”憑依”によって壊されてしまった
仲良し三人組の絆ー。
その果てに待っている運命はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー好き…
好きー好き…好き…好きー」
ボサボサになった髪を揺らしながら、
憑依された絵梨花は、
写真に写る龍平にキスを繰り返していたー
「好きー…好き…好き…好きー
龍平が好きー…好きー」
絵梨花に憑依した龍平は、
絵梨花にそんな言葉を言わせながら、
自分が写る写真に対して、何度も何度も何度も
キスを続けていたー。
「ーーー大好きだよー…龍平ー」
そう言葉を口にしながら、目から涙をこぼす絵梨花ー。
そんなことをしてもー、
絵梨花に憑依した龍平の心は満たされなかったー。
小さい頃から、大の仲良しだった
啓介、絵梨花、龍平の三人ー。
けれど、そのうちの啓介と絵梨花が付き合い始めて、
ついに結婚まで決めてしまったー。
「ーーー僕はーーーー…」
自分の写真に絵梨花の身体でキスをしていた龍平は
悲しそうな表情を浮かべながら、その場に座り込むー。
絵梨花に”好き”と言わせてー、
自分の写真にキスをする行為は、たまらなく興奮はしたー
けれど、”それだけ”だったー。
実際に絵梨花に”好き”と言わせてみてー、
気付いてしまったー。
自分は、絵梨花と恋人同士になりたかったわけではないー、と。
「ーーーーーー…僕はただー…ーー」
悔しそうにそう言葉を口にする絵梨花ー。
絵梨花になりたかったわけでも、
啓介になりたかったわけでも、
絵梨花と恋人同士になりたかったわけでも、
ましてや、絵梨花と結婚したかったわけでもないー。
ただー…
絵梨花に憑依してしまった龍平はその場で涙を流すと、
自分がキスしたことで汚れた
”もう戻ることができない幸せな時間”が刻まれた
写真を見つめながら、悔しそうにその写真を握りつぶしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ー龍平ー…どこに行っちまったんだー…」
啓介は、”消えた龍平”の行方を必死に探していたー。
それと同時に、様子がおかしくなってしまった絵梨花のことも気にしていたー。
”龍平と絵梨花の間に、何かあったのかもしれない”
そんな風に啓介は考えつつ、龍平の行方を探すー。
「ーーー……」
啓介の中で、不安が膨らんでいくー。
龍平が消息を絶ったー。
そして、絵梨花の様子がおかしくなったー。
絵梨花自身、龍平が消息を絶ったことを気にしている素振りが見られないー。
「ーーーー…そんなこと…ないよなー?」
絵梨花に突然、婚約も解消されていた啓介は
”絵梨花が龍平に何かしてしまったのではないか”と、
そんな不安を抱き始めていたー。
いやー、龍平の側から絵梨花に何かを仕掛けようとして、
”事故”が起きたのかもしれないー。
「ーーー…」
啓介は大きく息を吐き出すと、
「やっぱりー、絵梨花に聞くしかないー」と、
そう言葉を口にするー。
このまま、逃げていたら何も解決しないー。
龍平が消息を絶って、絵梨花の様子がおかしくなったー。
ほぼ確実に、絵梨花は”何か”を知っているー。
啓介はまさか絵梨花が、その龍平に”憑依”されているなどとは
思いもせずー…絵梨花の家に向かう決意をするー。
「ーーー絵梨花ー…龍平ー
俺たちーずっと仲良しって約束したもんなー…?」
一人、そう呟く啓介ー。
恋人同士になる時も、結婚する時も、相当に悩んだー。
啓介も、絵梨花も、”3人で付き合ったり、3人で結婚できればいいのに”
などと、そんなことまで言っていた始末ー。
もしー…もしも、恋人同士になったことや、
結婚を決めたことが、それを壊してしまったのであればー…
啓介は、絵梨花か、あるいは龍平が
心に複雑なものを秘めていたのだとすれば、
”こんなこと”になる前にそれを言って欲しかった、と、
そう思いながら、絵梨花の家にたどり着くー。
インターホンを鳴らすー。
だが、絵梨花から返事はないー。
「ーーー…絵梨花ーいるんだろー?
