深夜ー
悪の組織の怪人に操られてしまった彼女が
突然、家を出てどこかに向かい始めたー。
そのことに気付いた彼氏は、
事情が分からず困惑しながらも、
”このまま彼女を行かせてはいけない”と、
そう思い、彼女を止めようとするー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ある日の朝ー。
大学生カップルの
井森 道彦(いもり みちひこ)と、
彼女の山浦 美咲(やまうら みさき)は、
いつものように、朝のひと時を過ごしていたー。
二人はーー…
高校時代からの知り合いで、
偶然、進学先が同じだったことから
最初のうちは”他に知らない子ばかり”なこともあって、
一緒に行動する時間が多くなりー、
次第に、その仲が深まっていき、
やがて、付き合い始めたー。
その後、大学生2年目となる去年から、
お互いに同棲を始めているー。
美咲の父親は、”色々なことに挑戦してみることが大事”と、
考えている人間で、
娘である美咲のことは可愛がりつつも、
道彦と既に何度か面識があり、
”彼氏が、君みたいな人間で本当によかったー”などと、
道彦のことを気に入っていたこと、
そして、”色々挑戦してみることが大事”という考えから、
”彼氏との同棲”も、経験のひとつー、と、
それを応援するような姿勢を見せていてー、
結果的に、こうして同棲することになったー。
それから、1年ー。
二人は、最初のうちは色々と戸惑うこともあったけれど、
今はすっかりとお互いに上手く、生活に馴染んでいるー。
「ーあれ?美咲は今日はー、休みだったっけー?」
道彦がそう言葉を口にすると、
美咲は「うんー。わたしは今日行ってもやることないしー」と、
そう言いながら笑うー。
今日は土曜日ー。
道彦と美咲はでは、スケジュールの組み方が異なるために、
今日は道彦しか大学に用がない日だったー。
ついでに、バイトも今週はたまたま休みで、
美咲にとっては珍しく、バイトも大学も”何もない日”でもあったー。
「ーはは、そっかー。じゃ、のんびりと休みを楽しんでー」
道彦はそう言うと、大学に向かう準備をしながら、
美咲は「レポートがあるから、家でそれを進めておこうかなって思ってー」と、笑うー。
道彦は、「あ~~、例のやつか~」などと、
そんな言葉を口にしながら、
出かける準備を終えると、
「あ!そうだ、帰りに必要なものがあれば買ってこようかー?
どうせ帰りにスーパーの前通るしー」と、
まるでもう結婚しているかのような、そんな言葉を口にするー。
「ーーえ、あ、じゃあ、あると助かるもの、あとでLINEで送るねー」
美咲は”わたしだけ休みなのに、お願いまでしちゃってごめんね”と、
そんな言葉を付け加えながら、冷蔵庫の中を確認するー。
そうこうしているうちに、「あ、そろそろ行かないとー」と、
道彦はそう言葉を口にすると、「行ってきますー」と、
そのまま大学に向かって歩き始めたー。
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道彦にとって、”いつもの”日常ー。
美咲にとっても、それは同じー。
お互いにとって、”いつも”の日常ー。
何か特別なことがあるわけではないけれど、
小さな幸せを感じられる日々だったー。
しかしーーー…
”そこ”に、魔の手が忍び寄っていたー。
「ーーーーー」
家の作業を終えて、大学のレポートを作り始める美咲ー。
がーー
突然ーー、
家の照明が消えてーー
室内が不気味に薄暗い雰囲気へと変わるー。
「ーーえっ…?」
美咲が、戸惑いの表情を浮かべながら振り返るーーー
「ーーー……な、なに…?」
いきなり、家中の照明が消えたー。
美咲は戸惑いながらも、立ち上がると、
そのまま家の中の様子を確認しようと歩き始めるー。
がーーー
美咲はすぐに”違和感”に気付くー。
それもそのはずー
家の照明が消えただけではなく、
家の中が”不自然に”暗いのだー。
何かがおかしいー
そう思い始めたその時だったー。
「ーーーククククククーーー」
背後から、声が聞こえたー。
「ーー!?!?!?」
美咲が驚いて振り返るとーー…
そこにはー”怪人”と称するにふさわしいー、
人型の、不気味な”セミ”のような怪物がいたー。
「ーーーひっ…?」
美咲はあまりの驚きにその場に尻餅をついて座り込んでしまうと、
「ーククククーそんなに驚くなー」と、怪人は笑みを浮かべるー。
「ーーーあ……あなたは…だ、誰ですかー?
