”確実に未来を見通す”
そう、話題になっている預言者ー。
しかし、彼は予言をしたあとに
”憑依”でそれを実行に移している
ただのインチキ預言者だったー。
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「ねぇねぇ、知ってるー?
最近話題のこの人ー」
クラスメイトに対して、そんな言葉を口にしていたのはー、
女子高生の森嶋 晴菜(もりしま はるな)ー。
彼女は占いや予言が大好きな女子生徒だったー。
「ーー誰これ?」
まるで、RPGゲームにでも出て来るようなローブを羽織っていて
顔の見えない男が表示された画面を見て、
晴菜から声を掛けられた女子生徒・大野 由乃(おおの ゆの)が、
そう呟くと、
続けて「不審者?コスプレ?」と、そう言葉を口にしたー。
「あははー違うよ~!
今、話題の預言者”ビジョン”だよ~」
晴菜が笑いながら言うと、
「ビジョン?」と、由乃が首を傾げたー。
謎の預言者・ビジョンは、今ネットで話題の預言者で
”確実に未来を見通す”と、そう言われている預言者だー。
これまでにも数々の予言を的中させており、
清楚系の人気アイドルが完成披露の場で暴言を吐くことを
予め予言したり、
会社の女会長が辞任を発表することを予め予言したり、
先日も、駅前に痴女が現れることをぴったりと的中させてみせたー。
当初は”個人”の奇行や問題行動などを予言していたために、
ネット上では「どうせやらせだろ?」という論調が強かったものの、
ビジョンは”だったら、誰でもいいから、行動を予言してほしい人間の
名前を挙げてみろ”と、そう反論ー。
ネット上の人々が挙げた芸能人やスポーツ選手、その他有名人の
”行動”も次々と的中させてみせて
”こいつは本物だ”と、ネット上でも、ビジョンのことを認める人間が増えて来たー。
さすがに、アイドルやその他有名人と”グル”になれるわけがないし、
芸能人側にも、”ビジョン”などという得体の知れない預言者と組む
メリットは何もないー。
つまり”ビジョン”は本物であると認めざるを得なかったー。
「ー胡散臭っ」
由乃は呆れ顔でそう言葉を口にするー。
「ーーえ~!胡散臭くなんてないよ!
だって、アイドルとか会社の社長さんの行動も当てられるんだよ!?
知らない人なら確かに、”ビジョン”って人が自分の友達にお願いしたり、
お金で協力者を用意したりできると思うけどさー…
アイドルとか会社の社長さんが全員友達~!なんてことないだろうし、
お金でお願いするのも普通に考えて無理じゃんー?
だから、この人は本物の預言者だよ!」
占い好きの晴菜は、すっかり”ビジョン”とやらにハマっているのか、
そう熱弁してみせるー。
「はいはいー」
由乃は呆れたような表情を浮かべながら、
”そういうのって絶対何か”種”があるからー”と、
心の中でそう思うのだったー。
そして、その日の夜ー
ネット上で”ビジョン”とやらのSNSを見つけると、
由乃は思わず失笑したー。
確かに、アイドルが完成披露の場で暴言を吐くことを
前日に予言したり、
政治家の一人が、突然会議中に踊り出すことを予言していたりしていて、
そういうことがあったのは事実のようだー。
”じゃあ、きっと超大金持ちか、余程えらい人ねー”
由乃は内心でそんな風に思うー。
アイドルにせよ、政治家にせよ、莫大な金を払って協力してもらったのだろうー。
アイドルに対して、
”明日、完成披露の場で君が暴言を吐くという予言をしておいた
だから、よろしく頼むよ”と、伝えてー、
アイドルがその通りに行動すれば
”インチキ預言”の完成だー。
こういう予言には必ず裏があるー。
適当なことを言っているか、何らかの種があるかー。
大抵の場合は、そんなところだー。
由乃は、心の中でそんな風に思うと、
”事前に打ち合わせして、その通りに行動してもらってるだけですよね?”と、
”ビジョン”に対してそんなメッセージを送ったー。
てっきり無視されるかと思ったものの、
数分後、”ビジョン”を名乗る預言者から返事が返って来たー。
”ー俺の力が信じられないと、そういうことかな?”
