<憑依>謎の転校生 真鈴ちゃん①~出会い~

ある日ー、
転校生として美少女がやってきたー。

しかし、妙に頭が良くて
時々、おじさん臭い振る舞いをする彼女を前に、
クラスメイトたちは次第に違和感を抱いていく…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー今日、転校生が来るらしいぜー?」
クラスメイトの一人、幸澤 陸翔(ゆきざわ りくと)が、
ニヤニヤしながらそんな言葉を口にするー。

「へ~…転校生かぁ」
陸翔の友人である土谷 涼介(つちや りょうすけ)が、
そう言葉を口にしながら、どこか興味なさそうな表情を浮かべるー。

「ーーおいおいおい せっかく転校生が来るってのに興味なさそうだなぁ」
陸翔がそんなツッコミを入れると、
涼介は少し苦笑いをしてから、「いやぁ、だってさー…」と、そう前置きを
した上で言葉を続けるー。

「アニメとかラノベとかだと、こういう時ってさ、
 イケメンとか美少女が来るけど、
 現実だと別にそうじゃないじゃん?

 ごく普通の子が一人増えて、特に俺の人生に大きな影響を
 与えることなく、時間が過ぎていくー。

 俺は知ってるぜー?現実の転校生ってそんなもんだって」

涼介の妙に冷めた言い草に、陸翔は
「おいおいー」と、呆れ顔で言うと、
「そりゃ、全国の転校生に失礼だぞ?」と、そう指摘するー。

「ーはは、まぁ、そりゃそっかー
 でも、転校生がやってきて”新章突入ぅ!”みたいなことには
 現実ではならないだろ?」
涼介は、達観したような表情でそう言い放つと、
陸翔は「ーーま、そ、そりゃそうだけどー」と、そんな言葉を口にしたー。

「ーー転校生、可愛いらしいよー?」
ふと、涼介と陸翔の会話に割って入ったのは、
偶然、近くを通りがかったクラスメイトー、
涼介の幼馴染でもある、夏川 美雪(なつかわ みゆき)ー。

美雪と亮介は単に”幼馴染”で、よく喋る間柄ではあるものの、
付き合ったり、互いに恋愛感情を抱いたりはしていないー。

「ーーえっ!?マジ!?」
散々、美少女は来ないだの何だの口にしていた涼介が
そんな反応を示すと、
美雪は笑いながら「わたしもさっき、ちょっと遠くから
それっぽい子みたいけど、可愛かったよー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーーーーー」
転校生に対して冷めた反応を示していた涼介は、
数秒間、沈黙すると、
友人の陸翔のほうを見て
「転校生、楽しみだな!」と、そう言い放つー。

あまりの急な反応の変化に、
陸翔は思わず呆れたような表情を浮かべると、
「お、おう…」と、それだけ言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やがてー、
担任の教師である、谷垣(たにがき)先生が入って来るー。

特に特徴のない30代の男性教師だー。
生徒たちからも、特別人気者と言うわけではないものの、
別に嫌われてもいない、中途半端なポジションにいるために
余計に目立たないー。

そんな、谷垣先生が
「ー今日は、新しい仲間がうちのクラスに入って来ることになったー」と、
そう言葉を口にするー。

「へへーやっぱ噂は本当だったんだなー」
陸翔がそう言うと、
最初は転校生に興味を示していなかった涼介も、
少し嬉しそうに黒板のほうを見つめるー。

涼介の幼馴染の美雪は、やれやれという様子で
そんな涼介のほうをチラッと確認するとー
やがてー、転校生が教室の中に入って来たー。

「ーーー!」
涼介はその転校生を見てー
一瞬にして”可愛い”と、そう思ったー。

教室に入って来た”転校生”は、
まるでアニメとか、ラノベのようにー
輝く存在ー。
学校生活という名の物語を”新章”に突入させてくれそうな、
そんなオーラを感じる美少女だったー。

「ーー神里 真鈴(かみさと まりん)ですー
 よろしくお願いしますー」

やってきた美少女ー、
転校生の真鈴が、そう言葉を口にすると、
谷垣先生が教室を見渡すー。

そしてーーー

「ーーちょうど、土谷の隣が空いているなー」
と、谷垣先生はそう言葉を口にしたー

「ーー!?!?!?!?」
涼介は思わずドキッとするー。

転校生がやってきて、
しかもそれが美少女で、
なおかつ偶然自分の隣の座席が空いていて、
転校生がそこに座るー。

”なんだこれはーー????
 俺はいつの間にラノベの主人公になったんだー!?!?!?”
涼介は意味の分からないことを頭の中で考えながら
一人で勝手に顔を赤らめていくー。

