<皮>人生をやり直すチャンス③~復讐~(完)

人を皮にする力を用いた
”社会復帰プロジェクト”ー。

それによって、美貌と自由を手にした
”容姿に恵まれなかった男”ー

彼の新しい人生の行きつく先はー…?

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美姫になった大輝は、
それからも、コンビニに”かつて自分を陥れた男”である
宇野 武昭が定期的に足を運んでいることに気付いたー。

「ーー宇野ー…」
ギリッと歯軋りをする美姫ー。

”もう、俺は俺じゃないんだー”
”もう、わたしは可愛い可愛い美姫なんだー”
と、自分にそう言い聞かせたものの、
それでも、自分に濡れ衣を着せて、懲戒解雇にまで追い込んで来た男に対する憎しみは
その出来事から、既に10年以上が経過していても、
大輝にとっては許せないことだったー。

「ーーーーーー」
美姫は、チラッと他のバイトたちの動きを確認すると、
レジに、客としてやってきた武昭に対して
”メモ”を手渡したー。

「えっー」
戸惑う武昭ー。

「ーーあとで、読んでください」
にこっ、と微笑む美姫ー。
自分の美貌を最大限活用して、”お前”を地獄に落としてやるー、と、
美姫はそんな風に思いながら、武昭に対して
可愛らしい笑みを向けるー。

「ーーーわ、わかりましたー」
武昭は顔を赤らめながら、会計を済ませると
そのまま立ち去っていくー。

美姫は、そんな武昭の後ろ姿を見つめながら
「ーお前を地獄に落としてやるー」と、静かにそう呟いたー。

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夜ー。

アパートに帰って来ると、
隣人の麗も、ちょうど大学から帰って来たタイミングだったのか
鉢合わせするー。

「あ!お疲れ様ですー。お仕事ですか?」
麗が微笑むと、美姫も「うんー。”麗ちゃん”もお疲れ様ー」と、
そう言葉を口にするー。

本人から”麗でいいですよ”と、少し前にそう言われてから、
美姫は、麗のことを”麗ちゃん”と呼んでいるー。

”こんな可愛い子のことを名前で呼べるなんてー
 ーーまぁ、俺も可愛いんだけどさー”
などと思いながら、麗と楽しそうに会話をすると、
麗はふと言葉を口にしたー。

「ー何か、いいことでもありました?」
とー。

「ーーえ?」
美姫が少しだけ驚いて言うと、
麗は「なんだか、いつもよりも楽しそうなのでー」と、
そう言葉を口にしたー。

”楽しそうー”
それは、そうかもしれないー。

だってー、”あの男”への復讐のチャンスまで
手に入れたのだからー。

麗との会話を終えて、家の中に入ると、
スマホを確認しながら、美姫は笑みを浮かべるー。

宇野 武昭が、渡した連絡先のメモを頼りに
連絡を送って来たのだー。

”好きですー”
そんなメモを鵜呑みにしてー。

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やがてー、
美姫として生活する大輝は、
かつて自分を陥れた上司の武昭と、
定期的に会うようになっていたー。

全ては、武昭を破滅させるためー。

「ーー今日も楽しみましょうね♡」
美姫の見た目、身体、声ー
全てを利用すれば、武昭を落とすのは簡単だったー。

武昭はすっかりと美姫の魅力の虜になって、
美姫と何度も何度も会うようになったー。

「ーへへー…」
美姫は、武昭がいないタイミングで
鏡を見つめながら笑みを浮かべるー。

”復讐”とは、時に大きなエネルギーになるー。
美姫になって、メイドカフェでバイトするのも恥ずかしがっていた自分が、
復讐のためならと、メイド服も、チャイナドレスも、バニーガールの格好も、
色々なものを着て、武昭を誘惑しているー。

自分の口からこんな声が出るのかー、と、
驚かずにはいられないような甘い声まで自然と出せるようになって、
”復讐心”が一気に、女の身体になった自分に対するブレーキを壊したー。

吐き気を催しながらキスをしてー、
武昭をさらに、地獄に落とすために、
気持ち良さそうに喘いで見せるー。

実際ー、女の身体で味わう快感は大輝にとっては
とても気持ちイイもので、武昭とそう言う行為をしている間は、
本当に”気持ちイイ”とさえ、思えたー。

けれど、それで武昭に対する復讐をやめるつもりはないし、
武昭に心から身を捧げるつもりなど、毛頭ないー

「ーーーークククククー」
帰宅した美姫は邪悪な笑みを浮かべるー

武昭は”妻子持ち”だー。
女好きであったことも知っているー。
何故なら、10年以上前に武昭が”濡れ衣を着せられた”のは、
上司だった武昭が”女好き”だからこそ起きたトラブルーー
重大なミスが起因だったからだー。

