに深いものの、
文哉と比べれば、その知識は劣るー。
流石に入れ替わりシーンが始まる具体的な秒数まで
暗記はしていないし、その点では文哉の
入れキチ度が勝っているー。
ただ、彩菜は”実際に入れ替わりたい”という欲が
尋常ではないほどの深く、
家には数々の入れ替わりグッズが存在するほか、
”もしも入れ替わったら?”を想像しながら
自撮りをしたり、
本当に入れ替わった時にしたいことへのこだわりが
あまりにも強かったー。
この点では逆に、文哉は彩菜に遠く及ばないー。
ただ、一つ言えるのは
二人とも入れ替わりに対する愛があまりにも強い
”入れキチ”であると言うことだったー。
「ーーあ~”儂の名は”はいいですよね~!
わたしが好きなシーンは、最初に入れ替わった時の~」
文哉(彩菜)が神社に移動しながら、
嬉しそうに人気入れ替わり映画の名前を口にすると、
「ーーはははー俺は1時間14分32秒から始まるシーンのー」と、
彩菜(文哉)がそう言葉を口にするー。
「ーーえっ、え~っとー」
文哉(彩菜)が戸惑うと、
彩菜(文哉)は「あ、あぁ~すみませんー。
俺、入れ替わりシーンが始まる秒数まで細かく暗記していてー」と、
そう言葉を口にするー。
「えぇ~!?ホントですか?」
文哉(彩菜)が笑うー。
彩菜(文哉)は「ははー嘘はつきませんよ。セリフまで
含めて全部ー」と、そこまで言い放つと、
「ー”落第生”のリメイクあるじゃないですか。
あれのセリフ、実はー」
と、また別の入れ替わりの話のことを熱心に語り始めるー。
「わぁ~…本当に入れ替わりに詳しいんですね!
すごいです!」
文哉(彩菜)は目を輝かせながら、
そこまで言葉を口にすると、
「入替戦隊チェンジャーで、この前入れ替わり回、ありましたよね」
と、笑うー。
「あ~!ありましたね~!」
彩菜(文哉)は嬉しそうに頷くー。
「っていうか、毎回主人公たちが自分たちの身体シャッフルしながら
戦ってるから、俺たちみたいな入れキチのための戦隊モノですよね」
彩菜(文哉)はそう言葉を付け加えると、
「あ、そうそう第13話の18分55秒のシーンで、
ピンクとレッドが入れ替わるシーンの~」と、
そんなことまで言い始めるー。
「あ!あ!ごめんなさい!秒数言われても流石に分からないです」
文哉(彩菜)が慌てた様子で笑いながら言うー。
「あ!いえ、俺こそすみませんー」
彩菜(文哉)はドン引きされたか?と、心の中で不安に思いつつも
すぐに謝罪をすると、
「ーー全然大丈夫ですよー。分からないですけど面白いですー」と、
文哉(彩菜)はそう言葉を口にするー。
そうこうしているうちに、神社の階段にたどり着くと、
文哉(彩菜)は嬉しそうに「じゃあ、自然とぶつかっちゃったような感じで
入れ替わりましょう!」と、そう宣言したー。
階段を見て、彩菜(文哉)は不安そうに
「え…ほ、ホントに転がり落ちるんですかー?」と、困惑する。
さっきまで、文哉の知識量に圧倒されていた彩菜。
しかし、今度は逆に彩菜の入れ替わり熱に文哉が圧倒されるー。
「も、もし、転がり落ちて怪我をしたり、
死んだりしたらー…?」
当然、階段から転がり落ちればその可能性も0ではないー。
彩菜(文哉)が心配そうにそう指摘すると、
文哉(彩菜)は「入れ替わりで死ぬなら本望です」と、
満面の笑みで答えたー。
「~~~~~~…た、確かにー?」
彩菜(文哉)は、少し疑問を感じながらも
勢いでそれに同意させられてしまうと
結局、二人で階段から転がり落ちることになってしまったー。
「ー落ちたら、北沢さんはわたしの身体を触りながら
驚いた反応して下さいね!
わたしもしますから!
それで、”俺!わたし!?”みたいな反応もお願いします!」
文哉(彩菜)は、そう言葉を口にすると
「じゃあ、早速ー」と、わざとバランスを崩して
彩菜(文哉)の手を掴むのだったー
②へ続く
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コメント
入れ替わり愛がとっても深い二人が
入れ替わってしまったお話デス~!!!
早速、大変な状況(?)になってますネ~!!
続きはまた明日デス~!!

コメント
出てくる作品名あきらか君の顔では泣けないからですね笑あれ僕も見まして笑あげればキリないですが細かいとこもリアリティありすぎてたまりませんよ笑
感想ありがとうございます~~!★
色々な入れ替わりっぽい名前を散りばめました~笑
君の顔では泣けないは、
私が好きそうな内容なので、
私も早く見てみたいデス~★★!!
入れ替わり愛が強い者、同士ですが大変な方向に…
まさかの『いちごさん』の名前まで~!☆笑
いつか…いちごさんが主役のストーリーお願いしますネ(^_-)☆笑
リクエストじゃないので…ご安心を(^_-)☆笑
文哉と彩菜みたく…
無名さんのカラダと入れ替わりたいのデス~♀⇔♂笑
感想ありがとうございます~!!
入れキチVS入れキチVS入れキチ(いちごさん)が
書けちゃいそうですネ~!!!
私とTSマニア様も含めればもっとたくさん~笑