……こんなことしたくないけど、勝手に入るぞー?」
啓介はそう確認すると、
合鍵を取り出すー。
この合鍵は、啓介と絵梨花が結婚を決めた時に
お互い同意の上で作ったもので、
絵梨花も、啓介の家の合鍵を持っているー。
その合鍵を使い、絵梨花の家の扉を開けると、
絵梨花はー、今、まさに自分で首を吊ろうとしている瞬間だったー。
「ーーはっ!?!?!?」
啓介は真っ青になりながら
「おい!!!何してるんだ絵梨花!?」と、駆け寄って、
首を吊ろうとしていた絵梨花を止めるー。
倒れ込んだ絵梨花は泣きながら
「もう、元には戻れないんだ!」と、そう叫ぶー。
「ーな、何を言ってるんだ絵梨花!」
啓介が必死に絵梨花に対してそう言葉を口にするー。
絵梨花の髪はボサボサで、
顔も疲れ果てていて、
部屋も荒れ果てているー
一体、何があったのかー。
一体、どうしてこんなことになってしまったのかー。
そう思いながら、啓介が絵梨花に対して言葉を放つー。
「絵梨花ー。何があったんだー。教えてくれー。
龍平がいなくなったことも、何か知ってるのかー?
絵梨花と龍平のためなら、俺、何でもするからー
だから、教えてくれー」
啓介が必死にそう言葉を口にすると、
絵梨花は泣きながら言ったー。
「ーー僕はーーー僕はここにいるんだー」
とー。
「ーーー?」
啓介が表情を歪めるー。
絵梨花が何を言っているのか分からないー。
「ーーど、どういうことだー…?」
啓介が戸惑いながら、ようやく言葉を振り絞るー。
すると、絵梨花は目に涙を浮かべながら続けたー
「僕がー…絵梨花の身体を奪ったんだー!
僕が、僕が絵梨花の人生を奪ってしまったんだー」
とー。
「ーーーな、何を言ってー…」
啓介が戸惑いながら絵梨花のほうを見つめると、
絵梨花は泣きながら全てを打ち明けたー。
”闇.netのビショップとかいう、訳の分からない
覆面の男が現れて、
結婚を決めた二人のことを憎んでいると指摘されて、
つい、言葉に乗ってしまった”
とー。
そして、本当は啓介に憑依しようとしていたところ、
絵梨花が直前で、啓介を庇うような動きをしたために、
絵梨花に憑依してしまった
とー。
「ーーー……う、嘘だろー…?そ、そんなことがー…」
啓介は呆然としながら、絵梨花を見つめるー。
「ーーえ、絵梨花の身体から出ていくことはできないのかー?
龍平、お前の身体はどうなったんだー?」
啓介が心配そうにそう言葉を口にすると、
絵梨花は首を横に振るー。
「もう出ていけないって言われたー…
絵梨花は戻ってこないし、僕は僕の身体に戻れないー」
絵梨花が泣きながら言うと、
啓介は「バ…馬鹿野郎…!なんでそんなこと…!」と、悔しそうに言うー。
「ーだってー…だってー」
絵梨花は放心状態のまま、力なく泣き崩れるー。
「ーそれじゃ…龍平の身体はもうー…!
それにー絵梨花はどうなるんだ!」
啓介がそう言うと、
絵梨花は泣きながら「僕はー僕はただー」と、そう言葉を口にするー。
「何で付き合い始めたんだー…!何で結婚なんかしようとしたんだー!」
絵梨花はそう言いながら啓介を叩くー。
「ー僕はただー…”ずっとそのまま”でいたかっただけなのにー」
そうー
龍平は、別に絵梨花と結婚したかったわけではないー
絵梨花と付き合いたかったわけでもないー。
絵梨花と啓介が付き合い始めて感じていたモヤモヤはー、
絵梨花と啓介が結婚を決めてさらに膨らんで行ったモヤモヤはー、
”ずっとそのまま”でいたかったからこそのものー。
二人が付き合うことによってー、
二人が結婚することによってー、
自分だけが置き去りにされてしまうような
そんな気持ちがどうしても消せなかったー。
「龍平ー…」
そんな、絵梨花に憑依した龍平の本心の吐露に
啓介は表情を歪めるー。
「ーーすまんーーーー
お前がそんなに苦しんでたなんてー」
啓介は悲しそうにそう言葉を口にするー。
「ーーー僕ーーこんなことになるなんてー」
絵梨花がそう言葉を口にするー。
啓介に憑依してー
その後、どうするつもりだったのかー
もう、自分でもよく分からないー。
ただ、モヤモヤした感情に支配されてー、
あの覆面の男にそそのかされてーー
「ーその覆面の野郎はどこにいるー?