い、いったいどこからー!?」
美咲は戸惑いながらそう言葉を口にするー。
玄関の扉は鍵をかけていたはずー。
それなのに、どこからー…?
「ーククククー
我々、”ブラッドミスト”の手にかかれば、
このような家に侵入するのは容易なことだー」
人間たちを利用し、悪事を企てる悪の組織ー
”ブラッドミスト”ー。
その怪人が、美咲の方を見つめながら笑うー。
「ーーまぁいいー
貴様にも、我々のために働いてもらうぞー」
怪人は、そう言葉を口にすると、
美咲の方に近付いて来るー。
美咲は慌てて、スマホを置いてある机の方に向かって走り出すー。
警察に通報して、自分は窓から一旦外に出て、逃げようと
そう考えたのだー。
しかしーーー
人型のセミのような形をした悪の怪人はーー
”セミの鳴き声”にも似た不気味な音を発し始めたー。
逃げようとしていた美咲が動きを止めるー。
目から輝きが失われていきー、
美咲はゆっくりと振り返ると、
数秒前まで怯えていたはずの相手ー、
セミのような怪人に向かってゆっくり歩き出すー
「ククククーいい子だー」
セミような怪人は、そんな言葉を口にすると、
自分の方を見つめる美咲の方を見返しながら、
さらなる超音波を放ったー。
美咲がビクッと震えて、一瞬、その瞳が赤く輝くー。
「ーーーークククー
これでお前は我々の”駒”だー。
来るべき時が来たら、我々のためにその身を捧げるのだー」
セミのような姿をした怪人は、
そう言葉を口にすると、
美咲は、感情のこもっていない声で「はいー…」と、だけ言葉を口にしたー。
「ククククー…それまでは”普通に”過ごしているがいいー」
セミのような姿の怪人はそれだけ言うと、そのままスーッと
姿を消していくー。
残された美咲は、一人、しばらくその場に立ち尽くすとー、
やがて、どこかぎこちない様子で、
”レポート”作りに戻って、何事もなかったかのように
作業を始めるのだったー。
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帰宅した道彦が、
帰り道にスーパーで買って来たものを
美咲に手渡すー。
大学に向かう前に、美咲に頼まれていたものだー。
「ーーーありがとうー」
美咲は穏やかに笑うと、どこか虚ろな様子で中身を確認するー。
「ー美咲?」
一見すると、”普通”に見えるもののー、
いつも一緒にいる道彦は、どこか美咲に”違和感”を感じるー。
「ーーーーーどうかした?」
首を傾げる美咲ー。
「あ、いやー…別にー」
道彦は、”気のせいか”と、思いつつ、
雑談を始めると、美咲もいつも通り雑談を始めるー。
悪の組織”ブラッドミスト”の怪人に洗脳されてしまった美咲ー。
しかし、”普通に生活していろ”と、命令された美咲は、
今現在は”洗脳された自覚もないまま”普通に生活を続けながら、
命令を待っている状態だったー。
本人も、洗脳されてしまったことに気付いていないー。
けれどー
それでも、”脳”は100%平常とは言えない状態ー
いつも一緒にいる道彦には”ほんのわずかな違和感”を感じるぐらいには、
いつもの美咲と少しだけ違う部分もあったー。
”普段通り”にしているように見えるけれど、
どこか、ぼーっとしているような、そんな感覚ー。
「ーーーー」
美咲は、道彦に背を向けると、人形のように無表情になって
冷蔵庫に、買ってきてくれたものを入れ始めるー。
”命令”が来るその時までー、
美咲は”いつも通り”生活し続けるー。
そのことを、美咲自身も自覚することができないままー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、それから”数日”が経過したある日ー。
夜ー
眠りについていた美咲に、
悪の組織の怪人から、”命令”が送られてきたー。
”目覚めよー”
そんな言葉と共に、美咲が目を覚ますー
虚ろな表情のまま、身体を起こすと、
美咲はそのまま、怪人の命令に耳を傾けるー。
”時は来たー。
お前たち人間が、我々のために働くときがー”
怪人の言葉に、
美咲はゆっくりと立ち上がると、
怪人から”アジト”に来るように命令が送られてきたー