「ーまさか、”わたし”が、あの時の男だとは思わないだろうなぁーへへ」
美姫はうっとりとした表情で自分の顔を手で触ると、
武昭と会うたびに、”記録”している映像や音声が入ったUSBメモリを手に、
今一度不気味な笑みを浮かべたー。

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「ーー最近は、どうかねー?」

数日後ー
”美姫”になってから、2カ月が経過したタイミングで、
刑務所の峯所長から呼び出されたー。

”定期的に面会をする”とは、事前に峯所長から知らされていて
美姫を着て1か月のタイミングと、2カ月のタイミングー
今回が2回目の面会だったー。

「ーーおかげ様でー、充実した生活を送っています」
美姫が嬉しそうに言うと、
峯所長は「よろしいー。コンビニの仕事も頑張っているようだね」と、頷くー。

美姫は少し照れ臭そうに笑うと、
峯所長は「ーーその身体で、色々楽しんでいるのかねー?」と
少し意地わるそうな質問をするー

「ーえっ、あ、いやー…ま、まぁー」
美姫が顔を赤らめながら言うと、
峯所長は「構わんよー。それはもう君の身体だし、
自分の身体で楽しむことは、”タブー”ではないからねー」と、そう言葉を口にするー。

「ーあははー…ありがとうございますー」
美姫は、そんな言葉を口にすると、”面会”を終えて、帰路につくー。

もうすぐー
もうすぐ”復讐”は終わりだー。

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「ーーーー最近、よく夜にお出かけされますねー…」
隣人の麗が、少し心配そうに呟くー。

美姫は「ーえ?あ、あぁ、コンビニのシフトが深夜が多くてー」
と、誤魔化すー。

夜に出かけることが多いのは、武昭と会っているからだー。

しかし、さすがにそれを言うことはできないー。

「ーー心配かけて、ごめんねー」
美姫は今や”友達”と心の底から思っている麗に心配されて
申し訳なさそうにそう言い放つー。

けれど、それでも”復讐”を止めることはできないー。

武昭の”妻”の連絡先を調べ上げた美姫は今日ー、
ホテルで武昭と会いー、
その場で妻に連絡、全てを暴露するつもりだったー

派手な服装で、夜の街を歩き、邪悪な笑みを浮かべる美姫ー。
ホテルに入り、武昭と合流すると、
美姫は武昭の前で、”妻”と連絡を取りー、
妻にデータを送信してみせたー

「ーーな…何をするんだ!?どういうことなんだ!?」
狼狽えるかつての上司・武明ー

美姫は、武昭が狼狽えるのを見てー…
武昭が、彼自身の妻に必死に電話で言い訳するのを見てー、
心底、満足そうに笑みを浮かべるー。

そしてーー
言ったー

「ーー俺のこと、忘れましたかー?」
とー。

美姫は、怒りを滲ませながら
勝ち誇った表情で笑みを浮かべるー。

「ー俺は、あんたが10年以上前に罪を擦り付けて
 懲戒解雇にした田宮ー
 田宮 大輝ですよー」

とー。

「ーー田宮ーーー?だ、誰だそれはー」

彼はーーー
”覚えてすら”いなかったー。

確かに、大輝をはめた上司、その”張本人”ではあるものの、
10年以上前のことー。
”はめた側”である彼は、もはや”田宮 大輝”という人間を
覚えてすらいなかったのだー。

「ーーー…へぇーーそうかそうかー」
美姫は憎しみに満ちた表情で呟くー

「ー俺のことなんか、覚えてないってことかー」

”やられた側は忘れない”
永遠にー。

そう言わんばかりに美姫はー
美姫を乗っ取っている大輝は、武昭を見つめるー。

スマホを手に、武昭の妻に対して、美姫は
「ーこの人、わたしと何度も何度もヤッたんですよぉ~?」と、
さらに煽るような口調で言い放つー。

武昭の妻が呆然としながら、何かを言っているのを無視してー、
武昭を睨みつけると、
「お前の人生は、終わりだー」と、憎しみに満ちた口調で吐き捨てるー。

震えながら「き、君は、いったいー?」と、言い放つ武昭ー。

”目の前にいる女”の中身が男などとは夢にも思わずに、
かつて罪を擦り付けて懲戒解雇に追い込んだことも結局思い出せずにー、
ただ震えることしかできなかった武昭は、
そのまま”美姫になった大輝の復讐”によって、
地獄のどん底に突き落とされるのだったー。

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「ーーふぅー」

復讐を終えた美姫は、ため息を吐き出すー。

もちろん、大輝の人生を狂わせたのは、”奴”だけではないー。
容姿が原因で、色々な人間に蔑まれてきたー。

学生時代にもいじめを受けたし、
逮捕される原因になった客もそうー。
客の男は既に死んでいるし、
さっき復讐を終えたかつての上司・武昭も
”復讐したい相手”の一角でしかないー。