そいつと話をー」
啓介がそう言い放つと、
”その必要はない”と、絵梨花でも、啓介でもない男の声が聞こえたー
「ーー!!」
啓介が顔を上げて、絵梨花が驚いて振り返ると、
そこには、絵梨花に憑依した龍平に力を与えた
闇.netのビショップを名乗る男が立っていたー。
「ーお前…どこからー?」
啓介が言うと、ビショップはそれには答えず、
「ーー俺はそいつが望んだ力を与えただけだー」
と、そう言葉を口にするー。
絵梨花は泣きながら「僕ー、こんなことになるなんてー」と、
そう言葉を口にすると、
ビショップは「”こんなはずじゃなかった”ーククー
犯罪者がよく言う言葉だなー」と、小馬鹿にしたような様子で笑うー。
「ーーぼ、僕はー…僕はー”この頃のまま”いたかっただけなんだー」
泣きながら学生時代の三人の写真を指差すー。
啓介は表情を曇らせるー。
龍平の気持ちも分かるー。
ただ、同時に”何でこんなことしたんだ!”という気持ちや、
”もっと早くその気持ちをぶつけてほしかった”という気持ちー、
それに、”大人になれば色々変わっていく”という気持ち、
色々な気持ちが交じり合って、複雑な心情になっていたー。
ただーーー
”まだ”やり直せるー
啓介はそう思いながら「なぁ、龍平を絵梨花の身体から出してやってくれー」と、
ビショップと話し合いの姿勢を見せるー。
が、ビショップは答えたー
「ー人間は愚かだー
これは、愚かさがもたらした結果ー」
とー。
「ーーあぁ、そうだー人間は愚かだー
けどーー……
けど、人間は愚かなりに反省してやり直すことだってーー」
啓介がそこまで言いかけると、
ビショップはその言葉を遮ったー
「ーー愚か者にやり直すチャンスなど必要ないー」
とー
覆面から見えるその目は、憎しみに満ちているー。
「ーー俺は”別れの挨拶”に来たー。
お前は、その身体でずっと苦しみながら生きていくがいいーー」
ビショップは泣いている絵梨花のほうを見つめながら言うー。
「ーーーーお前ー!」
啓介が怒りの形相でビショップを見つめると、
突然、絵梨花が泣き叫びながら、いつの間にか手にしていた
ハサミを手に、ビショップに襲い掛かったー
「ーーー!」
ビショップの覆面の一部がハサミで引き裂かれるー。
「ーーー!?」
その下にはーーー
絵梨花が思わず目を見開くと、
ビショップは「その力を欲したのも、使ったのも貴様だー」と、
怒りを滲ませると、
「ー貴様が始めたことの結果は、貴様が受け入れろー」と、
それだけ言葉を口にして、そのまま姿を消したー。
その場に膝をついて、呆然とする絵梨花ー。
啓介も、”もう元には戻れない三人”の関係を受け入れるしかない状況に
放心状態でその場に立ち尽くすしかなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
謎の男・ビショップは、それ以降、姿を現さなかったー。
龍平は、絵梨花に憑依したまま、
抜け出すことができない状況が続いているー。
啓介は、精神的に病んでしまった”絵梨花に憑依した龍平”と
一緒に暮らしながら、絵梨花をサポートしているー。
もちろん、下心からではないー。
”一人にしておいたら”いつ、絵梨花ごと龍平が
自ら命を絶ってしまうか、分からないからだー。
「ーー俺はしつこいんだー。知ってるだろ?」
啓介が、絵梨花に向かってそう言葉を口にすると、
「絶対に絵梨花を正気に戻して見せるし、
龍平、お前も絶対に元通りに戻して見せる」と、
力強く言葉を口にするー
”無理かもしれない”
そんな風に思いつつも、啓介はそんな不安を一切見せずに
”絶対に元に戻して見せるからな”と、
断言するー。
「ーーー…僕のせいだよー全部ー」
絵梨花は悔しそうに呟くー
けれど、そんな絵梨花に対して、
啓介は言うー。
「三人で、おじいちゃんになるんだろー」
とー。
絵梨花は”おじいちゃん”にはなれないけれどー、
小さい頃に約束したそんな言葉を口にするー
「ーーーー」
その言葉に、絵梨花は少しだけ笑うと、
「ーーまた、絵梨花に怒られるよー」と、そう言葉を口にすると、
啓介も少し笑いながら、
「ーたっぷり怒られて、たっぷり謝ろうー。
お前は、自分のしたことも含めて、絵梨花に死ぬほど謝れー。
だから、まだ死ぬのは許さないー」と、そう優しくー、
けれども力強く言い放つー。
そんな言葉に、絵梨花は静かに頷くー。
本当に元に戻れるかは分からないー。
けれど啓介は、諦めるつもりはなかったー。
何年かかったとしても、
いや、何十年かかったとしてもー。
おわり
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コメント
最終回でした~~!★
元に戻ることは出来ず……
また、3人がいつか和解することができると
いいですネ~!
お読み下さりありがとうございました~!★!

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