<憑依>繰り返すごとに壊れていく①~平和な時間~

手に入れた憑依薬を、
”彼女が嫌がることを代わりにやるため”に
使っていた彼氏ー。

しかし、その憑依薬の副作用で、
彼女の身体と脳は、蝕まれていくー…

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「ただいま~!」

幼馴染同士で、現在は彼氏と彼女の間柄でもある
大学生カップルー。

一人暮らしをお互いに始めようとしていた際に、
「じゃあ一緒に住んじゃおうか」ということになって
同棲を始めていた二人は、
同棲を始めてから既に1年以上ー、
順調な大学生活を送っていたー。

彼女の羽村 美咲(はむら みさき)が、帰宅すると、
今日は休みで、家でのんびりしていた彼氏・岡崎 直人(おかざき なおと)が
「おかえり美咲ー」と、そう言葉を口にしたー。

いつも通りの日常ー
いつも通りの平穏ー

がー、この日、美咲が持ち帰った”あるもの”が
原因で、それは壊れてしまうことになるー。

「ーどうだったー?おじいさんの家ー」
直人がそう言葉を口にするー。

少し前に、美咲の祖父が老衰で息を引き取りー、
今日は、その祖父が残した家の整理整頓の手伝いに
美咲は足を運んでいたー。

そのことを聞く直人ー。
すると美咲は「おじいちゃん、結構変なもの色々集めてる人だったからー、
面白いもの、たくさんあったよー」と、笑うー。

「ーはは、そっかー」
直人はそう言葉を口にすると、美咲は「その分、大変だったけどー」と
苦笑いするー。

そんな言葉に、直人は”お疲れ様”と、美咲を労う言葉を
口にしてから、美咲の後片付けを手伝うー。

がー、その時だったー

美咲は思い出したかのように笑みを浮かべると、
「あ、そうだー、おじいちゃんの家でねー
 面白いものがあったのー」と、
そう言葉を口にしながら、持って行っていた鞄を
漁り始めると、その中から錠剤の入った容器を取り出したー。

「ーーなんだそれ?」
直人が困惑した様子で首を傾げると、
美咲は少し得意気な表情で、
「これねー、”憑依薬”って言うみたいなんだけどー」と、
そんな言葉を口にしたー

「ひ、ひ、憑依薬ー?」
直人が混乱した様子で、そう言葉を口にすると、
美咲は「おじいちゃんの残したメモがあったんだけどー、
他の人の身体に憑依して、自由に動かすことができるんだってー」と、
そう言いながら笑ったー。

「ーーえ、えぇ…それ、ヤバいやつじゃー?」
直人がそう言うと、美咲は首を横に振るー。

「おじいちゃんねー、若い頃、製薬会社に勤務していて、
 そのあと研究者になったから
 こういう面白い薬、たくさん作っててねー

 あ、法律とかには反してないものだから
 全部大丈夫なんだけどー」

と、美咲がそう説明するー。

美咲も小さい頃、そんな”おじいちゃん”の
変な薬で色々楽しいことをしたのだとかー。

「ーーそ、そっかーそれならー」
直人はそう言いながらも、
「え、でも、やっぱ、”憑依”はヤバくないかー?」と、
戸惑いの表情を浮かべるー。

直人が浮かべたのは、
勝手に”他人”の身体を乗っ取ってしまうようなことー。

しかし、美咲は
「ーわたしは変な使い方はしないしー、
 逆に、変な人の手に渡るより、私が持っていた方がいいでしょ?」と
錠剤の入った容器を振るー。

「ーーまぁ、確かにー」
美咲が変な使い方をしない、というのは、
普段一緒にいる直人からすれば、”嘘じゃない”と言うのは分かるー。

美咲は人を傷つけるようなことをするのが嫌いだし、
人の身体を勝手に乗っ取るために、憑依薬を持ち帰ったのではないのだろうー。

「ーーそれでねー、”これ”を使って
 直人にわたしに憑依してほしいのー」

美咲が、突然そんなことを言い始めたー。

「ーえ、えぇっ!?俺が美咲に憑依するのかー!?」
思わず、困惑の声をあげてしまう直人ー。

「ーそ、それは一体どういうー?」
直人が、続けてそう言葉を口にすると、
美咲は「今度、バイト先の歓迎会があるんだけどー、
どうしても苦手な人がいてー、わたしの代わりに参加してくれたらな~って」と、
申し訳なさそうに言葉を続けるー。