そんな様子を見ていた友人の陸翔と、
幼馴染の美雪は、呆れ顔ー。

特に美雪は”恋愛感情”はないものの、
なんだか、転校生の美少女に対して幼馴染が
鼻の下を伸ばすかのような反応を見て
少しだけ不快に思っていたー。

「ーーあ、隣、お邪魔しますー」
真鈴が申し訳なさそうに、隣の座席に着席すると、
涼介は「ーえっ…あ、ーーいえ、よ、よろしくー」と、
明らかに挙動不審な様子で言葉を口にしたー。

「ーーこいつ、さっきまで
 ”転校生なんて興味ない”って言ってたんだぜ~?」
誰にでも明るい性格の陸翔が、真鈴に対して
そんな言葉を口にすると、
涼介は「あっ!おい!こ、こいつは、ホラ吹きで、
口から出る言葉の9割は嘘だから、信じなくていいよー」と、
慌ててそう言葉を口にするー

「おいっ!誰がホラ吹きだ!」
不満そうに声を上げる陸翔ー。

そんな様子を見つめながら真鈴は笑うと、
「ー最近の若い子は面白いですねー」と、そう言葉を口にしたー

涼介も陸翔も、美少女な転校生・真鈴に対して
すっかり浮かれているからか、その言葉を何も気にしなかったものの、
近くに座っていた幼馴染の美雪は
表情を少しだけ曇らせたー。

”最近の若い子ー?…何か、変な言い方ー”
とー、そう思いながらー。

が、それ以上は気にせず、
転校生の真鈴に自己紹介する涼介と陸翔を横目で見つめると、
”あ~あ…二人ともすっかり浮かれちゃってー”
と、そんなことを心の中で思うのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーそうだったんですねー」
1時間目が終わったあとの休み時間ー。

真鈴は、”一番近くの座席に座る女子生徒”でもある、
美雪と色々会話を交わしていたー。

「ーうん。涼介は小さい頃から知っててー
 まぁ、悪いやつじゃないんだけどー、
 でも、すぐ勘違いしたり浮かれるから、
 あまり煽てすぎないようにねー」

美雪がそう言葉を口にすると、
真鈴は「あははー…分かりましたー」と、笑うー。

「ーでも、可愛い子が近くに来ると浮かれる気持ちは
 わたしも分かりますけどねぇー…
 昔、わたしも隣の座席に転校生が来たことがあってー」
真鈴が、続けてそんな言葉を口にすると、
美雪は困惑の表情を浮かべたー

「ーえ?それ、いつの話ー?」
美雪が思わずそうツッコミを入れると、
真鈴は少しだけ驚いたような表情を浮かべてから、
「あ、えっ!?はいー。小さい頃ー
 そうー、中学生の時の話ですー」と、慌てた様子で
そう言葉を口にしたー。

「そ、そっかー…」
美雪はそれだけ言うと、それ以上は詮索せずに
真鈴と会話を続けるー。

真鈴はいい子ーーだとは思うー。
けれど、何だか少し不思議な印象を受けるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーす、すごいー」

呆然とする先生ー。
4時間目の英語の授業ー。
真鈴は、難しい英文を完璧に読んで見せたー。

まだ習っていない部分だったというのに、
先生顔負けレベルの英語を披露すると、
真鈴は照れ臭そうに「ーーえ、英語は得意なのでー」と、
先生に言い放つー。

英語の担当の先生は、
少し戸惑った様子を見せながら、
「せ、先生より上手じゃない?」と、自虐的に呟くと、
真鈴は「え…え、そんなことないですよー…」と、
申し訳なさそうに言葉を口にするー。

そしてーー
そんな”真鈴”の天才ぶりは、それだけではなかったー。

5時間目の数学でも、
6時間目の社会科でも、
”本当に高校生?”と思ってしまうぐらいの頭の良さを発揮ー、
クラスメイトたちも、先生もどよめくぐらいだったー。

転校生がやってきた”初日”が終わり、
クラスメイトたちは帰りの学活をするために谷垣先生が
教室に来るのを待っていたー。

「ーーー」
そんな中、陸翔と亮介はすっかりと浮かれた様子で、
”転校生”の真鈴について話をしているー。

ちょうど真鈴はトイレにでも行っているのか、
教室には不在だったー。

「ーー神里さん、いい子だなぁ」
涼介がそんな風に言葉を口にすると、
親友の陸翔は「お前、朝は”転校生が来ても何も変わらない”みたいな
感じのこと言ってたのに」と、揶揄うような口調で言うー。