とー。
由乃は少し驚くー。
それなりにネットでは有名になっていると思われる”ビジョン”には
たくさんのメッセージが届いていて、
いちいち由乃一人に対応するとは思えなかったからだー。
がー、由乃は負けじと
自分が思っていることを告げると、
ビジョンは”まぁ、そう思うのも無理はない”と、そう返事をしてきたー。
その上で、
”君が行動を予言してほしい相手がいれば、俺が予言してやろう
それで信じて貰えるかな?誰でもいいー”
と、そう言葉を口にしたー。
「ーーーーー」
由乃は少しだけ考えてから、
”相手が大物政治家だったり、会社の社長だったり、大金持ちだったり”
する可能性を考えた上で
”あえて”友達の晴菜の行動を予言してもらうことにしたー。
”万が一”ビジョンが、予言の対象に圧力をかけたり、金を払って
予言どおりに行動させているインチキ預言者なら、
晴菜に何らかの接触を取るはずだー。
が、性格上、晴菜は”ビジョン”からお金を渡されたり、
圧力を掛けられれば、平気でそれを楽しそうに話してくるタイプだー。
脅されたりした場合でも、顔に出て、露骨に態度が変わるために
”隠し事”は絶対にできる子じゃないー。
だからこそ、晴菜を指名したー。
”なるほど、君の友達かー。それで構わない”
そう返信を送って来るビジョン。
その上で、”今から予知をさせてもらうから、数分後にまた連絡する”と、
そんなメッセージが届いたー。
由乃は乾いた笑みを浮かべると、
”ハッ、どうせ、普通に過ごしててもありそうなことを言うんでしょ?”と、
そんな風に考えながら、返事を待つー。
例えば”くしゃみをする”とかなら、
あてずっぽうでもあたる可能性は高いー。
が、その数分後ー
返って来たメッセージは、
信じられないものだったー
”君の友達の晴菜という子は、明日の3時間目の授業の途中に
教室で嬉しそうに漏らす”
そんなメッセージ。
「ーはぁ…あり得ないでしょ」
由乃は呆れ顔で呟くと、
”でもー”と、あまりにも具体的な予言に、少しだけ不安そうに表情を歪めたー。
そしてー
その翌日ー
「ーーねぇ、晴菜ー」
2時間目が終わると、由乃は晴菜に対して声をかけたー
「ーいっしょにトイレに行かないー?」
とー。
「え?どうして?」
不思議そうに首を傾げる晴菜ー
「ーーん~~なんとなく」
由乃がそう言うと、晴菜は「あははーまぁ、別にいいよー」と、
そう言いながらトイレについてくるー。
予言は”3時間目”ー
ビジョンとやらのインチキ預言がその通りにならないようにと、
2時間目と3時間目の”間”である今、この時間にトイレを
済まさせておけば”漏らす可能性”が下がるとそう考えたのだー。
”大体、嬉しそうに漏らすなんてないでしょ”
由乃はそうは思いつつも、自信満々の”ビジョン”の予言に
今更ながら、少し不安を感じてしまうー。
もし、”予言通り”、晴菜が授業中にお漏らししてしまったらー…?
そんなことを考えると、晴菜に対して”申し訳ない”という気持ちにもなるー。
”ううんー。絶対にないー。絶対にー”
由乃は不安を感じている自分自身に少しだけ苛立ちのようなものを覚えると、
改めて”予言なんて絶対に当たらない”と、
自分に言い聞かせるようにして、心の中でそう呟いたー。
そして、3時間目の授業が始まったー。
3時間目の授業は、国語の授業ー。
由乃は、授業が半分ほど過ぎたタイミングで
晴菜のほうを見つめるー。
特に、トイレを我慢しているような様子はないー。
”ーーーーよかったー。大丈夫そうー”
由乃はそう思いながら
”何が”ビジョン”よー。このインチキ預言者”と、
心の中でそう言葉を口にするー。
そもそも、晴菜は騒がしいところはあるけれど、
授業中にお漏らしをしてしまうような子ではないことは、
由乃が一番よく知っているー。
トイレにどうしても行きたくなれば、先生にちゃんと言うだろうし、
授業態度や生活態度が悪い…なんてこともないために、
先生から”お前はいつもそうやって授業をサボるからダメだ”と、
トイレ行きを断られてしまう心配もないー。
晴菜が漏らす理由なんてないー。
ましてや、”ビジョン”が予言したように、
”嬉しそうに漏らす”などということは、
絶対にあり得ないことだー。
”まぁ、これであのビジョンってやつがイカサマ預言者だと
いうことが分かったしー”
由乃はどこか満足そうに微笑むー。