「あ~~~…そっかー、そういう使い方もできるのかー」
直人は納得した様子で頷きながら、
「別に俺はいいけどー、でも、不安じゃないかー?」と、
美咲のほうを見つめながら呟くー。

いくら、彼氏とは言え、
自分の身体を他人に預ける、なんてことが
不安ではないのかと、心配になってしまったのだー。

しかし、美咲は「直人は変なことしないと思うしー、
それに、トイレとかに行くぐらいならわたしは気にしないしー」と、
穏やかな笑顔で言うー。

とても信頼されているということは、
もちろん、直人にとっても嬉しいことだー。

けれど、”憑依薬”とやら自体が安全なのかどうかも
心配だし、
そもそも、美咲として100%振る舞うことができる自信もないー。

が、美咲はそれでも大丈夫だと言うー。

「おじいちゃんの薬は、安全基準もしっかりしてるし、
 効果は変な効果のものばっかりだけど、心配ないよー。

 直人が不安だったら、わたしが毒見で先に飲んでもいいしー」

美咲が何の不安もなさそうにそう言葉を口にするのを見て、
直人も、”おじいさんのこと、信頼してるんだなー”と
そう思いつつ、それと同時に、安心感が沸いて来るー。

美咲の祖父のことは、あまり詳しくは知らないものの、
直人も美咲のことをとても信頼していたために、
”美咲が言うなら”と、そんな心境だったー。

「ーたくさんあるし、まずは1回、わたしに憑依してみない?」
美咲のそんな提案に、
直人は「そこまで美咲が言うならー」と、そう言葉を口にしてから
憑依薬を手に、意を決してそれを飲み干したー。

すると、直人の身体から、直人が幽体離脱をして、
直人の身体は寝ているような状態となったー。

美咲は「ー直人ー…いるよね?」と、少しだけ不安そうにしながら
「ー返事はたぶん、聞こえないと思うけど、わたしの声が聞こえてたら
 少しだけ待っててー」と、そう言葉を口にするー。

霊体になった直人は試しに”わかったー”と、そう言葉を口にしてみるも、
やはり美咲には聞こえていないようで反応はないー。

そうこうしているうちに、美咲が倒れている直人の顔に
顔を近づけるのを見て、
”えっ?何してるんだー?”と一瞬、
キスでもされるのかと、ドキッとしながら
その光景を見つめるー。

が、美咲が倒れている直人の身体に顔を近づけたのは
”呼吸しているかどうか”確認するためだったようで、
「ーちゃんと、直人の身体は呼吸してるから大丈夫!」と、
美咲はそう言葉を口にしたー。

続いて、心臓の音も確認するような仕草をして、
「心臓も問題なし!」と、嬉しそうに言葉を口にすると、
美咲は「あ、じゃあー、わたし、今から座るから、そしたら憑依してねー?
ーー聞こえてるよね?」と、心配そうに呟くー。

「ー立ったまま憑依されると、憑依された時にどうなるか分からないしー
 倒れて頭打っちゃったりしたら大変だからねー」
美咲はそれだけ言うと、ベッドに座って、
「はい!じゃあーー準備できたよ」と、穏やかに笑ったー。

直人は”本当に憑依していいんだよなー?”と、少し躊躇いつつも、
そのまま美咲の身体に憑依すると、
美咲がビクッと震えてー、
やがて、美咲の身体の感覚が、直人に流れ込んで来たー。

「ーー!」
美咲の手を見つめる直人ー。

憑依に、成功したー。

「ーす、すごいなー…ほ、本当に憑依出来たー」
美咲の声でそう言葉を口にすると、
”ーね、すごいでしょ?”と、内側から美咲の声が聞こえたー

「わっーびっくりしたー」
美咲の身体で、直人が驚くような仕草をすると、
”わたしもびっくりしたよ~”と、
美咲本人の意識らしき声が笑うー。

「え、ど、どうして美咲までびっくりしてるんだよー?」
美咲の身体で、直人が少し驚くようにしてそう呟くと、
美咲の意識が言うー

”あ~うん、憑依されたことに対してじゃなくてー
 憑依されたら、その間は意識が消えるって思ってたから
 こうして、身体は動かせないのに内側から、
 まるで映画みたいに自分のしてることを見れるっていうのが
 不思議な感じでびっくりしてー”