とは言え、武昭以外の”今までの人生で許せない相手”の居場所は
分からないし、偶然再会でもしない限りは
これ以上、何もするつもりはないー。

そう思いつつ、美姫は自分の住むアパートに帰宅するのだったー。

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翌日ー

「昨日は遅かったですねー」
ゴミ置き場で遭遇した隣人の麗がそう言葉を口にするー。

「ーあ、うんー。バイト先のコンビニのシフトが深夜でー」
美姫がそう誤魔化すと、麗は「お疲れ様です」と、
そう言葉を口にして、「今日も頑張りましょうね」と、
付け加えてから大学に向かうー。

そんな姿を微笑ましそうに見つめる美姫ー

がー、
その時だったー。

突然、アパートの影に隠れていた人物に何かを撃ち込まれて、
驚くと同時に、美姫は意識を失ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーぅ」

美姫が目を覚ますとーー
そこは、刑務所の所長の部屋だったー

「ーー…し、所長ー?」
美姫の姿のまま、大輝がそう言い放つと、
峯所長はため息を吐き出したー。

「君は、タブーを破ってしまったねー」
とー。

「ーーえ?」
美姫は困惑するー。

「どういうことですー?俺はタブーを…」
美姫の身体でそこまで言うと、
大輝はハッとしたー。

”広めない” ”詮索しない” ”再犯しない”

ーー昨日ーー、
かつての上司・達昭に復讐した際に”自分の正体”を
口にしてしまったー。

つい感情的になってのことだったがー、
あれはーー”広めない”に違反しているー?

そんな風に思っていると、
峯所長は「昨日の件ー。女の身体を使って復讐するだけなら、
別に問題はなかったー。相手の命を奪ったわけではないからねー。
だがー。”自分の正体”を明かしたのは、”違反”だー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーい、いやー、そ、そのー
 え…な、何で知ってー!?」
美姫はそう叫ぶー。

「ーー我々は皮を着て”社会復帰”した人間を常に監視しているー。」
峯所長は、そう言い放つー

「ーーーー!!」
美姫は表情を歪めるー。

”監視”されているー?
そう思うと同時に、
隣人の麗のことを思い出すー。

あのアパートは元々、峯所長に紹介されたアパートだー。
麗は不自然にも”あっちから”引っ越ししてきた住人に挨拶をしてきたー

まさかーー

「ーーーーお、俺はーーー
 も、もう二度としないと誓いまーー」

慌ててそう叫ぶ美姫ー。

がーー
「ー残念だが、タブーは絶対だー。
 どんな理由であれ、一度破った人間は”処理”するー。
 諦めたまえ」と、峯所長はそれだけ言うと、
側近の女性が、美姫の身体に”注射”を打ち込んだー

「ーーひ…ま、待ってー」
そのまま”皮”に戻って行く美姫ー。

中身の”大輝”を”溶かす”謎の薬で、
美姫を着ていた大輝は消滅ー、美姫は皮に戻るー。

「ーー次の候補者を選定してくれたまえ」
峯所長はそれだけ言うと、そのままゆっくりと部屋の外に向かって歩き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー里原さん、どこ行っちゃったんだろうー…?」
心配そうに呟く、アパートの隣人・麗ー。

”監視”していたのは、”麗”ではないー。
麗はただの、引っ越して来た隣人にまで自分から挨拶してしまうぐらい
フレンドリーな普通の女子大生ー。

”美姫”がいなくなってしまったことに、麗は戸惑いながらも、
表向きは”引っ越した”ということで、アパートの管理会社から知らされて
麗は寂しそうな表情を浮かべるのだったー。

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「へへへへー」
”次”の候補者である囚人が”美姫”とはまた別の女の皮を着て
釈放されたー。

”ー今度は、タブーを破らないでくれよー?”
そんな”囚人”の視界を”監視”する峯所長ー。

”皮”にはある細工が施されていて、
釈放された囚人の”視界”と”聞いている音”を、
刑務所側に”自動で送信する仕組み”になっているー。

そうー、釈放された囚人たちの行動は
刑務所側に筒抜けになっているー。

「ーー安心したまえー。タブーを破りさえしなければ、
 君達は自由だー」

大輝の次に釈放された囚人の様子を確認しながら
峯所長は静かに呟くと、そのまま邪悪な笑みを浮かべたー

おわり

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コメント

タブーを破ってしまう結末でした~!☆!

アパートの隣人の麗ちゃんは、
ただのブラフ(何かありそうで、何もない子…笑)なのデス…☆!

お読み下さりありがとうございました~!!

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