涼介は少し気まずそうに視線を泳がせると、
「あ、朝は朝ー、今は今だー」と、誤魔化すような口調で
言葉を口にするー。

「へへーまぁ、そういうことにしておいてやるかー」
陸翔はそこまで言うと、
「でも、真鈴ちゃん、本当に可愛いよなぁ~へへ」と、
陸翔はニヤニヤしながら、そんな言葉を続けるー。

「ーーおいおい、いきなり下の名前で呼ぶなんて
 馴れ馴れしいやつだな」
涼介が苦笑いしながら言うー。

「ーへへへー本人の前では言えねぇけどー」

笑いながら言う陸翔ー。

そんな二人の様子を見つめながら、
涼介の幼馴染の美雪は
”ーーさっきの社会の授業ー”と、
6時間目の社会科の授業のことを思い出すー。

真鈴は、授業中ー
まるで、自分が”昭和”の時代を見て来たかのような
そんな言葉を口にしたのだー。

最後には「ってー、おじいちゃんがー」と、
誤魔化していたものの、
あの言いっぷりは、自分が”昭和の時代を生きた”
そんな言い方だったー。

”令和” ”平成” ”昭和”ーー
元号で言うと、昭和は”2つ前”の元号だー。

”昭和”は30年以上前に終わっているー。
昭和の時代を生きた人間が、今現在高校生であることは
絶対にあり得ないー。

けれどーーー

”もしかしてあの子ー、本当は40歳とか、50歳ぐらいだったりするー?”
美雪は内心でそんなことを考えながらも、
”ーーでもあの見た目ー…そんなわけないかー”と、
そんな結論を心の中ではじき出すー。

見た目より若い40代、50代の人ももちろんいるー。
けれど、さすがに神里 真鈴が40代、50代だと言うのは無理があるー。
どう見ても、自分たちと同じぐらいの年齢にしか見えないー。

「ーーーーー…」
美雪は少しだけ不思議な違和感を覚えつつも、
”ちょっと不思議な子ってことかなー”と、自分に言い聞かせるかのように、
自分の中でそんな結論を出してー、無理矢理自分を納得させたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
女子トイレの中で鏡を見つめていた真鈴は、
ニヤニヤと笑みを浮かべるー。

「ーへへへー本当に可愛いなぁー…」
教室では絶対に見せなかった、悪意のある笑みー。

自分の顔を嬉しそうに触ると、
続けて服の上から胸に手を触れて、
気持ち良さそうにそれを揉み始めるー。

「ーーはぁ…♡ 授業中がずっと我慢してるからなーへへへへ」
真鈴は顔を赤らめながら気持ちよさそうに息を吐き出すと、
しばらくの間、夢中になって胸を揉み続けるー。

がー、やがて、他の子がトイレにやってくる気配を感じると
胸を揉むのをやめて、
別の子がトイレに入って来たころには、何食わぬ顔で
手を洗いながら、平然とした表情を浮かべていたー。

”ーークククーまさか、こんな”最高の人生”が待っているとは
 思わなかったけどー…”

真鈴はそんなことを思いながら
トイレから出て、廊下を歩きつつ、自分の綺麗な手を見つめるー。

「ーはぁぁ…本当に、綺麗な手だぜー」
真鈴は小さくそう呟くと、
教室へと戻って、着席するー。

「ーーお疲れ様ー」
近くの座席の美雪が、”転校初日お疲れ様”と、そう声をかけると、
真鈴は穏やかに微笑んで「最初は緊張してましたけど、皆さんが
優しいので、すぐに慣れられそうですー」と、そんな言葉を返してくるー。

「何か分からないことがあったら、何でも聞いてねー」
美雪がそう言葉を口にすると、ほぼ同時に
担任の谷垣先生がやってきて、帰りの学活が始まるー。

”ーーーま、”俺”の場合ー…
 新しい学校に来たのもそうだけどー、
 女子高生やるのも初めてだから、
 そっちも分からないことだらけなんだけどなー”

真鈴は内心でそんな言葉を口にしながらー
担任の先生のほうを見つめるのだったー。

②へ続く

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”憑依されている転校生”が
やってきた物語デス~!

今のところは、悪意があるのかどうか、
”謎”ですネ~!!

続きはまた明日デス~!!

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