「ーー」
虚ろな目のまま立ち上がる美咲ー。
部屋の扉を開けて、まるでロボットのように、
ぎこちなく歩きながら、
そのまま玄関の方に向かおうとするー。
しかしーーーー
”偶然”深夜に目が覚めて、トイレに来ていた彼氏の道彦が、
そんな美咲に気付いたー。
「ーあ、美咲ー
美咲もトイレかー?」
道彦がそう声を掛けるー
しかし、美咲は表情を一つ変えずに、
そのまま玄関の方に歩いていくと、
ゆらゆらと歩きながら、玄関の扉を開けて、
外に出て行ってしまうー。
「えっ…み、美咲?こんな夜中にいったいどこにー?」
戸惑いながら、声を掛ける道彦ー。
けれど、美咲は振り返ることもせずに、
そのまま立ち去っていくー。
「ーお、おいっ!?美咲ー!?」
道彦は困惑の表情を浮かべるー。
そして、ここ数日ー
なんだか、”美咲の様子に違和感”を感じていた道彦は
嫌な予感を覚えるー。
なんだかー、本の少しだけ、反応が薄いようなー
表情がないようなー…
笑ってはいるけど、目は笑っていないようなー…
そんな違和感をこの数日間で抱き続けていたー。
「ーーー…美咲ー」
嫌な予感はさらに膨らみ、道彦は慌てて自分も家の外に出て、
美咲の姿を探すー。
すると美咲は少し先の通りをゆっくりと歩いていたー。
”ーー美咲ー…まさかー…”
道彦は、ここ数日の美咲の様子に感じていた違和感を思い出しながら
”誰かに、何か脅されているのか?”と、
そんな風に考えるー。
真実は、そうではないー。
悪の組織の怪人に洗脳されて、美咲本人の意思とは関係なく、
美咲は今、怪人のアジトに”向かわされている”状態ー。
けれど、さすがにそんなことがあるとは思っていない道彦は
”美咲にここ数日違和感を感じていたのは、
美咲が誰かに、脅されていてー、
今も美咲はその人物に呼び出されている”のだと、
そう考えていたー。
「ーみ、美咲!!ちょっと待ってくれ!何があったんだー!?」
道彦は、夜道を歩く美咲に声を掛けるー。
それでも美咲は反応せず、真っすぐ一点を見つめたまま歩いているー。
意思のない、人形のようにー。
「ーーー美咲!!誰かに脅されたりしてるなら、俺がどうにかするー。
誰かとトラブルを抱えてるなら、俺がどうにかするー
だから、行っちゃだめだー」
道彦はそう言葉を口にするー。
しかし、それでも美咲は反応しないー。
「美咲ー…??? おい、美咲ーどうしちゃったんだよー?」
まるで、意思のなない人形のように歩き続ける美咲に強い違和感を
覚える道彦ー
「い、言えないようなことでもー…
も、もしも美咲が原因のトラブルなんだとしても、
美咲と一緒に背負うから!だからー」
道彦がそう叫ぶー。
それでも反応しない美咲ー。
道彦は、美咲の進行方向を塞ぐかのようにして
前に立ちはだかると、「美咲…!話を聞いてくれ!」と、
そう叫ぶー。
この数日間ー、
何かに悩んでいたに違いないー。
”普通にしている”美咲にほんのわずかな違和感を
感じ取っていた道彦は、そう確信して、
美咲を止めようとするー。
けれどーーー
「ーー邪魔」
美咲はそれだけ言うと、道彦を押しのけて
そのまま歩いていくー
確かに美咲の声だー。
しかし、全く感情を感じさせないー、
おかしな声ーー
「み、美咲!」
もう一度美咲の前に回り、
美咲の顔を見るー
がー、美咲の目は”死んで”いるような目だったー。
何の感情もなく、輝きすらも感じられない目ー…
そして、口を半開きにしたまま無表情で歩く美咲はー
とても”正気”には思えなかったー
”何かおかしいー”
道彦はそう思うと同時に
”絶対に美咲をこのまま行かせちゃいけないー”と、
強く、心の中でそう思うのだったー
②へ続く
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コメント
悪の組織の怪人に一般人が操られちゃう~…の、
シチュエーションを、同居している人視点で
描いた作品デス~!!
操られた彼女を止めることができるのかどうかは、
また明日のお楽しみデス!!

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