がーーーー
由乃から少し離れた場所に座っていた晴菜はニヤッと笑みを浮かべたー。
”予言者・ビジョン”はー、
由乃や晴菜らがー、いや、ネット上で”ビジョン”の予言を楽しんでいる人々が
思っている以上に”危険”な人物だー
彼は、特殊な手術を受けたことにより”憑依能力”を手に入れた人物。
他人の身体を支配し、意のままに操ることができるー
「ーーーククククー…俺のことをインチキ預言者だと、そう思ったなー?」
晴菜はニヤニヤしながら、小声でそう言葉を口にするー。
”お前の顔を見ていれば分かるー。俺のことをインチキだと確信して
勝ち誇った顔だー”
晴菜に”憑依”したビジョンは心の中でそう思いながら、
笑みを浮かべるー。
晴菜はー、今朝、学校に到着した時点から
”ビジョン”に憑依されていたー。
ビジョンは憑依した人間の記憶や思考も読み取ることができるー。
そのため、由乃の前で”晴菜”として振る舞うことは
たやすいことだったー。
2時間目が終わったあとの休み時間にトイレに誘われた際にも
一緒にトイレに行き、個室の中に入ったあとは、
”何もせずに”時間を潰したー。
由乃は、”晴菜もトイレを済ませた”と安心している様子だったものの、
予言通り、3時間目に盛大に漏らすために、
朝からずっと、トイレを我慢させているー。
預言者・ビジョンはー、
”憑依能力”を使って、自分で予言したことを
自分で実行する危険極まりない預言者ー。
”さて、そろそろ俺の予言通りのことが起きる時間だー”
3時間目の授業も残り3分の1を切り、
生徒たちの一部は、授業が終わる時間を意識し始めるー。
がー、その時だったー
ガタッー
晴菜が突然立ち上がったー。
”ビジョンの予言はインチキ”だと、
そう確信して安心していた由乃が
晴菜が立ち上がったことに気付いて、
「晴菜ー…?」と、一気に不安そうな表情を浮かべるー。
「ーーえへへへへ♡」
晴菜はそう言葉を口にすると、
突然、両手でピースをしながら、
その場でお漏らしをし始めたー
「ーちょっ!?な、なにしてるの!?」
由乃が思わず、そう声を上げるー。
他の生徒たちもどよめきー、
晴菜の近くの座席の生徒は慌てて、
晴菜のお漏らしから逃げようとするー。
先生も戸惑いの表情を浮かべー、
教室は一気にどよめきの声に包まれるー。
やがて、晴菜はお漏らしを終えると、
嬉しそうに「あ~スッキリしたー」と、そう言葉を口にして、
濡れている椅子に平然と座ってみせるー。
「ーー…お、おいー、森嶋ー…?」
晴菜のほうを見ながら、先生も困惑した様子だー。
由乃は戸惑いながら、預言者・ビジョンの”言う通り”に
なってしまったことに震えるー。
そしてーーー
”わたしが、晴菜のことを予言してほしいなんて言ったからー
こんなことにー…?”
由乃は、晴菜が教室で漏らすことになってしまったのはー、
自分のせいなのかもしれない、と、そんな風に思い始めるー。
きっと、”ビジョン”が予言しなければ、
晴菜がこんな奇行に走るはずなどなかったのではないかー?
とー。
”ククククー驚いているなー?”
満足そうに、晴菜に憑依しているビジョンは笑うと、
”では、俺はこれで失礼するよー”と、そう思いながら、
晴菜の身体から抜け出したー
「ーーえへへー」
憑依から解放されても、少しだけ笑みを浮かべている晴菜ー。
ビジョンの憑依は
憑依後も”憑依されていた間の行動は自分がやったこと”だと、
脳に思わせる力があるー。
そのため、晴菜は”わたしの意志で漏らした”と、
そんな風に思ってしまっていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅した由乃は怒りの形相で、
ネットを見つめると、
”ビジョン”に対してメッセージを送ったー。
”あんた、晴菜に何をしたのー!?”
とー。
すると、しばらくして、ビジョンから
そのメッセージに対する返信が返って来るのだったー。
②へ続く
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コメント
予言したことを憑依で実行する預言者…!
恐ろしいですネ~!!!
今日もお読み下さりありがとうございました~~!★★

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