美咲の意識がそう説明をしてくるー。

その言葉に、美咲に憑依した直人も納得しながら
「あ~なるほど」と、そう言葉を口にすると、
少しだけ困惑したような表情を浮かべながら
言葉を続けるー。

「ーーーそれにしても、俺が喋ってるのに、
 こうして美咲の声が出るってのは不思議な気分だなー」
美咲の身体で、直人がそう言うと、
美咲本人も内側で笑いながら
”確かにそうだよねー自分が喋ってるのに、自分と違う声が出たら
 びっくりしちゃうよねー”と、そんなことを呟くー。

「ーーー…ははーでも、まぁ、本当に憑依できることが分かって良かったしー、
 安心したよー」
美咲の身体でそう言い放つ直人ー。

美咲が信頼しているであろう”おじいちゃん”が作った薬であっても、
流石に他人の身体に憑依する、なんてことは
今まで経験したことがないし、聞いたこともないー。
だからこそ、こうして実際に憑依に成功するまでは心配であったのも事実だー

「ーそれでー…美咲の身体から抜けるためにはどうすれば?」
美咲の身体で、直人がそう確認すると、
美咲本人はすぐに”あ、それはねー”と、抜け出す方法を説明し始めたー。

抜け出す方法も、すんなりとその通りになって、
美咲への最初の憑依を終えた直人は
「ーーすごいなー…美咲のおじいさんー」と、感心した様子でそう言葉を口にしたー。

錠剤はまだまだたくさんあるー。
美咲に対する憑依も、この先、かなりの回数することができるー。

勿論、直人としては美咲に勝手に憑依するつもりはなく、
美咲に頼まれた時のみ、憑依するつもりだー。

「ーーあ、これ、わたし以外の人に使っちゃダメだからねー?
 直人が他の人に憑依してる~!なんてところ見たくないし、
 勝手に憑依しちゃったらーーよくないからねー」
美咲がそう言うと、直人は笑いながら
「分かってるよー。勝手に人の身体に入り込んだら、それこそ悪党だもんなー」と、
そう言葉を口にしたー。

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後日ー。

美咲からの提案で、今度の”歓迎会”を前に、
美咲の身体に憑依して、トイレや仕草などの練習をすることになったー。

”ごめんねー…身代わりみたいなことお願いしちゃって”
美咲の意識が改めて、そんな言葉を口にするー

「いや、いいさー。どうせ、その日は俺もやることないしー、
 美咲のためになってるって思えば全然ー

 それとー、変な意味じゃなくて
 普段、こんな経験なんて絶対できないから、
 そういう意味では俺も楽しいかなー?

 ほら、人間って普通に生きてたら、
 自分の身体でしか過ごせないだろー?」

美咲の身体で直人がそう言うと、
美咲は”それもそうねー”と、笑うー。

”あ、でもイヤだったら言ってね?
 わたしも、直人がイヤなら無理にまでお願いはしたくないしー”
美咲本人の意識の言葉に、直人は「もちろん」と、そう答えると、
「あ、そうだー、今度、美咲も俺の身体に憑依してみるかー?
 他の人の身体で過ごすってなんか不思議だし、
 楽しいと思うしー」と、自分だけ憑依する側になっているのが
申し訳ないと思ったのか、直人がそう提案したー。

嬉しそうに少しだけ笑う美咲ー。

そんな会話をしながら、直人は
”美咲の身体”で、椅子への座り方や、歩き方、
トイレなどの練習をしていくー

「~~~~~~」
トイレの練習をしながら、
「彼女に、彼女の身体でトイレを教えてもらうってどういう状況だよー」と、
思わず苦笑いをすると、
美咲本人の意識も、”こんなことしてるの、絶対わたしたちぐらいだよねー”と、
そう言葉を口にしたー

どこか楽しそうに、平和的な憑依を楽しむ二人ー

が、二人はまだ知らないー。
美咲の祖父が作った憑依薬は”繰り返し使うと”
憑依された側の身体と、脳を蝕んでいく、ということをー…

②へ続く

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コメント

不穏な気配漂う憑依モノデス~!!

今日の①の時点では平和的な空気が
流れていますネ~★!

続きはまた明日デス~!!

続けて②をみる!

「繰り返すごとに壊れていく」目次

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